毎回友人たちに登場してもらい、エッセイを書いてもらうコーナーです。 今年のお題は「影響をうけたモノ」。

第12回の執筆者はかんばさんです。

●●かんばさん自己紹介●●

 蠍座の女。大雑把なO型。最近ヒットのモノマネは「宇多田ヒカルのしゃべり」と「地上の星by中島みゆき」。年下だというのにレーコさんへのツッコミに容赦はない。


第12回 『All that you can leave behind』

 私は自他ともに認めるファザコンである。「うちのお父さん」を主語に話をすることが人よりかなり多いと思う。父は、ひとに話さなければもったいないようなエピソード満載の人物だった。とくに、戦後の神戸で進駐軍のハウスボーイをしていた頃の青春時代の話など、内容を覚えるほど何度聞いても面白かった。戦後のゴタゴタで高等教育を受けなかった人だが、教科書には載っていないことなら実にいろんなことを知っている人だった。

 人が集まれば必ず輪の中心になっている人で、特に酒が入ると延々とみんなを笑わせ続けていた。自分や身内に起きた出来事を、人にウケる話にもっていく技術は、知らないうちに私が父から受け継いだもののひとつだと思う。自分の話で人が笑ってくれることに快感を覚え、どんどん調子に乗るのも遺伝だろう。もし父が10歳若かったら、私の友人たちと一緒に飲んで意気投合できただろうなと思うとちょっと悔しい。

 私はファザコンではあるが、「結婚するならうちのパパみたいな人がいいのお。パパ大好きぃ」などとほざいていたわけではなく、むしろ「うんと年の離れた飲み友達のおじさん」として父は理想的な男性だったと思う。面白い部分だけ共有できれば最高なんだけど、生活を共にするとなるとちょっと・・・というタイプである。

 そんな父だが、亡くなった後、気がついたことがある。父はある人の紹介から写真屋の見習となり、私が生まれてからはずっと写真館を経営していた。お宮参りや七五三や入学式や成人式や結婚式など、数え切れないほどの家族の思い出の瞬間を30年間撮りつづけた。

「父は逝ってしまったけれど、父が撮った写真はずっと残るんだ」。

 父が撮影した記念写真が、たくさんの家族のもとに残されている。それぞれの家で、飾られているかもしれないし、埃をかぶって戸棚の中に忘れられているかもしれないが、それはたしかに家族のひとつの思い出を記録している。たとえどんな人が写したか忘れられていたとしても、父の数多くの「作品」は生き続けているのだ。父は生涯を通して「プロフェッショナル」という言葉の意味を私に教えてくれた。何かひとつ、「これが私の職業です」と自信を持って言える仕事に就くこと。そして何かを遺すこと。私も何かのプロフェッショナルになりたいと思いながら日々もがいている。「自分の好きな道を選べばいい」と店を継がせようとしなかった父への恩返しができるのはいつになるだろう。

(了)


(第13回の執筆者は未定。しかし!お楽しみに〜)

昭和の神戸(三宮)の写真です。左は昭和20年代ごろの大丸周辺。右は三宮駅周辺。ポートタワーが見えます。こっちは昭和のいつかは不明。かんばさんのお父さんがご覧になったら、懐かしんでくれるでしょうか。
★前回執筆者ヨシミさんへのメッセージ★

私の憧れていた「NYでの留学生活」が、ヨシミさんの文章にすべて語られていました。同じころ、暴動もハリケーンも他所事だったフロリダの片田舎で、「日本にも自動販売機はあるのかい?」とトホホな質問をされながら留学生活を送っていた私です。そんなヨシミさんはどんな子育てをなさっているのでしょう。私は「親が(なにも手をかけ)なくても子は育つ」という言葉を実感している毎日です。子どもって奇蹟!!

(レーコより)
 かんばさん、2月号の執筆どうもありがとうございました!「読本十人十色」始まって以来、原稿をお願いして「待ってました!嬉しい〜」と感激してくれた友人はかんばさんが初めてでした。なんだーもっと早く頼めば良かった、て思いましたヨ。今回の執筆が実現できてとても嬉しいです。
かんばさん、というか、かんば家にはとってもお世話になってるんです。一緒に仕事をしていた頃、忘年会で酔っぱらい、すっかりトイレとお友達になって終電を逃した私を介抱しつつ、タクシーでかんば邸に一緒に連れて帰ってくれたかんばさん。ここ数年、アカデミー授賞式はかならず録画してくれて、私に見せてくれるかんば家。ワールドカップのテレビ観戦、花火大会鑑賞や鍋パーティに招いてくれるかんば家。
映画好き、音楽好き、サッカー好き、プロレス好き、そしてお笑い好き(何か抜けてない?よね)の多趣味カップルの部屋は、CD、ビデオがうなっている上、天井に飾られている何十枚もの映画ポストカードのおかげで、遊びにいく私や友達は、おしゃべりの話題には事欠きません(最近のみんなの注目はなんといっても二人のお子さんですが・・・)。中でもかんばさんのおしゃべりは本当に面白い。テレビ番組のネタなら、芸能人の物真似は絶妙!同時に自分の突っ込みコメントを織りまぜるのも忘れない。やはり話し上手、物真似上手の友人のよねおさん(「読本十人十色第1回執筆)と一緒になると、トーク魂炸裂!といった感じで、私は何度笑い過ぎで涙したかわかりません。。。
母になり、さらにネタが増えた感のあるかんばさん。お父さんからもらった話術の才能、しっかりお子さんにも引継がれていて欲しい。いつか、親子漫才のような会話で私を笑わせてください。

ではでは、来月のアカデミー賞の録画、よろしくお願いいたします!!!(図々しい。上映会、今度こそ遅刻しないようにします!)

→「読本 十人十色」バックナンバー
1「筒井康隆礼賛」by よねお
2「デス・スターの溝」by KITT
3「恋い焦がれる」by マサコ
4「おれがすき。」by こばやし
5「奥の奥の感覚」by トヨダ
6「こちらヒューストン」by テラケン
7「ドラッグのすすめ」by イロミ
8「Hello Kitty」by イザベル
9「BLUES SESSION の入り口」by けーこ
10「じかんのかんかく」 by もんち
11 by ヨシミ
12


top | 甘い生活苦 | Kim's Cinematic Kitchen | シネマ ファシスト | wann tongue | 読本 十人十色 | 映画館ウロウロ話 | 映画館イロイロ話 | GO!GO!映画館 | CAFE | BBS&LINKS | ABOUT ME