- 若林, 東京, Sun Jun 1 1:24:13 2003

久々の音盤雑記帖の更新は、 新譜ではないですが、紹介しておきたいな、というものを。 Sao Paulo, Brasil のレーベル Bau Prasil のちょっとした特集という感じで、 Toninho Ferragutti, Sanf Nemas (Pau Brasil, PB0016, 1998, CD) と Zeca Assumpcao, Caixa De Folia (Pau Brasil, PB0017, 1998, CD) のレヴューです。 去年、Joao Parahyba, Kyzumba (YBrazil?, YB?CD014, 2000, CD) を聴いたときに、Ferragutti が良いなぁ、と思って、 この界隈をフォローしていたんですが。今まで、紹介するきっかけが無かったり。

Toninho Ferragutti といえば、 Maria Joao / Mario Laginha / Toninho Ferragutti / Helge Norbakken, Mumadji (Mercury (Portugal), 014 077-2, 2001, CD) も入手してますが……。 Maria Joao の作品としては、 Cor (Verve (Portugal), 557 456-2, 1998, CD) (レヴュー) が一番良かったかなぁ、と思ったり。 最新作 Undercovers (Mercury (Portugal), 2003) は、 カヴァー曲集。rock / pop の曲を多くとりあげてます。けど、CCCDでのリリースなんだもんなぁ……、ということで未入手。 一応、いきつけのジャズ喫茶で頭だけちょっと聴かせてもらってますが、その限りでは、予想の範囲かしらん。うむ。

Zeca Assumpcao, Caixa De Folia の音楽を使っている コンテンポラリー・ダンス・カンパニー Lia Rodrigues Companhia de Dancas というのも、検索してみると、ちょっと気になったり。 女性アーティストのフェスティバルとして知られる (中東欧の音楽の文脈でも名がたまに出てくる) City Of Women, Ljubljana, SI に2001年に出演したときの 紹介 とか読んでいても、面白そうな気がします。観て見たいなぁ。 このときの演目 Such Stuff As We Are Made Of の音楽も Zeca Assumpcao だし。

さて、今回、レヴューを書こうと思ったきっかけは、先日、中古盤漁りで、偶然、 Grupo Um, Marcha Sobre A Cidade (1979 / Editio Princeps, EDITIO/01, 2002, CD) を入手したことだったり。こんなもの、再発CD化されたんですねー。 入手したその足でいきつけのジャズ喫茶に持っていったら、 あっさり「去年出てたよね。買ってみたけど……」とか反応があったんで、 実はけっこう話題になってたのかもしれないですが……。 1970年代後半という時代を感じさせる音作りだったりしますが。うむ。 この中古盤漁りでは、一緒に Lelo Nazario, Simples (Utopia, UT17534, 1998, CD) も入手したんですが。こちらは、John Abacrombie 参加ってことでちょっと期待したんですがね……。 しかし、これらを聴いていて、Pau Brasil 界隈をちゃんと紹介しておかなくては、と、思ったわけです。

僕が Pau Brasil の名前を知ったのは、実は10年近く前。 僕が Brasil の音楽をそれなりにフォローするようになったきっかけの一枚 Arnaldo Antunes, Nome (BMG (Brasil), M30.072, 1993, CD) (レヴュー) の制作の1人 Rodolfo Stroeter のバンドとして知ったわけです。 Marisa Monte とか Ziriguiboom レーベル界隈や YBrazil? レーベル界隈とか pop なアプローチのものの方が情報も音盤も入手が容易だったこともあってフォローを続けたわけですが。 Pau Brasil 方面は、とりかかるには情報も薄かったですし、 聴き進むきっかけも無いまま、いつのまにかフォローしなくなっていたのでした。 しかし、Arnaldo Antunes (レヴュー) → Suba (レヴュー) → Joao Parahyba (レヴュー) → Toninho Ferragutti → Pau Brasil という感じでいつのまにか辿り付いてしまうあたりが、 Sao Paulo のシーンも狭いというかなんというか……。

Pau Brasil レーベルの音源は、他にもいくつか手を出しています。 今でも唯一 Act レーベルのカタログに残っている Gilberto Gil, O Sol De Oslo (Pau Brasil, PB014 / Act, 5019-2, 1998, CD) は、面子で期待される程でもなかったしなぁ。 Pau Brasil, Babel (Pau Brasil, PB002, 1994, CD) も、いささか fusion 臭過ぎる感もあるしなぁ……。 酷いというほどではないんですけどね。お勧めってほどではないかなぁ、と。 Naylor "Proveta" 率いる Banda Mantiqueira が気になってますが、 CDは未入手だったり……。

Pau Brasil と並ぶ Sao Paulo の気になる面白い独立系レーベルといえば、 YBrazil? (レヴュー)。 配給の不安定さもありますし、すっかり活動停止状態になっているのかと思いきや、 最近、再び活発にリリースを始めましたね。最近、入手した Bolao, Back 2 Bahia (YBrazil?, YB?CD013, 2002, CD)、 けっこう楽しめましたよ。意外と jazz っぽいところもあったり、と。 この方面も、いずれまたレヴューで取上げたいとは思っていますが……。

- 若林, 東京, Mon Jul 28 23:27:50 2003

というわけで、大野さんにお借りしたCDを元に、今、ちょっと Brazil 物を強化中だったりします。 せっかくいろいろ聴いているので、興味深いと思ったものを中心に感想を談話室に何回かに分けて書いて行こうと思います。

Brazil 物については、本格的に手を出す余裕は全く無くて、 Arnaldo Antunes を手がかりに、 最近は ZiriguiboomYBrazil?Pau Brasil といったレーベルの界隈 (Sao Paulo 界隈ですね) を細々とフォローしている状態なわけですが (関連発言 1, 2, 3)。 Brazil 物は疎いので、「そういう音が好きならこれを聴け」ってツッコミは大歓迎です (もちろん、大野さん以外の方のツッコミも)。 ま、Brazil 盤は値段も高めですし、新品でどんどん買う余裕は無いですけど。 ちょっと余裕があるときに買ったり中古盤漁りしたりする際の参考にしたいと思います。

まずは、あまり期待してなかっただけに意外な発見だったのが Zizi Possi。 正直に言ってただのポップスという印象が強くて、ほとんど視野の外でした。 というわけで、とりあえず家事のB.G.M.って感じで Sobre Todas As Coisas (Eldorado, 946007, 1991, CD) を流してみたら、シンプルに音数を抑えたバックといい、かなりいい感じじゃないですか。 誰が演奏してるんだろう、と調べてみたら、piano はいろんな人が弾いてるようですが、 あとは、Aquarela Carioca の Marcos Suzano (percussion) と Lui Coimbra (cello)。なるほど。 どうやら、メジャーレーベル PolyGram で好きなことをさせてもらえないことに不満を覚えた Possi が、 独立系レーベル Eldorado から心機一転出直した一作目、ということのようですね。へー。

って、気になっていたところ、ちょうど中古盤漁りで Zizi Possi, Mais Simples (Marcury / PolyGram (Brazil), 532 711-2, 1996, CD) を見かけたので、即ゲット。メジャー出戻り第一弾なわけですが。 Rodolfo Stroeter のプロデュースで Rainbow Studio, Oslo 録音という、 まさに Pau Brasil レーベルな音作りです。 やはり、抑え目の音数で空間を感じさせる音作りなのが良いです。ベタと塗るような keyboards の音も無いし。 Suzano と Coimbra は相変わらず、Stroeter、Guello、Jether Garotti Jr. の5人によるバックの演奏も良いです。 ただ、キャッチのある歌が多いという点では Sobre Todas As Coisas の方が上かしらん。 Valsa Brasileira (Velas, 1993) も聴いてみたいなぁ。 ミュージシャンにも重なりがあるし。どうやら、 Sobre Todas As CoisasValsa BrasileiraMais Simples で三部作って感じですね。

Rodolfo Stroeter プロデュースの Brazil の女性歌物というと、 Monica Salmaso を思い出します。 Trampolim (Pau Brasil, PB012, 1998, CD) と Voadeira (Pau Brasil / Eldorado, 278103, 1999, CD) を持っていますが。 やはり、抑え目の音数でそれぞれの音や歌声を際出させるような音作りは気に入ってます (Zizi Possi, Mais Simple の音作りもそうですが)。 Trampolim では、Nana Vasconselos の percussion の絡みがいい感じです。 Salmaso の歌声は若干低めで落ち付いた感じになるんですよね。 サウダージ感が強いというか、ちょっと moody な感じというか。 特に Voadeira の前半は、さらっとした歌い方とはいえ fado に近い物悲しい雰囲気になってます。それはそれで良いんですが。 ちなみに、Rainbow Studio を使っているのは、Trampolim のミックスのみ。 Trampolim では一曲 Bugge Wesseltoft (レビュー) の伴奏で歌ってますね。

そういえば、Rodolfo Stroeter / Bugge Wesseltoft がらみといえば、 最近出た Joyce の新作 Just A Little Bit Crazy (Far Out, FARO077, 2003 CD) が、どうやらそのようなんですが、これはどんなもんなんでしょーか? Monica Salmaso や Gilberto Gil, O Sol De Oslo (Pau Brasil, PB014 / Act, 5019-2, 1998, CD) といった作品からすると、アコースティックな音でも悪くは無さそうだけど、 急いで飛び付くほどのものではないのかなぁ、と思ったり。 それとも、Far Out は club 系のリリースも多いレーベルだし、 ひょっとして New Conception Of Jazz な音になってしまったりするんでしょーか?

- 若林, 東京, Sun Aug 3 23:34:11 2003

今週末の音盤雑記帳の更新は、 ブラジルはサンパウロ (Sao Paolo, Brazil) の独立系レーベル YBrazil?特集レビューです。去年にも一度まとめて紹介しました (過去の発言レビュー) が、 そのフォローアップというか。最近のリリースを中心に、ということで。 2ヶ月ほど前にちょっと言及した Bolao, Back 2 Bahia (YBrazil?, YB?CD013, 2002, CD) に、その後にリリースされた (というか流通しはじめた) Anvil FX, Miolo (YBrazil?, YB?CD015, 2003, CD) を併せて。Back 2 Bahia はこの夏のヘビーローテーションになりそうですが。 実は、遅れ馳せながら入手した Walter Franco, Tutano (YBrazil?, YB?CD010, 2001, CD) が、今回紹介した3枚の中で最も気にいっている一枚だったりしました。 このアルバムで Franco を知ったのですが、過去の作品もちょっと気になっています。ふむ。 しかし、これを聴いていて、 Nouvelle feat. Arnaldo Antunes (関連発言) ってかなりハマりそうな組み合わせなんじゃないかという気がしました。 というか、この組み合わせってもっとあってよさそうだと思うんだけど、無いなぁ。意外だ。

YBrazil? というと、かつてはなかなか入手できないレーベルだったのですが、 最近はかなり配給が安定してきたんでしょうか。 ここにきて、リリースの頻度も上がってきたように思いますし。今後の活動に期待したいものです。 Trama とか、玉石混交で手を出すのが怖いところもあるんですが。 そんな中で、YBrazil? は、僕がレーベル買いできる唯一のブラジルのレーベルだったりします。 さすがにコンプリートで買ったりしてはいませんが、それに近い勢いで買ってるもんなぁ。 しかし、プロデュース業もいいけど、Nouvelle 自身の新作も早く聴きたいです。 消息が掴めてないんですが、そもそも作ってるんでしょーか…。

- 若林, 東京, Mon Sep 15 23:20:22 2003

今週末の音盤雑記帖の更新は、 ブラジル物の落穂拾い、数年前のリリースですが最近入手して気に入ったものの紹介です。

まずは、Mario Seve & Marcelo Fagerlande, Bach & Pixinguinha - Sax, Flauta & Cravo (Nucleo Contemporaneo, NC017, 2001, CD) のレビューです。 バロック音楽の Bach 対 ショーロ (choro) の Pixinguinha なんて企画倒れかもしれない、と思いつつ、 ま、Aquarela Carioca の Mario Seve だし、と思って手を出したんですが。 際物っぽさも感じられない優雅さすら感じる仕上がりで、とても気にいってしまいました。く〜。 ちなみに、リリースはサンパウロ (Sao Paulo) のレーベル Nucleo ContemporaneoPau Brasil 界隈のセッション piano 奏者 Benjamim Taubkin と sax 奏者 Teco Cardoso が A & R のレーベルで、 Pau Brasil とも共通するようなレーベルカラーのある、 アコースティック寄りのインストゥルメンタルのリリースをしているレーベルです。 アウトレットや中古で安く売っていると買ってみたりしているんですが、 悪くはないけど決め手に欠けるなぁ、と思ってました。 そんな中で、Bach & Pixinguinha は大当たり。 しかし、こういう企画物は、 Winter & Winter のような欧州のレーベルが得意としているようなところもあったわけですが。 最近は、こういう企画物が、欧米での制作ではなく、世界各地でそれなりの質で出てくるような気がしますね。

もう一つは、 Arnaldo Antunes, O Corpo (Grupo Corpo, GC005, 2000, CD) の レビューです。 今まで、ほぼ全作品を音盤雑記帖で取り上げてきたくらい好きなミュージシャンなのですが、 このアルバムだけ自主制作だということもあって今まで入手できないでしたのでした。 しかし、Nome (BMG (Brasil), M30.072, 1993, CD) が無かったら 今のような感じでブラジルの音楽をフォローしてなかったかもしれないし、 その後の Antunes のリリースが物足りなく感じていただけに。 このリリースは嬉しいですね。しかし、こういうのはメジャー BMG からのリリースは難しいんですかね……。 ちなみに、関連する過去のレビュー 1, 2, 3, 4, 5, 6