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Post-punk 関連発言 (2009年)

[2346] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Tue Jan 27 0:02:18 2009

定期購読しているイギリス (UK) の音楽雑誌 The Wire の最新号 (Issue 300, Feb. 2009) が届きました。ちょうど第300号か〜。 で、書評欄 (Print Run) を見て、Simon Reynolds の新刊に気付きました。

Simon Reynolds といえば、 post-punk 歴史本 Rip It Up & Start Again: Post-Punk 1978-1984 (Faber & Faber, 2005) [関連発言]。 その続編というかアウトテイク集というか、その原材料とも言えるインタビュー集 Totally Wired: Post-Punk Interviews And Overviews (Faber & Faber, 2009) が2月に出るようです。これは楽しみ。 ちなみに、この本のタイトルは、Giles Peterson によるコンピレーション・シリーズ Totally Wired (Acid Jazz, 1989) からではなく、 The Fall のシングル曲 "Totally Wired" (Totally Wired, Rough Trade, RT056, 1980, 7″) から採られたものでしょう。扱っている内容からして。

しかし、"Totally Wired" という題を見て acid jazz ではなく The Fall の方を先に思い浮かべる人というのは、少いかもしれません。 自分の場合は、Mark E. Smith の "Totally wired!!" という叫び声が 脳内再生されてしまうくらいだったりしますが。 実は、初期 (〜1983) のアルバムは Sanctuary の再発CDでコンプリートしてますし、 Beggars Banquet 時代以降 (1984〜) Middle Class Revolt (1994) までのアルバムは ほぼ同時代的にCDを買ってきているくらいだったりします。 <そこまで The Fall が好きか? (自問)

しかし、Rip It Up & Start Again の日本語翻訳が出る前に、 次の本が出てしまうとは。 Rip It Up & Start Again は翻訳が出るという話が あったはずなのですが、いったいどうなってしまったのでしょう……。 むむむむ。 時間ができたら、Rob Young, Labels Unlimited: Rough Tradeみたいに、 一章ずつの概要紹介をここでやろうかなあ、と思ったり。

[2348] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Sun Feb 1 0:59:16 2009

先日お伝えしたとおり、イギリス (UK) の音楽誌 The Wire が、最新号 (Issue 300, Feb. 2009) で第300号です。これを記念して、 The Wire 300 という特集ページというかブログが28日に開設されました。 雑誌発行期間中に現れた様々な音楽のトレンドや先駆的な動きを分析し現在にも情報と影響をもたらすような記事を載せていくとのことです。 過去に掲載された記事にイントロダクションを付けて掲載する、というスタイルのようです。 2月中投稿が続けられるとのこと。どういう記事が上がってくるのか楽しみです。

その第一弾は Simon Reynolds“On The Hardcore Continuum”。 1990年頃の Hardcore Rave から Jungle / 2-Step を経て Grime に至る流れを追う記事で、 全7記事が予定されています。一日1記事のペースで投稿されています。 また、blissblog (Reynolds のブログ) にも関連エントリが同時進行で投稿されています。 参考までに、投稿済みの The Wire 300 のエントリと関連する blissblog のエントリへのリンクを以下にリストアップしておきます。

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厭な予感がする……と先日書いた Factory Records: Communication 1978-1992 (Rhino UK, 2564-69789-0, 2008, 4CD+book box set) が届きました。 A Factory Sample (Factory, FAC2, 1978, 2×7″) の 裏ジャケットをベースにしたデザインのDVDケース大の本付パッケージで、 デザインは Peter Saville のデザイナー集団 Saville Parris WakefieldFactory Records: The Complete Graphic Album (Thames & Hudson, 2006) [レビュー] を編纂した Matthew Robertson。 Jon Savage によるコンパイルで、 Palatine: The Factory Story 1979-1990 (Factory, FACD400, 1991, 4CD box set) のリイシューとしなかった理由にも触れています。 あと、Paul Morley が “The Essay of November 4th 2008” というテキストを寄稿しています。 手抜き無しの丁寧な作りです。これでGPB29.00 (4000円弱) なら買って損なし。 Palatine を当時買いそびれた人なら必携、でしょう。 追ってちゃんとレビュー書くつもりですが、速報。

GBP安の勢いもあって、併せて The SmithsThe Smiths Singles Box (Rhino UK, 2008, 12×7″ box set) も買ってしまいました。当時シングルは12″で買っていたので、7″は持ってませんし。 限定版ということもあって、つい。 小さなピンバッジが4個、オマケに付いてました。 しかし Rough Trade 印は完全に削除されてますね……。 実際に手に取ってみると、ちょっと微妙……。うーむ。

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Cherry Red を配給していた イギリス (UK) の大手独立系レコード配給会社 Pinnacle が去年末に経営破綻した、 というを先日したばかりですが、 また、経営破綻のニュースが。

techno/IDM 関連のグラフィック・デザインで知られる、というか、そのデザインに多大な影響を与えた シェフィールド (Sheffield, UK) のデザイナー集団 The Designer Republic が破産し営業停止しました [“The Designers Republic Is Dead; Long Live The Designers Republic”. Creative Review Blog. 2009-01-23]。 1990年代にシェフィールドのレコード店/レーベル Warp のロゴやジャケット・デザインを手がけ、 そのレーベルのイメージ作りに大きく貢献したデザイナー集団でした。 1990年代中頃は Warp のリリースをそれなりに追いかけおり、 そのデザインい親しんでいただけに、ショック。

ま、陶磁器の Wedgwood や紅茶の Whittard のような 日本の普通の人でも知っているような有名ブランドですら経営破綻しているような状況。 今後も暫くはこういうニュースが相次ぐんだろうなあ……。

営業停止を伝える記事によると、 The Designers Republic 23年間の活動をまとめた本がもうすぐ完成、 Ian Anderson (The Designers とデザイン・ジャーナリスト Liz Farrelly の コラボレーションによる本も制作中とのこと。 こちらの出版を楽しみにしたいものです。

[2352] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Fri Feb 13 0:33:28 2009

先日軽く紹介した Simon Reynolds の新刊 Totally Wired: Post-Punk Interviews And Overviews (Faber & Faber, ISBN978-0-571-23549, 2009, paperback) が届きました。post-punk 歴史本 Rip It Up & Start Again: Post-Punk 1978-1984 (Faber & Faber, ISBN0-571-21569-6, 2005, paper) [関連発言] の続編というか、その素材のインタビューなどを集めた本です。 インタビュー32編とエッセー7編を収録しています。目次は以下のとおり。

Introduction ix
PART ONE: INTERVIEWS
Ari Up (The Slits, singer) 3
Jah Wobble (Public Image Ltd, bassist)16
Alan Vega (Suicide, singer) 27
Gerald Casale (Devo, bassist/singer) 40
Mark Motherbaugh (Devo, vocalist/keyboard player) 54
David Thomas (Pere Ubu, singer) 57
Anthony H. Wilson (Factory Records, co-founder) 69
Bill Drummond (Zoo Records, co-founder; Echo and The Bunnymen and The Teardrop Explodes, manager) 79
Mark Stewart (The Pop Group, singer) 94
Dennis Bovell (Producer) 103
Andy Gill (Gang Of Four, guitarist) 108
David Byrne (Talking Heads, singer/guitarist) 118
James Chance (The Contortions and James White and the Blacks, singer/saxophonist) 131
Lydia Lunch (Teenage Jesus and the Jerks, singer/guitarist) 143
Steve Severin (Siouxsie and the Banshees, bassist) 154
Nikki Sudden (Swell Maps, singer/guitarist) 159
John Peel (Radio One, DJ) 168
Alison Statton (Young Marble Giants, singer) 174
Green Gartside (Scritti Politti, singer/guitarist) 177
Gina Birch (The Raincoats, singer/bassist) 194
Martin Bramah (The Fall, guitarist; The Blue Orchids, singer-guitarist) 203
Linder Sterling (Ludus, singer/graphic designer and artist) 216
Steven Morris (Joy Division, drummer; New Order, drum programmer) 229
Richard H. Kirk (Cabaret Voltaire, multi-instrumentalist) 244
Alan Rankine (The Associates, multi-instrumentalist/music director) 258
Paul Haig (Josef K, singer) 272
Phil Oakey (The Human League, singer) 277
Martin Rushent (Producer) 295
Edwyn Collins (Orange Juice, singer/guitarist) 307
Steven Daly (Orange Juice, drummer) 319
Paul Morley (Journalist; ZTT Records, aesthetician) 323
Trevor Horn (Producer; ZTT Records, co-founder) 337
PART TWO: OVERRVIEWS
John Lydon and Public Image Ltd: Two Biographies 351
Joy Division: Tow Movies 358
Ono, Eno, Arto: Non-musicians and the Emergence of ‘Concept Rock’ 357
Mutant Disco and Punk-Funk: Crosstown Traffic in Early Eighties New York (and Beyond) 381
London Glam City: Poseurs, Dreamers, Heroes and Monsters, from the Bromley Contigent and Blitz to the Batcave and Leigh Bowery 401
A Final Interview: Simon Reynolds 408

Reynolds は Young Marble Giants のアンソロジー Colossal Youth & Collected Works (Domino, REWIGCD32X, 2007, 3CD) [レビュー] に詳細なライナーノーツを書いていたので、Alison Statton のインタビューが短いのは意外。 ざっと斜め読みしてみましたが、 周囲の女性ミュージシャンがフェミニストばかりだった件 [関連発言] とかそういうことは訊いてないですね。残念。

あと、最後の Reynolds へのインタビュー記事をざっと斜め読み。 週刊ロック雑誌の果たした役割の話の中で、 「[引用者注:かつての Lester Bangs のような]ロック・ライターの 神託的な (oracular) 意見というのが、今や姿を消してしまった。 皆が目指している手本は Greil Marcus のような人物を頂点とする アナリストや歴史家だ」のようなことを言っているのが興味深いです。 The Wire 誌は確かにアナリスト/歴史家タイプのライターの巣窟ですが、 他の雑誌はそうでもないのかなあ、と思っていましたが……。 あと、Greil Marcus の Mistery TrainLipstick Traces は アナリスト/歴史家的なロック評論の頂点だと確かに思いますが、 連載 Real Life Rock は1990年代初頭くらいまで最新の動向を追っていて かなり oracular だったけどなあ。 “Real Life Rock Top Ten 1979” での Gang Of Four へのコメント “if this is the future of rock, I can't wait” とか。 ちなみに、この言葉は Greil Marcus の名言の一つだと思う。

って、まだそのくらいしか読む時間が取れていません。

ちなみに、Rip It Up And Start AgainTotally Wired に関連して開設されているブログとしては、以下のものがあります。 乱立していて、どこに何が書かれているか判り辛くなってますが……。

Simon Reynolds といえば、 イギリス (UK) の音楽誌 The Wire が第300号記念で開設したブログ The Wire 300 で連載している “On The Hardcore Continuum”。 全7記事の掲載が終りました。 Reynolds 自身のブログ blissblog の関連エントリと合わせて、 The Wire 300 のエントリを以下にリストアップしておきます。

Simon Reynolds の次は、Alan Licht による書き下ろし記事 “On The Emergence Of Experimental DJ Culture”。 DJ Spooky や DJ I-Sound、DJ Olive など New York の jazz/improv 近傍で活動しているDJを紹介する記事のようです。 って、ちゃんと読んでません。

こんな感じで Totally Wired も暫く積読になりそうな感じなので、 とりいそぎ目次とリンク集のみを速報。 こうして目次やリンク集を載せておくと、自分にとっても便利なので。

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Totally Wired と一緒に ロンドン (London, UK) のレコードショップ Rough Trade Shops の アニュアルのコンピレーションの2008年版 Rough Trade Shops: Counter Culture 08 (Rough Trade Shops, CC08, 2009, 2CD) が届きました。 alt/indie rock/pop はなかなかフォローできていないので、 キャッチアップのために、毎年買うようにしてます。

今年の収録曲の中で去年自分が買ったのは2562だけ。 けど、2562は Top 10 に入れた程だったので、 納得のエントリー。 CD1 の冒頭いきなり 4AD や Bella Union の音源が続きますね。 CD1 は indiepop ぽく、CD2 の後半に critical beat/electronica なもの。 ざっと一通り聴いた限りでは、アルバムを買ってまで、というのがありません……。

しかし、Rough Trade Shops: Counter Culture 08 のセレクションが 自分が聴いているのと被らないのはまだしも、 The Wire 誌の “2008 Rewind” (Issue 299, January 2009) のセレクションも自分が去年買ったのとほとんど被らなかったし、 最近の自分の聴き方は、そういう所が外れてきてしまっているかもしれない、と思ったり。

ところで、Rough Trade Shops のブログ ができています。 Simon Reynolds と同じく Blogger (blogspot.com) を使っています。 Blogger は Google のブログサービスですが、 Rough Trade Shops にはもっとインデペンデントに、 オープンソースの WordPress を自前のサイトにインストールして、って感じでやって欲しかった……。

[2422] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Thu May 28 22:44:11 2009

既に流れてしまいましたが、一ヶ月余り前にこんなことを書きました。

中学高校時代 (1980年代前半) に聴いていた post-punk / new wave のレコードは 図書館/レンタルで済ましたものも多く、持っていてもアナログのみ。 CD化後も中古/アウトレット落ち待ちにしたままになっているものがたくさんあります。 1000円を切って出ていたら買ってもいいかな、という感じで。 しかし、GBP安 (最近でこそGBP/JPYは150近くまで戻しましたが、 1月には120近くなった) おかげで、 イギリスで買えば新品でも1000円程度のCDが多くなってしまいました。 一方で、特に world music というか folk/roots な新譜がパッとしないので、 つい、post-punk / new wave のCDを落穂拾いしがちです。 そんなCDについて時々談話室で軽く紹介するのも悪くないかなあ、と思いつつあります。 (そういう話題を読みたい読者がどれだけいるのか判断しかねますが。)

というわけで、そんなCDの話を軽い感じで。

1980年代前半に活動したヨークシャーのリーズ (Leeds, Yorkshire, England) 出身の synth pop 2人組 Soft Cell (Marc Almond & Dave Ball) [関連レビュー] の The Twelve Inch Singles (Some Bizzare / Mercury, 548 506-2, 2000, 3CD) は、 1981-84年にリリースした12″ 10枚と1991年にリリースした remix の12″ 2枚の合計12枚を CD 3枚に完全収録したアンソロジー。 Soft Cell のようなグループは、やっぱり、アルバムより12″。 一番の目当ては Daniel Miller 制作の “Memorabilia”。 Cabaret Voltaire にも繋がるかっこよさ。 もちろん、Motown song メドレーの “Tainted Love / Where Did Our Love Go” も良。 って、やっぱり、初期の方が良かったのかな、と。 1980年代前半当時、左翼的な政治性を出した Depeche Mode [関連発言] に比べ、Soft Cell は快楽主義的。 そこが当時は少々苦手だったのですが、今ではそれも悪くないかな、と。 ま、今でも Depeche Mode の方が好きですが。 ちなみに、これは、1982年までにリリースされた6タイトルを box set にまとめた The Twelve Inch Singles (Some Bizzare, CELBX1, 1982, 6×12″ box set) が、1991年に増補の上 CD single の box set になったのですが、 その廉価版に相当するものです。

併せて、Soft Cell とは同郷リーズ出身の synth pop ミュージシャン Fad Gadget (aka Frank Tovey) の The Best Of (Mute, CDMUTEL7, 2001, 2CD) というのも入手しました。 1979-85年 にリリースした single 音源からCD 2枚分を集めたアンソロジーです。 あと、2001年の remix single から2曲も収録しています。 pop じゃない Depeche Mode のような音は嫌いじゃないんですが、良いなと感じる曲が Mute Audio Documents «1978-1984» [レビュー] 収録曲と被ってしまっているところが……。うーむ。

[2425] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Thu Jun 4 1:07:42 2009

最近落ち穂拾いした 80s post-punk / new wave 関連のCDについて、徒然と。 といっても、今回は1980s後半の indie pop [関連発言]。

今日の YouTube:
taken from the video compilation Shelter (1987)

エジンバラ (Edinburgh, Scotland) 出身の NME C86 組 indie pop グループ Shop Assistants の再発 Will Anything Happen (Cherry Red, CDMRED374, 2008, CD) は、Blue Guitar レーベル音源を完全収録。 唯一残したアルバム Shop Assistants (Blue Guitar, AZLP2, 1986, LP) に シングル I Don't Wanna Be Friends With You (Blue Guitar, AZURX2, 1986, 12″) のB面2曲を併せたもの。 アナログで持っていることもあり、 1990年代後半に一度 Overground レーベルがCD化した際は手を出さなかったのですが。 Shop Assistants は 53rd & 3rd からのリリースもあったこともあり、 そして、音楽的にも近かったので、 当時の自分の中では Talulah Gosh に並ぶグループとして聴いていました。 むしろ、ファニーな Amelia Fletcher (Talulah Gosh の女性歌手) の歌声よりも、 醒めた感じの Alex Taylor (Shop Assistants の女性歌手) の歌声の方が好きだった、 ということを、久しぶりに聴いて思い出しました (遠い目)。 Talulah Gosh 〜 Heavenly のようにコンスタントにリリースを続けていたら、 少しは違ったのではないかな、と。 ちなみに、プロデュースは、初期 Rough Trade のインハウス・プロデューサーでもあった [関連発言] The Red Crayola の Mayo Thompson です

Blue Guitar は1980年代半ば短命に終わった Chrysalis 傘下のレーベル。 The Mighty Lemon Drops のためのレーベルのようなものでしたが、 このレーベルといえば、ex-The Raincoats なグループ Dorothy [レビュー]。 Dorothy の Blue Guitar 音源もCD再発してくれないかなあ> Cherry Red。

今日の YouTube:
The Popguns: “Waiting For The Winter” (1989)

NME C86 組から少々遅れて主に1990年前後に活動した ブライトン (Brighton, East Sussex) の indie pop のグループ The PopgunsAnother Year Another Address: Best Of (Cherry Red, CDMRED135, 1996, CD) が2006年に再プレスされてます。 1990年前後に Midnight Music レーベルに残した音源からのベスト盤です。 The Popguns は indie pop のグループとしては後発組。 メジャー RCA 移籍前の The Wedding Present の drums 奏者 Shaun Charman が参加したグループとして、The Popguns を知りました。 しかし、その頃には、indie pop への新鮮味が失せてきていて、 彼らについては 12″ を一枚買っただけでした。 で、2005年に Rough Trade Shops: Indiepop 1 [関連発言] に収録された “Waiting For The Winter” で、再発見。 コンピレーションを買ってもいいかなと思ったのですが、ちょうど廃盤状態だったのでした。 そのまま忘れかけていたのですが、やっと入手。 “Waiting For The Winter” がベストソングでしょうか。 ま、indie pop としても個性的という程でもなく、 歌詞は普通のラブソングというか失恋の歌ですが、Wendy Morgan の歌声がかなり好みです。

しかし、Shop Assistants にしても、The Popguns にしても、 いかにも低予算なミュージック・ビデオ。 ま、そういう所も indie pop らしいといえばそうですが……。

Cherry Red からのリイシューといえば、indie pop の先駆的グループ The Monochrome Set 4thアルバム The Lost Weekend (Blanco Y Negro, BYN5, 1985, LP) が、関連シングル音源をボーナストラックにCD再発されました (Cherry Red, CDMRED383, 2009, CD)。 当時は借りて済ましてしまったので、聴くのも20年ぶりくらいでしょうか。 よく聴いたような記憶もあるのですが、思い出の中で美化してしまっていたかしらん。うむ。 やはり、このグループのクリエイティヴ・ピークは DinDisc 時代だったのかも。 しかし、2008年の Bid へのインタビューに基づくライナーノーツが、 Blanco Y Negro レーベル設立 [関連発言] 直後の混乱の様子が伺える内容で、興味深いです。

[2433] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Thu Jun 18 23:25:30 2009

腰痛で頭がちゃんと回らないので(弱)、 最近落ち穂拾いした 80s post-punk / new wave 関連のCDについて、徒然と。 post-punk リハビリ日記、というか。

Buzzcocks 活動停止後の1980s前半に歌手/guitar 奏者 Pete Shelley [MySpace] の残したアルバム2タイトルが、 2006年にボーナストラック入りで Shelley 自身のレーベル Varep から再発されています: Homosapien (Genetic / Island, ILPS9676, 1981, LP; Varep, VARCD001, 2006, CD [with bonus])、 XL-1 (Genetic / Island, XL1, 1983; Varep, VARCD002, 2006, CD [with bonus])。 この2枚のアルバムのプロデュースは Martin Rushent。 オリジナルをリリースしたレーベル Genetic も Rushent のレーベルでした。

この頃の Pete Shelley のソロの音楽は、 Buzzcocks meets The Human League と形容されることがあります。 確かにそのような音楽なのですが [MySpace で試聴]、 むしろ、Homosapien (1981) での Martin Rushent による synth pop の試みが、 The Human League: Dear (1982) [関連発言] で開花した、という方が適切でしょう。そんなことを意識すると、 Buzzcocks の3rdアルバム A Different Kind Of Tension (1979) にその流れの兆しを聴くことができるように思います。

当時の個人的な思い出といえば、 XL-1 からのシングル “Telephone Operator” の12″ が、 輸入レコード店 CISCO で猛プッシュされていたこと。 Martin Rushent 〜 The Human League 繋がりということは当時は意識していませんでしたし、 そういうプッシュのされ方をしていたという記憶もありませんが。 少々メジャー寄りの new wave という印象は否めず、買うことはありませんでした。

今頃になってちゃんと聴いてみようと思ったのは、 Simon Reynolds: Totally Wired (Faber & Faber, 2009) [関連発言] に載った Martin Rushent のインタビューが興味深かったから。 1967年以降 Emerson Lake Palmer や Yes のエンジニアをしていた Rushent は、 punk 期以降は、Andrew Lauder (A&R) 下の United Artists (UK) レーベルで、 Buzzcocks と The Stranglers のプロデュースを手がけていました。 そんな Rushent が独立してスタジオ/レーベル Genetic を設立。 同じ頃に United Artist を独立して Rader を設立した Lauder と共に活動したものの、 Rader と WEA とのトラブルに巻き込まれたり。 で、その後、なんとかリリースに漕ぎ着けたのが Pete Shelley の Homosapien。 で、The Human League の Dear で成功をおさめたものの、 メンバーと喧嘩もあって、音楽業界を去ったとのこと。 インタビューで、Dear は実質 Rushent の作品なんじゃないのか、と、 Reynolds が誘導尋問(?)してるのが、可笑しいです。

[2437] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Fri Jun 26 0:43:06 2009

レビューのようなものを書く気力も無いので、post-punk リハビリ日記。 最近落ち穂拾いした 80s post-punk / new wave 関連のCDについて、徒然と。

2006年にリマスター、ボーナストラック入りで再発された 1970s後半 Island レーベル時代 John Foxx 率いる Ultravox のアルバム3タイトル、 Ultravox! (Island, ILPS9449, 1977, LP; Island, IMCD324, 2006, CD)、 Ha!-Ha!-Ha! (Island, ILPS9505, 1977, LP; Island, IMCD325, 2006, CD)、 Systems Of Romance (Island, ILPS9555, 1978, LP; Island, IMCD326, 2006, CD) を今更ながら入手。 synth pop の先駆的のグループとして知られるグループですが、 といっても、Ultravox! から Ha!-Ha!-Ha! にかけては普通の rock。 “Hiroshima Mon Amor” に後の方向性を感じる程度。 synth pop の先駆という意味では System Of Romance でしょう。 “Slow Motion” や “Quiet Men” など。

自分にとっては、この頃の Ultravox は後追い体験。 初めて Ultravox を聴いたのは、 歌手が Midge Ure になって “New Europeans” がヒットした後。 1981〜2年頃に、John Foxx: The Garden (Virgin, 1981) と Ultravox: Rage In Eden (Chrysalis, 1981) をほぼ同時に聴いたように覚えています。 そして、いかにもメインストリーム new wave 風の Ultravox よりも John Foxx の方がクールでかっこいいと思っていました。 といっても、synth pop としてではなく、 Magazine などに近い new wave rock として、でしたが。 Ultravox: Systems Of Romance のLPは、 高校時代に中古で見つけて買う程度には気に入ってました。

John Foxx は1980s年代半ばに、一旦、音楽業界を去っていますが、 最近、また活動を再開しています。確か1〜2年前に来日していますし。 今年に入ってから、 Steve Jansen (ex-Japan)、Steve D'Agostino と 3人名義で A Secret Life... (MetaMatic, META22CD, 2009, CD)、 Robin Gathrie (ex-The Cocteau Twins) と2人名義で Mirrorball (MetaMatic, META23CD, 2009, CD) というCDをリリースしています。 ネットで聴く限り、いかにも彼ららしい音だと思いますし、嫌いではありませんが、 積極的に聴きたい音かというと……。うーむ。

[2482] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Tue Sep 1 23:21:38 2009

軽めの post-punk リハビリ日記。最近落穂拾いした中から。 といっても、実は入院前に入手して、書き出していたものだったりしますが……。 ちなみに、以前のリハビリ日記

1980年代前半、4ADレーベルを拠点に活動したロンドンのグループ Dif Juz [MySpace]。 punk グループ London Pride を母体としていますが、 different jazz をもじったグループ名からもわかるように、 saxophone も使ったインストゥルメンタルのグループです。 CDとなっているのは、1981年の2枚のシングルをまとめた Soundpool (4AD, GAD109/116, 1999, CD) と、 2nd アルバム Extractions (4AD, CAD505, 1985, CD) です。 1981年のシングルは jazz のイデオムはほとんど感じられず、 反復でグルーヴを作り出すような instrumental rock でした (歌無しのときの Felt、もしくは Love Tractor や Pell Mell に似た)。 しかし、Robin Guthrie が制作した Extractons は残響も深めで、 Richard Thomas (Cocteau Twins や This Mortal Coil にもゲスト参加している) が drums を叩かず soprano saxophone を吹く曲など、 室内楽的な jazz を dubwize というより Cocteau Twins 的な残響の中に沈めたよう。 当時、FM Transmission Barricade あたりのラジオ番組で Elizabeth Fraser をフィーチャーした “Love Insane” を聴いてとても気に入って、 Extractions をLPで買いました。 当時の自分の中では Crammed Discs の Made To Measure シリーズに近い位置付けでした。 1970年代以降の electronics を駆使した John Surman & Karin Krog を知ってしまった今の耳には、 Extractions にしてもそれほど凄いとは感じなくなってしまっていますが……。 それでも、4AD公式サイトにも書かれていますが、 15年早すぎた post-rock として再評価されても良い音楽だと思います。 ところで、4AD の Dif Juz のページに こんな記述をみつけました。

Shortly after this [release of Extractions], Dif Juz were introduced to Jamaican dub innovator Lee 'Scratch' Perry. They served as his backing band for a series of shows, before eventually attempting to make a record together. The five tracks that made it onto tape (including a nine-minute version of "The Mighty Quinn") never quite gelled, despite Robin Guthrie's attempts to mix them, and the collaboration remains unreleased.

Lee 'Scratch' Perry との共演で Robin Guthrie の mix とは興味深い。 といっても、1985年の Lee Perry というと、 Black Ark 焼失の後、Adrian Sharwood による復活の前という微妙な時期ですが。 蔵入りのままなのは、権利の関係なのでしょうか。是非リリースして欲しいものです。

[2515] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Fri Nov 6 0:30:45 2009

久しぶりの、post-punk リハビリ日記。 たまにはアメリカ物を。

The Feelies は、1977年にニュージャージー (New Jersey, US) で結成された indie rock のグループ。 1970年代末から1990年代初頭にかけて4枚のアルバムを残していますが、そのうち最初の2タイトル、 Crazy Rhythms (Stiff, SEEZ20, 1980 / Domino, REWIGCD65, 2009, CD) と The Good Earth (Coyote / Twin Tone, TTC8673, 1986 / Domino, REWIGCD66, 2009, CD) が Domino / Bar/None から リマスターCD再発されました。 Crazy Rhythms から30周年ということで、再結成コンサートもしているようです。 1990年に A&M がCD化したときに入手しそこねていたので、今回入手。

The Feelies の名前は Anton Fier が在籍していたグループとして 1984〜5年頃に知ったように思いますが、 当時は既に Crazy Rhythms は入手困難盤。 初めて買ったのは The Good Earth でした。 R.E.M. の Peter Buck の共同プロデュースで、 Glenn Mercer と Bill Million のツインギターが ミニマルに単調にフレーズをかき鳴らす rock。 はっきりしない歌唱も含めてIRSレーベル時代の R.E.M. と似ているわけですが、 R.E.M. が Life's Rich Pageant (1986)、Document (1987) と 次第に普通のロックになってきた頃だったので、 R.E.M. より The Feelies、なんて思ったものでした。

The Good Earth と、それに続く Only Life (Coyote / A&M, 1988)、 Time For A Witness (Coyote / A&M, 1991) は、 大学〜大学院時代に愛聴していたので、思い入れ深いです。 数年前くらいから思い出したようによく聴くようになって、 LP でしか持っていない The Good EarthOnly Life を 自力で盤起こしでデジタル化して iPod でも聴けるようにしていた程でした。 しかし、Crazy Rhythms はLPもCDも結局買わず仕舞だったので、聴くのも約20年ぶり。 CDで2タイトルを聴き比べて、 自分にとっては、やはり、ツインギター5人組の The Feelies の方が良いなあ、と。

The Good Earth に続いて、 Mercer & Million ではなく Dave Weckerman をソングライターとし The Feelies の5人にキーボード奏者 John Baumgartner を加えた サイドプロジェクトのグループ Yung Wu が、 Shore Leave (Coyote / Twin Tone, TTC87119, 1987, LP) というアルバムをリリースしています。 実際のところ、The Feelies のアルバムとほとんど違わない音楽をやっています。 カバー曲を3曲やっているのが良いのですが、 特に Brian Eno が歌った “Big Day” (Phil Manzanera: Diamond Head, 1975) のカバーがとても良いのです。 このアルバムも、The Feelies のアルバムに続いてリマスターCD再発されたら、と思います。

ちなみに、今回のリマスターCD再発、CDにはボーナストラックが収録されておらず、 同封されたカードに書かれたシリアル番号を使って オリジナルの収録曲とボーナストラックを合わせた 320kbps MP3 ファイルを ダウンロードするようになっています。へー。

[2541] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Thu Dec 17 0:49:59 2009

post-punk リハビリ日記。 火曜の晩、渋谷の某(プレ)忘年会に顔を出してきたのですが、 その席で1980年代にアメリカで過ごしたという方と当時の US indies の話で盛り上がったりしました。 その時に出たグループの中から。

1980年前後、アメリカ・ジョージア州アセンズ (Athens, GA, USA) の indie rock シーン [関連発言] から出てきた グループの一つに Pylon がいます。 彼らの2ndアルバム Chomp (DB Recs, DB65, 1982, LP) が ボーナストラック付きの Chomp More (DFA, DFA2220, 2009, CD) として CD再発されました。 R.E.M. がカバーした名曲 “Crazy” を収録しています。 Gang Of Four か Au Pairs を思わせる funk なリズムと鋭い guitar、 それに Vanessa のキツい歌声がかっこいいです。 ちなみに、彼らの1stアルバム Gyrate (DB Recs, DB54, 1980, LP) は 2年前にボーナストラック付きの Gyrate Plus (DFA, DFA2181CD, 2007, CD) としてCD再発されています。 Pylon は1980年代のアセンズのグループの中で最も好きです。お薦め。 このCD再発を機会にもっと知られて欲しいものです。

といっても、僕が Pylon を知ったのはリアルタイムでではなく、 やはり、“Crazy” のカバーを収録した R.E.M.: Dead Letter Office (I.R.S., SP70054, 1987, LP) で。 このカバーも (というか、Dead Letter Office 全体も) とても好きです。 それをきっかけに Pylon、Love Tractor や Oh-Ok の参加した DB Recs のコンピレーション Various Artists: Jericho Go (DB Rec, DBAT80, 1985, LP) と出会い、アセンズのシーンを知ったのでした。 しかし、既に Pylon の2枚のアルバムは入手困難。 “Crazy” のオリジナルバージョンを聴くことができたのは、 1st、2ndの頃の録音からのベストCD Hits (DB Recs, DB91, 1989, CD) ででした。 (その後、GyrateChomp も中古で入手できましたが。) その翌年には新録アルバム Chain (Sky, 7-2020-2, 1990, CD) をリリース。 このアルバムも大学院時代によく聴いたので、思い入れ深いです。

ちなみに、今回の Pylon のCD再発を手がけたレーベル DFA は、 dance punk (or disco punk) と呼ばれるような音楽のプロジェクト LCD Soundsystem の主宰するニューヨーク (New York, NY, USA) のレーベル。そんな所からも、彼らがどういう文脈で再評価されているのか伺われ、興味深いです。