夢の城

― 登場人物 ―


桜の里(八)
― 4. ―

主要登場人物

中原克富(かつとみ)造酒(みき)
 中原郷中原村に住む中原郷の郷名主[→中原家]。女性関係に関してとくにふしだらな人物らしい[桜の里(七)1.]。市場町の出身で、そのころの名を「酒屋の克四(かつし)」といった。村西兵庫助(ひょうごのすけ)の要請で長野雅一郎(まさいちろう)を牧野郷に派遣した[桜の里(二)上]。自分の名を「勝富」という表記に変えようとして(主君の家の「正勝」の字とぶつかるので)許可されなかったが、ふたたび申請するつもりでいる[桜の里(七)1.]。なお、溺愛していた息子の範大(のりひろ)は牧野郷川中村で射殺された。
立岡(たつおか)拓実(ひろざね)府生(ふしょう)
 中原郷中原村の有力地侍。父親が隠退し、家を継いだばかりの若者だが、聡明で思慮深く、リーダーシップもあるらしい。中原郷の郷名主 中原克富(かつとみ) の甥にあたる[中原家・立岡家]。中原克富が坂口の家に向かったときき、克富を止めるために坂口古左兵衛・村尾右門とともに駆けつけてきた[桜の里(八)3.]
坂口のはる
 街道にいちばん近い家の家の娘。最近、中原克富の子を出産した。古左兵衛(こさへえ)の妹。
坂口家の赤子
 克富の子なのだが、克富は認知していない。自分の子ではないとまじめに信じているようである[桜の里(七)1.]
はるの両親
 古左兵衛とはるの両親。現在、坂口家は古左兵衛が当主なので(だから寄合に出ている[桜の里(八)2.])、すでに隠居しているらしい。
長野雅一郎(まさいちろう)雅継(まさつぐ)
 中原郷中原村の地侍(零細地主 兼 武士)。郷名主の中原克富(かつとみ)の命をうけ、村西兵庫助(ひょうごのすけ)らの企てに助力するために、克富の一子範大(のりひろ)とともに派遣されてきた[桜の里(二)上]。村西兵庫助に誘われて柿原党の一員となったらしい。寄合の席で範大が抜刀して広沢の毬を襲撃するのを制止できず、範大は射殺された。同時に、義倉放火事件に関わったことが毬によって暴露され、暴徒と化した村人に襲われたが、範大の遺体を残して逃げてきた[桜の里(七)5.]。村西兵庫助(この名主襲撃には参加していない)らとともに中原郷乗っ取りを計画していた[桜の里(八)3.]
大木戸九兵衛(くへえ)
井田小多右衛門(こだえもん)
 「村西一党」と呼ばれる三人のうち二人(もう一人は村西兵庫助(ひょうごのすけ)だが名主襲撃には参加していない)。牧野郷川上村の村人で、牧野・森沢二郷には数少ない柿原党の支持者だった。郷全体の米を隠してあった「義倉」に放火したことが暴露され、逃亡した。長野雅一郎と行動を共にする決意を固めており[桜の里(八)1.]、ともに中原郷乗っ取り計画を進めている[桜の里(八)3.]
坂口古左兵衛(こさへえ)古左(こざ)
 中原村の比較的若い地侍で、街道口の家に住んでいる。坂口のはるの兄で、はるも克富に孕まされて子どもを産んだところである[桜の里(八)2.]
村尾右門(うもん)
 中原村の比較的若い地侍。郷名主の中原克富(かつとみ)に妹二人(お(こん)とお多香(たか))が相次いで孕まされ、二人とも女の子を産んだらしい[桜の里(八)2.]

話題としてのみ登場する人物

中原範大(のりひろ)安芸守(あきのかみ)
 中原村の郷名主中原克富(かつとみ)の一人息子[→中原家]。柿原党の一員として牧野郷に来ていたが、朝の大寄合で(まり)を殺そうとし、森沢荒之助(あらのすけ)に射殺された[桜の里(七)5.]。溺愛されて育ったためか、常識に欠ける言動をところがあった。守護代定範(さだのり)に元服させてもらい、そのときに、「定範」の「範」の字と、定範の妻の父柿原大和守(やまとのかみ)忠佑(ただすけ)の「大和守」の「大」の字を貰ってその名とした。それが克富の大きな自慢の種である。
春野正勝(まさかつ)民部大輔(みんぶのたいゆう)
 玉井春野家第二代目の守護代(この地方の守護大名)で、現在の守護代 越後守(えちごのかみ)定範(さだのり)の兄[玉井春野家]
春野定範(さだのり)越後守(えちごのかみ)
 現在の三郡守護代(守護大名)[玉井春野家]で正勝の弟。克富の息子 範大 を元服させ、「範」の字を与えた。
柿原忠佑(ただすけ)大和守(やまとのかみ)
 春野定範の正妻の父[玉井春野家・柿原家]。竹井郡代官としてだけではなく、定範政権の重鎮として権勢を誇っている。新興金融集団「柿原党」の総帥でもあり、中原村の村人・地侍たちはこの柿原忠佑から銭を借りている。
(のぶ)
 中原克富の亡妻 (しげ) の妹で、立岡府生(ふしょう)拓実(ひろざね)の母。
柴山康豊(やすとよ)兵部少輔(ひょうぶのしょうゆう)
 巣山郡代官。柴山家は以前から巣山郡を支配しているが、巣山は山間のため全体に貧しい。また、兄 勝豊(かつとよ) が事故で急逝したのをうけて代官の地位に就いた。まだ若い。ただし中原範大よりは歳上のはずである。
評定衆(ひょうじょうしゅう)
 守護代の下で重要な決定を下す最高合議メンバー。「家老」などに相当する。これまでに評定衆筆頭の小森式部大夫(しきぶだゆう)健嘉(たけよし)[何をなすべきか(一)上]と杉山左馬允(さまのじょう)信惟(のぶただ)[安濃詣で(三)]が登場している。「牧野の乱」事件で春野家の有力家臣が定範の敵に回ったため、定範の下の評定衆にはあまり有力な家臣がいない[桜の里(八)]
(しげ)
 中原郷の先代の名主 中原令史(りょうじ)吉継(よしつぐ) の娘。すでに亡くなっている。町に出ていた折りに克富と知り合った。立岡拓実(のりざね)の母 宣 の姉[中原家]
市場町の商人の娘、榎谷(えのきだに)の娘
 商人の娘は藤野の美那、榎谷の娘は志穂のこと[春の朝]
(範大が襲った)罪なき小娘、(まり)(広沢の上の家の毬)
 牧野郷川上村に住む娘。中原範大の横暴から逃れるために牧野郷の米の隠し倉「義倉」に隠れていたところを長野雅一郎と村西一党に放火されて逃げ出し、そのとき火傷とすり傷を負った[桜の里(六)5.]。放火犯が長野雅一郎・村西一党であることを牧野・森沢二郷(森沢郷は牧野郷の隣)の合同寄合で暴露し、そのため中原範大に襲われて殺されそうになった[桜の里(七)5.]
(こん)
多香(たか)
 村尾右門の妹。相次いで中原克富の子(どちらも女の子らしい)を産まされた。
左近(さこん)
外記(げき)
 山端(やまばた)左近(さこん)次郎と池渕(いけぶち)外記(げき)五郎のこと。中原郷中原村の比較的年上の有力地侍でまとめ役的な地位にいる。この二人の中では池渕五郎のほうが歳が上である。なお、「左近」・「外記」が肩書きなのか名まえの一部なのかはよくわからない。

玉井春野家関係者等の系図

玉井春野家(三郡守護代家)と柿原家

正興─────┬正勝────────┬那世
 民部大輔  │ 民部大輔     │ 姉姫、深雪の方
 玉井春野家 │ 玉井春野家    │
 初代    │ 第二代      ├正稔
       │          │ 民部少輔、幼名:信千代丸
       │          │
       └定範        └美那
         越後守        妹姫
         現在の三郡守護代
         ‖
         ‖
柿原忠佑───┬田山の方
 大和守   │ (定範の正妻)
 竹井郡代官 │
 柿原郷名主 └柿原範忠
 柿原党総帥   主計頭
         竹井代官代

牧野家(牧野郷名主)と森沢家(森沢郷名主)

┌牧野興治─────芹丸
│ 治部大輔
│ 治部様
│ 牧野郷名主

└興治の妹
  ‖───────森沢荒之助
 森沢為順
  判官
  森沢郷名主

桧山家(港の名主)

 桧山興孝─────桃丸(幼名)
  織部正
  港の名主

杉山家(定範政権評定衆)

 杉山信惟─────宣十郎
  左馬允

浅梨家

 浅梨治繁     鍋屋の隆文
  左兵衛尉    藤野の美那
          銭屋の元資
          車屋の丈治 らの剣術の師匠

柴山家(巣山郡代官)

 柴山時豊─────興豊────┬勝豊────────弥勒丸
  兵部大輔     兵部大輔 │ 兵部大輔      勝豊の幼い遺子
  巣山郡代官    巣山郡代官│ 巣山郡代官
                │ 狩猟中に事故死
                │
                └康豊
                  兵部少輔
                  巣山郡代官

中原家(中原郷中原村、中原郷名主家)・立岡家

 中原吉継────┬茂
  令史     │ 吉継の長女
  中原郷名主  │ ‖────────中原範大
  中原村在住  │中原克富       安芸守
         │ 造酒        幼名:十郎丸
         │ 現在の中原郷名主
         │ 町の酒屋出身
         │
         └宣
           吉継の次女
           ‖────────立岡拓実
          立岡拓実の父     府生

広沢三家(牧野郷川上村)

 広沢勝吉
  広沢の上の家
  ‖──────┬美那
 木美      │ 広沢の美那
         │
         └毬
           広沢の中の家で
           育てられている

 加恵──────┬葛太郎(葛太)
  広沢の中の家 │
         └繭

 祖母…………………ふく
           広沢の下の家
           村西家の美千に仕えている