2008年に音盤雑記帖 (Cahiers des Disques)
で取り上げた最近2〜3年の新録リリースの中から選んだ10枚。
展覧会・ダンス演劇等の公演の10選もあります:
2008年公演・展覧会等 Top 10。
#1
Burnt Friedman & Jaki Liebezeit
Secret Rhythms 3
(Nonplace, NON25, 2008, CD)
drums と rhythm guitar が刻む 3拍子と4拍子が並行して
変則的なアクセントで走るような6/8のリズムに、
fuzz の効いた guitar や clarinet の回転するようなフレーズが舞う。
それは krautrock を思わせる所もあるし、
回転するようなグルーヴ感が気持ち良い作品だ。
#2
Carl Craig & Moritz von Oswald
ReComposed
(Deutsche Grammophon, 00289 478 6912 8, 2008, CD)
Herbert von Karajan 指揮 Berliner Philharniker の響きをブレイクとして使用し、
その脈動するような反覆でグルーヴを作り出す、
classical な音源ならではの華やかで美しい音色も楽しめる minimal techno だ。
#3
Steve Lehman Quintet
On Meaning
(Pi Recordsing, PI25, 2008, CD)
vibes - bass - drums のリズム隊の繰り出すIDM的なギクシャクしたリズムと多層的な展開と、
フロント2管 saxophone - trumpet の jazz 的なニュアンスがうまく融合した作品だ。
#4
Deadbeat
Roots And Wire
(Wagon Repair, WAG046CD, 2008, CD)
変則的に飛び交うリズムも dubstep 色濃いトラックに
deep で minimal なトラックも交えた、
dubwise な minimal techno からの dubstep へのレスポンス。
Paul St. Hilaire の sleepy な歌声は dubstep 風のトラックにも合っている。
(Tectonic, TECCD004, 2008, CD)
dubstep らしいエコー控えめに低音を突出させた低中速の breakbeats という音構成だが、
硬質で乾いた音のテクスチャが dubwise な click/minimal に通じる音世界を作り出している。
#6
Meredith Monk
Impermanence
(ECM, ECM New Series 2026, 2008, CD)
抽象的なヴォイシングの反覆でテクスチャを作り出す minimal music 的な曲の中、
民謡か童謡のようなメロディが使われた
"Skelton Lines" と "Mieke's Melody #5" が耳を捉えた。
#7
Bognár Szilvia, Herczku Ágnes, Szalóki Ági
Szájról Szájra
(FolkEurópa, FECD035, 2007, CD)
ハンガリーの folk/roots の女性歌手3人組だが、
その声はビブラートをあまり効かせずハイトーンですっきり伸びやか。
そういう歌声を重ねた明るい華やかさが、小編成ならではの小回りの良さで楽しめる。
#8
Amir ElSaffar
Two Rivers
(Pi Recordings, PI24, 2007, CD)
四分音も含まれるイラクの maqam の音階を、17拍子や13拍子のリズムに乗って、
trumpet や saxophone の勢いを感じさせる吹きっぷりを聴かせる。
技巧を強調することなく自然に maqam と融合した mode 的な jazz だ。
#9
Hugo Fattoruso y Ray Tambor
Emotivo
(Los Años Luz, LAL071, 2007, CD)
4人の tambor 奏者によるウルグアイの candombe のリズムに乗って、
パーカッシブで明るい音色の piano を Fattoruso が弾きまくる、
その piano と tambor のリズムの掛け合いがかスリリングで楽しい。
#10
Setsubun Bean Unit
Setsubun Bean Unit
(Accidental, AC27CD, 2007, CD)
郡上踊りの「げんげんばらばら」や「秋田音頭」、「津軽甚句」の唄や囃子声を生かしつつ、
少し electronics 入った free/jam 的な jazz の演奏で料理している。
特に tuba によるベースラインが良い。
次点
Keyvan Chemirani / Pandit Anindo Chatterjee
Battements Au Cœur De L'Orient
(Accords Croisés, AC121, 2008, CD)
イランの zarb 奏者とインドの tabla 奏者2人の打楽器奏者の共演だが、
ベルシャ音楽とヒンドゥースターニー音楽の単なる出合いではなく
東地中海から北インドまでの広がりを感じる。
番外特選
Michiyo Yagi, Ingebrigt Håker Flaten, Paal Nilssen-Love,
Ken Vandermark, Peter Brötzmann, Mats Gustafsson
Tokyo Conflux 2008
live @ 公園通りクラシックス, 渋谷, 2008/09/21
& Pit Inn, 新宿, 2008/09/22.
歪むほど激しく強い音で reeds を吹く爆音3人を並べてライヴで観ることで、
3人の資質の違いと、その組み合わせを楽しむことができた。
特に Vandermark の魅力を再発見できたのが良かった。