*** ニュースとして、美容と健康に関して気になる最近の話題を取り上げ、解説します。***
(できる限り、科学的な視点、論理的な視点から解説を試みてみます。)
『昨年から、角質にあるメラニン色素を取ることが、即効的に肌を白くすると、受け止められるような商品がヒットして、
今年は各化粧品メーカーが同じ切り口で商品を発売してきました。』
『確かに、わかりやすく、即効性を期待する生活者にとって、すぐに使ってみたくなるに違い有りません。店頭では、
コットンでふき取ってメラニン色素が取れたのごとく説明しています。』
『でも、よく考えてみると、メラニン色素は肌のどこに一番多く含まれているのでしょう? 普通の場合は、やはり表皮の
基底層と呼ばれる深い場所で、簡単にふき取ってとれる場所ではありません。しかも、今までの美白の考え方も
そこで行われているメラニン色素の合成を止めることを中心に研究されていました。』
『それでは、皮膚科学の急速な展開によって新しい美白メカニズムが一斉に各社に広まったのでしょうか?
そのような話は、有りません。たしかに、はがれていく角質細胞のメラニン色素(色が着いていない分解された
成分もいっしょ)の研究は幾つか研究会や専門誌で報告されていますが、それをはぎとることで白い肌に回復
するとは短絡的に考えられていません。』
『私が問題にするのは、たとえ少しでも肌のメラニン色素を減らすことにつながるから良いと主張されて、このま ま角質メラニン色素を取る美白ケアが推奨され続けると、皮膚トラブルを引き起こす可能性です。一時期の、A HAブームの時と同じく、本来肌を守るべき、健康的な角質細胞まで取ってしまいやしないかという懸念です。』
『売れるから、解りやすいからと言って、皮膚科学的に良くないことを奨めることに、気が付いた研究者、マーケ ティング担当者、美容ライターの皆さんの努力による、市場認識の訂正が必要だと、私は強く思っています。』
『効果を最も訴求できるのが最新の科学技術を取り入れた医療でしょう。しかも発信地はUSAから。CNN
ニュースなどの国際的メディアに取り上げられることで、いっそう拍車がかかります。ケミカルピーリングが果た
して国際ニュースに取り上げられたか私は確認していませんが、やはり発信地はUSAのようです。言葉として
はそんなに新しくなく、例の「AHA」ブームの以前からあったのです。AHA(α−ヒドロキシ酸)による角質の
除去もケミカルピーリングの一種なのです。化学物質により角質層を溶かすか、剥がすかして新しい角質層を
表に出して、きれいな肌表面に整える処理で、数種類の化学物質が使われています。』
『乳酸、グリコール酸などのAHAと呼ばれる酸類、サリチル酸、フェノールなどがよく使われているようです。
化学実験をした経験のある人は試薬の中でうかつに触ると指の指紋が消えてしまったことを覚えているかもし
れませんが、まさにそのような試薬で、試薬の濃さや付ける時間により角質層を溶かす程度をコントロールでき
しかも、中和剤などで即座に反応を止めることができる化学物質が選ばれたのです。と言うわけで、明らかに
医療行為です。当然、肌の状態を正確に判断して、使用する試薬の濃さと付けておく時間を調整して行う必要
があります。以前、USAから医師免許を持つエステティシャンがやって来て、デモンストレーションを行ってもら
ったことがありました。ボランティアとなった女性は強い痛みを感じましたが「ノー・プロブレム!」と、かまわず
処置を続け、最終的に中和する液をつけて終えました。痛みは中和と同時に消えました。その後の肌は、劇的
にスベスベになって、その効果は3日は続いたとボランティアの女性は言っていました。ちなみに、その時は
30%のグリコール酸でした。中和剤は弱アルカリ液だったと言っていました。(水酸化ナトリウムか水酸化カリ
ウムのいずれかと思いますが)』
『メドラインという医学文献のデータベースを引いても、たくさんのケミカルピーリングの文献が出てきます。
それによると、フェノールは刺激が強すぎて使われていなようで、もっぱらグリコール酸のようです。レーザー
療法をケミカルピーリングに変えるようにすすめている医師もいます。現在の所、エイジングした肌を若々しく
シワの目立たない肌にする効果で話題となっていますが、真皮まで構造を変えない限り、又元に戻ると皮膚
科学的に考えられます。(美肌の科学を参照してください) このあたりは、
十分にお医者さんと相談した上で行う必要があると思います。「必ず・・・」とか「絶対に・・・」とか「100%・・・」
という保証はないわけですから、そのことも話して納得することが条件でしょう。』
『私の考えでは、角質層を強制的に取ったり(はがしたり)、皮膚を人工的に炎症を起こさせて真皮から新しく
構造を作り直すブームはUSAでは10数年前から流行していると認識しています。最初のブームが「レチンA
配合のクリーム」で、CNNニュースで流れて話題になりました。ビタミンA酸という活性型のビタミンAで、配合
量により皮膚に赤い炎症を起こします。もとはニキビの治療目的で使われていた薬剤です。次に、「AHA」です。
この時も、日本人の肌には強すぎて肌が荒れたトラブルも多発しました。元々、国内の化粧品研究者は適正
配合量を知っていたし、目的によって処方していましたので、ブームには慎重に対応していたはずです。』
『というわけで、今回のケミカルピーリングは、そもそも医療行為にあたりますし、使用量や使用法を厳密に規定
できない化粧品では、ピーリングまで効果を持たすことは難しいと思います。医師が診断をしていないエステティ
ックサロンで、もしケミカルピーリングをしていたら危険きわまりありません。信頼おける医師のいる機関で、相談
し、納得の上で行うべきです。また、やたらブームとして取り上げるのも、効果のみが印象的に捉えられ問題が
あると思います。「ケミカル」というフレーズが効果を感じさせているのも心理的に大きいでしょう。』
『今年は、夏が短く感じたのは梅雨明けが遅れ、しかもはっきりしなかったからでしょうか。今年は気象庁の
梅雨明け宣言なしに終わりました。』
『ところで、今年の夏は日焼け止め化粧品に大きな転換期があったのです。今まで、SPFという日焼け止め
指数が商品特長として年毎に大きな数値の商品が登場してきました。その為、市場では、「優れた日焼け
止め化粧品」=「高SPF表示化粧品」という構図が出来上がり、いわゆる「SPF戦争」と呼ばれ、各社が競っ
て「高SPF表示化粧品」の開発をしてきたのです。何と今年はSPF値123のギネスものの商品も登場しまし
た。』
『SPFとは(sun protection factor;紫外線防御指数)の略号で、B波紫外線に対する防御効果の目安と
なる指数です。簡単に言えば赤くヒリヒリするような日焼けを防いでくれる効果を現します。7月の梅雨明け
の正午頃で、平均的な日本人の肌は、何もつけないで約20分日に当たると薄く赤みが出てきますが、
この刺激反応を起こす紫外線量の倍数がSPFです。 つまりこの時期の日光に当たる時間に換算する
と、SPF値が20とは、20×20(分)=400(分)、つまり約7時間弱日光に当たっても赤くヒリヒリとならない
効果となります。しかし注意すべきは、このSPFは、指数としては定義が明解なのですが、実際に自分の
肌において換算しようとすると、日焼けに対する強さで肌の個人差があり、自分の肌についてある程度日
焼けにたいする認識が必要となります。先ほどの例では、もし日に焼けやすい人なら、まあ3時間は大丈夫
ということになります。』
『さて、話を元に戻して、今年のSPFに関しての総括としては、もはやSPF値が高いだけの競争は終わっ
たということです。SPFの定義を考えても、日本ではSPF値20あればほぼ十分だと言うことはおわかりで
しょう。つけると肌が不自然に白っぽくなる、とか、なにか突っ張っているように感じるとか、単純にSPF値を
高める製品を作ると、そのような感触上の短所が出やすくなります。最近の消費者は、もはやつけ心地や
化粧の仕上がり、そして安全性に選択基準が移ってきたようです。また、大手メーカーである資生堂がSPF
値43以上は不要であるとのメディアを通しての発表も、その傾向を強めました。(SPF値43の根拠性につ
いては議論の余地がありますが)』
『私の意見として、やはり、今年をもってSPF値の数値戦争は終わったと見て良いでしょう。むしろ、来年から
大切なのは、SPFに対する正確な認識をもっと販売者や消費者に伝えることだと思います。現在はSPF値
について、まだ市場に於いては正確な認識はされていないと見るべきでしょう。数値戦争の弊害とも言える
と思います。ハンカチーフで汗を拭いたりしたら、いくらSPF値が60でもかなり落ちてしまいます。上手な使
い方を含めて、もっとソフトウエアでの情報を伝えるべきだと思います。』
『秋も深まり、日焼けした肌を見なくなったこの頃です。日に焼けても白い肌に戻れることは若さの証明
でしょうか? よく、年齢と共に水着の跡が取れにくくなったと言います。確かに皮膚科学的には、エイ
ジングにより、メラニン色素の合成がすぐにはブレーキききにくくなり、角質代謝でのメラニン色素の分解
も、怠慢になってくることは十分に考えられます。でも、個人差があることや、遅れ始める年齢もはっきり
しているわけではありません。まだ、このテーマでの科学的な研究は残されています。白い肌にこだわる
なら、いつかこのテーマで研究をしてみたいと思っています。』
『ところで、なぜ日本人は白い肌にこだわるのでしょう? じつは、確か「UNO」という雑誌の見本誌が
作られるとき、日本人が白い肌にこだわることを取材されたことがありました。結論としては、文化的な
影響だと思いました。子供頃から、白い肌の女性が主人公になっている伝説や昔話、小説で読み聞き
していたので、そのように脳に刷り込まれたのではないかという仮説です。単なる話だけでなく、絵や写
真、そして映画のヒロインは多くの場合美しい白い肌でした。この傾向は、中国や韓国でも同様のように
思われます。』
『そもそも白い肌は、日に当たらない場所での生活が主体となります。とすれば、日の当たる場所での
仕事をいっさいしない支配者階級の女性が白い肌の持ち主となります。と、いうわけで昔話でよく出て
くるお姫様は白い肌をしていた。庶民からみても遠い憧れの美しい人、すなわち白い肌の女性だった
のではないでしょうか。江戸時代、浮世絵にみる美女もほとんどが白い肌の女性でした。おそらく、平安
時代から現在の平成まで、多くのヒロインは白い肌を持っているため、無意識的に白い肌が美人の条件
の一つになってしまったのでしょう。確かに、日焼けした健康で美しい肌のヒロインは何回かブームになり
ましたが、やはり白い肌のヒロインに落ち着いています。この数年、10代の女性で日焼け肌のブームも
ありますが、あと数年後には、きっと白い肌づくりにスキンケアをしているのではないかと予想できます。
それほど文化的な影響は強いものがあると思います。特に、男性が白い肌に対する美意識を変えない
限り、白い肌にこだわる日本人が続くのではないかと思います。』
『日本以外の国ではどうでしょうか? 以前、上智大学の留学生に聞いたことがありますが、USAの学生
は、「メイクをするので、肌の色は気にならないでしょう」と言っていました。肌の色のバリエーションが豊か
な国では、白い肌をしていることは一つのキャラクターに過ぎず、特別なものではないと考えました。』
『以上、簡単ですが、日本人の白い肌へのこだわりを考察してみました。この件では、きっと私とは違う
意見や、考えが有ると思います。もしあれば、メールにて教えて下さい。そのまま、この項の続きとして載
せます。美白市場が世界でも希なほど大きな日本を、「白肌こだわり考」として、少しディスカッションを
続けたいと思います。また、日本以外で白い肌にまつわる話しもお知らせ下さい。』
『お肌と水は切っても切れない仲です。水々しい肌、潤いのある肌は理想の肌で、化粧品の基本
効用はそのような肌を維持することにあります。また水々しい感触も気持ちよく、使用率の一番に
化粧水がくるのも納得いきます。』
『でも、納得いかないのが水そのものを付けることです。化粧水は確かに処方のほとんどが水ですが
、保湿成分や清涼成分などの確かな肌効果を出すための成分を配合しています。しかし、水は、たとえ
ミネラルウォーターでも化粧水を越える肌効果は期待できません。化粧水を越えるような効果を持つ
水は、科学的に考えても理解しにくいところがあると私は思います。水をサーッと付けて確かに肌に
水々しい感触を与えて気持ちいいのですが、その後の肌状態を考えると心配になります。皮脂などの
油分が不足している角質層はかえってその後乾燥しやすくなっていると思えます。水がそのような角質
層の成分バランスを崩してしまうのではないでしょうか?例えば、唇が乾燥したとき、下手になめてしまうと
かえって乾燥がひどくなるような状態になることと同じことが起こっていると考えられます。』
『単に水を霧状に肌に付けて一時的な清涼感を与えるのみなら、そのような商品があるのもうなずけます。
しかし、10年前に世間で話題となった「パイ ウォーター」という摩訶不思議な水がありましたが、約200ml
くらいで数千円と高価なものでした。効果も医薬品並で、確か、「パイ ウォーター」の中では海水魚も
淡水魚も一緒に飼育できるとか、カイワレ大根の成長が違うとか、様々な超越的な効果を暗示するパフォー
マンスを見せつけられたものでした。私も、関心を持って調査をしたことがありましたが、分析機器では検出
できないくらいの微量な2価3価鉄イオンを含む水だそうで、製造方法は極秘で教えられないとのことでした。
しかし、似たものや業者違いで同じ商品が出たり、大企業が採用するだの、撤退するだの、「確かな目」という
雑誌でパンフレットに示された効果の無いことが証明されだの様々な経緯を経て、いつの間に表の世界から
消えてしまいました。でも依然として、そのような超科学的な水も健康関係の雑誌の中で見受けられます。
水は確かに地球上で生命を生み育てた重要な分子ですが、だと言って神秘化するようなものでないと思い
ます。』
『最後に、水はやはり使い方によって、美容上に大きく影響を与えることは事実なので、そのことだけは
知っておいて欲しいのです。水の物を溶かす性質は重要で洗顔やシャンプーなどの時は欠かせません。
洗顔は流水でしっかりとすすいで下さい。また、水は角質層をふやかして成分の浸透を促進します。
だから洗顔後や風呂上がりの肌は化粧品の成分の角質層への浸透が良くなっています。水には超能力は
ありませんが、このように化粧品を効率よく使うために利用することはスキンケアを考える上には重要な
ポイントだと思います。』
『私の美容と健康のための基本的な理論は「生物リズム」です。時計がきちんとリズムを刻めば、時計として
の機能が十分に働いているのですが、どこか狂ったりすると、時計が病気になってしまいます。地球上の
生き物は何らかのリズムを基本に生きていると、大学時代に「生物学」を学び研究して確信するようになり
ました。』
『その「生物リズム」のなかでも重要なものが「睡眠」ではないかと考えています。地球の24時間というリズムに
合わせて生命活動をしている中で、睡眠こそ重要な時刻合わせと疲労回復、更には脳の回路に記憶された
情報の整理もしている働きがある訳ですから。その睡眠について「日経ヘルス」12月号で、大特集をして
いました。私は1週間のうち4から5日は3時間睡眠、残りは4.5か6時間の睡眠で十年以上も生活をし続けて
いますが、私のような短時間睡眠の勧めを提案していましたので驚きました。しかも、11人の著名人の
話を具体的に取り上げ、睡眠にまつわる大いなる誤解を解き、短時間睡眠への提案をしているのです。』
『睡眠の話は、メラトニンという松果体ホルモンが話題になった3年前に、多くの雑誌で取り上げられ、睡眠には
リズムがあることが認識されました。ただその時は、あくまでも話しだけで、具体的にどう実生活に活かすか、
その提案が無かったように思えます。しかし、その情報を元に、睡眠のリズムを意識して生活リズムをつかんだ
人も多かったのではないかと思います。既にその時、私はショートスリーパーでしたので、その生き方に自信を
高めたものです。今回の「日経ヘルス」の記事の中で、役に立つと思われるのは、ショートスリーパーに向く人と
、適さない人の識別方法が示唆されていることです。私もこの示唆には納得がいきました。』
『それでは、その特集記事の中から引用します。まず、ショートスリーパーに共通する特長として11項目挙げられて
います。「仕事がよくできる」、「興味の対象が広い」、「睡眠時間をもったいないと思う」、「目覚まし時計の必要が少ない」、「寝付きがいい」、「眠れない時には、寝ない」、「よく歩くが、運動はあまりしない」、「ストレスをためない」、「心身ともに健康」、「少食、少酒、(確認は出来ないが)少セックス」、「家族との時間を大切に思う」の11項目。私の考えでは
まだ条件はあるでしょうが、この11項目の内、半数以上、6項目該当すればショートスリーパーになれるのではないかと
思います。一方、ショートスリーパーを目指してはいけない人は、「現在ストレスにさらされている」、「心臓に持病を抱えている。特に不整脈の傾向がある」、「乗り物の運転、機器・システムの監視を職業にしている」、「成長期の子供、妊娠中の女性」が挙げられています。この点も、私は同感です。更に、ショートスリーパーになる手順だとか、盛りだくさんの
睡眠革命に関する記事が書いてあります。』
『美容と睡眠は切っても切り離せないテーマです。でも、多くの謝った常識もあるようです。あらゆる睡眠の実践者が
もっと自分の体験を話し、科学者が研究データを公開して、そこにディスカッションが行われれば、もっと役立つ実用
的な睡眠方法が見つかるのではないかと思います。』
『化粧品を最近はよく食事に例えます。その理由は、毎日使っても安全でなければならないこと、肌を健康に
保つこと、そして使い心地が良いことの3条件が、そのまま食事についても当てはまるからです。食事の場合
には、食中毒がなく、栄養があり、そして美味しいと言う3条件になります。食事の美味しいと言うことが、化粧品
では感触がよいということに当てはまるのです。』
『でも、3条件全てが同じ位置関係ではないのに気が付くかも知れません。安全と効用は絶対的に必要なもの
ですが、使い心地はそうとも言えません。しかし、使い心地こそ現在の化粧品科学の大いなる進歩だと私は
思っています。確かに化粧品の効用は、年々より肌を美しくする方向に前進させていますが、医薬品と比較す
るとやはり遅いのです。生命がかかり、膨大な研究開発費と研究者が関わっている競争の激しい業界とは違
うのです。しかし化粧品科学の進歩の中で安全性と感触については医薬品よりも進んでいると思っています。
今から約20年前に起こった化粧品訴訟問題をきっかけに大いに安全性は企業の枠を越えて研究され、実質
的に日本人の肌に合う化粧品を開発しています。同時に、肌なじみや後肌の感触や肌実感も盛んに研究が
行われました。中には伝統的な技術をヒントに開発されたものもありました。この感触に対する研究は、結果
として、毎日快適に使える化粧品、使わないと肌が何となく落ち着かない化粧品というような毎日のスキンケア
習慣を助けるものになってきました。ここに大いなる意味があると私は思っています。効果や見かけなどが斬新
でも、感触が伴わなくて商品寿命が短かった商品も数多くありました。食事についても同じことが言えますね。』
『このように最近思っていますので、私の取材記事をみると、やたらに感触についてのコメントが出てきてしまい
ます。化粧品独自の研究方向かもしれない化粧品の感触は、まだまだ未開拓の領域があるように思えます。
どのような感触の化粧品が出るか今後に期待が持てます。』
『現在でも、まだ「無添加化粧品」は肌に最も安全な化粧品として思われている方が多いと思います。そもそも
無添加化粧品とは何でしょう? そう、まだきちんとした定義がされていないのです。とすると現在「無添加」と
言っているのは、製造元である化粧品メーカーの独自の定義なのです。』
『とは言うものの、大ざっぱに捉えると、「表示指定成分」、「界面活性剤」、「(化学合成)色素」、「香料」、
「防腐剤」、「鉱物油」、或いは「動物性原料」、「化学合成の紫外線吸収剤」などの成分を含まないものが
「無添加」の対象となっているようです。なぜ「無添加」にこだわるか、それはこれらの添加物が皮膚刺激性、
または様々な毒性を持つ成分であると思われているからです。その認識に基づいて「無添加化粧品」が
低刺激で安全であると主張しているのです。』
『ところで、化粧品科学を研究したことのある人なら必ずわかることがあります。先ほどの「無添加」の対象と
なっている化粧品原料は性質も使用方法も使用量も様々で、非常に広範囲の成分です。もちろん使い方を
誤ると確かに刺激性を持つものもありますが、化粧品原料として使う場合には、十分にテストをして安全性を
確保してあります。肌を美しく保つために使うのですから当然です。つまり、現在の化粧品に使われている
先ほどの原料は、実際に使用する段階では多くは安全なのです。』
『それではなぜ危険な成分として思われているのでしょう。例えば「表示指定成分」は、薬事法でアレルギーを
起こす可能性が指摘されている成分の表示義務ですが、現行の使用法ではアレルギーを起こすことは非常に
少ないけど、今までにアレルギーを起こしていたり、不幸にしてアレルギーになってしまったとき、使用を避ける
ことが出来るようにするための表示義務なのです。「界面活性剤」も石鹸や食器洗いの洗剤と同じものである
と断定して刺激成分であると思われているからです。化粧品に使われる界面活性剤の種類の多さと、その性質を
正しく理解すれば、そのような誤解はすぐに解けるのですが現在のところ、よほど向学心が無い限り正確な
情報を得ることは難しいでしょう。学生向けの新書などで出ている本を読めば理解は出来ると思います。(もし
希望があればメールをいただければ推薦本を紹介します)』
『ここで重要なことは「無添加化粧品」を販売しているメーカーの姿勢です。「無添加」だから絶対に安全である
とか、化学物質を添加している化粧品を全て危険であるとか断言している姿勢は、どう考えても香粧品科学的に
偏っていると見てよいでしょう。最後に判断するのは選択権のある消費者です。私のホームページにある情報も
含めて、全ての情報を客観的に見て出来る限り正しい情報を選択して下さい。』
『このテーマは、「フィガロジャポン 3月5日号」に取材された内容を元に取り上げました。とは言っても、
いつも基本的な化粧品の機能として重要であると、様々取材の時にも言い続けていることですが、この
記事は、それを良くまとめた形で紹介されましたので取り上げます。』
−−−−−− 211ページの 引用 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「コスメの肌触りも、肌へのご馳走。」
心地よいスキンケア・タイムのためには、コスメの肌触りも見逃せない。このテクスチャー
へのこだわりを、アルビオンのビューティ・サイエンティスト、岡部美代治さんに聞いてみた。
「日本人は、化粧品のテクスチャーに関して敏感なんです。いくら効果があってもつけて不快
では駄目。心地よくて、効果を実感させるもので無くては」
水分補給効果に優れたものならば、ゼリーのようにみずみずしく。スリミングならばキュッと
引き締まる感じ。手に取ったとき、使用中、後と翌朝の肌まで考慮して、決定されるそう。
「食べ物に例えれば、成分は栄養でテクスチャーは味。成分と同じくらい大切なものなんです
よ。効果を出す=使い続けるためには、おいしくないと」 そういえば、化粧品のテクスチャー
は、お菓子に似たものが多い。おいしい化粧品は、肌のためのおやつだ。
−−−−−− 引用 終わり −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
『化粧品は医薬品ではなく、毎日使って、肌を美しく保ち、結果としてエイジングを遅らせ、若さを
保ち続ける日常品だと思います。日常品だけに、毎日の習慣として、楽しく続けられなければ
意味がありません。その為に、感触には気を使います。効果・安全性・感触の3要素は、決して
欠けてはいけない、化粧品の必須要素だと思っています。』
『それだけに、化粧品に使われる原料は、実験結果と体験により、沢山の中から選ばれ処方されて
いるのです。表示指定成分だからと言っても、必要だから充分に安全性を検討された上で使われて
いるのです。この研究を怠っては化粧品の未来はないでしょう。私もかつてはその研究をしていました。
その時でさえ、数多くの課題がありました。現在も引き続き研究がなされています。その結果生まれる
「美味しく、肌によい効果を与え、安全性の高い」化粧品を期待し続けましょう。』
『今月、花王から1000人の顔をコンピューター処理をして各年代ごとの平均顔をつくり
、加齢の状態を研究し、店頭でのカウンセリングに使うことが発表されました。顔学会と
いう団体をご存じでしょうか?顔学会の設立にたずさわり現在も精力的な研究をして、
たくさんの発表をされている東京大学工学部電子情報工学科 の原島博先生が平均顔の
研究をされていました。その研究の一部に平均顔を作るプログラムも開発されていて、
現在公開されていますので、プログラムを入手することも可能です。』
東京大学工学部電子情報工学科 の原島博先生のHP
『いずれにしても、平均顔のように現在の顔をシミュレーションして、加齢変化や、スリミング、
キメ、或いはシミやソバカスを取った後の顔を知るには必要な画像加工技術だと思っています。
今後、このニュースをきっかけに様々な応用方法についての熱い議論や競争が行われる
ことを期待したいと思います。もちろん、私もその中に入って研究やカウンセリングのソフト
開発を完成するつもりです。』
『昨年から白い肌に関するブームが続き、白肌の極端なシンボルとして「鈴木そのこ」が登場し
てしまいました。でも、肌が白ければそれで理想的な美しい肌という訳ではありません。そこに
必要なのは「透明感」です。生き生きとした素肌を感じさせる透明感です。白壁のような白肌では
生きている人間の肌とは思えません。仮面か人形といった感じです。「透明感」こそ白い肌の
必要十分条件だと思います。』
『その「透明感」ですが、私の美容科学研究の中で最も重要なテーマでした。今でこそ、多くの
化粧品メーカーが「透明感」を定義していますが、今から10年前には、ほとんどありませんで
した。その時に、「透明感」に4つの条件があることに気づき、そのような肌を作るための美容理論
を作り上げました。4つの条件をわかりやすく言うと、「潤いがある」、「キメが整っている」、「メラニン
色素が適度でムラがない」、「血行がいい」となります。白い肌に関しては、メラニン色素が少ない
ことですが、きれいに見えるためには、残りの3つの条件を満たしていないと駄目です。美白の
化粧品は、これらの4つの条件を、メラニン色素対策中心に考えられて作られているのです。』
『この項目の終わりに、美しい透明感のある白い肌を他のものに例えてみましょう。よく言われる
のが、「もち肌」です。つきたての餅にうっすらとカタクリ粉がまぶされている状態です。また、陶磁器の
透明度のある白さやロウソクの白さなども良く例えられます。とは言っても、ロウソクのように白いとは
血色が無く、死体の肌の例えに使えますが、この場合は血色が無いからですね。有名な、イギリスの
ロンドンにあるマダム・タッソーの蝋人形館の人形には本当にハッと驚くような生き生きとしていて
うっかり声をかけそうになります。その人形の肌が透明感のある美しい肌であることは、言うまでも
ありません。』
『大正製薬という医薬品メーカーから、やっと「リアップ」という育毛剤が発売されました。この商品は
育毛剤として久しぶりの医薬品です。多くの育毛剤は医薬部外品で、簡単に言えば毛の生えることもあるけど、
実際に期待できる効果は脱毛の防止が現状でした。円形脱毛症は自然治癒もあり得ますので、
効果を早めることはありましたとしても、壮年性脱毛や若禿げに満足行く効果が得られた人を私は
身近に見ていませんでした。今度発売された「リアップ」という医薬品は果たしてどうでしょうか。期待と
少しの不安も抱きながら、市場の反響を見ている毎日です。』
『そもそも私が化粧品会社の研究所に入りたかったのは、自分のための毛はえ薬を作りたかった
のが動機です。遺伝的に、髪質的に、そして額が広いという現状から、もし自分の手で自分の為に
禿げることが予防できたら良いなと思っていたのです。もちろん、それで大ヒット商品となればいいな
と夢見ていたのです。当時は医薬品として第一製薬の「カロヤン」があった他は、すべて医薬部外品で、
医薬品メーカー、化粧品メーカーから沢山の商品が競争していました。当然、研究所ではそれらの商品に
ついて成分から公表されている臨床試験のデータなどを調査して、動物実験、自分を含めて使用試験など
繰り返していました。そして、その結果判ったことは、「毛」といっても頭から眉毛、鼻毛、様々な毛は
形状も、伸びる長さも、生えている寿命も全て違うし、簡単には解明できない事でした。また、動物で
毛が生える効果を見ても、そのまま人には当てはまらなさそうだという推論でした。ただ一つ、毛の
組織構造は全て共通しているので、そこに何らかの鍵が隠されていそうだということが気になっていました。』
『研究所時代の当時、結局、頭皮を毎日シャンプーしてキレイにし、スカッとする育毛用ローションをつけて
しっかりとマッサージをすることが、取りあえず何もしないより良いだろうと考えて、それ以来現在も続けて
いるのです。その為の商品も、商品開発をしていた時期に開発して発売しました。もちろん今もそれが自分に
一番良いと信じて使っています。』
『さて、話題の商品「リアップ」ですが、主成分はUSAのアップジョン社が開発していた血管拡張剤「ミノ
キシジル」が副作用として体毛が濃くなることから着目されたものです。USAでは育毛剤として医薬品の
許可を取り約7年前に大いに話題になりました。商品名は「ロゲイン」といいます。そして日本では大正製薬
が製品化の許可を取り今年になって発売できたのです。現在、容器の製造が間に合わなくて、店頭では
予約待ちでいっぱいです。今年650万本以上の売り上げが見込まれています。いろいろな意味で、
育毛剤が再びホットな市場になるきっかけとなって今後の展開が楽しみになっています。』
『肌が調子よくないとき、よく生活リズムの乱れが原因かも知れないとアドバイスすることがあります。
生活リズムというと基本は一日の、朝起きてから夜の睡眠までのくり返しですが、そのリズムの乱れの
基準は何でしょう? 意外と、このことには触れていませんでした。毎日の生活リズムはピッタリと
何時も通りとはなかなかいきません。でも、朝起きる時間、食事、寝る時間に着目すると、リズムの
感覚が実感できます。この時間がだいたい決まっている場合は生活リズムは乱れていないと
言えます。ところで、だいたい決まっているとは、曖昧ですね。そんなに厳密には決められませんが、
ほぼプラスマイナス30分位と考えればいいでしょう。』
『先ほどの、朝起きる時間、食事、寝る時間は毎日の行動の基点として判りやすいので着目したので
すが、それ以外にも重要な意味があります。私たち体のリズムを取っている自律神経系の働きが大きく
変化するときでもあるのです。言いかえると、生体時計の時刻合わせをしているようなものかも知れません。
そう考えると、かなり重要そうです。』
『自律神経系の働きの一つに、健康で美しい肌をつくり、維持していくためのホルモンの分泌にも大きく
関わっています。どうやら、生活リズムの乱れが自律神経系の働きを狂わせて、その影響でホルモンの
バランスも崩れ、その結果肌の調子に現れるという因果関係が成り立ちそうです。まだ、明解な説明の
つく研究がまとまっていませんが、化粧品の効用も、この因果関係にかなり関わっていると考えられます。』
『心と肌。いつも化粧品のテーマとして掲げられるのですが、年々、このテーマの重要性が高まっている
のは事実です。そのテーマで商品も開発されています。でも、その大元の一つに、生活リズムがあることは
忘れないで下さいね。そう、寝る時間から起きる時間は睡眠時間と言うことです。質のよい睡眠は、やはり
生活リズムの大きな要素なのです。この件は「話題の6 睡眠革命」で話しましたね。』
『ちょうど今、上野の国立科学博物館で「大顔展」を開いています。7月31日から10月17日まで開いています。
以前から顔学会に強い関心があり、南伸坊さんや原島進先生の著書を良く読んでいました。化粧品の
商品開発をしているうえで、どうしても仕事上関わりがある研究分野なので、何時か私も顔について何か
論じることが出来れば良いなと、日頃からデータ集めや研究メモを残しています。そう言う中、顔学会が
主催している「大顔展」は、まさに今までの顔学の総決算と思い、小学3年生の娘と夏休みに出かけて
きました。』
『内容の多くは今まで私の読んでいた本の中にある物でしたが、展示物やシミュレーションを行った立体的な
モデルは、よく理解を助けるほど良くできていました。当然、年齢と顔とか、平均顔による研究は、なるほどと
再確認したわけです。その結果、現在私の研究テーマの一つ「エイジングシミュレーション」の技法や理論化に
大いに役立ちそうです。』
『意外なところでは、顔の見える風景という写真展示が興味を引きました。私も、マクロレンズで花や昆虫などを
撮るとき、また、ドアや木の木目などから顔を感じることが多く、写真をパチパチ撮っていましたが、同じ視点立つ
人もたくさんいることが判りホッとしました。顔を感じて、勝手に自分の心境を反映させて擬人化してしまう人の
心理学背景をあれこれ考えていました。このことも、今後、私のHPで公開している写真館で取り上げてみようと
思いました。』
『その他会場では、パソコンを使った顔のシミュレーション体験や、顔の造形分析から性格や印象の分析を
やっていました。娘も熱中していました。そして約1時間半で見終わりました。やはり、何と言っても大いに役立ち
そうなお土産は、会場で販売していた「大顔展」のパンフレットでした。じっくり読んで見れば、今までの顔に対する
研究結果が、判りやすく説明してあります。私は特にその中で、補章というおまけのような部分が気に入っています。
「顔を知るルール」、「男らしい顔、女らしい顔、その決め手は?」、「美の文化比較、魅力的な顔の美意識」など
各2〜3ページの構成ですが、とても今までの考えをまとめる上で良い参考となりました。』
『と言うわけですが、顔のみならず美容に関心がある人なら、必ず幾つかのヒントが見つかるのではないかと思って
います。そこで「大顔展」はここをクリックすると顔学会にリンクしますので、
関心のある人はまずサイトに行って、
詳しい内容を見て下さい。それから、もし「大顔展」を見ての感想がありましたら、私にもぜひお聞かせ下さい。』
『話題14でとりあげた顔学会主催の「大顔展」は、実際にたくさんのヒントを提供してくれました。特に顔の年齢に
よる変化、つまりエイジングの様子をコンピュータによりシミュレーションすることに関してです。この数年間、顔に
ついて思っていることは、エイジングの変化はかなり遺伝の影響を受けているのではないかと言うことです。確かに
各年齢の平均顔でエイジングの様子を見ることが出来るのですが、何かピンと来ない面もあります。それは、エイジ
ングの変化の方向性がある程度判ることは良いのですが、いざ自分の顔に置き換えてみると年と共に変化する
部位が平均的ではないのではないかという事実です。言いかえれば平均的でなく個性的に変化しているのです。このことは
話題10でも取り上げましたので、平均顔についてはそこも参照して下さい。』
『そこで、その個性的な変化が、きっと遺伝の要素ではないかと仮説を立ててコンピューターによりエイジングシ
ミュレーションを考え始めたのです。私の連載「アール」の「肌の科学」でも、親の顔を見ればある程度の
エイジングの予想が立てられるのではないかと述べました。そこで自分によく似ている両親から顔の要素を取りだして
モーフィングという画像の混合技術を使えば将来の自分の顔を予測することが出来そうだと考えました。これを
最初に公表したのが「コスモポリタン(日本版)7月号」のエイジング特集でした。実際に読者モデルの方をシミュレ
ーションしたのですが、モデルの方が納得いくと言われたのでシミュレーションの方向性は合っているのだと実感
したのでした。』
『それ以後も、エイジングシミュレーションを何例も行っていると、しだいに法則性が見えてきているところです。ちょうど
「クレア 10月号」に、ポーラ研究所の平均顔によるエイジングシミュレーションも取り上げられています。おそらく、
各化粧品会社の研究所では盛んにエイジングシミュレーションを行い、何とかスキンケアのアドバイスに使えないか
検討されていることと思います。このようなテーマはお互いに刺激し合うことが技術も応用ソフトも開発が進みます。
私も、今後エイジングシミュレーションはいろんな方法で公開して行くつもりです。平均顔での研究も大いに参考に
なっています。それらの結果をふまえながら、個人の個性を重要視し、形態及び形質の遺伝要素を考えた
エイジングシミュレーションの開発と応用を、私は更に進めていきます。この件でのご意見や問い合わせは大いに歓迎します
のでメールにてお寄せ下さい。』
『訂正点は、海水の呼称をメディアで広く使われている「海洋深層水」としたこと、一番最初にニュースに
なったのは富山湾の海洋深層水であったこと、海洋深層水の化粧品への応用は塩分を除いた水や海水
そのものを配合する様々なケースがあることを考慮して訂正いたしました。』
『今年は海洋深層水(深層海水)を応用した化粧品がかなり話題になりました。昨年の11月に
パイウォーターを中心に水について話しましたが、今年、再び水について話してみます。その理由は、
水に対する正確な認識がされないままブームになってしまうことに対して、私は大いに問題として感じている
からです。』
『まず今年一番のヒット、海洋深層水ですが、一昨年でしたか、新聞で海洋深層水を使ってアトピーを治した
というニュースが流れました。(後日、正確に載せます)医療機関による臨床でしたので、信頼性は
高いと思いましたが、同時に化粧品にもすぐ応用された商品が登場すると予測できました。ニュースに
なったのは富山湾の海洋深層水でしたが、化粧品への応用は高知県室戸岬の海洋深層水でした。
その他、沖縄や紀伊半島の伊勢にも海洋深層水のプロジェクトがあるので今後、何らかの話題として
ニュースに取り上げられるかも知れません。』
『海洋深層水は、海藻や魚の養殖には栄養価的にも意味があるでしょうが、肌に対しては私はまだ
通常の化粧水と比較してみても、その有効性が理解できません。海洋深層水に含まれるミネラルを
目的とするならば、死海の塩、海水抽出物、にがりなど今までにも化粧品に配合されているものも
あります。また、塩分以外の成分に有効性があるとするならば、その成分の特定と、やはり、化粧品に
用いられている保湿成分などとの比較データが欲しいところです。私の推論としては、今回のヒットは
限定された場所でしか取れない、しかも深海の水という神秘性、かつてアトピーに良いと言われた話題性が
先行したイメージの良いことが大きな要因だと思います。確かに40億年前、生命の誕生は原始の海で起こり
、私たち動物の体液は海水に似ているとも言われています。海水には表層水、深層水にかかわらず、
何らかの有効性がある可能性は充分考えられます。世界各地で海洋療法も研究され、そのような施設も
あります。今後、科学的な肌への有効性データが証明されたとき、その事実に基づいた化粧品か美容法が
誕生する余地は、充分にあると思います。』
『もう一つは超純水です。これは水が微量ながら沢山の有害成分を含んでいることに対して、とことん
純度を高めたという事が売りですが、かなり論理的な矛盾が見えます。その水を使って、各化粧品原料を
配合するなら、それら全てに超純度を求めなければなりません。でも、それについて述べているものは
無いように見受けます。それから、容器の洗浄も超クリーンに、ひょっとして使うときのコットンや指先まで
超クリーンにする必要があるのではないでしょうか?超純水については、現状の応用方法に意味性は無い
ように思えます。』
『水は生命にとって重要な分子です。それがわかっているだけに、不思議な能力をあたかも付けたような
水が歴史や神話を見てもたくさん登場しています。このように夢を感じる水ですが、正しい水の知識を
つけて、化粧品の夢の部分も多少は考慮して、法外でないとしたら楽しんで使うことも良いのかも知れません。
案外、これをウォーターヒーリングと言うのかも知れませんね。』
『以前からも言われていましたが、今年の冬は、若い女性の乾燥肌が話題になりそうです。若い女性の肌は
脂っぽいと、ズーッと思われていましたが、実際のところ、意外に乾燥肌は多いのです。年齢的に言うと20歳
前後の肌タイプは乾燥気味で、特に冬になるとその傾向は強まります。このことは、各化粧品メーカの調査でも
同じ様な結果となっています。もちろん、オイリードライスキンとか脂性乾燥肌などの混合肌タイプについても
言えるようで、冬場はドライスキンの特徴が強く出て、目や口の周りの乾燥が気になる方が増えています。』
『その原因は、よく言われているのが、生活環境の近代化に伴う悪影響、栄養が偏りがちな食生活の変化、果てには
環境ホルモンの影響などと取り上げられています。今ようやく科学的な研究が始まった環境ホルモンは除いて
考えてみると、確かに、そうなのかなと思わざるをえませんが、ちょっと気になることがあります。それは、スキンケアの
認識です。特に、若い女性に多いのは、油分を含む化粧品への偏見が気になります。べたついて、脂光りや、
化粧くずれの元になるとか、ニキビや吹き出物の原因になるとか。もちろん、不必要なほど油分を付ければ
そのようになりますが、と言って、全く不要な訳では無いのです。特に冬場は、洗顔後や入浴後の肌が、自前の皮脂を
分泌して乾燥しないように防御態勢をとるまで時間がかかります。遅い人では3時間もかかることがあります。
そのような状態では様々な環境からの肌への刺激成分が侵入しやすいのです。水々しく思える肌も、適切な
バランスの皮脂成分が角質層に無ければ乾燥しやすいのです。そこで肌の乾燥からひき起こされる肌トラブルの
悪い循環を断つことが重要で、そこが不完全な場合が多くて若い女性の乾燥肌が多いのでは無いかと思われ
ます。』
『ここは、もう一度正しいスキンケアの知識をしっかりと持っていただいて、肌に合う化粧品を選ぶことが、最も
重要だと思います。面倒だと思わず、体温チェックのように、肌の油分のチェックをしてみて下さい。丁度、冬も
本格化する前に肌点検を。アイテムとしては、乳液かクリーム、或いは油分を含む美容液でしっかりと翌朝まで
柔らかさが残るタイプの商品に出会えたら最高ですね。』
『いよいよ2000年もカウントダウンに入りました。振り返ると、世紀末の1999年は美容に関しても大きな
転換期だったような気がします。化粧品を本質的に捉えると、単なる技術開発だけでは説明できないものも
ありました。化粧品の感触はその代表的な特性でしょう。技術で有る程度は解決できるのですが、それだけ
ではなく、やはり現在の技術にプラス、「感」の様なものも必要のようです。求める感触をどこまで技術が
それを実現できるか、開発のために21世紀は更に進んだ能力を要求されるでしょう。』
『一方では、相変わらず、欧米の流行がそのまま日本になだれ込みました。かつては、「AHA」、今年は
ケミカルピーリングの話題に、「レチノール」です。そもそも、レチノールのブームの原点は、十数年前の
「レチンAクリーム」から始まりました。ニキビ用の外用薬であった「ビタミンA酸(レチノイック アシッド)を
シワの治療に試したところ、劇的な効果が得られたというニュースでした。その後、その治療はUSAでも
議論を呼び、未だにシワの治療に有効なのか、副作用が強すぎて問題が多いのか決着は付いていない
ようです。ただ私が思う疑問は、そのような現状を無視するかのように、「ビタミンA類」がいつの間にか「ビタ
ミンA酸」をイメージさせて、シワの特効薬的な訴求がなされて化粧品のキャンペーンが始まっている
ことです。「レチノール」を最初に大々的に化粧品に応用したのは資生堂の「リンクルリフト」というシワ用の
エッセンスでしたが、その働きは、あくまでも角質代謝に関してのみ表記していたと記憶しています。
実験的にも、理論的にもコラーゲンの生成に「ビタミンA類」よりも効果的な成分があるにも
関わらず、一斉に各社「レチノール」配合と言い始めたことです。これがブームの底にある要因だと私は
考えています。(今後、研究者達の研究成果により間違っていたということが明確になった場合は、きちん
と訂正します。)21世紀は、安直な美容の流行が輸入されないようにしたいものです。』
『私が予測している、21世紀の美容研究開発のテーマは、トータル美容です。化粧品はその一部であり、
精神要素、身体的要素、時間を考えた生物リズム、遺伝子レベルでの研究などが統一して考えられる
ようになるべきだと思っているからです。古くから言われていた「肌は健康状態を表す」とか「肌は心の状態
を表す」などの言葉をかみしめながら、複雑系の科学理論を取り入れたりして、解りやすく説明でき、
商品と美容方法が一体化する時代を期待します。』
『2000年を迎えての、最初の「美容の話し」です。テーマは、ここ数年来、私が考え続けている「素顔」に
ついてです。「素顔」について考え続けている理由は、私が「化粧(メイクアップ)を落とした顔」を「素顔」とは
思っていないし、その思いが年々強くなっているからです。もちろん、私が化粧品会社に勤めているから
当然だろうと思われるでしょうが、そうは単純ではないのです。会社に就職したときは、文句無く、「素顔」は
「化粧をしていない顔」でした。そのような「素顔」を美しくする、そして「素顔」に化粧をすることで、一層
美しくなれると思っていました。ところが、研究部門から商品開発部門に移り、美容に関係する様々な人々と
会っていると、しだいにその思いが揺らいできて、現在、「素顔」は単に「化粧をしていない顔」ではないように思って
いるのです。』
『論理的に言えば、間違いなく「素顔」は「化粧をしていない顔」に分があるでしょうが、現実的には違うのでは
無いかと思っています。結論から言いますと、私の考えでは、「素顔」とは、普段その人が他人に安心して会える
時の顔では無いかと思っているのです。だから、場合によっては化粧をしていない顔であったり、化粧をしてる
顔であったりというように捉える方がいいと言うことです。昨年以来とりあえず、そのような顔を「社会的素顔」と
したら説明しやすいかも知れないと思い、使い始めました。』
『そう考えてみると、「社会的素顔」には、単に化粧だけでなく、ヘアースタイル、そして「表情」と言う要素が
とても大事ではないかと思い当たりました。「表情」によって、その人の印象がずいぶん変わることは、きっと
たくさん経験されていると思いますし、私もよく経験しました。恋をすると美しくなるというのは良く聞く話ですが、
きっと「表情」の影響も大きいのではないかと思います。このあたりに、脳に働く化粧品とか、リラクゼーション
とかの心理的な研究に期待をしたくなる土台があると考えています。今までのスキンケアやメイクアップ化粧品の
効果に加え、明確に表情を変えるような効果の化粧品は、「社会的素顔」を認めて研究することにより開発される
のではないかと思うのです。とは言え、私自身まだ完全に納得しているわけではありません、もっと「素顔」に
ついて考えてみることも重要ではないかと思っています。』
『昨年は「角質メラニン色素を除去して肌を白くする」という誤った美容知識に対して、徹底的な批判をして
きました。それは、消費者にとってわかりやすい美容理論は受け入れやすく、そのような訴求をしている
商品を思わず試してみたくなるはずです。そのような美容理論の中に、うっかり鵜呑みにすると、肌をきれいに
するどころか、逆にトラブルを起こしかねないものがあるからです。現在、女性誌に掲載されている化粧品の
CMをみると、科学的に整合性をとりうまく表現しているキャッチコピーと、科学的に疑わしいが、とても表現
が魅力的なキャッチコピーの両極端なケースを見ることがあります。情報化社会が進んでいる現在、昔ほど
CMの表現を丸飲みで信じる人は少なくなりましたが、やはり巧みな表現には気になるものもあります。』
『私の開いているHP「ビューティサイエンスの庭」は、少しでも信頼できる情報をわかりやすく発信して、 様々な美容知識の科学的な判断力を養うのに役立つように願っているものです。幸いなことに、最近は 女性誌の美容記事にも、化粧品研究者、皮膚科医師、精神科医師の方々が多く登場するようになりました。 そこで言われていることを読んでいけば、科学的な判断力が付いていくのではないかと思います。もちろん、 現在も研究の真っ最中で結論が付きにくいテーマも山とあります。その為に、正反対の意見も交わされて いますが、これはあって当然のことです。このような論争を得て、研究が進んで、やがて正しい結論へと導き だされるのが科学の進歩なのですから。』
『ただし、問題になるのは、解りやすい理論で、その為に肌の健康を損なうような事態が起こる場合なのです。
その代表例が、「行き過ぎたAHAブーム」と「角質メラニン除去の美白商品」だと、私は思っているのです。
この理論に従って、思いっきりスキンケアに励んでしまうと、正常な角質細胞を取りすぎて、肌本来の保護機能が
働かなくなります。その為に肌にトラブルが発生してしてしまう可能性が大きくなってしまうのです。また、今までも
常識のように思われていた美容知識の中にも問題の多い間違った知識がかなり存在しています。「ビューティ
サイエンスの庭」にある、「素朴な疑問」と「美容の話し」は、そのような間違っている美容知識に対して、正しい
認識を得てもらうために書いているつもりです。もちろん、現在も決着の付いていないテーマもありますので、
その場合は、そのように書いています。また、私のコメントに対しての賛同や批判も受けていくつもりです。
私が間違っているいる場合は訂正していきます。この様な態度をとって意見を言っていることが信頼を生
むのではないかと信じているわけです。』
『メールなどで反響のあった「21世紀に賭ける美容テーマ」(1999年12月6日アップ)のフォローをします。 2000年の今年は21世紀をひかえて、あらゆる分野で切り替えの時期といえるのではないかと思います。 時間的にはただ単に連続した1年に過ぎないのですが、歴史の流れを意識する人間にとっては、何かに つけて節目とする傾向があるようです。美容分野に於いても、そろそろ多くの関係している学問を統合して 考える、「トータル美容」を本気で考えてもいい時期ではないかと思ったのです。このコラムを読んで、 この考え方に賛同された、各分野の人から感想や相談のメールがありました。そこで、もう一度私の考えて いることを整理してみようと思います。』
『美容を考えるときに、単に体の表面にある皮膚を中心に容貌を美しく整えるだけではなく、体の内面も 重要になります。具体的には体の健康状態や精神状態などです。だからトータル美容を考えるには、 皮膚科学や皮膚科領域だけではなく、あらゆる医学の領域や心理学、栄養学など、数多くの学問が 必要となってくるわけです。また、広い意味で生物学や物理学などの自然科学の学問も必要でしょう。 その他社会科学も含めて、まだ多くの領域の学問も関係があるのだと思います。』
『私の言いたいことは、トータル美容を考えたとき、それぞれの専門分野から美容についても関心を持って
もらい、そこからの知恵を出し合って、討論をすることが重要な意味を持つような気がします。そのような討論の
中から、きっと統合できる「トータル美容」の科学的な理論体系が生まれると思っています。もちろん、それぞれの
専門分野のエキスパートであればあるほど、有意義な知恵が出ると思いますので、もし、美容に関心がある方で、
知恵(アイデア、知見など)がありましたらメールにて私に教えていただければ幸いです。知恵が集まるようで
したら、掲示板などで公開しても良いかと思っています。2000年はこのような準備の年であると思っています。』
『私は化粧品業界に入って以来ずっと「美人」について考えています。そして多くの方の「美人論」も読んで きました。でも、一番考える上で参考になっているのは、女性誌からの取材を受けるときに、多くの美容 ジャーナリストの方々と、取材の合間に美人ついてお互いの考えを話すときです。様々な現実の美人論がその 中で交わされているのです。本音有り、建前有りです。』
『そして、どうも画一的な美人観という物は時代が進むほど、言いかえれば、文化が多彩になればなるほど 失われて来るのではないかと言うことです。黄金比立は、美の理論として統一的なものでしたが、それ以外 にも、もっと魅力的で美しいものも存在しています。美術品や風景、花などの自然物を見ても、整いすぎる のは、美しくても、感動や、魅力に欠ける場合が多いのではないでしょうか?何かちょっとバランスが崩れた ところに感動や魅力を見つけることが多いように思います。正に、魅力的な、心に焼き付くような美人とは そのようなちょっとしたアンバランスを内在しているのかも知れません。と言うような美人論についての仮説を 現在、私は考え続けているのです。』
『そしてもうひとつ思うことがあるのですが、それは表情です。美人と言えば、やはりその大部分は顔に関係
してます。ところが、その顔は、決して一定の形を保っているのではなく、何時も動いているのです。その一瞬を
捉えた写真は、時々というか、往々にして本人の印象と違うことがあります。それはきっと、何時も印象に残って
いる表情と違う写真の時に感じているのではないかと思います。でも、きっと見る人によっても印象に残っている
表情が違うのかも知れません。まだ、結論にはほど遠いのですが、現在の所、表情を抜きにして美人論を
語れないと思っているのです。』
『もうずっと以前から言われている「心の時代」ですが、心の及ぼす美容への影響は大きいものがあります。 アロマテラピーをはじめとする、様々なヒーリング効果を与える手法は、化粧品やそれを用いた美容法に 積極的に取り入れられてきています。でも、心の面から言えば、人の手や会話、そして気配りというような 人による効果が最も有効に働いているのではないでしょうか。最新の器機による効果的な美容法も、人に よるそれらの効果がなければ、直ちに効果も止まってしまい、逆にストレスとなって悪影響も出てくるのでは ないかと思っています。このところ、美容機器の購入に関する相談のメールが良く来ますが、はっきり言って、 自分で高価な器機を購入しても、人による働きかけが無い場合は、期待するほどの効果が得られにくいと 思います。』
『そのような例を挙げてみると数多くあります。ちょっと、健康面でも同じ事が言えそうなので、そこまで広げて みますと、超音波美顔器(気泡による超音波効果?)、ルームランナー、健康ぶら下がり器、卓上型自宅エステ 器機(35万円程度する物もありました)、様々な低周波刺激によるマッサージ器などありました。しかし、2年 以上も使い続けているケースは非常に少ないように聞いています。いずれも、自分自身で使う場合の、心の 働きを活かすようなソフトウエアが付いていなくて、ただ器械の効果を訴求するに止まっていたからでは無いかと 考えられます。もちろん、今からでも、心の働きが活かせるソフトウエアを提案すれば、ホコリをかぶっている、 それらの休眠機器類も復活する可能性があるはずです。』
『でも、やはり確実なのは、信頼できる人の手によるケアではないでしょうか。安定した顧客を持っているエステ
サロンや(美容サービスやカウンセリングをしている)化粧品専門店には、そのような人の手による心への効用を
持っているところが多いのです。私が良く知っているエステサロン経営者やエステティシャン、化粧品専門店の
経営者や販売者、百貨店の化粧品売場の美容部員の方々の共通点が皆そうなのです。現在、私は、そのような
人の手による心への働きかけを、何とか分かりやすく整理して、伝えることが出来るようにしようとしています。
そのことを助けていただいている一人が、「kokoroのオアシス」という連載を始めた、あやきちさん、こと谷口さん
なのです。あやきちさんの今後の連載を期待しましょう。』
『さあ、春となれば各女性誌は美白特集が目白押しです。おそらく、一つ一つそれらの情報を読むと、 結局どうすれば一番良いのか迷ってしまうのではないでしょうか。情報が山のようにあって、書いてある 内容もバラバラであったら、確かにそうです。しかし、冷静に考えてみると、単に情報が多い為に、その 量に圧倒されていることが問題ではないでしょうか。そこで、今回は沢山の美容情報を冷静に読み、 自分をきれいにしてくれる化粧品や美容サービスを得るための参考になればと思い取りあげてみます。 又、対象とする美容情報とは、女性誌の美容特集記事について、ちょっと考えてみました。』
『まず基本的には、幾つかの美容情報の共通部分を探してみることです。同じ様な主張がしてあれば、ほぼ現状での 正しい情報だと見て良いでしょう。それに反して、迷いの根元となっているのは、逆の説もある場合です。 このときに何を信じて良いのか解らなくなります。その場合、まず記事の中で述べられている重要な事柄について、 そのことを主張をしている人が明記されているかどうかです。「 」でコメントがくくってあれば、間違いなく 当人に取材して書いてあるので主張として読んで良いでしょう。そして、次に、そのコメントをしている人の 背景をみて、コメントの内容が専門領域とあっているかどうかをみます。更に、今後、そのコメントをして いる人が、他誌の美容情報にも同じ様な主張をしているかどうかを見つめながら読んでいくことです。 そうすれば、次第に信頼できる情報と、信頼すべきでない情報が見分けられるようになるはずです。 私も、取材された記事の校正の時、その点を注意して行っています。ちょっと、初めは難しいかも知れま せんが、この様に情報を読んでいくことは、他のジャンルの情報についても同様に言えることです。 美容に関して最近の例を取りあげてみるなら、やはり「角質メラニン色素を取って美白する」という考え方と 商品です。もう散々このコーナーでも取りあげましたね。』
『とは言っても、まだこの解説では不十分ですね。又改めて考えてみますが、少なくとも上記のように情報を
見つめることは意味があると思います。私の私見としては、情報は規制される物ではなく、むしろ読んで受け
取る側が、情報の選択をするべきだと思っています。情報の正誤や価値を読みとる能力をしっかりと付けれ
ば、単なる誤報や意図的なウソ情報に惑わされなくなるのではないでしょうか。怪しい情報や商品は、この世
から消すのではなく、消費者がしっかりと見極める力さえ付けておけば、自然に淘汰されて隅っこに引っ込
んでしまうと思うのです。』
『私がビューティサイエンティストと名乗って、もう12年になります。その発端は、女性誌の取材を受けて いるときに、自分の立場を明確にしておけば、記事を書いてもらうときに自分の主張もしっかりと書き留めて もらえるのではないかと思ったからでした。そうすることで、記事を読んでいただいたときに、きっと商品に 対して、正確な理解をしていただき、同時に一生懸命つくった商品を好きになってもらえるのではないかと 期待したからでした。その為に、今まで自分の体験や同じ研究仲間や開発仲間から得た情報を体系化して 整理し始めたのが12年前でした。そして、何時かは、美容科学の専門家として認められるといいなと 思って続けてきたのです。』
『そもそも、ビューティサイエンスという言葉は、美容科学をそのまま英語に訳しただけで、あたりを見回すと 資生堂の「ビューティサイエンス研究所」というのもあり、用語として一般的かなと思い、思い切ってビューティ サイエンティストと勝手に肩書きを付けたのが始まりでした。そうしていれば、ひょっとして、同業者の中から、 同じ思いの人も出てきて、雑誌の誌面で共演することもあり得るのではないかと期待していました。そうこうして いるうちに、花王の河合さんや矢田さん、P&Gの吉井さん、オルラーヌの鶴岡さん、フリーの大高さんと、呼び方は 違うのですが、お互いに美容の専門家として十分に通用する方々が、いつの間にか雑誌などに頻繁に 登場するようになってきたのです。鶴岡さんとは、ある雑誌での対談を通じて、とっても美容に関する思いが 共通していることがわかり、お互いにメーカーという枠を越えて意見を尊重しています。このスタンスは、直接お会い した方でも、まだしていない方でも同じだと、私は思っています。』
『化粧品研究者は、各メーカーの研究部門には多いのですが、実際に化粧品を使っている方々までを
しっかりと把握した上で、美容を科学的に考え、自分の領域の範囲で、責任を持って、分かり易く話せる
人々を「美容科学の専門家」と呼ぶと良いのではないかと私は思っています。そう言う意味では、先に述べた
方々は、全てその条件を満たしており、雑誌でのコメントを見てもはっきりわかります。私の希望としては
そのような立場の方がもっと増えていくことを考えていますし、もっとカラーの違う方が出現して、充実した
美容科学の専門家グループが出来ると良いなと思っています。そして、そのグループでの活発なディスカッションの
場が出来て、画期的なアイデアを相互に生み出せれば良いなと思っているのです。』
『私は今年の6月6日で満51歳となりました。私は、その度にある言葉を思い出します。もう10数年前だったと 思いますが、ファッションコーディネーターの西山栄子さんから「私は49歳からは歳はとらないわ。それ以降は 何回誕生日を迎えても49歳なの」と言われました。当時、30代後半に入っていた私は、49歳から歳をとら ないで、そう見える女性の事を考えると妙にワクワクしたものでした。女性だけでなく、男性も同じことだと思った ものです。その為に、どのような努力をすればいいのだろうかとか、或いは、奇跡的な医薬品や化粧品が 開発されるのだろうかとか思っていました。』
『そうこうしている内に自分もその年齢に入ってきました。実感から言って、身体的には、やはり、年齢と ともに衰えはやって来ますが、精神的にはさほど衰えが来ているとは感じられないようです。ただし思考能力的 には、記憶力というのは身体的なものと同じように、徐々に来ているようです。とっさのメモがとても役立つように なってきました。つまり、生物学的にみますと、やはり、40歳からは確実に体を構成している細胞や組織で 加齢は進んでいて、身体的なものや記憶力というような、細胞や組織の仕組みや構造が直接的に影響する 能力は衰えてくるのだと自覚しています。このことに関しては、事実を認めて、有りとあらゆる手段で、補って やるしかないと思って、そうしています。もちろん、加齢を防ぐ為の努力も行って、出来る限り遅らせようと しているのは当然です。』
『さて、精神的な面は、いわゆる「気が若い」というか、年齢に関係ないという状況にあるようです。世代を
こえて、ロックンロールやヘビーメタル、アイドル歌手のポップスと、依然と変わらず聞きまくっています。
また、F1グランプリのレースを見て、胸のときめきも変わらないようです。それに、仕事上でしょうか、やはり
美しい女性を見つけると、ハッとして、ドキドキするのも変わらないのです。ただ、美しい女性の対象の
年齢の範囲が広がってきているのは、私が年齢を重ねていることと関係あるようです。確かに、年相応の
美しさというモノも解りつつあります。そして、自分を振り返ってみると、何時しか「年齢不詳」に見られることが
多くなっています。そして、私のような仲間が増えているのも実感しています。精神的な若さというものは、
果たして、「年齢不詳」と見られることに貢献しているのかどうか、只今研究中なのです。』
『このテーマは、6月21日に、東京ビッグサイトで開催された「エステ&コスメエキスポ2000」の特別セミナーで 私がメッセージした内容です。その意図は、美容科学の専門家を示す称号が現在明確になっていないので、 もし、そのような方向を目指している方がいらっしゃるなら、いっそのこと「ビューティサイエンティスト」と呼んだら 良いのではないかと思ったわけです。この呼称は、私が既に、12年前に名刺に肩書きのように入れ、女性誌の 取材の時に説明したら、記事の中で私のクレジットとして書かれたことが始まりでした。当時も今も「ビューティ サイエンティスト」と称しているのは私のみですが、世の中にこの称号を使う資格は別に規定されているわけでは ありません。むしろ、美容科学の専門家として同じ様な活動をしているなら、或いは目指しているなら、この称号を 使ってもらった方が良いのかもと思ったからです。』
『「話題21:美容科学に学問の壁はない」で書きましたが、それ故に、美容科学の専門家もなかなか生まれ難かった のではないかと思いました。であれば、美容科学も専門の一つであると言いかえれば、そのような方々も多いのでは ないかと思うわけです。そして、私の意見に同意していただける方がいるとすれば、「ビューティサイエンティスト」と 称していただければいいなと思いました。と言うことで、美容科学に関係するあらゆる学問をベースに、美容科学の専門家として 活動する「ビューティサイエンティスト」の仲間が増えることを期待します。』
『と言うわけで、もし、この考えに同意していただけるなら、私宛にメールをいただければうれしく思います。』
『2000年7月29日、この日は口コミサイトで人気沸騰中の「@cosme(アットコスメ)」の初オフ会が開かれた日です。 当初120名の定員でしたが、140名を越える参加者となり、大盛況でした。私も、ビューティエキスパートで活躍中の 大高博幸さんとのトークショーで参加しました。今年は、これで2回目のトークショーですが、現在メディアで私と同じ スタンスで活躍されている大高さんとのトークショーは気合いも入りました。なにしろ化粧品に対する関心のとても高い アットコスメな人々の前で行うわけですから。オフ会の控え室では、気合いと同時に、不安もあり、ドキドキでした。でも、 オフ会の参加者の拍手に迎えられた瞬間、とてもホッとしました。それはたくさんの笑顔がその会場を埋めていたから です。そして楽しいトークショーも終わり、フリータイムには会場で、アットコスメに参加されている人々とお話しができま した。このような体験ができたことを本当に幸せだったと思っています。そこで、このオフ会で感じたことを書き留めておこうと思ったわけです。』
『そして、「アットコスメな人々」という題を付けたのも、このオフ会で感じた雰囲気からなのです。いつも思っていた通り、 美容に関心の高い人々の集まりだったので、現在の日本のインターネットを盛り上げている人々はレベルが高いことを 証明していたのではないかと思いました。そして、なによりマナーがとても良いのでうれしくなりました。トークショーでの 話を聞くときの集中度や、フリータイムでの質問の時、相手を思いやる気持ち、これらすべてからアットホームな安心した 気持ちになれました。そういう意味で「アットコスメな」という形容をしたのです。いつもは書き込みから商品に対する評価や 要望を、或いは、美容に関する質問や意見を読みとっていたのですが、直接会って話をしてみると、なぜそのような 質問や意見が出るのかよくわかりました。いずれは、美容のオンラインカウンセリングをしてみたいと思っていた私に とって、オンラインとオフラインの違いも、気をつけなければならないことも少しわかってきて、本当によい体験でした。 このようなオフ会がまた開かれることを希望したいものです。(ただし、企画して、準備をしていただいたアットコスメの 方々や、気持ちよくテスターやお土産の商品やサンプルを提供していただいたメーカーのボランティア的な協力には 本当にご苦労様と感謝しています)』
『美容や化粧品に関心の高い使用者の作り上げるアットコスメというサイトは、
今後もこのスタンスをとる限り、使用者の意見を集約した信頼のおける情報源として輝き続けると思いました。』
『最近、美容や化粧品について取材を受ける度に思うことがあります。それは、多くの生活者の方々が化粧品や美容に ついて、未だに誤解をされているのは、本当は化粧品メーカーにも大いに責任があるのではないかということです。 各メーカーが宣伝広告や商品やキャンペーンのパンフレット、広報誌等に数多くの役立つ美容情報を掲載していますが、 その情報がメーカー独自の考えであって、他のメーカーには必ずしも通用しないことも多くあります。そこで、結果的に 購入したメーカーの情報を中心として得ることになります。そこに誤解が生じる原因があるのではないかという仮説です。』
『肌に対する基礎的な知識や、肌タイプに関する大まかな知識、化粧品および化粧品原料に対する基本的な知識は、 例え化粧品メーカーが違っていても、認識は共通で一定の科学的な範囲で変わらないもののはずです。もし、共通な 基本知識を各メーカーが、メーカーの枠を越えてきちんと知らせていれば、生活者は迷うことも少なく、正しい化粧品選び や使い方をしてもらえるのではないかと思うわけです。化粧品メーカーは、この共通な基本知識の上に、独自の研究成果を 加えて魅力的な商品や提案をしていけば良いのではないでしょうか。現状は、あまりにも独自の研究成果のみを訴求する 傾向が強まり、うっかりと共通な基本知識が抜けがちなのではないかと思っています。ただ化粧品メーカーにとって、思うは 易し、行うは難しという現状があることも事実ですけど・・・。』
『逆に、生活者にとっては、各化粧品メーカーの公表している美容情報を、客観的に観る姿勢も重要ではないかと
思います。すべて、化粧品メーカーの自主性に任せるのではなく、ある程度のチェック機能も大切だと思います。
そして、一番信頼できる化粧品メーカーを客観的に選別し、そのことを購買という行動で実践することが、生活者と
化粧品メーカーを良い関係にしていくのではないかと思っています。また、最近では、インターネットの普及で意見の発言も
しやすい環境となりつつあります。そのような声がたくさん集まるサイトは、今後増えていくものと信じています。』
『この数年間、化粧品専門店は変わりつつあると実感しています。仕事上、化粧品がどのようにしてお客様に紹介され、 販売されているのか、よく百貨店や化粧品専門店に行って見ますけど、確かに変化があります。それは、お肌の相談を 受けている人々が増えてきていることです。業界では美容カウンセリングと呼んでいますが、きちんとしたコーナーを設けて、 落ち着いた気分で受けられるようになって来ています。私は、この傾向はとてもよいことだと思っています。そのような現実を みていて、化粧品専門店は美容のホームドクターと称するべきではないかと思い、講演や雑誌の取材で主張するように なりました。』
『言い換えれば、化粧品を販売する「化粧品専門店」から、美容に関する情報や商品を相談販売する「きれい屋さん」とでも したほうが良いのではないかと思っています。ここに来て、相談すれば、ひょっとしたら新しい自分の魅力を引き出してもらえ、 自信がつくというように。美しくなるためには、やはり直接会って相談を受ける方が一番良いに決まっています。声をかけられると どうしても化粧品を買わされそうでいやだという人はまだまだ多いのですが、現場は確実に変わりつつあります。それは、化粧品 専門店のスタッフの方々の意識もそうですが、お客様も相談を気軽に受ける方が増えているのです。つまり、お客様の化粧品 専門店に対する意識や行動の変化が、お店の方にも良い意味の相互変化を生んでいると考えられます。そうです、私が言いたい ことは、お客様も意見や行動することで、自分のお肌をより健康で美しく保て、更により魅力を高めることができる、「美容の ホームドクター」たる化粧品専門店や百貨店の化粧品コーナーを作ることが出来るのです。』
『「2ウエイ・コミュニケーション」のスローガンが掲げられて、ずいぶんと年月が経ちますが、本当意味では、このようにお互いが
影響を受け合って良い方向へ変わることではないでしょうか。化粧品専門店も「美容のホームドクター」として、それぞれ独自の
得意な部分を活かせば、個性的な「きれい屋さん」が街のあちらこちらに繁栄するのではないでしょうか。私は、そのようなお店を
目指して努力している多くの方々を知っていますので、確かにその息吹を、可能性を感じているのです。』
『私は自称、ビューティサイエンティストと名乗っていますが、これは美容科学者ということを解ってもらうためでもあります。 その、美容科学とは生物学、医学、薬学、物理学、心理学というように自然科学から社会科学まで広い分野で美容を 考えるものです。そして、仮説を立て、検証され、そのようなデーターを元に大系化されるべきものだと思っています。 しかし、残念ながら、まだ多くの仮説は検証され、認知されているとは限りません。仮説のままで研究中といういうものも 多いのです。しかし、既に解っていることを元に、その仮説が論理的に無理がないことが正しい立場と言うことが出来る でしょう。もちろん、仮説が論理的にかなり無理があっても、検証されることはあり、大発見的な取り扱いになることも ありますが、可能性はかなり低いでしょう。また、仮説が論理的に破綻していて成り立たないものも多く見受けられて、 これは、逆に日常的な化粧品や美容に取り入れられると有害な場合もあります。』
『ちょっと難しい話となりましたが、美容科学的にものを見つめることは、その化粧品や美容法が最終的に効用をもたらして くれるのか、はたまた、有害でそのようなものを使ってはいけないかを判断する最も良い方法なのです。今までも「素朴な疑問」 や「美容の話」のなかで取り上げた多くの話は、出来る限り美容科学的に見つめて話してきたつもりです。例を挙げれば、 「鉱物由来の原料は肌に悪い」、「界面活性剤は全て肌に悪い」、「防腐剤は肌に悪い」、「化粧水だけで潤いは十分である」など 他にも多くの非美容科学的な仮説がまだ多くの人に信じられているのです。この背景には、このような一見社会的な正義に 基づくと思えそうな化粧品や美容法が商売になっているからでしょう。このような間違った商売に対しても、美容科学的な 眼をもっていれば見極めることが出来るのです。』
『それでは、どうすれば美容科学的な眼を持つことが出来るかですが、やはり信頼できる人や機関からの情報を積極的に
入手して理解していくことだと思います。「ビューティサイエンスの庭」で発言している内容もそのような情報の一つとして
役立てることが出来れば幸いと思っています。また、メールでの問い合わせの多いことでもありますが、参考書を紹介する
ことや情報雑誌や新聞を紹介することも重要だと思っています。また、同じ思いの美容科学者やジャーナリスト、そして医師など
職域を越えて紹介をしていきたいと思っています。美容科学的な眼を持つための有益な情報源を集めるために、ネット上の
ポータル・サイトを作ることも今後は考えていきたいと思っています。』
『事の発端は12月14日の毎日新聞のニュースとTV放送「ズームイン朝」だったようです。いずれのニュースも、私が直接見て いないので、伝わり方の印象までは解りませんでしたが、衝撃的に受け止めた人も多かったようです。早速インターネット 毎日新聞ニュースで探して見ました。見出しは「パラベンで精子減少 ラット実験で判明」とあり、実験を行った 東京都立衛生研究所毒性部主任研究員の大石眞之さんのコメントでは「化粧品にも多く使われており、皮膚からも 吸収されるので一日の許容摂取量の検討が必要」だと指摘している内容でした。15,16日に横浜で開催される「環境ホルモン 学会」で発表される内容のスクープ記事です。また記事では、厚生省食品科学課のコメントして「大人の食品からのパラベン 摂取量は2000分の一だから心配ない」とし、「新たな実験が一つ出たからといって、ただちに許容摂取量の再検討が 必要とはいえない」と言っていました。しかし、ニュースを読んだり見た人は「化粧品を使うことで男性の生殖能力が低下して しまう」と思い込んでしまうのではないでしょうか。』
『さて、ニュースの解説に入りますが、大きな問題点は、研究者の話には化粧品の使用による危険性が大きく取り上げられ、
一方の厚生省食品科学課のコメントは食品による摂取量の話で問題ないと言っており、論点がズレたままにニュースとして
報道されていることです。このニュースを読んでも、化粧品の使用による安全性はいっさい解決しておらず、不安のみが
印象に残ります。化粧品による摂取量は、もし、食品と同じように食べたとしても大石研究員の言う一日許容摂取量の体重
1kg当たり10ミリグラムを取るならば、体重60kgの男性がパラベンを0.1%配合した化粧品を一日に600グラム食べる
計算になります。普通、女性が一日に使う化粧品平均使用量が多くても10グラムだと仮定して
みると、許容摂取量の60分の一です。これは直接食べた場合を仮定したものですが、実際の所、皮膚に付けて使うわけ
ですからかなり摂取率は低くなります。現状では化粧品の腐敗を防ぎ、製品安定性が高い化粧品を作るためには必要な
化粧品原料であると考えられます。また、配合率から見ても安全性に問題の極めて少ない化粧品原料だといえます。
そういう意味でも社会的影響の大きいメディアでは、このくらいの正確度で記事を書いて欲しいと思うわけです。
(もし経皮吸収に詳しい方で、このシミュレーションが正確に出来る方は、
私の方にメールを下さい)
(シミュレーションに用いたパラベンの配合量0.1%は、化粧品に関する参考書などを参考にして用いました)』
『それから、上の段落でシミュレーションの対象を女性としました。男性の場合は更に使用量が少くなります。また、ニュースでも
記載されてありましたが、実験に使われたパラベンは「パラオキシ安息香酸ブチル」という種類で、パラベンの種類の中でも
比較的、使用頻度の少ない種類です。もし、本当にパラベンを問題視するならば使用頻度の高い「パラオキシ安息香酸メチル」について
実験を行うべきで、このような使用実態を考慮していないデータで、安易なコメントをニュースにすることは問題ではないかと
思います。それに、厚生省食品科学課のコメントにありますように、このような安全性にからむ汎用化学物質の取り扱いは、
社会効用も無視できないため、十分な討論がされた上でニュースにすべきだと思います。もちろん、この討論の内容も全て
公開された上でのことです。』
『今回のニュースに見る問題点は、科学的なニュースによく見られることです。一見、科学的な根拠に基づく報道に思える
ようですが、短絡的に騒ぎ立てているように思えます。ニュースを書く記者に対してはもっと慎重な態度をとって欲しいし、
影響力からすればもっと大きいTVのコメンテーターも同様に慎重に報道して欲しいと思います。また、ニュースを読んだり
見たりする私たちにも、冷静な受け止め方が必要であると思います。』
『新年、明けましておめでとうございます。今年は21世紀の幕開けです。なんと、ちょうど更新日が新世紀の元旦に ぶっつかりました。そこで、今年の抱負をこの場を借りてお話ししてみたいと思います。』
『私がHPを開設して2年6ヶ月経ちました。毎週どこかのページを更新していく方針で始めたのですが、何とか、 とぎれないでやってこれました。最初は大丈夫かなと思っていたのですが、次第にペースがつかめてきて、今では 自分の生活リズムになっています。そういう理由で、今年は少しばかりHPの拡張を考えてみたいと思っています。 その内容は、美容と健康、そして美に関するあらゆる話題を提供していただける友人達のメッセージや作品を紹介 していくことです。既に、サイトが縁で知り合った「あやきち」さんには「kokoroのオアシス」を書いていただいています。 サイトが結びつけてくれた友人達には私にない視点、表現力を持っている方が多く、是非紹介したいと思っていた のです。幸いなことに承諾も取れつつありますので、順次公開して行くつもりです。そして「ビューティサイエンスの庭」を より楽しく役立つサイトとして充実できればよいなと考えているのです。』
『イメージとしては、「ビューティサイエンスの庭」に訪れてくれた小鳥や昆虫達、或いは何かの縁で種が蒔かれて
育った草花や木々のように、庭を豊かに彩っていただけるゲストのページやコーナーを作って行くつもりです。
そういう訳で、来週から早速、「浅倉詩音」さんにエッセーを書いていただけることになりました。更新はまだ不定期ですが、
よろしくお願いいたします。』
『もし上記の主旨に賛成される方で、「ビューティサイエンスの庭」で紹介して欲しいメッセージや写真・イラストなどの作品が
ありましたら、私「岡部」宛にメールにてお知らせ下さい。』
『さて、21世紀を迎えてみると、自然に、何か気分的にも改まった感じになります。そこで、21世紀は 美容に関する技術の開発がどのように進み、また、私達自身はどのように美容の意識が変わっていくのか、 大ざっぱではありますが、ちょっと動向について考えてみました。』
『まず、美容に関する技術の開発に関してですが、自然保護の観点から環境を破壊しない化粧品原料の 開発が進むと思います。ただし、現在のレベルではなく、リサイクル、生分解性(土の中で微生物により分解 されて無害な物質に変化する)、富栄養化や環境ホルモンへの影響を総合的に考えた上での開発になると 思います。そして、生活へのメリットとデメリットのバランスを考えた上で利用されるわけです。そして、肌と 化粧品との関係もより研究が進み、安全性や美容効果の研究も進み、使用前の事前チェックによる肌への 適合性を見る方法も普及していくと考えられます。そして、化粧品はスキンケア商品、メイク商品を問わず、 まるで衣服のような感覚で付けて肌を保護し、飾ることができるものも開発されるでしょう。また、美容効果に 関しても、ニキビ、シミ治療やシワ、タルミ解消を含め美容整形などの医療と密接に連携してくるでしょう。 たとえば美容整形においては、より安全に確実な結果を得るために、術前および術後に使う化粧品も開発 されてくるのではないかと思います。』
『そして、一方の美容の意識についてですが、これも大きく変化するのではないでしょうか。20世紀末に、すでに
その傾向は見えていたのですが、美に対する見方の多様性が拡大するのではないでしょうか。つまり個性的な容姿の
美しさの種類が増えて、一般論では語れなくなるのではないでしょうか。ということは、だれでも努力次第では美を
極めることが可能になりうるということです。或る意味では美容整形もオープンなものになって来るのではないで
しょうか。ただ一つ、重要なことは、心の面でしょう。人を思いやる心、いや、人だけでなく、生き物を公平に思いやる
心が形を越えて美意識の中心に来るのではないでしょうか。でも、誤解して欲しくないことは、地球上の生き物は
バランス取れた食物連鎖という生存競争をして生きていることです。動植物を含めバランスを壊すような生命の
操作はすべきでは無いと思うのです。』
『まあ、このように21世紀になることで、美容分野の夢を大ざっぱに語ってみました。まだ言うべき事はたくさんある
のですが、とりあえず、気になっていることを中心に語ってみました。取り上げたことは決してあり得ないことではない
と私は思っていますが、皆さんはどのようにお感じでしょうか。』
『来る1月22日、『りえぴん』さんこと荒木りえさんの「ビューティ・ノート」という本が発売されました。 荒木さんは、パソコン通信「ニフティサーブ」の「化粧フォーラム」のナビゲーターとして活躍されている方で、 現在は「BeautyNote.com」サイトを開いて、美容情報を発信されています。その荒木さんが、 手元に置く美容サイトというコンセプトで、ご自身の「BeautyNote.com」サイトを、どこでも 気軽に読めるという単行本にされました。私が着目したのは、インターネット上の情報を紙媒体に 置き換える目的を明確にしていたことです。美容と健康でもこのようなケースで出版されることが 増えてくると思いますが、ただ単に情報を転写したのでは意味が無く、どういう目的で、きちんと ターゲットである読者に届けるかを明確にすることが重要なのだと思います。』
『それからこの本の特徴は、荒木さん自身の感じている化粧品の使用感と効果を書いていること です。もともと化粧品の評価は難しく、平均的な評価では参考にならないことが多いものです。 だとしたら、或る意味では独断と偏見も、著者の特性がよく分かっていれば大いに意味のある情報では ないかと言うことです。そう、大切なのは意見を言っている人が明確にされていることだと思って います。匿名の情報は発信し易いのですが、その情報の背景が見えず、かえって誤解の元に なりやすいと思います。ネット上の掲示板情報が荒れやすいのは、そのような誤解がハウリング現象を 起こしているからだと思います。つまり、誤解が誤解を生み、とんでもない方向に行くという。(ただし、 きちんと運営されている掲示板においては自浄作用が機能しているのも事実です)』
『パソコン通信時代からのつき合いになりますが、『りえぴん』さんこと荒木りえさんは、化粧品や
美容についてのご意見を痛いほどハッキリと言われますが、それゆえ参考となっていることが多い
のです。そして、とても気さくな方で、オフラインでもオンラインでも変わらぬ魅力を持っている方です。
今回は、美容サイトを本にされたという先駆者として荒木さんの本とともに、それにまつわる私見を
書いてみました。』
『この一年で比較的多かった私へのメールでの問い合わせに、化粧品や皮膚科学について、 正しい理解をする為の参考書に関してのものがあります。そこで今回は参考書について 話してみます。』
『一言で言うと、残念ですが現在のところ、私が自信を持って参考書として推薦できるものはあまり ありません。やさしく解説してる本には皮膚や化粧品に関して間違った引用がされているものが 多く、自分の主張に都合の良い情報源をそのまま検討しないで引用をしてるのでは無いかと 思えるのです。 逆に専門的な本は、用語を含めて、理解するのに骨が折れそうな内容になっています。 しかし、あえて参考書とするなら、多少難しくても、専門的な本を参考書として読んで いただきたいと思っています。それは、全ての学問についても言えることかも知れませんが、 最初に間違った知識を覚えてしまうと、その先入観が邪魔をして、後から新しい情報を 理解することが難しくなってしまうものです。たとえば、化粧品原料について、鉱物油は 肌に有害であると覚えてしまうと、現実に、ワセリンや流動パラフィン等の鉱物油を、 目の当たりにして、肌に付けて見るまで、実感的に鉱物油が安全性の高い化粧品原料 とは思えないのではないでしょうか。』
『そういう意味でも、私は、最初から多少読むのに苦労しても、専門的な本から読んで もらった方が良いと思っているのです。読むコツは、専門用語や論理的で難解な説明に あまりとらわれずに、結論的な文章をしっかりととらえて、図を参考にして理解を深める ことではないかと思います。そういう意味でも、理解しやすい図の多い参考書がお奨め となります。』
『ということで、現在の所、私が参考書として読んでもらいたい本を数冊紹介してみたいと 思います。まず、比較的読みやすい専門書として、藤本大三郎「スキンケアの科学−化粧品の 効能書きに強くなる」(講談社ブルーバックス 1992年初版 660円)。次に、化粧品の 成分から皮膚知識まで解りやすく解説してある、湯浅正治・宇山みつ男「全成分表示に 対応した化粧品成分ガイド」(フレグランスジャーナル社 2000年初版 2200円)。最後に、 医師向けで難しいのですが、スキンケアの最新情報が多くの写真や図を使って解説して ある、宮地良樹「臨床医のためのスキンケア入門」(先端医学舎 1997年初版 5800円)。』
『最後に、あまり参考にして欲しくない参考書は、本の随所に特定の化粧品だけを紹介した、いわゆる
バイブル本と呼ばれるタイプの本。そして、「ビューティサイエンスの庭」の素朴な疑問で答えている
内容と大きくズレている内容の本です。しかし、最初に正確な情報を得ていれば、後で、問題の
ある本を読んでもきちんと情報の整理が出来ますので大丈夫です。そして、もう一つ、あまり著者の
肩書きを過信しないことです。現役時代は時代の最先端を研究していた人でも、現役をはずれて、
最新情報を取り入れなくなると、時代錯誤の内容になることもあります。そういう意味でも、参考書を
選ぶことは難しいのですが、今回はその第一回目といたします。また、良い本を見つけたら
紹介していくこととします。』
『3月3日の雛祭りの日に、日本顔学会の公開シンポジウムが開かれました。今年は 「2001年 顔の旅 〜Face Odyssey〜」と「2001年 宇宙の旅」をもじってタイトルが 付けられていました。顔学会は以前から関心の高い学会で、どういう方向で顔についての 科学が進んで社会還元されるのか気になっていました。その観点から、今回のシンポジウムの 感想を報告します。』
『まず午前中のセッションとして「顔学の構築を目指して」というテーマで「人類学」、「心理学」、 「情報工学」、「美容・文化」、「歯科学」、「社会学」の6分野から講演がありました。この6分野の 講演から私が感じ取った「顔学」の現状は「表情」についてそれぞれの分野で関心を持たれている ことでした。ちょうど私も「表情」に関心を強く持つようになっていたので、タイミングはぴったりの 内容でした。特に「表情とは顔の動きである」、「人類では眉が表情を表す器官として発達させて きた」、「もっと表情に歯を重視せよ」とかいうメッセージが印象に強く残りました。眉については 最近は男性でもカットする人が増えてきていますし、眉カットパターンの流行は表情パターンの 流行とも言えるのかなと思ってしまいました。そういう意味では歯の矯正は良い印象を与える 為には重要な方法だと言うことも改めて気づかされました。それから、この6分野の内、化粧品に 関する「美容・文化」についてのみ「学」がついていないことも気になりました。別に「学問」として 認められることにこだわっているわけではありませんが、「香商品学」とか「美容科学」とか表現して、 もっと自信を出しても良いのではないかと思ったわけです。』
『午後からは、ゲストにキャスターの南希子さんとイラストレータの南伸坊さんを迎えて、進行役に 原島博先生が「顔って面白い!」というテーマで座談会が開かれました。ここでも二人のゲストが ともに顔の表情つくりが重要であることを言われていたことが印象に残りました。そう考えると、顔の 研究方法で多くの人の顔から平均顔をつくると、確かに美人・美男的になるのですが、どうももの足り ない顔にもなるという謎がわかりました。平均化された顔には抜き出た個性も表情も無くなるので そう感じるのかなと理解しました。私は、南伸坊さんの本は、いつも感心させられることが多くて 読んでいたのですが、座談会での話を聞いて納得しました。』
『最後は「多様な顔、多様な思い 〜顔の復権を目指して〜」というテーマでパネル討論が行われ
ました。そういうわけで聞き応え、見応え充分の公開シンポジウムでした。そして記念すべき「日本
顔学会」発足10年目だったのですが、「顔」に関心を持つ方々が増えていることは事実ですが、
「顔」について言い過ぎると「差別」の問題にも突き当たることが問題点だと言うことです。さらに、
広い分野からの研究がされる中で、「顔学」を専門にされる方が少ないように思われることが
気になりました。むしろ、化粧品を扱っている私達こそ「顔学」の専門家として主張しても良いのかな
と思いました。そういう意味では、「顔学」について、私が今年最も追求したいことは、「表情シミュレーション」と
「エイジングシミュレーション」を通じて、スキンケアやメイクアップへの応用研究を進めることです。特に
「エイジングシミュレーション」は研究3年目になりますので、大いに発表していきたいと思っています。』
『話題15で「エイジングシミュレーション」を取り上げて約2年が過ぎましたが、その間、この技術は 取材を受ける度に進化をしてきました。進化の方向は、もちろんシミュレーションされる対象者の納得性を 高める方向です。そして、エイジングシミュレーションの目的である、加齢によるパターンを知ることにより 効果的なアンチエイジングケアをする為に有用な方法となりつつあります。ともあれ、その最新の成果を 「ラヴィ ドゥ トランタン 5月号」を見て、確認して下さい。ちょうど、ご両親の顔写真と一緒に載っています ので、シミュレーションの出来映えが判ると思います。また、「美的 6月号」にもエイジングシミュレーションの 結果が載る予定です。』
『やはり顔の特徴は親族、特に両親の顔から、かなりの要素を引き継いでいるものです。それを現在の 顔から何とか見比べて、両親の顔を似ている比率でミックスして、丁度、両親の年齢に達したときの 顔を作り上げます。この想定加齢顔を作る精度がシミュレーションの出来映え、というより、加齢の 方向性を正確に発見するために重要となります。何らかの法則性があるので、将来はコンピュータの 処理で想定加齢顔を作ることはかのうでしょうが、現状では見て感を働かせるほうが良いみたいです。 単純に、父親と母親の顔を「モーフィング」という画像ソフトを使ってミックスしてもある程度似てきますが、 人によってはピンとこない場合もあります。例えば、目は父親似、口元は母親似という言う場合は、ミックスの 比率を顔のパーツごとに変化させてうまく合成する必要があるのです。同じ両親から生まれても、姉妹で 顔の印象が大きく違うことがあるので、やはり、キメ細かく相似性を見つけだすしか手はありません。』
『このように作ったエイジングシミュレーションは、当人に納得性が行く場合が多く、真剣に見てもらえ
ます。平均的な加齢の顔変化を基に作り上げたエイジングシミュレーションは、確かに、加齢のイメージは
浮かぶものですが、ピンとこないように思えます。やはり、加齢も個性的に変化しているので、そのように
してシミュレーションをしていく方が納得できるのでしょう。ただ、現在のエイジングシミュレーションには
肥満とか逆にやせるとかのボリュームの変化を付けていません。今後は、この点についても考慮すべき
だと考えています。そして、きっとエイジングシミュレーションを利用したアンチエイジングのスキンケア
アドバイスがいつかは使えるようになると願っています。このようにエイジングシミュレーションの技術は
進化しています。しかも、雑誌などの取材の度に納得性のレベルが上がっているように思えます。
まさに、雑誌取材は私にとっての、大いなるトレーニングでもあるのです。そう言うことで、次なる取材を
お待ちしているわけです。』
『最近の女性誌で美容整形に関する取材記事が目に付きます。まあ、賛否両論あり、それぞれの言い分も あるのですが、私は必要なら美容整形もありという考え方をしています。私の知人や友人の中にも悩んだ末に 決断した人や、プラス思考で思い切って行った人など様々です。そもそも容貌は親からもらったものだし、大事に するものだという考え方もありますが、人から容貌でからかわれた経験のある人なら変えたいと思ったことは 一度や二度ではないでしょう。また、年齢と共に容貌も変化して老人化してくるのも、あまり気分の良いものでは ありません。しかし、自分の容貌と長くつき合っていると、気に入らなくとも、なんとなく愛着の湧くことも事実です。 私も、広い額や、長い顔、あごの無い顔、あまり好きではない部分についても、年々、なぜか好きになってきて います。それは、あきらめと言うより、何か自分の個性として表に出している標識のようなものと割り切っている のでしょうし、性格や固有技術と合わさった個性だと思うようになりました。左頬にある30歳後半から出来始めた、 たぶん老人性色素斑(シミ)も、自分のトレードマークとして認めつつあります。』
『とは言うものの、やはりどうしても気になり、スパッと取り除いてみたい要望はあるものです。気になり度合いが 強くて、生活や仕事で邪魔な存在になれば、自分の容貌的なコンプレックスは取り除いても良いのではないでしょうか。 幸いなことに、現在では技術的にも水準は高く、世間の眼にしても寛容になってきています。ただし、美容整形という 医療は、リスクも伴うと言うことを忘れないで、その上で決断することが必要でしょう。自分の思うとおりにならなかったり、 或いは失敗もありえます。評判だけではなく、きちんと手術の可能性や限界、術後のメンテナンスのことや経費の ことなどもわかりやすく説明してくれる医師がいることが重要です。そして、もっと大事なことは心の問題もきちんと 考えてくれることです。』
『人間の魅力は単に容貌だけでなく、性格、行動も含めたトータルな魅力にあると思いますし、容貌はその一部です。だけど、
どうしても容貌が気になるのなら、或いはそれを解消することでトータルの魅力が飛躍的に高まるのなら方法は幾つか有るでしょう。
美容整形はそれらの方法の一つだと言うことです。しかも、ある意味では最終的な手段だと言うことです。私の考えでは、まず手っ取り
早い方法からやってみることだと思います。メイクアップやヘアースタイルを変えることによって自分の容貌のコンプレックスを軽減
したり、自分の魅力を目立たせたりすることが最初にやってみることでしょう。このような相談ができる化粧品専門店や百貨店の
化粧品売場、或るいはヘアーサロン、エステティックサロンを見つけることです。最近では、お店の看板やチラシにも
そのような相談ができることをアピールしているところも増えました。この段階ではやり直しがききますので、幾つかチャレンジ
してみることです。そして、どうしても容貌の基本的な部分が問題なら、先ほどの条件を満たす美容整形の病院に
相談してみるのもありだと言うことです。ただし容貌の改良だけで魅力が高まると思っているのなら、それはすべきではないと
思います。もう一度、自分の魅力について主観的に、或いは信頼している人に相談するなど客観的に見つめ直して見ることも
必要だと思います。性格など心も含めたトータルな魅力をもう一度見直すゆとりも、今大事なことかも知れません。』
『この6月に「エステ&コスメティック エキスポ2001」が東京ビッグサイトで開かれましたが、そこでの出し物は 美容機器が主人公でした。毎年、話題を集める主人公が変わっているのですが、年々、大がかりな美容機器が 増えているように感じています。一方では、家庭用の美容機器も家電屋さんでけっこう目にします。特に、ディス カウント家電屋さんでは美容機器のコーナーが広く取られて、吸引機や超音波、脱毛機器などたくさんの家庭用 美容機器が置いてあります。いつも思うのですが、値段が手頃なので、ついつい買ってしまうのでしょうが、続けて 使っているのだろうかと気になっているのです。美容機器ではありませんが、低周波のマッサージ機器は我が家では わずか数ヶ月の寿命でした。もちろん、機器が壊れたのではなく、使うのを止めてどこかへ放置したままになって、 忘れ去られたという意味です。』
『家庭用の美容機器というと、私にとって何時までも記憶に残っているのは「気泡で顔を洗う美顔器」のことです。 確か、洗面器のような構造で、気泡が立って水が渦を巻いている中に顔を付けるだけで良いというものでした。 キャッチコピーは、「微細な気泡が弾ける時に発生する超音波が肌の汚れを落とす」という文句だったと記憶 しています。今も昔も「超」という言葉は神秘的な効果を与えてくれるものですね。おまけに、お医者さんの推薦文 までついていますので、科学的な裏付けがあたかもされているような宣伝でした。最初は1社が販売していた のですが、話題になると、あっという間に各家電メーカーから類似商品が発売されましたが、結局、思ったほど 汚れが取れず、洗顔料にはかなわないことが解り、すぐにブームは消えたのです。20年位い前の話ですが、 私にとっては良い教訓になっています。』
『つまり、家庭用の比較的購入しやすい美容機器や健康機器は、一見科学的な根拠に基づくようなキャッチコピーが ついているものが多いのです。その上、科学的な議論に耐えるようなものは少なく、ブームが去れば、何も無かったかのように 消えていく運命にあるみたいです。この傾向は、美容機器よりは健康機器や器具に多いと思います。機器類に対して 私達は便利性と効果性を求めます。しかし、その便利性と効果性については、宣伝文句だけでは確かめられないので、 やはり買って使ってみるしかないのが現実かも知れません。価格も、ちょうどそれに見合うくらいの値段になっている のは、絶妙な商売ノウハウが秘められていそうです。よく考えて賢い消費者にならなければと思っている次第です。』
『化粧品の全成分表示に関する法律が施行されて5月経ちました。この間、様々な市場の 反響がありましたが、未だにこの法律の意味が正確に理解されないままに報道番組が 作られています。たまたま目に付いた報道が有りましたので、ビデオに撮り、この報道の 背景と影響について考えてみました。その報道番組とは8月23日午後5時から放送された 東京12ch「TXNニュースアイ」です。この番組中の「追跡アイ」という企画に「化粧品で 肌がボロボロに!?」というタイトルで、化粧品には肌に良くないものが多いぞ、という 脅しの態度が見られる構成でした。』
『放送の中で気になった内容に2点ありました。1点目は、全成分表示後に化粧品による 肌のトラブルが増えたということです。これに関しては、消費者センターや各化粧品メー カーのクレーム件数などの具体的なデーター無しに、数人のコメントを流しただけで客観的な データの根拠がなかったのです。(少なくとも番組の中で提示されていませんでした) コメントした人々のクレーム事実はあったとしても、これは全成分表示が施行された こととはあまり関係のないと思われます。もしあれば、具体的に、施行後に発売された商品で クレームが生じたと報道すべきですが、その関係は明らかにはされていませんでした。 全成分表示後にはメーカーの都合で肌に良くない成分も勝手に使え、それが原因で 肌トラブルが増えたという印象を強調する証言として使われたような気がします。』
『次に気になった2点目は、化粧品メーカーをむやみに信用せずに、消費者の方も 商品を選ぶのに自己責任があるということを強調していたことです。これは、大いに 問題のある発言です。アレルギーなど肌トラブルの原因が分かっている人に対して、 未然に事故を防ぐためと、もし肌トラブルが起こったときに医師が適切な治療ができる 為に全成分が表示してあるのです。このことがいっさい報道されずに、いきなり成分が 表示してあるから、メーカーの責任だけではなく選んだ消費者にも責任があるという 解釈は大いなる誤解です。もちろん、化粧品や化粧品の成分などに正確な理解を したうえで、自分の肌に合う、満足いく効果のある化粧品選びができる、賢い消費者と なることのすすめなら問題はないのです。また、PL法(製造物責任)の観点からも 化粧品による肌トラブルは、選んだ人ではなく、作った側に責任があるということです。 多くの化粧品メーカーはこのような責任を全うすべく努力をしているのです。』
『ただ一つ救われたのは、最後に、コメンテーターをしている市民派弁護士の紀藤正樹氏が
、メーカーはもっと消費者にわかりやすくなるように情報を提供するべきだと言われていた
ことです。全くその通りで、今後は、商品の宣伝のみではなく、正確に化粧品に関しての
情報を啓蒙していくことでしょう。化粧品が悪であるという立場の報道やメディアでの発言が
あっても良いと思いますが、それに対してきちんと自己判断できるだけの情報を化粧品を
肯定する立場からも発言すべきだと言うことです。その為にも特定のメーカーの立場ではなく、
メーカーを問わず中立的な立場での発言が最も適切ではないかと思っています。報道番組は
このような立場での番組も作って放送すべきだと思います。』
『仕事で韓国に行って来ました。ソウル市郊外にあるMia現代百貨店のイベントでお客様に 「秋の肌管理」という題でセミナーを開きました。私にとっては近くて遠い国だったのですが、成田から 1時間40分で到着したソウル市は、ワールドカップ2002年の影響でしょうか、工事中の多い状態でした。 さて、韓国でも日本と同じように百貨店では外資系化粧品が主体で、韓国国産メーカーのL/G社と 太平洋社の百貨店ブランドがコーナーを持ち、日本からは資生堂、カネボウがコーナーを持っていました。 外資系のブランドで目に付いたのは、シスレーとビオテルムが各百貨店で目立つ場所にコーナーが あったことです。』
『でも一番にぎわっているのは若者の多い街でした。明洞(ミョンドン)の専門店街ではたくさんの若者が 集中しているような感じで、化粧品店も多く日本のショッピング街と同じでした。丁度原宿や渋谷の様で した。中でも特に賑わっていたのはセフォラのような展開をしているお店で、メイクのテスターにはお客と 従業員でたいへん混雑していました。それに控え、ちょっと値段が高めのスキンケアのコーナーはお客は 少ない感じでした。どこのお店も1000円以下の商品が買われているようで、店頭では100円以下で ネイルがバスケットに山盛りに入れられてバーゲンセールされていました。』
『私が宿泊した近くでも若者達が集まる江南(カンナム)の地下街と地上のショッピング街が賑わって いました。通りを歩く女性の肌はきめの細かい人が多く、ニキビで悩んでいる人は、日本に比べても 少ない感じでした。食事をして気が付いたのですが、キムチを始めとして、たくさんの野菜が前菜として 出されており、このせいで肌がきれいなのかなと思うほどでした。メイクの傾向は日本とほとんど変わらず ファッションの傾向も同じです。違いがあるとすれば日に焼けている人は非常に少ないことで、肌の 白い人が多かったことです。営業の人に聞くと、それでも美白商品やサンカット商品のニーズは高いと 言うことです。そう言えば、9月に入ったというのに毎日30度近くで日差しも強く感じる気候でした。』
『さて、私の仕事の方を少しお話ししますと、現代百貨店のVIP客と文化センターの会員を対象に開いた スキンケアセミナーで講師を依頼されたのです。スキンケアに対する関心は非常に高く、それに対して スキンケアに関する情報は少ないのが現状です。女性誌もインテリアや料理の話題が多く、日本に 比べて美容の記事は遥かに少ない状況です。通訳を通して話すわけですが、肌の構造やうるおいの 仕組みに関してスライドを多用してセミナーを組み立てました。理解度はとても高く、大きくうなずいて 答えていただいたので、話しやすかったことと、後で質問がたくさん出たことはとても嬉しく感じました。』
『私にとって始めての単行本「美肌手帖」がいよいよ10月5日に発売となります。その本の後書きにも 書きましたが、きっかけがこの「ビューティサイエンスの庭」から始まったのです。化粧品会社に勤めて いて、果たして偏った内容にならないようにできるのか、或るいはそのように思ってもらえるのだろうかと 考え込んだこともありました。でも、多くの人が読みやすくて内容のきちんとした美容の本を求めている のだから、やってみようと思い立ち、時間をかけて準備をした上で本の制作に入りました。しかし、そこに至る まで多くの人に支えられて来ました。このサイトを見て、本にしたいと強く奨めていただいたワニブックス 編集者の熱意がとっても熱く、是非引き受けたいと思いました。そして、私の考えを、私の言葉できちんと 伝えることができ、読みやすい文章にしていただいた美容ジャーナリストの方もありがたく思っています。 そんな、こんな訳で、少なくとも皮フのイラストは、この本のオリジナルとして、夏休みを返上して描き上 げました。』
『内容的には、皮フの仕組みから始まって、日々のスキンケアの話、肌トラブルの対策などの項目を見開き2ページで それぞれ区切った構成となっています。本の後半には知っておきたいスキンケア用語をまとめておきました。 詳しく知ると言うより、大まかな捉え方で知っておいて欲しい項目だけを絞り込んでいます。また、医療の部分では 皮膚科医の上村先生と池野先生に、栄養の面では赤堀先生に取材に行ってもらいました。と言うわけで、 誰もが気軽に読んでもらえるスキンケア中心の美容読本に仕上がったのではないかと思っています。 私も、この「美肌手帖」は、社内の教育や社外のスキンケアセミナーを開くなら、スキンケアのテキストに使って みようと思っています。いっさいメーカー色を出していませんので、きっと多くの化粧品メーカーの方々にも読んで いただけるし、使っていただけるのではないかと思っています。』
『この本の出版により、美容に関心の有る方々が、美容や化粧品に関するたくさんの情報洪水の中で、情報をきちんと 吟味して自分の為に役立てることができたら良いなと希望しています。また、日本の業界にはたくさんの美容に関する 専門家がいますし、その体験から有意義な意見の持ち主もいらっしゃいます。ぜひ、個人の立場として意見を公表する きっかけになれば良いなとも思っています。意見の公表手段は本だけではありません。インターネットは手段の中でも 感で便利なものの代表でしょう。美容に関して意見をお持ちの方、今後も一緒にやってみませんか?』
『先月の5日に発売された「美肌手帖」ですが、読みやすいとか、わかりやすいという感想ときれいな本であるという 感想が寄せられています。本のコンセプトがきちんと評価されて、本当に嬉しく思っています。皮膚科医の先生からは 患者様に読んでもらうように病院に置いてもらったり、化粧品メーカーの友人からは、メーカーを問わず、基本的な 美容知識が理解できるから教育用に使うことなど、このような感じで利用されています。このような反響があったので、 私は本を出す目的が少しは達成できたと、ホッと一息つけました。スキンケアを理解するための、基本の基本知識を わかってもらうための本として、あくまでも中立の立場で書いたことが理解していただけたと思っています。ある意味では、 特定の化粧品や健康美容食品、或いは特定の美容理論を奨めている美容書とは一線引けたのではないかと 思っています。それから、市販されている化粧品の多くを否定してかかっている本についても、「美肌手帖」を読むことで、 肌によいと言うことはどういうことなのか、考え直してみるきっかけが出来れば良いとも思っています。』
『それから最近は情報の広がりについても実感しています。そもそも「美肌手帖」が出版できたことは、この「ビューティ サイエンスの庭」というホームページを開いたことからきっかけが出来たのですが、リンクしているホームページも ずいぶんと増えました。そして、リンクしているホームページにも素朴な疑問の情報を載せてもらったり、新たに 質問コーナーを設けてもらったりして情報が広がっているのです。以前、フレグランスジャーナルという香粧品の専門誌に 連載をしていたときの主張が、ある意味証明されつつあると感じています。つまり、インターネットの世界では、同じ目的の 情報発信者がお互いにリンクを張り合って、価値のある信頼できる情報ならば、瞬く間にネットワークを広げて伝わる可能性 を主張していたのです。その反面、人間の好奇心をくすぐる、間違った情報も同じように伝わるのですが、そこで必要なことは 情報を鵜呑みにするのではなく、よく考えて理解をすることだとも主張しました。このことは、インターネットの世界だけのこと ではなく、テレビや新聞、雑誌などのマスメディアについても言えることですけど。』
『と言うことで、「美肌手帖」の出版により、私の美容についての考え方が違う形で広がることになりましたが、願わくば、同じ考えの
美容情報を持つ方々と多く知り合えたら良いなと思っています。実際に、現在数名の方々との交流も始まりました。
いずれ、このサイトで紹介していきたいと考えています。お楽しみにお待ち下さい。』
『このところ私へのメールの中に、私のような仕事をするためにはどのような勉強や資格が必要なのかの質問が増えて きています。このようなメールは、私にとって、とっても嬉しく、しかも勇気を与えてくれます。しかし、現実には化粧品会社で 私のような仕事する部門がきちんとあることは少ないと思います。だから、現実の会社組織をしっかりと把握した上で、 自分の化粧品に対する考え方をどうやって市場に伝えるか、そのことを考え抜いて行動してみるしかないと考えています。 現実の会社組織にその仕組みがないから諦めるのでは一生できないし、他責にして終わってしまうのではないでしょうか。 そこで、今回は、自分の経験を元に「ビューティサイエンティストになる条件」としてちょっと考えてみます。』
『そもそも私も化粧品会社に入ってから現在の姿を描いていたわけではありません。ただ、老化を防ぎ、若さを保つための 研究がしたくて入ったようなものです。特に、育毛剤の研究や老人性のシミの研究は入社時に強く思っていました。入社後、 研究部門では化粧品の肌への効用と安全性の研究を行い、様々な仮説の検証と考察を重ねてきました。実は、この時期の 研究と、学生時代に行っていたマウスによる乳ガンの研究が大きく貢献したことも、今考えてみると良かったようです。マウスの 乳ガンの研究は、知らない内に、乳腺のある部位、つまり皮フ組織もしっかりと観察していたのです。そのおかげもあり、化粧品の 肌効果についての研究は比較的効率よく行え、そこから得たことが、20年以上経った現在でも大きく役に立っています。 例えば、皮フの構造や各種細胞の絵を簡単に描け、働きを説明することが出来るのも、そのおかげです。それ以外でも、成分の 肌への浸透性、角質層の構造と仕組みなどの研究、また、他の研究者が行った研究成果を組み合わせて考えることなど、大いに 役立っていると思っています。』
『つまり、ビューティサイエンティストとして、まず一つの条件を考えてみるなら、学生時代も含めて、何らかの専門分野を
しっかりと研究して得た上で、その知識や物事を科学的に考える力が「美容」ということに関係していれば良いのでしょう。
「美容」ということについて仮説を立てて、調査、研究、論理的解析などをして、そこから何らかの法則みたいなものを見つけ
だし、「美容」に役立てることができれば、それはビューティサイエンティストの資格があると私は考えています。現在、私の
友人の中には皮フ科学、界面科学、心理学、文化人類学、医学などの分野を専門領域として、そこから「美容」を考えることが
できる人々がたくさんいます。私からすれば、このような話の出来る友人は全てビューティサイエンティストだと思っているのです。』