夢の城

― 登場人物 ―


仕事の話(四)
― 下 ―

主要登場人物

長野雅継(まさつぐ)、一郎、雅一郎(まさいちろう)
 もと中原村の地侍(零細地主 兼 武士)だったが、任務に失敗し、主人である名主を殺して柿原屋敷に逃げこんだ。笹丞(ささのじょう)の貸し銭取り立てに同行している[仕事の話(三)上]。「雅継」というのは本来の名まえではない。
元塚(もとづか)衛友(もりとも)、九郎
 守護代(守護大名) 春野定範(さだのり) の下で評定衆(ひょうじょうしゅう)(家老)を務めている。白麦山の山賊の本拠地に近い井川の東(とりで)に赴任する途中に、小者(従者)ともども(ひびき)宿の南藤(なんどう)邸に泊まっている[仕事の話(四)中]
笹丞(ささのじょう)、「笹」
 市場の銭貸し。柿原党に自分の債権証文を買い取ってもらいに行ったが拒否され[仕事の話(二)下]、かわりに柿原党の助力で銭の取り立てを行っている[仕事の話(三)上]。学問を修めて京都に上り、公方(くぼう)様(室町将軍)の下で政治を立て直したいという大きな希望を持っているらしい。調子に乗って酒を飲み過ぎたせいか、酔っぱらって寝ている。ここで三人が話している内容は[仕事の話(四)中]
村西兵庫助(ひょうごのすけ)
大木戸九兵衛(くへえ)
井田小多右衛門(こだえもん)
 いずれも牧野郷川上村出身の武士たちで、長野雅継(まさつぐ)(雅一郎)らと郷の備蓄米に放火したことが広沢の(まり)に暴露され、ともに逃げ出してきた。そのため広沢三家と毬には憎悪を抱いているようだが、もとは広沢家の人たちには親切だったという[桜の里(三)5.]。村西兵庫助に仕えていたふくも広沢家の娘である。現在は雅継とともに笹丞の取り立てに同行し、いっしょに南藤俊三郎邸に泊まっている[仕事の話(三)上]。なお、このうち村西兵庫助だけが家族持ちで、屋敷に住んでいた。
水鶏(くいな)屋のさと
 市場町の宿屋 水鶏屋 で働く少女。
(さとが出会った)若妻
 だれでしょう?
広沢の葛太郎(かつたろう)
 牧野郷川上村出身で、牧野郷が借銭を返済できなくなったため、人質として町に連れてこられ、葛餅の店 藤野屋 に預けられている。藤野屋の使用人頭 橿助(かしすけ) に不用意に話しかけて、橿助が鍋を煮立たせてしまいかけ、叱責された[仕事の話(一)下]。このとき、姉(実姉ではない)の(まり)までいっしょに叱られたことを根に持っているらしい。それにしても……腹こわすぞ……。

話題としてのみ登場する人物

美千(みち)
ふく
 美千は村西兵庫助の妻。兵庫の助が村を脱出したときに、村に残された。ふくは美千に仕えている下女で、出身は広沢三家のうちの「下の家」[広沢三家]
「今日おれたちが柿原屋敷まで引きずっていった娘」
 だれだろう?[仕事の話(四)上]
柿原家
 三郡守護代(この一帯の守護大名)春野定範(さだのり)の正妻の父 柿原忠佑(ただすけ) の一家[春野家・柿原家]。権勢を誇っている。「柿原党」といわれる新興金融集団を率いている。
広沢の(まり)
 村西兵庫助らの出身地 牧野郷川上村 に住む「広沢三家」に属する少女。毬は「上の家」の娘だが、「中の家」で葛太郎(かつたろう)(まゆ)といっしょに住んでいた。長野雅継(雅一郎)・村西兵庫助らが備蓄米に放火した現場に毬がいて、そのことを寄合で証言したため、この四人は村にいられなくなった[桜の里(七)5.]。牧野郷の借銭が返済できなくなったため、そのかわりの人質として市場に来て、藤野屋に預けられている[町に集う人びと(二)2.]。葛太郎が橿助(かしすけ)に不用意に話しかけてトラブルになったとき、葛太郎を叱りに来たにもかかわらず、逆に毬が橿助に厳しく叱りつけられた[仕事の話(一)下]
治部(じぶ)
芹丸(せりまる)
 「治部様」は牧野治部大輔(じぶのたいゆう)興治(おきはる)。牧野郷の郷名主だったが、春野定範(さだのり)が甥の正稔(まさとし)から守護代(守護大名)の地位を奪ったときに、それに反対して決起し、定範と柴山康豊(やすとよ)の連合軍に敗れて処刑された。芹丸はその息子で、この決起に参加し、やはり殺された[牧野家]。巣山軍出身の広沢家を村に招いたのはこの興治で、広沢家のことを気にかけており、広沢家を差別してはならないと言い残したという[桜の里(四)下]
柴山康豊(やすとよ)
 巣山郡の代官で、まだ若い。牧野興治の決起(「牧野の乱」事件)のとき、春野定範側に参加した。広沢家の者たちは、巣山出身ということで、牧野郷ではこの康豊軍に内通したと疑われている[桜の里(六)4.]
春野定範(さだのり)越後守(えちごのかみ)
小森健嘉(たけよし)式部大夫(しきぶだゆう)
 春野定範は玉井三郡(この物語の舞台)の守護代、つまり守護大名。小森健嘉はその下で評定衆(家老)筆頭を務める。元塚衛友(もりとも)は春野家の評定衆の一人なので、定範は主君、健嘉は同僚のとりまとめ役にあたる。
柿原忠佑(ただすけ)大和守(やまとのかみ)
 柿原忠佑は三郡守護代春野定範の正妻の父[春野家]。新興金融集団「柿原党」の総帥でもある。
柿原範忠(のりただ)主計頭(かずえのかみ)
 柿原忠佑の息子。長野雅継(雅一郎)と村西兵庫助らが逃げこんできたとき、その事情説明を聞いて逆上し、自害せよと命令した[町に集う人びと(二)3.]
山賊
 白麦山に出没しているらしい。
(さとが出会った若妻の)「夫」
 だれのことだろう?
橿助(かしすけ)
 市場町の老舗の葛餅の店 藤野屋 の使用人頭。味覚の衰えを気にしており、隠退を決意している[桜の里(三)4.]。この日の午前中、広沢の葛太郎(かつたろう)に仕事をくれとせがまれ、それに気をとられて鍋を煮立たせてしまいそうになり、葛太郎と、仲裁に出てきた姉(実姉ではない)の毬をひどく叱りつけた[仕事の話(一)下]

玉井春野家関係者等の系図

玉井春野家(三郡守護代家)と柿原家

正興─────┬正勝────────┬那世
 民部大輔  │ 民部大輔     │ 姉姫、深雪の方
 玉井春野家 │ 玉井春野家    │
 初代    │ 第二代      ├正稔
 大民部   │ 小民部      │ 民部少輔、幼名:信千代丸
       │          │
       └定範        └美那
         越後守        妹姫
         現在の三郡守護代
         ‖
         ‖
柿原忠佑───┬田山の方(千草姫)
 大和守   │ (定範の正妻)
 竹井郡代官 │
 柿原郷名主 └柿原範忠
 柿原党総帥   主計頭
         竹井代官代

牧野家(牧野郷名主)と森沢家(森沢郷名主)

┌牧野興治─────芹丸
│ 治部大輔
│ 治部様
│ 牧野郷名主

└興治の妹
  ‖───────森沢荒之助
 森沢為順
  判官
  森沢郷名主

桧山家(港の名主)

 桧山興孝─────桃丸(幼名)
  織部正
  港の名主

杉山家(定範政権評定衆)

 杉山信惟─────宣十郎
  左馬允

浅梨家

 浅梨治繁     鍋屋の隆文
  左兵衛尉    藤野の美那
          銭屋の元資
          車屋の丈治 らの剣術の師匠

柴山家(巣山郡代官)

 柴山時豊─────興豊────┬勝豊────────弥勒丸
  兵部大輔     兵部大輔 │ 兵部大輔      勝豊の幼い遺子
  巣山郡代官    巣山郡代官│ 巣山郡代官
                │ 狩猟中に事故死
                │
                └康豊
                  兵部少輔
                  巣山郡代官

中原家(中原郷中原村、中原郷名主家)・立岡家

 中原吉継────┬茂
  令史     │ 吉継の長女
  中原郷名主  │ ‖────────中原範大
  中原村在住  │中原克富       安芸守
         │ 造酒        幼名:十郎丸
         │ 現在の中原郷名主
         │ 町の酒屋出身
         │
         └宣
           吉継の次女
           ‖────────立岡拓実
          立岡拓実の父     府生

広沢三家(牧野郷川上村)

 広沢勝吉
  広沢の上の家
  ‖──────┬美那
 木美      │ 広沢の美那
         │
         └毬
           広沢の中の家で
           育てられている

 加恵──────┬葛太郎(葛太)
  広沢の中の家 │
         └繭

 祖母…………………ふく
           広沢の下の家
           村西家の美千に仕えている