甘い生活苦タイトル画
タイトル画:武川雅寛・白井良明(ムーンライダーズ)

 2002年4月 第4回 「桜」

うららかな春なんです、と思いきや、初夏に突入したかの様な、御陽気な毎日。トーゼン桜のシーズンは終わってしまっている。桜満開のとき。狂い咲く花々を見上げていると、何か作用があるのだろう、ボーッとトランシーな気分になってくる。どうしてあそこまで、容赦のない美しさを毎年魅せることができるのか?桜は散るからいいんだ、と誰かが言っていた。年中あの満開を披露されては、やかましくて仕方ないらしい。短命であるが故、重宝がられる事を桜自ら、心得ているのかもしれない。また桜は、ライティングの効果をもった花だとも思う。出会いや別れ、それら樹の下で繰りひろげられる、メローな人生をスポットとして照らしだす。桜を背景にしたステージでは誰もが主演であり、否がおうでもドラマチックになってしまう事が多い。私自身、花があるだけで普段より裸踊りの方も、リキが入ってしまうのは事実である。

ここ桜華学園高校。四月の創立記念式典に、演劇部による「櫻の園」が上演されようとしていた。憧れとトキメキとほんの少しの嫉妬が支配する花園に、上演前の緊張にまかせて、想いを告白する女学生たち。満開のもと、セーラー服に黒タイツ姿の皆が主人公であり、青春美により、彼女達のまわりはキレイ事で固められていく様にみえる。

はぁー。男子高育ちの筆者にとって、そんな「営み」がおこなわれるそこは、非現実的な世界であり、こんなもの存在する筈がないと思っていた。が、先日、仕事の関係で女学校に足をふみいれる機会があった。校庭ではテニスの打球音が響き、かなたの校舎からコーラスがこだまする。私の横を女学生二人、笑いながら駆抜ける。甘くすえた残香が、鼻につく。気がつけばあたりまえなのだが、目の前女学生だらけ。ここは桜華学園なのか。私が見る限り、キレイ事で構築された別世界が、こんな身近にあったと実感したとたん、意味もなく脂汗がにじみでた。歩行時、緊張のあまり、右手右足を同時にだしていたかもしれない。端から見ると、かなり怪しかったと思う。

で、桜はどうしてあそこまで、美しい花を魅せるのか?花冷えによる大量の立ち小便と悪酔いによるゲロ。フルチンで酔っぱらいの見解だが、これら有機的な肥しによるものが影響大だと思う。うん、これは間違いない。


←桜満開のもと、若くして、人生最高の瞬間(とき)を心に刻もうとする二人。それは後にオカルト女優として進化する(『女優霊』『死霊の罠』)中島ひろ子、白鳥靖代。彼女たちの女優人生のなかでも、この作品が旬だったなぁと、少しダブッてしまうのである。

葛城より:この四月、同敷地内にある、もう一つの家に引越し大作戦を決行。こんな門出により、例年より春らしい春だったような気がする。

(レーコより)私は小学校から大学までずっと共学だったんですが、東京に来て以来、中学高校時代、クラスメートやクラブ仲間とごくふつうに行っていたことが「え〜、そんなの絶対しないよ〜」「なに、関西じゃそんなの当たり前なの?」と東京の友人たちにコメントされ、困ってしまいました。例をあげると、部活のあと、給食室に残った牛乳やパンを漁ったり、「ぼうぼ」「くろけつ」「わっきー」というあだなを女子の友人たちにつけて、それが本人たちもオッケーで呼び合ってたこととか・・・。あ、やっぱりだめ?すみませんでした。

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※「シネマックスモナムール」(全12回)は、2001年に葛城さんに連載していただいた、熱く濃ゆ〜い、日本映画コラムです。読みたい方は下記バナ−をクリックして、ご覧ください。


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