2010年に音盤雑記帖 (Cahiers des Disques)
で取り上げた最近2〜3年の新録リリースの中から選んだ10枚+α。
展覧会・ダンス演劇等の公演の10選もあります:
2010年公演・展覧会等 Top 10。
(ECM, ECM2163, 2010, CD)
無機的でシャープな Christian Fennesz の guitar/electronics の音が
Rainbow studio 録音の透明感ある ECM の音にマッチ。
ゆったり浮遊する Iain Ballamy の saxophone のフレーズと鋭く細く刻む Thomas Strønen や Fennesz の電子音が、
クリアな空間の中に奥行きを作り出している。
#2
Rudresh Mahanthappa & Steve Lehman
Dual Identity
(Clean Feed, CF172, 2010, CD)
IDMを思わせるギクシャクしたリズムにノりながら、
同じ alto sax ながら平板なフレーズや飛び回るようなフレーズを多用する Steve Lehman に
オリエンタルな節回しや free jazz 的な熱いブロウも聴かせる Rudresh Mahanthappa が、
お互いを対比させるようにフレーズを絡めていく。
Liberty Ellman も electric guitar の軽く濁った音色で濃さをアンサンブルに加えている。
#3
Lali Puna
Our Inventions
(Morr Music, morr 098, 2010, CD)
初期の雰囲気を取り戻しつつも、
ぐっと女性的になった Valerie Trebeljahr の歌声やシンセサイザーの音色に洗練も感じた。
そんな、pop ながらテクスチャを生かした electronica な伴奏に淡々とした歌が楽しめた。
#4
To Rococo Rot
Speculation
(Domino, WIGCD234, 2010, CD)
systh pop 的な可愛らしい音使いもある electronica という所は10年前から大きく変わらない。
しかし、Shackleton に “Fridays” をリミックスさせたように、
ぐっと強くなったベースラインに同時代的な所も感じられた。
(Pro-Tez, PTZ009, 2008, DL)
ロシアのベテランDJユニット SCSI-9 のレーベル Pro-Tez は、
欧米でも通用するようなロシアのDJを紹介してくれている。
そんな中でも、サンクトペテルブルグ出身の男女2人組 Masha Era は、
少々拙く感じる Masha Era の歌声を乗せた
Korablove や SCSI-9 による deep な tech house が良いだけでなく、
自ら “cabaret visual act” と呼ぶパフォーマンスも興味かった。
#6
Barbara Buchholz
Moonstruck
(Intuition, INT3402-2, 2008, CD)
1990年代に Lydia Kavina に師事した Barbara Buchhholz の、heremin の音も自然に使いこなした
electronica/post-rock とも jazz/improv とも言えるような作品だ。
様々な文脈のミュージシャンとの共演を集めているが、
Stefan Betke (aka Pole) がマスタリングを手がけたおかげか、
音色に統一感があり、バラバラという感じではないのも良い。
#7
Antonis Anissegos / Thymios Atzakas [Αντώνης Ανισέγκος / Θύμιος Ατζακάς]
σώμα [soma]
(defkaz, fk07 / Polytropon, 056, 2009, CD)
音数は少なめにアコースティックな楽器の響きを生かした明確なリズムやメロディの無い演奏だ。
しかし、楽器の鳴りも録音も良いせいか、Antonis Anissegos の澄んで明るい piano の抽象的な響きと
Thymios Atzakas の folk/roots 的なイデオムを微かに感じさせる緩い oud や guitar の音の響きの取り合わせが気持ち良い。
#8
Lerner Moguilevsky
Alef Bet
(Los Años Luz, LAL090, 2009, CD)
このアルゼンチン・ブエノスアイレスの Céser Lerner (piano/accordion) と Marcelo Moguilevsky (clarinet) の duo は、
Klezmer En Buenos Aires とは名乗らなくなっているが、相変わらず。
東欧系ユダヤ人の音楽 Klezmer やバルカンのロマの音楽を思わせる旋律を、
音数少なめながら端正な響きの落ち着いた演奏で聴かせてくれる。
#9
Ojra & Kiritchenko
A Tangle Of Mokosha
(The Lollipoppe Shoppe, LSCD010 / Nexsound, NSP05, 2010, CD)
ウクライナ東部のハルキウを拠点に活動するミュージシャン達による、
民謡的な女性の歌声とアコースティックな楽器の音色、
electronica 的な電子音、それぞれのテクスチャを生かしたアルバムだ。
#10
Ballaké Sissoko - Vincent Segal
Chamber Music
(No Format, NOF 14 / 532 144-2, 2009, CD)
Vincent Segal の cello は、アルコ弾きとピチカートを交えつつ少し濁った優しい音で、
細かく刻みながら揺らめくように反復する Ballaké Sissoko の kora のフレーズに歩みを合わせるように弾いている。
んな kora や cello の可愛らしく反復するフレーズに、室内楽を感じた。
番外特選1
Mariana Baraj
Presentación Churita
live @ Mandala, 青山, 2010/08/24
公演のタイトルからして、新作 Churita からの曲を中心に演奏するのだろうかと予想していたのだが、
4枚のアルバムからの曲をぼぼ均等に演奏。
folk/roots の要素を取入れた live electronics な jazz/improv から
pop な folklore 風の自作曲まで、Mariana Baraj の良さを様々な面から楽しめた。
番外特選2
Four Tet
BBC Radio 1's Essential Mix
(SoundCloud / Four Tet, no cat.no., 2010, DL)
Wether Report による jazz 的なインタープレイや Joyce による歌声で耳を捉えたり、click/minimal なトラックで淡々と進行したり。
しかし、新作
There Is Love In You (Domino, WIGCD254, 2010, CD)
[
レビュー] からのシングルカット曲 “Angel Echoes”、“Sing” を始め、自身による remix を要所に配し、
新作のカラフルな folktronica に近いトーンで全体がまとめられ、新作の拡大版として楽しめた。