夢の城
― 登場人物 ―
桜の里（四）
― 下 ―
主要登場人物
- 藤野の美那
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玉井の市場町に住む少女。十六歳（数え年、他の登場人物も同じ）。事情があって、市場の老舗の葛餅屋「藤野屋」に預けられ、育てられている。徳政（債権放棄令）に名を借りた柿原党の策略から同門の銭屋の元資を救うために、浅梨治繁の門下の兄弟子の隆文と、銭屋で働く娘さわといっしょに、牧野郷に借銭の取り立てに来ている［何をなすべきか（二）］。焼け落ちた牧野家の館跡の地下室で、広沢の上の家の毬といっしょに一夜を明かした。［桜の里（三）5.］。
- 鍋屋の隆文
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市場の鍋屋で働いている。美那や元資とともに浅梨治繁に剣を習っており、現在の弟子のなかでは一番上である。藤野の美那とは意地を張り合うことが多い。髪を伸ばして髯を生やし、異様な風体をしている。藤野の美那、さわといっしょに取り立てに来ている。
- （銭屋の）さわ
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市場の娘。市場の銭屋で働いている。駒鳥屋のあざみ、宿屋のさと、鋳物屋のみやなどと友だち。藤野の美那、鍋屋の隆文といっしょに借銭の取り立てに来ている。玉井郡の北に隣接する巣山郡の出身。その出身地には桜がたくさん咲いていたという［桜の里（一）］。
- 川中村の関所番
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小ぶとりの男。朗らかな男らしいが、前の日、村に入れてほしいという藤野の美那、隆文、さわの一行の願いを頑として聞き入れなかった［桜の里（三）2.］。
- 藤野屋の薫、「いまのおかみさん」
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藤野の美那の養い親。市場の葛餅屋を一人で切り盛りしている。前夜、使用人の頭の橿助に隠退の決意を告げられ［桜の里（三）4.］、店をたたむことを考えていると隣家の駒鳥屋のおよしに告げた［桜の里（三）5.］
- 川上国盛、木工
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川上村の村長。朴訥な男である。村の村西兵庫助らが柿原党の者たちを引きこんだことで事態が紛糾し、収拾のために頭を痛めている［桜の里（二）下］。
- 和生
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俗名は和。川上寺の寺男。にこやかな若い男で、村を訪ねてきた藤野の美那らの案内役を務めた［桜の里（二）上］。
- 安総（安総尼）、お総
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川上国盛の娘。出家して尼になっている。
- 駒鳥屋のおよし
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藤野屋の隣家 織物屋の店主の妻。店主は年の大半を買いつけに出ているので、実質的に店を経営している。藤野屋の薫と親しい。また、娘のあざみは藤野の美那の親友である。
- 橿助
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藤野屋の使用人の頭。店の葛餅の味をよく知り抜いており、店内の作業を取り仕切っているようであるが、味覚の衰えを感じており、隠退を考えているらしい［桜の里（三）4.］。
話題としてのみ登場する人物
- 毬、広沢の上の家の〜
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「広沢三家」の一つ「上の家」の女の子。「広沢の中の家」の葛太郎・繭と同居している。身が軽い。柿原党の一員として村に来ている若い侍 中原範大のところから逃げ出し［桜の里（三）4.］、現在、牧野家の屋敷跡に身を隠している。春祭りの舞姫に推す声もあるが、村のなかでは反対論も根強い［桜の里（二）下］。
- 牧野興治、治部大輔、治部様
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牧野郷の郷名主で、牧野・森沢の二郷の指導者だった人である。玉井川から用水を引き、村々の開発に尽くした。玉井春野家の初代正興、二代めの正勝に仕えた。正勝の弟の定範（現在の守護代）が守護代の地位を奪った後、それに反抗して決起し、巣山の柴山康豊軍の急襲を受けて敗北、捕えられて息子 芹丸とともに処刑された［桜の里（一）］。この反乱は、反乱側に同情的な人びとからは「義挙」と呼ばれている。なお、その「遺訓」とは、広沢三家を差別してはならないということらしい［桜の里（二）下］。
- 「毬のお母さん」、加恵、広沢の中の家の〜
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「広沢三家」の一つ、中の家の葛太郎と繭の母。ほんとうは毬の母親ではない。いっしょに住んでいた毬を柿原党の侍のところへ行かせた［桜の里（三）3.］。怒りっぽく、怒るとすぐに子どもたちに暴力をふるうようだ［桜の里（四）上］。
- 葛ちゃん
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広沢の中の家の葛太郎。加恵の息子。夜陰に乗じて村西兵庫助の屋敷に侵入し、毬を奪い返した［桜の里（三）4.］が、毬が行方不明になったことで母親の不興を買った［桜の里（四）上］。
- 藤野の美那の生みの母
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詳細は不明。
- 牧野芹丸
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牧野治部大輔興治の息子。まだ正式に元服しないうちに父の挙兵に参加し、捕えられて処刑された。
- 春野正興、民部大輔
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玉井春野家初代。もとは京都に住んでいた貴族で、玉井三郡を領地としており、自ら領地経営のために下ってきて三郡を平定した。現在の守護代越後守定範の父親でもある。
- 「大兵部」、柴山時豊、兵部大輔
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玉井郡の北に隣接する巣山郡の名主。正興と玉井三郡の覇権を争い、玉井の城館を包囲したこともあった。現在の巣山代官兵部少輔康豊の祖父に当たる。
- 「柴山の小せがれ」、柴山康豊、兵部少輔
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現在の巣山代官。まだ若い。兄の不慮の事故死によって代官の地位を継いだ。残忍な性格だと言われている。牧野の乱に際して巣山から玉井に入り、乱を鎮圧した。
- 「港の織部様」、桧山興孝、織部正
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港の名主で、正興の重臣。牧野の乱で牧野興治らとともに挙兵し、敗れて処刑された。息子の桃丸が現在も港の名主を務めている。
- 「小せがれの親父」、柴山興豊、兵部大輔
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時豊の息子で康豊の父。父親の「大兵部」に対して「小兵部」と呼ばれる。
- 越後守、春野定範
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現在の守護代。要するに玉井三郡の守護大名である。正興の息子。兄正勝の没後、正勝の息子の正稔が守護代の地位を継ぐことが決まったが、定範は正稔とその姉妹を捕えて守護代の地位を奪った。「越後守さまの一件」とはこのことを指している。このクーデターに対して牧野の乱が勃発した。
- 村西兵庫助（兵庫）
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牧野郷川上村の村人。借銭の取り立てを逃れるために中原範大・長野雅一郎らを村に招き入れた。柿原党と関係がある。
- 大木戸九兵衛
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村西兵庫助の仲間になっている村人。
- 井田小多右衛門
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同じく村西兵庫助の仲間になっている村人。
- 村西の奥方
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名まえは美千。井田小多右衛門によると夫よりも身分が上らしい［桜の里（三）2.］。
- 柿原党
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守護代 越後守定範の正妻の父 柿原忠佑の率いる金融集団。ここでは中原範大、長野雅一郎主従のこと。
- 中橋渉江
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国盛をはじめ川上村の大人衆が借銭取り立て問題の調停役として期待している人物で、川中村に住んでいる。知恵者であるというが……［桜の里（二）上］。
- 「敏さん」
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藤野屋の「若旦那」。すでに亡くなっているらしい。橿助はこの若旦那には葛餅の味を伝授したといい、その死を残念がっていた［桜の里（三）4.］。
- 牧野郷の使者
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前夜、およしの店に訪ねてきた［桜の里（三）5.］。