第18回

6月号


『恋愛寫眞』

 タイトルをわざわざ旧字にした意味がよくつかめない。不明は続く。広末涼子は何のために黄泉がえるのか、いやこれは黄泉がえるとは言えないかもしれない。なぜなら松田龍平の目にしか見えず、第3者はその存在すら認識できない。それは幻と言うべきであって黄泉がえりではない。今年は黄泉がえりの傑作を2本も見たので期待した。しかし、松田龍平は広末涼子の役名をなぜ生きるのか、その説明の映画でしかない。


 私のカメラに弾痕はない。しかし大きな傷は3つもある。北海道小樽、東京高輪、新潟関川村、このいずれかの場所で、私のカメラが消滅したかもしれない程の傷である。私はニコンFAだが松田龍平のキャノンには大きな傷がきざまれている。その傷を取り巻く諸環境が私のFAと比較してさえチープである事が、この映画を貧弱にしている。私のカメラの傷は映画ではない。しかし沢田教一のカメラの傷は映画でさえあった。


●市井義久の近況● その18 6月

 今は『メラニーは行く!』だけを宣伝している。5月20日(火)ブエナ・ビスタ試写室、マスコミ試写ではなく「リクエストQJ」という雑誌で募集した一般試写。試写室なので47席、満席で入場できませんと伝えた時、一人の女性が怒り出した。遠くから来たのに、豪雨の中来たのに、子供を母に預けて来たのに。そしてふたたび5月22日(木)「アッシュ」という媒体の試写。会場は同じくブエナ・ビスタ試写室。満席ですと伝えた時、一人の女性が泣き崩れた。ただひたすら泣いていた。5月28日(水)八芳園試写会。キャパ300人、30分前に満席。それはおかしいと押し問答の末、汗だくでイスを60席用意する。すべて『メラニーは行く!』の一般試写会である。通例一般試写会は歩止まりを考えて招待状を出した人のうち70〜80%の人が来場して満員というふうに計算して、当然定員よりは多く出す。しかし、怒ったり泣いたり、30分前に満席とは。昔『バック トゥ ザ フューチャー』という映画を新宿プラザ1044席の映画館に見に行ったことがあった。初日ではないが満席と言われ、一緒に行った女性が泣き崩れた。それから20年、ふたたび映画の力を認識した。見る前に、人を怒らせ泣かせ開映30分以上前に来させ、映画の力とは、想像させる力と思う。写真(↓)は6月14日(土)初日『メラニーは行く!』。


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市井義久(映画宣伝プロデューサー)

1950年新潟県に生まれる。 1973年成蹊大学卒業、同年株式会社西友入社。 8年間店舗にて販売員として勤務。1981年株式会社シネセゾン出向。 『火まつり』製作宣伝。
キネカ大森番組担当「人魚伝説よ もう一度」「カムバックスーン泰」 などの企画実現。買付担当として『狂気の愛』『溝の中の月』など買付け。 宣伝担当として『バタアシ金魚』『ドグラ・マグラ』。
1989年西友映画事業部へ『橋のない川』製作事務。 『乳房』『クレープ』製作宣伝。「さっぽろ映像セミナー」企画運営。 真辺克彦と出会う。1995年西友退社。1996年「映画芸術」副編集長。 1997年株式会社メディアボックス宣伝担当『愛する』『ガラスの脳』他。

2000年有限会社ライスタウンカンパニー設立。同社代表。

●2001年 宣伝 パブリシティ作品

3月24日『火垂』
(配給:サンセントシネマワークス 興行:テアトル新宿)
6月16日『天国からきた男たち』
(配給:日活 興行:渋谷シネパレス 他)
7月7日『姉のいた夏、いない夏』
(配給:ギャガコミュニケーションズ 興行:有楽町スバル座 他)
8月4日『風と共に去りぬ』
(配給:ヘラルド映画  興行:シネ・リーブル池袋)
11月3日『赤い橋の下のぬるい水』
(配給:日活 興行:渋谷東急3 他)
12月1日『クライム アンド パニッシュメント』
(配給:アミューズピクチャーズ 興行:シネ・リーブル池袋)


●2002年

1月26日『プリティ・プリンセス』
(配給:ブエナビスタ 興行:日比谷みゆき座 他)
5月25日『冷戦』
6月15日『重装警察』
(配給:グルーヴコーポレーション 興行:キネカ大森)
6月22日『es』 
(配給:ギャガコミュニケーションズ 興行:シネセゾン渋谷)
7月6日『シックス・エンジェルズ』
8月10日『ゼビウス』
8月17日『ガイスターズ』
(配給:グルーヴコーポレーション 興行:テアトル池袋)
11月2日『国姓爺合戦』
(配給:日活 興行:シネ・リーブル池袋 他)

ヨコハマ映画祭審査員。日本映画プロフェッショナル大賞審査員。

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