昨晩は、Top Ten 1999 を選考しつつ明け方まで独り呑んだくれていたので、 今日は二日酔いでぼろぼろ。 それでも、昼過ぎには起き出して、昨日の部屋掃除の続きをしていました。 昨晩は片付け途中のCDや本の山で寝る場所も無いくらいだったので…。
そんなわけで、昨晩 Top Ten 1999 を選考しながら考えていて、書きそびれたことを。 1990年代 (の定義を1990-1999とするか1991-2000とするかという問題もありますが。) の総括とったほどのものではないですが。 個人的に回顧して、1990年代の音楽趣味生活が最も充実していたのは、 半ばの1994-1996年頃だった、と感じています。
最初に趣味生活上大きな転機となったのは、 Myra Melford Trio, Alive In The House Of Saints (hatART, CD6136, 1993, CD) (当時のレヴューと 次作のレヴュー) と、 Ray Anderson / Han Bennink / Christy Doran, Azurety (hatART, CD6155, 1994, CD) (当時のレヴュー。 当時は、他のレヴューにしても、必ずしも今ほど気合を入れて書いていませんでした。 Mailing List へ速報気分で書いたものも多いです。) の2枚です。free jazz / improv. はそれ以前から少しは聴いてきていたのですが。 ま、そうでなければ、そもそも、こんな新譜には手を出さないでしょうけれども。 この2枚を聴いたことを契機にかなり集中的に聴くようになりました。 そして、1994年の末には、そういう音楽を求めて、 ジャズ喫茶 Mary Jane へ 今のように通うようになってしまいました。 特に、Ray Anderson / Han Bennink / Christy Doran, Azurety は、 1990年代的な free jazz / improv. の一形式と言える bass-less guitar trio を僕に気付かせてくれた作品であり、 今から振り返っても一連のその手の作品の中で最も良く出来た作品だと思います。
Mary Jane で様々な音を聴いただけでなく、 当時、常連客だった Mark Rappaport と出会い、彼に勧められて The Wire を購読するようになったのも、音楽趣味生活に大きな影響があったと思います。
free jazz / improv. から少し離れてみると、1994年から1996年というのは、 Massive Attack, Protection (Wild Bunch, WBRCD2, 1994, CD) (当時のレヴュー) から、 Everything But The Girl, Walking Wounded (ebtg / Virgin, CDV2803, 1996, CD) (当時のレヴュー) への3年間でもあったわけです。 そして、Tracey Thorn の歌声に誘われるかのように、 rock 的なイデオムを持ったものから techno 〜 breakbeats ものへ 僕の聴く音楽の重心が移った時期だったと思います。
実際のところ、1994年から1996年というのは、Various Artists, Headz (Mo'Wax, MWCD026, 1994, 2CD) から Various Artists, Headz II - Part A/B (Mo'Wax, MW061/2CD, 1996, 2CD/2CD) (当時のレヴュー) への3年です。 Crammed Discs / SSR の Freezone シリーズが始まったのが1994年であり、シリーズの中で一番の出来だと思う第3集 Horizon Dancing (SSR, SSR167, 1996, 2CD) (レヴュー) がリリースされたのが1996年です。 The Wire 誌がらみの企画 Extreme Possibilities も1995年に始まり、1996年に最も充実した Various Artists, United Mutations - Lo Recordings Vol.3 (Lo Recordings, LCD03, 1996, CD) (レヴュー) がリリースされています。 Bill Laswell が Axiom レーベルの一連の企画盤の第一弾ともいえる Axiom Ambient, Lost In The Translation (Axiom, 314-524 053-2, 1994, 2CD) をリリースしたのが1994年であり、1996年には Various Artists, Altered Beats (Axiom, 162-531 104-2, 1996, CD) (レヴュー) や Axiom Dub, Mysteries Of Creation (Axiom, 524 313-2, 1996, 2CD) (レヴュー) をリリースしています。 Virgin の Ambient (AMBT) 編集盤シリーズが始まったのも1994年で 1996年くらいまでのリリースは興味深かったと思っています。 こういった編集盤の ambient を鍵としたアプローチに疑念は感じていましたが、 やはり興味深い音がいろいろ詰まっていましたし。 こういった編集盤を手がかりに様々に聴き進んでいたのが、僕の1994-1996年でした。 そして、これらの一連の編集盤は、 1990年代の 脱ロック (ジャンルとなった post-rock だけでなく、一部の techno 〜 breakbeats を含む。) の動きを最も象徴的に表わしているように、今でも思っています。
そして、一連の編集盤が示した 脱ロック を1996年に最善の形で作品にしたのが、 Squarepusher, Feed Me Wierd Things (Rephlex, CAT037CD, 1996, CD) (レヴュー) と Stereolab, Emperor Tomato Ketchup (Duophonic UHF Disks, D-UHF-CD11, 1996, CD) (レヴュー) の2つだったようにも、僕は思います。
1997年以降は、この1994-1996年の3年間ほど 目新しい音楽の動きは無かったように感じています。 もちろん、それなりに良い作品もありますが、そのときの延長線上でしかなく、 コンセプトが変わったと感じたりすることは無かったように思っていますし。 そして、1999年にリリースされた作品を振り返ってみたときのつまらなさの多くは、 今日、The Wire 誌が (『Fader』誌でもいい) が推すような 新しい音とされているもののほとんどが、 1994-1996年の bass-less guitar trio なり 脱ロック なりの延長に過ぎない、 もっと悪いことには、ときとして保守的なジャンル形成の段階に入ってしまっている、 というところにあったように、僕は思っています。