甘い生活苦タイトル画
タイトル画:武川雅寛・白井良明(ムーンライダーズ)

 2002年6月 第6回 「男も女も寝不足はつらいよ」

高速道路を走り、適度に揺れるバスの振動が、眠気を誘う。ビールといえど、昼間に飲むアルコールは、いつもながらよくまわるのである。京都へ戻る、社内旅行の車中。昨日、片山津温泉でのホットな夜の所為(せい)か、私同様、皆も睡魔の餌食になろうとしていた。バスの中は、ほぼ絶滅状態。老いも若きも、男も女も、目は閉じているが、口は開いている。ある意味、しょぼいマスゲームにもみえる。誰見る事無く、運転席上部のモニターは、ビデオが延々再生されていた。

川の堤防で遊ぶ子供たち。夕焼け空に響く豆腐屋のラッパ。カラスの鳴き声とオーバーラップする寺の鐘。夢うつつながら、日本の景色、しかも、どこかなつかしい情景が映っているのがわかる。そんな人肌の心地よさ感じる、下町の美とはうらはらに、1人のドロップアウト者が登場する。当然、年金をも納めてないだろうその男は、血縁いい事に、叔父の家庭に転がり込む。家庭には、その男の妹夫婦も、同居しているようだ。結果、男の存在により、ふりまわされる事となる、人々の悲惨な人間模様。しかし、男が長旅の末帰ってきた目的は、ゆすりやたかりではなさそうだ。逆に、心中が解らない分、こんなサイコスリラーがあったんだと思ったが、未だ夢うつつ。しかし、違和感おぼえたのは、家庭を目茶苦茶にされようが、誰一人落ち込む事なく、まるで明日を夢みるかの様に、笑顔であり続けられる、家族の方にあった。ドロップアウト者より、その家族の前向きな姿勢の方に、空恐ろしささえ感じ始めていた。

長くとぼけた前置きに反省・・・。「さくら」や「博」に代表される、優等生面した登場人物(源公役の蛾次郎は除く)が、あわてふためく(観客から見た)他人の不幸的なところに、このシリーズの人気があるのかとも思ったが、それだけではなさそうだ。

家族に寸止めのダメージ残し、フーテンの兄はまた旅へでる。こんな、誰も死なない、何も解決しない予定調和な映画も、いいかなと思えてきた。決して、寝不足の所為ではない。最近のそんな傾向に対し、人は私の事をまるくなったというのかもしれない。

←車中で、今回拝見したのは、シリーズ48作中の一本「男はつらいよ 知床慕情」。世界の三船敏郎が助演しているのだが、渥美清との2ショットは、哀川翔、竹内力の戦いばりに、とてもスリリングだった。

葛城より:高脂血症の診断により「絶対痩せてやる宣言」から三ヵ月弱。78kgから74kgへ。4kgの減量に成功。「スッキリしたんじゃない?」と声を掛けられる事に快感をおぼえる。「エゲツなく痩せちゃって、ちょっと病気なんじゃない?」というところまで目指すつもり。

(「寅さん」を一度も見たことのないレーコより)長距離&観光バスが揃えるビデオのラインナップといえば、以前富山県に住む友人を訪ねた帰りのバスの中で、米国版『ゴジラ』(主演はマシュー・ブロデリックやジャン・レノ)と、武田鉄矢の『プロゴルファー金次郎』を(やはり)夢うつつで見たことがあります。映画館はおろか、自宅のビデオ鑑賞の対象にも入らないこの2本、一番前の席に座っていたせいもあり、大雪のせいで東京への到着が遅れに遅れていたせいもあり、気は進まないものの、それなりに見ることになりました。
不思議なもので、「こんな機会でもなければ見ないだろうし」と諦めにも似た気持ちで、『プロゴルファー・・・』の方はわりとちゃんと見てたんです。そしたら面白い!ウトウトしつつ話にはちゃんとついていってたのに、ストーリーが佳境を迎え、これが最後の大勝負!というところでモーレツな睡魔に襲われてしまったのでした。で、目を覚ました時はすべてが終了していましたとさ。


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※「シネマックスモナムール」(全12回)は、2001年に葛城さんに連載していただいた、熱く濃ゆ〜い、日本映画コラムです。読みたい方は下記バナ−をクリックして、ご覧ください。


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