甘い生活苦タイトル画
タイトル画:武川雅寛・白井良明(ムーンライダーズ)

 2002年12月 第12回

 以前、昼食時にひろげていたスポーツ新聞に、抗ガン剤の副作用を拒む為、自然治癒を決意した、深作欣二監督の事が書かれていた。副作用、つまりインポになって、愛人を悦ばす事ができないくらいならノー・フューチャー。長生きなんか無意味に等しい、という考えらしい。何故か、そんな「バトル・ロワイヤル」な心意気に、妙に心打たれた。その時食べていたカツカレーが、男気を帯びたテイストとなるのを感じた。どうか監督には、「宇宙からのメッセージ」を受けた様な、この決断をまっとうしていただき、病魔と「仁義なき戦い」の後、華麗なる「復活の日」をはたして欲しい。

 で、その愛人とされるのが荻野目慶子。「素」と「演技」のボーダー加減が、実に曖昧な、どこか恐ろしさ感じる女優である。望月峯太郎の名作「座敷女」を、荻野目主演で観てみたい。生半可怖さに対し、麻痺しかけた私たちを、恐怖のどん底に叩き落していただきたい。目下「呪怨」に対抗できるのは、唯一このプロジェクトしかないと思うのだが。

 「素」と「演技」のボーダーレス。荻野目に抱く、あの不思議な感じに似た印象を、先日実体験させてもらった。場所は大学の同窓会。彼女の名はえっちゃん。独身。面と向かって話し合ったのは、実はこの時が初めてだった様に思う。それまでは、存在のみ記憶していた程度の女性であり、物静かで真面目、というイメージがあった。

 発端は、ペットの話だった。カメの冬眠の仕方を教えて欲しい、と言う。カメの名前は「カメオ」。飼ってから、しばらくなるが、オスなのかメスなのか、未だにわからないらしい。スキンシップはバスタイム。「カメオ」を片手に、タワシの代わりにして体を洗っている。これぞ正真の、亀の子束子。淡々と語る、えっちゃんの表情は真面目、決してふざけてはいなかった。そして、彼女の乳首には、小型カメラが仕組まれており、撮った映像は常に北朝鮮へ、送信されているそうだ・・・。

 「カメオ」と乳首と北朝鮮。話をきいている間、ずっと「演技」であって欲しいと願っていた。元クラスメートとして、彼女を救ってあげたい。とりあえず、来春、えっちゃんの部屋で、カメ鍋をする事で落ち着いた。ぐらつく鍋に「カメオ」を放り込み、箸で押さえる役を買ってでた。ただ、えっちゃんから「カメオ」を引き離すために。

 そんなえっちゃんに、これも「素」か「演技」か、自ら判断に苦しんだアウトローの半生を映像化した、深作監督「仁義の墓場」を捧げたい。ヤクザ版「呪怨」とも言われる様に、そのアウトローに関わった人間全て奈落へ落ちる、ライク・ア・ローリング・ストーンな物語である。

←「カメオ」がカメオ出演。文字通りのかめ鍋。

葛城より:12月賞与月。通常の仕事と人事考課のダブル・パンチに忙殺される。つくづく人を評価するのは、向いてない事に確信もてた自身を評価。


(レーコより)葛城さん、お疲れさま〜。原稿催促してごめんなさい。
え〜、亀を飼うっていうのは、飼ってみないとその面白さはわからないと思います。と、私も思わず真面目になっちゃった。飼ってみると可愛いっていうのは本当ですよ。ちゃんと飼い主の顔を覚えて、家に帰ると水槽の中から手をバタバタさせながらこっちに寄ってくるし、声をかけると顔を上げてじっとこっちを見てくれて、そりゃ〜可愛いです。家に遊びに来た友人たちも「亀がこんなに可愛いとは思わなかった」て言ってたし。ま、中には「女が亀を飼う」っていう図に、えっちな妄想をする人もいて、彼と同棲してた頃、私も亀を飼ってたんですけど、いかに亀が可愛いかって話してても、「じゃああんた亀2匹飼ってるんじゃん!」と爆笑されたりするんです・・・。女も30過ぎると、平気でこーゆーこと口にするんですよ。
ところで、私、今は猫(メス)を飼ってますが、初めて猫を飼うとこれまた面白いし、可愛い。結局ペットを飼うっていうのはどんな生き物でも飼い主にとっては可愛い存在なんでしょうね。葛城さんも、だまされたと思って亀飼ってみて〜!

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※「シネマックスモナムール」(全12回)は、2001年に葛城さんに連載していただいた、熱く濃ゆ〜い、日本映画コラムです。読みたい方は下記バナ−をクリックして、ご覧ください。


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