1995年に初めて行って以来、度々、足を運んでいる秋の恒例の大規模な大道芸フェスティバル。 今年も 11月4日(金)、5日(土) の2日間、観てきました。 今年は夜に大規模なショーが組まれていたりはしませんでしたが、 去年は雨に祟られて1日しか観られなかったので、1泊することにしました。 初日はいつものように10時過ぎに静岡入りして、11時半開始からナイトパフォーマンスまで。 二日目も11時からナイトパフォーマンスが始まる前の日暮れまで。 それでも見きれなかったと思いますが、気分的に余裕を持って観ることができました。
テーマがクラウン (道化師) ということで、大掛かりでアクロバティックなパフォーマンスがさほど目立たず、若干地味には感じられました。 今年は野外マイム劇のカンパニーが久しぶりに登場して (Cie L'Arbre à Vache)、それを楽しむことができました。 しかし、Bencha Theater、Duo Laos や Emily & Menno Van Dyke の ヴァーティカル・ダンス、アクロバット、ジャグリングの技を男女ペアのタンゴのダンスで見せるという オーソドックスな演出ながらも身体の動きの綺麗さをしっかり見せるパフォーマンスも良いものだな、と。 そんなことを再認識したりもしました。
過去の大道芸ワールドカップ in 静岡の写真集: 1999年、 2000年、 2001年、 2002年、 2004年、 2005年、 2006年、 2007年、 2008年、 2012年、 2013年、 2015年。
以下に観たカンパニー/パフォーマの中から主なものを個別にコメント付き写真で紹介。 パフォーマー名演目名については、自分で調べられる限り、 パフォーマーの公式サイトや、海外の大道芸関係のフェスティバルのプログラム などで一般的に用いられている表記に従っています。 調べがつけられなかったものについてのみ、 会場で配布されていたパンフレットに用いられていたものを用いています。
今年も光学望遠付きのコンパクトデジタルカメラを持って行ったのですが、結局使わず。 スマートフォンのカメラで済ましてしまいました。 最近は撮影しても後で整理する余裕もないので、それなら、すぐに twitter 等に投稿しやすい方がいいかな、と。
イギリスを拠点に活動するジャグラー/キャバレー芸人 Mat Ricardo。 お洒落なバーテンダーとでもいう設定なのでしょうか。 そんな人物設定といい、技の見せ方といい、オーソドックスな構成のキャバレー芸という感じでした。
アルゼンチン出身のクラウン Mina Clown こと Romina Andrea Krause。 可愛いのだけどちょっとネジが外れたようなキャラクターで、 観客の中から一人の男性を選び、その一人を恋人役として、ドタバタを繰り広げました。 スカートの中から次々と大瓶を取り出したりと、下腹につけた蛇口から水を出したりと、さりげなくマジックの要素も。 毒気なくたわいないですが、こういうのもロマンチックで可愛い笑いも良いものです。
“Duo Doll” 名義で出場していたロシア出身という少女と大人の男性というデュオ。 10歳という少女がコントーションしながらのアクロバット、というか、 大人の男性が人形のように振り回すパフォーマンス。 キッチュにカラフルな衣装とメイクで、 イケイケなビートに乗って超絶アクロバット&コントーション技を連発。 可愛いというよりもいけないものを観てしまったような気分になってしまいました。
神戸を拠点に活動している綱渡りパフォーマー 清水 ひさお 主催のサーカス・カンパニー。 2010年代に入って度々その名を見かけけて気になっていたのですが、今回やっと観ることができました。 ソロなどで観たことのあるパフォーマーもいますが。 今回初出場の静岡はフリンジ部門での参加だったのでこぢんまりとやるのかと思いきや、 テントを張って本格的な公演をしていました。
管楽器なしで doublebass と鳴り物打楽器と keyboards のみでしたが、音楽は生演奏。 30分程の時間でしたが、ポールダンス、シガーボックス、綱渡りにスウィンギングトラピースと、 本格的なサーカスアクトも含む盛りだくさんの内容。 ハイテンションの音楽で派手に技を見せ付けるような演出ではなく、大きな物語仕立ての演出でもなく、 緩いけど和やかな雰囲気のサーカスを楽しむことができました。
帰り際に夜のテントにも立ち寄ってみました。 ティシューのエアリアルのデュオもあったりと、夜の方がちょっと演目多く時間は長め。 緩く和やかな雰囲気な雰囲気は相変わらずながら、ちょっと情感も加わったでしょうか。
仮面劇を主なレパートリーとするフランス・アンジェのカンパニー Groupe Démons et Merveilles によるウォーキング・アクト。 夢遊病なのか単に眠れなくてなのかはよくわからないが、 寝ぼけ眼のパジャマ姿の2人が街中を歩いて、通りすがりの人々にグリーティング。 ただそれだけなのですが、フランス流のゆるキャラとでもいう造形の可愛らしさ。
日本の大道芸フェスではおなじみ、銀色の男 un-pa。 マイム・パフォーマー 重森 一 のウォーキング・アクトでのキャラクターです。 非人間的なキャラクターと違い、周囲にSF的な違和感を作り出します。
7本バトンを得意技とするフランスの女性ジャグラー。 去年も静岡に来ていましたが観られず、今回初めて観ました。 ここでは高度な技を見せるというより、女性的なキャラクタを押し出したパフォーマンス。 上品な淑女な設定はジャグラーにしては珍しいな、と思いつつ観ていたら、 最後に衣装変わりして、ハイテンションなジャグリングでフィニッシュ。
フランスのジロンド地方で2007年に結成されたカンパニーによる2013年に制作された路上劇。 老カップルのぎこちなく冴えない誕生日を描いた小一時間ほどのコミカルなマイム劇でした。 最後には男性が斃れてしまうのですが、大きな袋に入って花火を使って葬送すると、二人とも若返ってハッピーエンド。
雰囲気は楽しめましたが、客弄りはさほど行わず、屋外ならではの演出はあまり感じられず。 小劇場で上演してもよさそうな作品でした。
2001,2002年の L'Éléphant Vert: Faunèmes [写真] や、 2005年の Avanti Display: Mr. Lucky's Party [写真] など、 10年前余り前はこのような路上劇が度々来ていたのですが、近年は来なくなっていました。復活は歓迎です。
ところで、男女カップルの冴えないパーティで始まって、最後にパッと若返ってハッピーエンドいうプロットは、 Avanti Display: Mr. Lucky's Party と同じ。 一つの類型というか、お約束のパターンのようにも思われるのですが、何か元となるものがあるのでしょうか。 同じようなパターンの話でも、フランスのカンパニーとイギリスのカンパニーでは雰囲気が違い、そこにお国柄を見るようでもありました。
大道芸を主な活動場所とする日本人ポールダンサー めりこ。 井原 西鶴 『好色五人女』で取り上げられて有名になった「八百屋お七」の物語を使って、 恋仲の寺小姓との逢いたさに放火する所をファイアダンスに、磔をポールダンスとして構成。
「八百屋お七」のような古典を参照するのは良いアイデアだとは思うものの、 音楽使いや和装テイストの衣装もあってか、逆にキッチュな日本趣味というか、セルフオリエンタリズムのように感じられてしまいました。
西アフリカ・ガーナ出身の Isaac Aborah による皿回しならぬ大盥回し。 Highlife でも Ghana funk でもなく、guitar のリフも軽快な Congolose rumba 風の音楽にのって、ノリノリのパフォーマンス。
2007年に Ndux Malax 名義で出場していた3人組 [写真] のうちの1人だと思うのですが、確認できませんでした。
アルゼンチン出身で、スペイン・カタルーニャ州バルセロナを拠点に活動するアクロバッドの男女デュオ Duo Laos。 アクロバティックにタンゴを踊る所からはじまり、そのままタンゴ仕立てで行くかと思いきや、 後半はオーソドックスな演出のロマンチックなハンド・トゥ・ハンドのアクロバット。 特に女性の姿勢、手足の動きやポーズがとても綺麗で、雰囲気も良かったです。
曲も自作している日本のパフォーマーによる、 robot dance というか robot mime を物語仕立てで。 単調な日常生活を生きることはロボットのようという素朴な日常の実感を、 Jポップ 風の自作歌に乗せていたせいか、キッチュな印象。
フランス出身の女性バレエダンサーとオランダ出身の男性ジャグラーのデュオ Emily & Menno van Dyke。 Astor Piazolla らしきシャーブな演奏の音楽に乗って、 流れるように華麗でキレのいい tango を踊りながらのジャグリング。 オーソドックスな演出ですが、動きが美しく、引き込まれました。
アメリカを拠点に活動するサーカス一家出身の Fabio と Giuliano の兄弟。 静岡には2010年に出場しているとのことですが、今回観るのが初めて。 壺とかではなく人を回す足芸です。 ハイテンションな音楽に乗って超絶技見せるだけでしたが、見ごたえはありました。
タイ出身の男性エアリアル・パフォーマーによるティシューのソロ。 ティシューの男女ペアや女性のソロは観たことありましたが、男性のソロは初めて。 ストーリー性などの無いオーソドックスな演出で、 最初は女性ソロと変わらない繊細な演技に感じましたが、次第にダイナミックに。
昨年 [写真] に引き続き、 フランスのエアリアル・パフォーマー Aurélie Dauphin も登場。
昨年と同じ演目で、 イルカもしくはクジラをイメージしたと思われる海の生き物と、 彼らが海洋汚染の犠牲となる (海の塵で身動き取れずに死ぬ) というストーリーを、 ティシューのエアリアルで表現。
ベトナムのバランス芸とエアリアルの女性パフォーマー。 難易度の高い技をしっかり見せるだけのオーソドックスな演出でした。 まずは地上で、トゥシューズでつま先立ちで歩きながら、 concertina を弾きつつ、口に咥えたナイフの上にグラスの塔を乗せるというバランス芸。
続いて、短剣の咥えてその剣先に長剣をバランスする芸をしながらの、ティシューのエアリアル。 強風に煽られながらのパフォーマンスには、さすがにハラハラしました。
日本の大道芸フェスでもお馴染み、日本のマイム・パフォーマー 山本 光洋。 ちゃんと観たのは久しぶりでしょうか [写真]。 観客2人をステージに上げて拳銃決闘をコミカルに演じさせる芸に多めの時間を割いていたように感じました。 最後は、やはり、「チャーリー山本」。このネタは大好きです。今回は吹き矢に挑戦してました。
スペシャルプログラム「Clown on the street 路上の道化師たち」の枠で出場した ベルギーのクラウン4人組。 破局戦争後の世界で美しい物を探して回っている近世の軍隊の服装をした部隊の4人組という設定で、 客いじりはあまりせずに、コミカルな寸劇といったところ。 ピンとこなかったのですが、後ろにいたフランス語話者な方々に大ウケしてたので、言葉や文化的背景の違いで伝わらないものがあったのでしょうか。
続けてスペシャルプログラム「Clown on the street 路上の道化師たち」の枠で出場した スペインのクラウン El Gran Dimitri こと Antonio J. Gómez。 下手くそマジックショー仕立てのクラウンショーでした。