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Top Ten 2010
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2011/01/01

2010年に歴史の塵捨場 (Dustbin Of History)で レビューした展覧会やダンス演劇等の公演の中から選んだ10選。 音楽関連 (レコード/ライブ) は別に選んでいます: Records Top Ten 2010

第一位
じゅんじゅんSCIENCE 『「建築はどこにあるの?」特別ダンス公演 in 赤縞』 (ダンス/建築展)
東京国立近代美術館 企画展ギャラリー, 2010/7/31.
展覧会のインスタレーションの一つ、内藤 廣 「赤縞」 の レーザー光を使ったインスタレーションの中での、ダンス公演。 空間の中をパズルのように組み合わせたダンサーの動きによって、 さらに、「赤縞」の空間内での様々な見え方を組み合わせていくかのようだった。
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第二位
田口 行弘 『複合回路 第一回 接触領域 (キュレーター 高橋 瑞木)』 (美術展)
gallery αM, 2010/04/17-05/26.
家具や日用品を一見雑然と配置した空間インスタレーションとそれらが作り出す影を使った壁へのドローイングという二面、 影絵アニメーションとインスタレーションとしての展覧会の記録という二面。 そんな、様々に組み合わされた二面性の表裏が、観ているうちにどんどん返されていくようだった。
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第三位
Mudlark & The Royal Shakespeare Company: Such Tweet Sorrow (インターネット・パフォーマンス)
Twitter (@TheRSC/such-tweet-sorrow), etc, 2010/04/11-05/12.
street theater が Twitter に限らないインターネット上のソーシャル・メディアが作り出している仮想的な世界に 移ったという意味で、まさに “internet theater” だった。 それも、ストーリーテリングにおける実験性、 Shakespeare や commedia dell'arte 〜 street theater に連なるような伝統、 そして、そんなことを意識しなくても楽しめるようなARG的な娯楽性、 そんな3つの特徴を兼ね備えていた。
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第四位
William Kentridge: What We See & What We Know: Thinking About History While Walking, and Thus the Drawings Began to Move (美術展)
東京国立近代美術館, 2010/02/02-2010/02/14.
描き直しの跡が残る粗いテクスチャのドローイング・アニメーションは、 砂絵アニメーションに似たところもあり、 崩壊する風景を通して儚さを描く手法としてうまくはまっていた。 新即物主義の美術におけるマジックリアリズムと 文学におけるマジックリアリズムが見事に出会ったかのようだった。
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第五位
Nationaltheatret: En Folkefiende (演劇)
あうるすぽっと, 2010/11/17.
マイム等の技法を使って身体で空間を描いたり、表現的な演技を使って登場人物の内面を描くわけでもなく、 一段抽象化されたような動作等を使って、場面や登場人物を描くような。 さらに、音響、装置使いも、描写的というよりも最低限で記号的。 そんな演出の積み重ねで想像が促されるような所が面白い舞台だった。
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第六位
タムラ サトル 『小山マシーン』 (美術展)
小山市立車屋美術館, 2010/7/10-9/5.
肥料問屋を営んでいた豪商の邸宅を登録有形文化財を一般公開するのにあわせて 隣接する蔵を改装して2009年にオープンしたばかりの美術館での個展は、 大きな機械が全力で地味な動きをするという新作の微妙さが可笑しかった。
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第七位
Deutsches Theater Berlin: Vildanden (演劇)
あうるすぽっと, 2010/11/27
舞台にはいっぱいの大きさの円筒を斜めに切った回転舞台を使った作品は、 デフォルメされた心理的距離感の象徴としてその斜面が使われていた。 さらに、その立ち位置で登場人物の関係性を示すだけでなく、 舞台を回転させ、最も高さがある側を前面に持ってきて奥行きを消した舞台を作ったり、 回転を場面転換に使ったり。 そんな空間を生かした演出が楽しめた。
[レビュー]
第八位
畠山 直哉 『線をなぞる / 山手通り』 (写真展)
タカ・イシイ ギャラリー, 2010/7/17-8/14.
昔ながらの街道筋ではない環状道路の山手通りが作り出す 切通しや盛土、周囲の道との段差、高架や陸橋等が描くジグザクの形状を捉えた写真は、 山間部の砂防ダムや擁壁、コンクリートで固められた水路と同じような造形を 山手通りという大都会のど真ん中に見出しているようだった。
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第九位
小野寺 修二 / カンパニーデラシネラ 『異邦人』 (フィジカルシアター)
世田谷パブリックシアター シアタートラム, 2010/10/11.
キレの良いパフォーマーの動きで空間を繋げたり切ったりすることにより、 映画的なモンタージュ技法をフィジカルシアター的な表現として解決しているような舞台だった。 かつて、水と油 に原作のある作品を演じてみて欲しいと思っていたが、 その時に期待していたのはこの『異邦人』のようなものだったんだ、と思い出したりもした。
[レビュー]
第十位
クワクボリョウタ 「10番目の感傷〈点・線・面〉」 (美術展)
『オープン・スペース2010』, NTT ICC, 2010/05/15-2011/02/27.
レールの上を走る車両の光源がレール脇に置かれた様々なオブジェに当たり、 大きくゆっくり動く影を壁に映し出していく。 その様子は、鉄道列車の車窓の風景を撮影した退色した荒いモノクロ映画か、 それを模した影絵アニメーションを観ているようだった。 この光と影を巧く使ったじんわり、ゆったり感のコントロールもクワクボリョウタならではだろう。
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次点
照屋 勇賢 『ひいおばあさんはUSA』 (美術展)
上野の森美術館ギャラリー, 2010/3/14-30.
アメリカ占領を伺わせるようなものを象った文様の紅型と日用品や食品のボール紙の箱を使った型紙からなるインスタレーションは、 紅型の示すまさに「染み付いた」のアメリカ占領の記憶、というだけでなく、 そしてその記憶と日常生活との深い結びつき、といったものを思い起こさせるようなものだった。
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番外特選
Alain Resnais (dir.): Les Herbes Folles (映画)
France / Italy, 2008.
小説をそこに書かれている言葉通りに映像化したらどれだけ不条理でシュールなものになるか、 試みているかのような映画だった。 それも、この映画における小説の約束事は、あえて課した表現の制約条件というより、 シュールで不条理でユーモラスな映画表現を作り出すアイデアの源泉となっていた。
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