第21回

9月号


『昭和歌謡大全集』

 9月1日東京は残暑というより、夏の盛りを思わせる、暑く、ムシムシする1日であった。午後1時半地下鉄新橋駅、1本の柱を1人の若者が、音が立つか立たないかのやわらかさで、何度も何度もけり上げていた。20代後半、髪は少し茶色がはいり、旧のベッカムヘアーをデップでかため、細身のスーツに黒いカバンのおしゃれな若者。そして目は下ではなく、やや上方を、うつろに見つめていた。


 この映画は、若者グループと、おばさんグループが訳も無く武器をドンドンエスカレートさせて殺し合いをする話である。若者グループ6人にはジャンクフード好きという以上の一体感があり、おばさんグループは名前がミドリという以上の連帯感はある。しかしなぜ両者は殺し合わねばならないのか、ムカツク、そうかムカツクからか。ならばなぜ少年は、オナニーをするミドリ、新しい美容院をまかされようとしているミドリ他計4人のミドリとともに、何10万もの調布市民を抹殺するのか。映画とはそういうものだと思う。『バトルロワイヤルU』も『ターミネーターV』もそういうものだと思う。しかし、この映画も、9月1日、関東大震災の日に新橋駅で見たあの若者同様に、不快感以上の戦りつがはしる。それはそれでこの映画は成功しているということであろうか。


●市井義久の近況● その21 9月

 8月は湯布院映画祭である。今年は28回目、8月20日より24日の5日間。私は第3回からの参加で26年間連続して、最高5日間、最低でも土・日の2日間は参加している。26年間毎年8月の終りの何日間は湯布院ですごしている。最初の頃は映画ばかり見ていた。最近では映画は1日4本上映されるうちの2本ぐらいにして、ゆっくりと食事をとったり、1日最低でも2回は温泉にはいったり、人と話をしたりしてすごしている。だからこそ連続参加が26年間も続いたのである。

 発見はあった。映画はもちろんであるが、映画人、湯布院の人、映画祭に集まる人、土地、食べ物、空気、風景、私の湯布院での時間。その時、その時の発見の連続が、私を今年も湯布院へと、飛行機を使っても往復10時間の旅へといざなうのである。今年の発見は、私自身の時間(おおげさには歴史)である。私が最初に訪れたのは、1977年、27才、スーパーマーケットの店員であった。それから四半世紀、その間会社も変り、生活も変り、今は映画の宣伝マン、なんと今年上映される17本のうち新作は5本、そのうち2本の宣伝を担当している。過去において、私が宣伝を担当していた作品が2本上映されたことがある。『バタアシ金魚』、『ドグラマグラ』しかし、今年のように同時に2本も上映されるのは初めてである。だからまず最初に私の変転を発見した。それだけでは無い。私は参加できなかったが、今年は初日8月20日に乙丸地区公民館にて懇親会があったという。私が、初めて訪れた3回目も亀の井別荘の雪安居で、実行委員と客合せて20人くらいでそのような催しがあり、びっくりしたものだが、今年はなんと円環するように、その交流会が復活した。

 映画祭の最終日がハネた月曜、私は朝から玉の湯という旅館で何もしない。風呂、朝食、ビール、ワイン、トイレこれくらいである。日常生活において、病気でもない限り何もしないというのがどれくらい困難なことか。考えて欲しい。

 しかし映画祭の最終日の翌日は早朝に起床して午後4時まで毎年何もしない。365分の1日をそうやって過ごすことで、又、来年も湯布院に居る。(写真↓は今年上映された宣伝作品の1本『ヴァイブレータ』11月下旬 シアター・イメージフォーラムにて公開)





市井義久(映画宣伝プロデューサー)

1950年新潟県に生まれる。 1973年成蹊大学卒業、同年株式会社西友入社。 8年間店舗にて販売員として勤務。1981年株式会社シネセゾン出向。 『火まつり』製作宣伝。
キネカ大森番組担当「人魚伝説よ もう一度」「カムバックスーン泰」 などの企画実現。買付担当として『狂気の愛』『溝の中の月』など買付け。 宣伝担当として『バタアシ金魚』『ドグラ・マグラ』。
1989年西友映画事業部へ『橋のない川』製作事務。 『乳房』『クレープ』製作宣伝。「さっぽろ映像セミナー」企画運営。 真辺克彦と出会う。1995年西友退社。1996年「映画芸術」副編集長。 1997年株式会社メディアボックス宣伝担当『愛する』『ガラスの脳』他。

2000年有限会社ライスタウンカンパニー設立。同社代表。

●2001年 宣伝 パブリシティ作品

3月24日『火垂』
(配給:サンセントシネマワークス 興行:テアトル新宿)
6月16日『天国からきた男たち』
(配給:日活 興行:渋谷シネパレス 他)
7月7日『姉のいた夏、いない夏』
(配給:ギャガコミュニケーションズ 興行:有楽町スバル座 他)
8月4日『風と共に去りぬ』
(配給:ヘラルド映画  興行:シネ・リーブル池袋)
11月3日『赤い橋の下のぬるい水』
(配給:日活 興行:渋谷東急3 他)
12月1日『クライム アンド パニッシュメント』
(配給:アミューズピクチャーズ 興行:シネ・リーブル池袋)


●2002年

1月26日『プリティ・プリンセス』
(配給:ブエナビスタ 興行:日比谷みゆき座 他)
5月25日『冷戦』
6月15日『重装警察』
(配給:グルーヴコーポレーション 興行:キネカ大森)
6月22日『es』 
(配給:ギャガコミュニケーションズ 興行:シネセゾン渋谷)
7月6日『シックス・エンジェルズ』
8月10日『ゼビウス』
8月17日『ガイスターズ』
(配給:グルーヴコーポレーション 興行:テアトル池袋)
11月2日『国姓爺合戦』
(配給:日活 興行:シネ・リーブル池袋 他)

ヨコハマ映画祭審査員。日本映画プロフェッショナル大賞審査員。

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