二日連続で音盤雑記帖の更新。 今度は、Turkey (トルコ、ですね) 物をまとめて レヴューしました。
Burhan Ocal は、jazz / improv. 界隈のレコードで 時折みかけていた percussion 奏者。 もちろん、jazz / improv. 以外のミュージシャンと共演しているのも知っていて、 Burhan Ocal / Pete Namlook, Sultan Osman (Emarcy (Turkey), 016 038-2, 2001, CD) とか Burhan Ocal & Jamaaladeen Tacuma feat. Natacha Atlas, Groove Alla Turca (Doublemoon, DM0004, 1999, CD) とか、少し気にはなっていたんですが、入手できないでいたりしました。 しかし、久々に渋谷の音盤店 El Sur を覗いたら、まとまって入荷していたのでした。 実際聴いたところ、凄く面白かったわけじゃなかったですが、悪くなかったので。
Blues Alla Turca をリリースしている Istanbul, Turkey のレーベル Doublemoon も、以前から気になっていてサイトをチェックしたりしていたんですが、 昔に中古かアウトレットかで偶然見つけて入手していた第1弾リリースの Craig Harris & The Nation Of Imagination feat. Barbaros Erkose, Istanbul (Doublemoon, DM001, 1998, CD) が、イマイチだったので、ちょっと腰が引けていたのでした。 メジャーなオンライン・ショップは扱っていないし、 直接コンタクトを取って買うほどでもないかなぁ、と。 で、そんな Doublemoon が去年リリースしたサンプラー盤 Various Artists, East 2 West: Global Departures From Istanbul, Flight 001 (Doublemoon, DM0016, 2002, CD) も El Sur に入荷していたので買ってみました。ほほう。 やっぱり、在 Germany の Turk 系女性ラッパー Aziza A. は 気になりますねー。しかし、 Kendi Dunyam (Doublemoon, DM0014, 2001, CD) は入荷していませんでした。残念。 けっこう好きな Armenia 系打楽器奏者 Arto Tuncboyaciyan がゲスト参加している Wax Poetic も気になったんですが、 Wax Poetic (Doublemoon, DM002, 1998, CD) って、 US盤から Atlantic からリリースされているんですね。ほほう。 Wax Poetic のプロデューサたちと Doublemoon レーベルが新たに作ったレーベル X-ist というのも気になるんですが、サイトはトルコ語のみですね…。 どんなリリースをしているのか、わかりませんでした…。うーむ。
しかし、たいていの輸入音盤店の world music の Turkey のところを見ても、 Sezen Aksu や Tarkan のような pop か、arabesk や伝統的なな音楽、という感じで、 Doublemoon レーベルのCDなんてめったにみかけないんですよね… (たしかに、それほどマメにチェックしているわけじゃないですが)。 やはり、この手の音楽って、world music の主流のファンからすると ちょっとハズレるんだろうなぁ、と思ったりしてしまいます…。 ま、それもわからないわけじゃないけど、 そういうのだけが Turkey の音楽というわけではない、ってことで。 日本ではちゃんと紹介されてなさそうなので、 ここで紹介しようって気にもなるわけですが。
半月ぶりの音楽の話題は、少しずつ書き溜めたものの棚卸、ということで、 1月に触れた Turkey の音楽の話のフォローアップです。
その後、 Aziza A., Kendi Dunyam (Doublemoon, DM0014, 2001, CD) を入手しました。 ちょっとビート感が1990年代後半っぽい気もしますが、充分洗練された音作りでした。 悪くないんですが、歌声にもう一癖欲しいかなぁ、という気もしました。うむ。
さて、Doublemoon レーベル からリリースされているような Istanbul, Turkey の音楽シーンを紹介する記事 Jason Gross, "Global Ear: Istanbul" が The Wire 誌の Issue 205 (March 2001) に載っていたことにその後気付きました (定期購読しているのに、見落としてました…)。 この記事によると、この手の音楽は "Beyoglu beat" と呼ばれているようで、 Doublemoon の他に、 Ada Muzik、 Kod Muzik、 といったレーベルが拠点となっているようです。 僕は jazz / improv. 系のミュージシャンを追っていて Doublemoon レーベルとかに気付いたわけですが、 rock 方面からのアプローチしたミュージシャンも多そうですね。 ちなみに、Beyoglu (「ベイオウル」) は Istanbul のクラブ、ライヴハウスやレコードショップが集まっている地域で、 Ada Muzik のショップ、オフィスも Beyoglu にあるようです。
この記事を読んでいて最も気になるのは、やっぱり、 ZeN でしょうか。 4枚のアルバムをリリースしているようですが、いずれも未入手です。 2nd の Derya (Kod Muzik, 1996) は、 US盤が Thurston Moore (Sonic Youth) のレーベル Ecstatic Peace! からリリースされていたようです。 ちっ、既に Thurston Moore が手を付けていたか…。 Zen のメンバーによるサイドユニット Baba Zula は、 2nd アルバム Uc, Oyundan Onyedi Muzik (Doublemoon, DM0007, 1999, CD) を入手済みです。 Made To Measure っぽい、というか、 随伴音楽的な聴きやすさ (悪く言えばとりとめの無さ) があるように感じます。 ちなみに、1st アルバムは、Tabutta Rovasata (Ada Muzik, 1996) のようです。
The Wire の記事に出てくるバンドでは、 Replikas も、 USの alternative な音楽 e-zine Perfect Sound Forever (この e-zine はかなりお薦めです) に、 インタヴューが 載ったりと、注目されているようですね。ふむふむ。 Heavy Metal → Nirvana → Sonic Youth っていう影響の受け方が面白いです。 ZeN にしてもそうだけど、 Sonic Youth の影響、侮り難し、というか。あと、僕も大ファンだっただけに Violent Femmes (レヴュー) の名前が挙がっているのが、嬉しいですね。 アルバムを2枚リリースしているのですが、ジャケット・デザインもいいし。 サイトで試聴している限り、いかにも1990年代を通過した avant-rock ぽくて、なかなか良さげです。
The Wire の記事では名前がちょっと出てくるだけですが、 バンド Nekropsi の 英語でのインタヴュー記事 も見つけました。 "Doom Metal and Arabic folk" は、Arabic じゃなくて Turkish だろうが、と、 思わず突っ込み入れたくなったりする前振りが付いてたりしますが。 "Beyoglu beat" を支えるレーベル Ada Muzik に触れてますね。これが興味深いです。 このインタヴューによると、 Ada Muzik は1980年代半ばから活動しているレーベルで、もともと "Turkish folk and politically left wing musicians albums" をリリースしていたレーベルなのですね。 "Beyoglu beat" のような音楽のリリースを始めたのは最近のようですし、 けっこう玉石混交のリリースをしているような言われ方をされています。 しかし、"Ada is the one of the two biggest independent-like companies of Turkiye" って、もう一つのレーベルはどこなんでしょうね? 気になります。
実は、Ada Muzik については、"Beyoglu beat" というにはいささか jazz / improv. 寄りのCDをいくつか既に入手していたりします。 それをレヴューしておきました。 特に、去年リリースされた西アフリカの打楽器奏者との共演盤 Okay Temiz ve Ritim Atolyesi, Okay Temiz ve Ritim Atolyesi (Ada Muzik, 692646 50212, 2002, CD) は、打楽器アンサンブルとして迫力あるし、 それ以外の雑食的な感じも面白く楽しめました。 あと、Okay Temiz, Black Sea Art Project (Ada Muzik, 692646 50193, ?, CD) は、収録曲目や編集が微妙に違うのですが、以前にレヴュー (関連発言) した The Black Sea Orchestra, The Black Sea Project (Lyra, ML0660, 1998, CD) の同じライヴ音源の Turkey でのリリースでした…。うむ。 ま、顔ぶれも面白いライヴなので、ちょっとダブっててもいいか…。 しかし、違う面子での違うライヴの音源とかもリリースして欲しいです〜。 先日レヴューした、 Sultan Osman (Emarcy (Turkey), 016 038-2, 2001, CD) のユニット Burhan Ocal / Pete Namlook の第一弾リリース Sultan (Ada Muzik, 692646 50057, 1996/?, CD) とかもリイシューしていたりします。ふむふむ。
Beyoglu beat に話を戻すと、編集盤として、The Wire の記事には、 Various Artists, Aksi Istikamet (Kod Muzik, 1999) が紹介されているわけですが。他にも、どうやら、 Various Artists, Sesimizi Yukseltiyoruz! (Ada Muzik, 1999) という同様の編集盤もあるようです。 こういう編集盤を手がかりに聴き進んでいきたいなぁ、とは思っているのですが…。 問題は、どうやってCDを入手するか、ってことですね…。うーむ。 日本国内やインターネットで扱っているショップが、見つからなくて…。
レヴューとか書く余裕はあまりないんですが。 Istanbul, Turkey の新しい音楽の動き Beyoglu beat の 話のフォローアップ。
名前の元になっている Beyoglu (ベイオウル、旧称 Pera (ペラ)) って、 なるほど、Istanbul の中でも 最も欧風な地区なんですね。ほほう。 Beyoglu beat って呼称を知ったとき「渋谷系」みたいなと思ったんですが、 東京における渋谷というより、もっと港区っぽい (青山とか) 感じなのでしょうか。
ちなみに、Beyoglu beat の拠点の一つと言われているのが、やはり Beyoglu にある プロモータ Pozitif が 運営しているライヴハウス / クラブ Babylon。 ちなみに、レーベル Doublemoon は、Pozitif のレーベルです。 ここから見られる 過去のイヴェントの記録 (jazz、 roots (world music)、 electronica、 DJ、 地元 Turkey のミュージシャン、 演劇・ダンス) を見ていても、なかなか面白そうです。なるほどねー。 普通の Turkey のポップのライヴとかもやってそうだけど、 ここに出演している地元 Turkey のミュージシャンをチェックすると、 いろいろ面白そうな気がします。
こうやって、Beyoglu beat 界隈についてウェブサイトの情報を基づいて調べていると、 Babylon での jazz / roots / electronica / DJ っていう分類・組み合わせといい、 そこに登場するミュージシャンの顔ぶれといい、これって、むしろ、最近になって欧州各地で見られる 実験的・前衛的な指向を持つ音楽と多文化的な folk / roots 的な音楽の併置・混交 の Istanbul, Turkey 版といえるものではないか、と、つくづく思います。 確かに、roots 的な部分に Istanbul, Turkey らしさというかローカリティがあるし、 そこにも面白さがあるわけですが。 例えば、最近注目度が高い Norway の音楽シーンで起きていることと大きくは変わらない、というか。 北欧 folk 的な旋律や Yoik 的な歌唱、 accordion や fiddle、nyckelharpa のような楽器の代わりに、 Turkey 的な節回しや saz や darbuka、ney のような楽器の音色が使われているわけだけれども、 Istanbul における Doublemoon レーベルは、 Norway のシーンにおける Jazzland レーベルの ようなもの、と捉えたほうがしっくりくるように思います。 Babylon には、Bugge Wosseltoft や Wibutee、Beady Belle、Mari Boine とか 出演したことあるし。 他に Beyoglu beat と並行して語られるべきなのは、 僕が 中東欧の音楽として継続的に紹介してきている St. Petersburg の Sergey Kuryokhin Fest. 界隈のシーン (関連発言) とか、 Moscow の DOM Center や GreenWave の界隈のシーン (関連発言) とか、 Poland の "yass" 界隈のシーン (関連発言) とか、 Belgrade, Serbia の Free B92 / Ring Ring Fest 界隈のシーン (関連発言) とか、 Greece の "tzaz" 界隈のシーン (関連発言) とか、 中東欧からは外れるけれども、Atlantic Waves Fest. で紹介されるような Portugal のシーン (関連発言) とかだと、僕は思うんですよね。
そうそう、前の発言で、 「問題は、どうやってCDを入手するか、ってことですね…。うーむ。日本国内やインターネットで扱っているショップが、見つからなくて…。」 と書いたわけですが。まだ入手できたわけではありませんが、 El Sur が取り寄せてみてくれることになりました。 (取り寄せ可能リストに載っていないのに、無理を聞いてくれてありがとうございました。) 店のスタッフの方といろいろメールをやりとりしていて知ったのですが、最近、 Doublemoon レーベルの代表が プロモーションで来日していたのですね (北中 正和 「ポップス日記」 の2003/2/26(水))。 お、どうやら、日本では、アニマ・ミュージックが独占輸入販売することになったようです (メールマガジンでの記事)。 これで、日本でもそれなりに知られるようになるかしらん。 こういう日本の音楽業界の動向を知ると、 Doublemoon って、 どうやら、日本では1990年代的な world music の延長というか、 その最新形という感じで紹介・受容されつつあるような気がします。 どうも、Doublemoon だけ「今までに無いほど洗練された Turkish pop」として 切り売りされているような違和感も、僕は強く感じてしまいますが…。 ま、僕の視点もバイアスかかってると思いますし。 現地に足を伸ばして紹介している人もいるし、実際はそんなものなのかもしれません。 紹介しようとしている人の音楽業界内での立ち位置とか、 プロモーションやマーケティングの都合とか、いろいろありそうな気もします。 そういう紹介され方もアリなのかなぁ、とは思いますが…。
あ、今年は、日本におけるトルコ年だったんですね。 これを機会に、Beyoglu beat 界隈のミュージシャンが来日したりしないかしらん。 わくわく。
と、思い出したので、 Istanbul, Turkey 界隈の動きのフォローアップ。
Pozitif のサイトを観ていて気付いたのですが。 Doublemoon に electronica and jazz な兄弟レーベル Numoon って出来たんですね。第一弾のリリースは、 Ilhan Ersahin / Kenny Wollesen / Jesse Murphy, Love Trio (Numoon, NM001, 2002, CD) ですか。Wollesen って Bill Frisell Trio のドラマーですね。 DJ Logic も参加しているし。これ、聴いてみたいなぁ。 こっちのレーベルの活動も期待したいものです。
それから、Istanbul で、 Adventures in British Music ってイヴェントがあるんですね。 "Combining an eclectic mix of current British music including jazz, electronica and roots, ..." みたいな話や、 このイヴェントで取り上げられているテーマ (roots / identity / fusion / format / change / freedom / connection / modern / politics) って、 今の欧州のあちこちで起きている音楽の動きを巧く表現しているようで、とても興味深いです。 まるで、The Wire の副題 "Adventure in Modern Music" を意識したような "Adventure in British Music" という題も、London でのイヴェント "Good Shit from Norway" (Fartiliser Festival) とか、 "Exploratory Music from Portugal" (Atlantic Waves Festival) とかとも共通しますし。それも、London で Turkey の音楽を特集しているのではなくて、その逆、 Istanbul で UK の音楽を特集している、というのも面白いです。
一ヶ月余り前に注文していた、 Turkey (トルコ) の "Beyogle beat" 関連のCDがまとめて入荷しました。 注文分が全て入荷したわけではないのですが、一度に10枚。 金曜の晩に受取りに行って、この週末を使ってひたすら聴いていました。 一応、ひととおりは聴き通しました (偉いぞ>自分)。はあ…。 日本では情報が少ないですし、 一度には無理でも少しずつ紹介していきたいと思いますが。
Doublemoon だけではなく、 Ada Muzik や Kod Muzik の CDをいろいろ入手したわけですが、こうやって聴くと、 Doublemoon 界隈に目立つ breakbeats jazz っぽいものだけでなく、 ZeN や Replikas のような post-rock 〜 avant-rock 的な音を持つバンドもけっこうあるんだなぁ、と。 まだまだ、奥が深いです。 そう、ZeN が在籍するレーベル Kod Muzik のサイトを見たら、 このレーベルが主催する British Modern Music Festival 2 のサイトが目に入ったんですが。ラインナップがまた…。 Doublemoon というか Pozitif の Adventures in British Music がらみの過去のイベントのラインナップといい。 ま、"Beyoglu beat" やその界隈の音楽が、 Istanbul, Turkey でも決してポピュラーに聴かれている (日本における J-POP のように) ものではない、というのは充分に想像されますね。
で、少しずつ紹介する Turkey 音源ですが、 入手したばかりのCDについて書くのはさすがに辛いので、 今回は、以前に入手済みだった Ilhan Ersahin, Harikalar Diyari (Wonderland) (Nublu / Doublemoon, DM017, 2002, CD) をレヴュー。 併せて、今回入手した Doublemoon のサブレーベル Nomoon の3タイトル Ilhan Ersahin / Kenny Wollosen / Jesse Murphy, Love Trio (Nublu / Numoon, NM001, 2002, CD) 、 Nublu, presents The Temple Of Soul Sessions: Vol.1 (Nublu / Numoon, NM002, 2002, CD) と Nublu, presents The Temple Of Soul Sessions: Vol.2 (Nublu / Numoon, NM003, 2002, CD) を速報という感じで 軽く紹介。 さらに、Wax Poetic, Wax Poetic (Doublemoon, DM002, 1998, CD) も併せて紹介して、 Nublu (Ersahin の運営する New York のスペース/レーベル) 関連盤全5枚一挙レヴューも考えたんですが。 Wax Poetic は Norah Jones の歌と Arto Tuncboyaciyan の奇声が聴かれる "Angels" くらいしか聴き所がありません。 というか、半端に古い作品でプロダクションも古臭く感じてしまうし、あえて取上げるほどではないか、と。 一枚一枚紹介していたら、きりがないし。