KimsCinematicKitchen
テキスト&フォト&イラスト by キム・パプコ

第21回9月号  762平方キロメートルのギャラリー


日比野克彦
「明後日(あさって)新聞社文化事業部」
@莇平(あざみひら)集落・旧莇平小学校(松代町)

 いやー、ちょっと気分転換のつもりで出かけただけなんですけど、贅沢気分で帰ってきました。一泊二日で「大地の芸術祭〜越後妻有アートトリエンナーレ2003」を観てきたのです。新潟県、越後妻有(つまり)地区の6市町村(十日町市、川西町、津南町、中里村、松代町、松之山町、)の里山を舞台に、現代アートの展示を繰り広げたイベントです。前から気にはなってたのですが、8月に新潟へ旅するっていうのはどうなの?しかも、どの町もガイドブックに載ってないじゃない!としぶりつつ、重い腰を上げたときには9月。最終日を含む日程となってしまいました。

工学院大学 藤木隆明研究室
「十日町に服を着せようプロジェクト」
@稲荷町通り、昭和町通り他(十日町市)
 ご存知の方もいるかと思いますが、この催しのそもそもの発端は、地域の深刻な過疎化。豪雪地帯ということもあり、若者の地元離れは加速度化しているとか。廃村や廃校も後をたたず、今回、それらがアーティストたちの手により、生き生きと甦っていました。なかでもC.ボルタンスキーの、明かりを灯した情感たっぷりの古ぼけた建物や、日比野克彦が現地の日々の出来事をアバウトに(?)伝える新聞社に変身させた校舎など、外観からすでに作家の個性がただよってましたよ。建物まるごと素材にできるなんて、アーティスト冥利につきるだろうな。一方、点在する作品を観るために走るバスの道筋には、ところどころ置き去りにされた田畑に草が伸び放題になった様子も見え、過疎化の実体を見せつけられることに。複雑な気持ち…。


 ところで、2回目の開催となる今回、新たに建築されたという施設は個性的なものでした。松之山町の“森の学校キョロロ”は潜水艦みたいな外観で、冬場(平均積雪5m;過去最大30m超!)は雪の中から展望塔がニョロリと突き出たようになり、中からはガラス越しに積雪量が見れるんだとか。松代では、山中に設置された作品を観賞しつつふもとを眺めると、国際的な建築家集団MVRDVによる “まつだい雪国文化村センター”が、そこだけ未来都市のようにポッカリと存在。キューブリックやタルコフスキー、ジャック・タチにも見せたくなるよーな建造物でした。そんなものも含め、青々とした棚田が目に楽しい田園風景の中で互いに引き立て合っていることが多く、面白い視覚効果を生んでましたよ。

 地域住民の理解を得て、と聞いてたけど、時折、パスポートチケットのスタンプ集めにのみ足を運んだと思われる地元の人が、「わからんな〜。んー、わからん」とつぶやきながらウロついてるのもご愛嬌。短編ビデオ・インスタレーションが終日流れてるはずの共同温泉では、おじさんが慌ててナイター中継止めてくれたり(笑)。

すでに紅葉を先取りしていた1本の樹木@中里村
(注:これはアートではありません!)
本間純「森」
@マウンテンパーク津南(津南町)
クリスチャン・ボルタンスキー+ジャン・カルマン
「夏の旅」
@旧・東川小学校(松之山町)
中瀬康志「儀明(ぎみょう)/劇場」
@儀明集落(松代町)

 あー、まだまだ色々ご紹介したいことがあるのですが、書き切れない…。私も学生だったら、「こへび隊」て呼ばれるボランティア・スタッフに加わりかったかも。せめて、次回(3年後)は夏が始まったらすぐに出かけよー。

●Kim's 近況

 実は、直前までこの芸術祭の内容については、ほとんど知らなかった私。参加アーティスト157組となるとあまりに掴み所がなく、ホントに遠路行く価値あるのか?と半信半疑。とりあえずは緑がいっぱいありそーだし、温泉に入れるー、という期待の方が大きかった(笑)。もっと何度もリピートしたかったなあ。最終日だったので、欲しかったグッズがほぼ売り切れだったし…。ただ、嬉しい驚きだったのは、同じツアーバスの乗客たち。都内の美術館に勤務していたとか、現在ボランティアスタッフをしている、という方たちの多いこと。道中も興味深いエピソードが聞けました。さらには「息子が出品してまして」というご夫妻のお話を聞けば、小沢剛さんのご両親!と判明して一同ビックリ。などというオマケまでついていたのでした。

*越後妻有アートトリエンナーレ2003→http://www.echigo-tsumari.jp/tsumari_html/Japanese/main.html
*小沢剛「かまぼこ型倉庫プロジェクト」→http://ma-museum.com/niigata/2003/05-koya.htm(ページの中ほど)


Kim's Cinematic Kitchen バックナンバー
1月号 2月号 3月号
4月号「春一番」 5月号「5月です」 6月号「少林サッカー」
7月号「髪を切る人」 8月号「夏が来た!」 9月号「シネコン大好き」
10月号「秋の夕日に・・・♪」 11月号「厨房にて」 12月号「冬もいよいよ」
2003年1月号
「羊といえば・・・」
2月号
「猟奇的な季節!?」
3月号
「ピアノのおけいこ」
4月号
「できれば僕をつかまえて」
5月号
「いつかあなたも六本人」
6月号
「雨の日に六月の蛇を見たか?」
7月号
「CANDYアイ・ラブ・ユー」
8月号
「8月の風に吹かれたい!」


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