夢の城

― 登場人物 ―


桜の里(七)
― 3. ―

主要登場人物

藤野(ふじの)美那(みな)
 玉井の市場町に住む少女。十六歳(数え年、他の登場人物も同じ)。事情があって、市場の老舗の葛餅屋「藤野屋」に預けられ、育てられている。徳政(債権放棄令)に名を借りた柿原党の策略から同門の銭屋の元資(もとすけ)を救うために、浅梨治繁の門下の兄弟子の隆文と、銭屋で働く娘さわといっしょに、牧野郷に借銭の取り立てに来ている[何をなすべきか(二)]。「広沢の美那」とは別人(少なくとも自分ではそう言っている)[桜の里(六)2.]。しばらく登場場面がなかった。
安総(あんそう)(安総尼)
 川上村の村長木工(もく)国盛(くにもり)の娘。俗名はお(ふさ)。丸顔で目のぱっちりした若い娘。出家して尼になり、川中村の明徳教寺に住む中橋渉江(しょうこう)に仕え、学んでいるらしい。藤野の美那を勝吉・木美(広沢の美那の両親)の墓に連れて行った[桜の里(五)4.]
中橋渉江(しょうこう)
 川中村に住む儒者。僧侶ではないようだが、明徳教寺の住職役を務め、寺に住みこんでいる。牧野・森沢二郷の人びとの信望が厚く、そのまとめ役を務めている。安総尼(あんそうに)の師匠でもある。この少しまえ、木から落ちてきた女の子を拾った[桜の里(七)2.]。「今夜のこと」・「怪異」と呼んでいるのは、この夜、牧野家の館跡で起こった火にまつわる事件のこと[桜の里(七)2.]
落ちてきた女の子
 だれかはまだわからない。まあ、[桜の里(六)5.]を読めばわかると思うけど。
中原克富(かつとみ)造酒(みき)
 中原村に住む中原郷の郷名主で、たみの夫 長野雅一郎(まさいちろう) の主人。守護代(守護大名)春野定範(さだのり)の家臣。自分の名の表記を、かつて認められなかった「勝富」に改めようと考えている[桜の里(七)1.]
中原範大(のりひろ)安芸守(あきのかみ)
 克富の息子。克富の主君 春野定範(さだのり)烏帽子(えぼし)親を務めてもらって元服し、定範から「範」の字を、また定範の岳父 柿原大和守(やまとのかみ)忠佑(ただすけ) の「大和守」の「大」をもらって名とした。長野雅一郎とともに牧野郷川中村に来て、町の銭屋の取り立てを失敗に終わらせる策略を進めている。範大が夜に招いた広沢の毬が行方不明になったため[桜の里(三)4.]、範大が殺したと言われかねない立場にいて[桜の里(四)上]、心理的に追いつめられているらしい。
長野雅一郎(まさいちろう)
 中原村の地侍(じざむらい)(零細地主 兼 武士)。中原克富に仕える立場で、その命により範大とともに牧野郷に来ている。町の銭屋の取り立てを妨害するという目的をなかなか達することができないでいた。この少しまえ、郷の秘密の米の隠し場所「義倉(ぎそう)」を焼くという相談をしていた[桜の里(六)1.]
廊下を歩いていた男女
 だれだかわかりますよね……?
ご使者
 藤野の美那、隆文、さわの三人。
鍋屋の隆文(たかふみ)上総掾(かずさのじょう)
 市場の鍋屋で働いている。美那や元資とともに浅梨治繁に剣を習っており、現在の弟子のなかでは一番上である。藤野の美那とは意地を張り合うことが多い。現在は銭屋の使者三人のリーダー格になっている。村に来ていきなり「上総掾」と名のりだした[桜の里(六)3.]
(銭屋の)さわ
 市場の娘。市場の銭屋で働いている。駒鳥屋のあざみ、宿屋のさと、鋳物屋のみやなどと友だち。藤野の美那、鍋屋の隆文といっしょに借銭の取り立てに来た。おとなしくて控えめだと思っていたら、意外とマイペースな性格で、もしかすると凶暴?[桜の里(六)2.]

話題としてのみ登場する人物

春野定範(さだのり)越後守(えちごのかみ)
 玉井・竹井・巣山三郡守護代(守護大名)。中原克富(かつとみ)の主君である。
春野正勝(まさかつ)民部大輔(みんぶのたいゆう)
 玉井春野家の二代目で、三郡守護代を務め、すでに亡くなっている。定範の兄にあたる。「民部大輔」は正勝・定範の父 正興(まさおき) の職位でもある。
勝吉、木美、広沢の上の家の〜
 「広沢の美那」と(まり)の両親。「牧野の乱」事件のときに、敵に通じていると疑われて殺され、その後、広沢の美那も行方不明になった[桜の里(六)4.]
「あのお美那」
 「広沢の美那」のことと思われる。
(まり)、広沢の上の家の〜
 牧野家の館跡の地下にあった「義倉」に隠れていた。放火されたときに脱出には成功したが[桜の里(六)5.]、そのことは「ご使者」の三人は知らない。なお、広沢の美那の妹だが、離れて暮らしていたためあまり記憶はない。
村西一党
 牧野郷川上村の有力な村人。村西兵庫助(ひょうごのすけ)、大木戸九兵衛(くへえ)、井田小多右衛門(こだえもん)の三人のこと。町の銭屋からの取り立てを回避しようと村に柿原党の使者(中原範大と長野雅一郎)を引き入れた。

玉井春野家関係者等の系図

玉井春野家(三郡守護代家)と柿原家

正興─────┬正勝────────┬那世
 民部大輔  │ 民部大輔     │ 姉姫、深雪の方
 玉井春野家 │ 玉井春野家    │
 初代    │ 第二代      ├正稔
       │          │ 民部少輔、幼名:信千代丸
       │          │
       └定範        └美那
         越後守        妹姫
         現在の三郡守護代
         ‖
         ‖
柿原忠佑───┬田山の方
 大和守   │ (定範の正妻)
 竹井郡代官 │
 柿原郷名主 └柿原範忠
 柿原党総帥   主計頭
         竹井代官代

牧野家(牧野郷名主)と森沢家(森沢郷名主)

┌牧野興治─────芹丸
│ 治部大輔
│ 治部様
│ 牧野郷名主

└興治の妹
  ‖───────森沢荒之助
 森沢為順
  判官
  森沢郷名主

桧山家(港の名主)

 桧山興孝─────桃丸(幼名)
  織部正
  港の名主

杉山家(定範政権評定衆)

 杉山信惟─────宣十郎
  左馬允

浅梨家

 浅梨治繁     鍋屋の隆文
  左兵衛尉    藤野の美那
          銭屋の元資
          車屋の丈治 らの剣術の師匠

柴山家(巣山郡代官)

 柴山時豊─────興豊────┬勝豊────────弥勒丸
  兵部大輔     兵部大輔 │ 兵部大輔      勝豊の幼い遺子
  巣山郡代官    巣山郡代官│ 巣山郡代官
                │ 狩猟中に事故死
                │
                └康豊
                  兵部少輔
                  巣山郡代官

中原家(中原郷中原村、中原郷名主家)

 中原吉継────┬茂
  令史     │ 吉継の長女
  中原郷名主  │ ‖────────中原範大
  中原村在住  │中原克富       安芸守
         │ 造酒        幼名:十郎丸
         │ 現在の中原郷名主
         │ 町の酒屋出身
         │
         └宣
           吉継の次女
           ‖────────立岡拓実
          立岡拓実の父     府生

広沢三家(牧野郷川上村)

 広沢勝吉
  広沢の上の家
  ‖──────┬美那
 木美      │ 広沢の美那
         │
         └毬
           広沢の中の家で
           育てられている

 加恵──────┬葛太郎(葛太)
  広沢の中の家 │
         └繭

 祖母…………………ふく
           広沢の下の家
           村西家の美千に仕えている