夢の城

― 登場人物 ―


桜の里(七)
― 2. ―

主要登場人物

北坂上の大子三郎(おおねさぶろう)
北坂下の猪次(いのじ)
 牧野郷川中村の村人。家の者たちが牧野家の館跡で怪異を見たと言って、雨が降っている夜にもかかわらず二人で中橋渉江を訪ねてきた[桜の里(七)1.]
壺助(つぼすけ)
 大子三郎の家に仕えている小者。最初に火の怪異に気がついたという。
飛弥次郎(とびやじろう)(とび)
 大子三郎の家の小者。やはり火の怪異を目撃した。
中橋渉江(しょうこう)
 川中村に住む儒者。僧侶ではないようだが、明徳教寺の住職役を務め、寺に住みこんでいる。牧野・森沢二郷の人びとの信望が厚く、そのまとめ役を務めている。安総尼(あんそうに)の師匠でもある。
(りゅう)
 北坂下の猪次の妻。「火の怪異」を仏様の出現だと思っている。
(にい)
 北坂下の猪次に仕える下女。「火の怪異」を牧野治部大輔(じぶのたいゆう)興治(おきはる)の霊だと思っている。
木から落ちてきた女の子
 だれかはわからない。まあ、[桜の里(六)5.]を読めばわかると思うけど。少なくとも「木登りマニアのコギャル」や「恐怖の大王」ではないと思われる――ってこんなところでそんなネタを……。
美千(みち)
 牧野郷川上村の有力者 村西兵庫助(ひょうごのすけ) の妻。兵庫助が合同寄合に参加するために川中村に行っているので、いまふくと二人で留守宅にいる。兵庫助よりは出身身分が上だという。ところで清瀬は煮た蕗の薹が苦いかどうか確かめたことがない(だって煮たのって食べたことないもの……)。いいかげんな作者である。気にはしてるんだけどね。
ふく、広沢の下の家の〜
 村でなんとなく疎んじられている「広沢三家」の出身の少女で、村西家に来る以前から美千に仕えていたらしい。字が読めないと言っているわりには、小難しいことばをときどき使う[桜の里(三)1.]。その日の合同寄合[桜の里(五)4.]について情報を仕入れるために川中村まで行っていたらしい。

話題としてのみ登場する人物

牧野興治(おきはる)治部大輔(じぶのたいゆう)、「治部様」
 牧野郷の郷名主だった人物。玉井春野家の初代正興(まさおき)のころからの臣下である。現在の守護代(守護大名)春野定範(さだのり)が正稔を捕らえて島流しにし、三郡守護代の地位を奪ったのに抗して挙兵し(「牧野の乱」または「義挙」)、定範を追いつめたが、巣山から来た柴山勢に敗れて処刑された。牧野郷の村人たちには現在でも慕われている。豪放で荒々しい人物だったらしい[桜の里(四)下]
安総(あんそう)(安総尼)、お(ふさ)
 川上村の村長木工(もく)国盛(くにもり)の娘。出家して尼になり、川中村の明徳教寺に住む中橋渉江(しょうこう)に仕え、学んでいるらしい。お(ふさ)または総は出家前の俗名。丸顔で目のぱっちりした若い娘。
芹丸(せりまる)
 牧野興治の息子。正式に元服する前に「牧野の乱」に参加して戦い、父とともに捕えられて処刑された。
「お美那」
 ここまで出てきた人物のなかでは、町の葛餅屋の養女で、町の銭屋の使者として村に来ている「藤野の美那」と、以前、村にいて、ふくと同じ「広沢三家」出身の「広沢の美那」がいる。ここで美千が「お美那」と言っているのは広沢の美那のことらしい。他に、井戸に落ちて死んだと伝えられている春野家の妹姫も同じ名まえだった。
川上国盛(くにもり)木工(もく)
 美千たちが暮らす川上村の村長で、安総尼の父親。
ご使者
 借銭の取り立てのために町の銭屋衆の使者として牧野郷に来ている藤野の美那、鍋屋の(上総掾(かずさのじょう)?)隆文、さわのこと。「ご使者のなか」の美那というのは藤野の美那のこと。藤野の美那自身は「広沢の美那」は別人だと言っている[桜の里(六)2.]
勝吉(かつよし)
 「広沢三家」のうち、広沢の上の家の男で、広沢の美那と毬の実父。「牧野の乱」のとき、巣山郡出身ということで、巣山の代官 柴山康豊(やすとよ) と通じているのではないかと疑われ、村人に襲われて殺されたという[桜の里(六)4.]。安総が藤野の美那をその墓に連れて行った話は[桜の里(五)4.]
(まり)、広沢(の上の家)の〜
 「広沢三家」の一つ「上の家」の女の子。「広沢の中の家」の葛太郎(かつたろう)(まゆ)と同居している。身が軽い。前夜に中原範大の寝所から脱出して[桜の里(三)4.]、それ以来、牧野家の屋敷跡の「義倉」に身を隠していたが、義倉に放火され、なんとか脱出に成功したところである[桜の里(六)5.]。広沢の美那の実妹だが、離れて暮らしていたため、実姉にはほとんど会ったことがない。

玉井春野家関係者等の系図

玉井春野家(三郡守護代家)と柿原家

正興─────┬正勝────────┬那世
 民部大輔  │ 民部大輔     │ 姉姫、深雪の方
 玉井春野家 │ 玉井春野家    │
 初代    │ 第二代      ├正稔
       │          │ 民部少輔、幼名:信千代丸
       │          │
       └定範        └美那
         越後守        妹姫
         現在の三郡守護代
         ‖
         ‖
柿原忠佑───┬田山の方
 大和守   │ (定範の正妻)
 竹井郡代官 │
 柿原郷名主 └柿原範忠
 柿原党総帥   主計頭
         竹井代官代

牧野家(牧野郷名主)と森沢家(森沢郷名主)

┌牧野興治─────芹丸
│ 治部大輔
│ 治部様
│ 牧野郷名主

└興治の妹
  ‖───────森沢荒之助
 森沢為順
  判官
  森沢郷名主

桧山家(港の名主)

 桧山興孝─────桃丸(幼名)
  織部正
  港の名主

杉山家(定範政権評定衆)

 杉山信惟─────宣十郎
  左馬允

浅梨家

 浅梨治繁     鍋屋の隆文
  左兵衛尉    藤野の美那
          銭屋の元資
          車屋の丈治 らの剣術の師匠

柴山家(巣山郡代官)

 柴山時豊─────興豊────┬勝豊────────弥勒丸
  兵部大輔     兵部大輔 │ 兵部大輔      勝豊の幼い遺子
  巣山郡代官    巣山郡代官│ 巣山郡代官
                │ 狩猟中に事故死
                │
                └康豊
                  兵部少輔
                  巣山郡代官

中原家(中原郷中原村、中原郷名主家)

 中原吉継────┬茂
  令史     │ 吉継の長女
  中原郷名主  │ ‖────────中原範大
  中原村在住  │中原克富       安芸守
         │ 造酒        幼名:十郎丸
         │ 現在の中原郷名主
         │ 町の酒屋出身
         │
         └宣
           吉継の次女
           ‖────────立岡拓実
          立岡拓実の父     府生

広沢三家(牧野郷川上村)

 広沢勝吉
  広沢の上の家
  ‖──────┬美那
 木美      │ 広沢の美那
         │
         └毬
           広沢の中の家で
           育てられている

 加恵──────┬葛太郎(葛太)
  広沢の中の家 │
         └繭

 祖母…………………ふく
           広沢の下の家
           村西家の美千に仕えている