甘い生活苦タイトル画
タイトル画:武川雅寛・白井良明(ムーンライダーズ)

 2007年8月 第26回「ロハスな考え」

 以前、何かで見かけたのだろう。そのキョーレツなインパクトから、記憶の片隅に残っていた絵がある。ほとんど忘れていたのだが、全く予期せぬ場面で実物に出くわした。
 後で知ったのだが、公開がその時だけだった、という事からも、目に見えない何かが働いている、と感じる出来事でもあった。

 掛け軸に描かれた、その絵とは「檀林皇后九想図(だんりんこうごうくそうず)」。

 41回目の盆。一度してみたかった、ご先祖様をあの世からお連れする「精霊迎え」のため、家族で六道珍皇寺を訪れる前、向かいの西福寺にふらっと立ち寄った時の事である。
 ついでの西福寺が建つこのあたり京都・鳥辺野(とりべの)は、近代まで、亡骸を放置していた葬送地であり、あの世とこの世の分岐点である、と今でも信じられている。

 で、その「檀林皇后九想図」は、平安初期、檀林皇后が自分の死後、埋葬する事を禁じ、朽ちて土に還る様子を、九つの段階に描かせた、実にロハスな掛け軸である。
 ピーター・グリーナウェイの作品を思い出す私の横で、興味津々に見入る子供たち。グロ云々という前に、命あるもの全て土に還る、という自然の摂理。そして、「死」をも金儲けのネタとした、行き過ぎた金拝主義に対し、(本当に)身をもって訴えた檀林皇后。こんな時代から、現代でも十分に通用する警鐘を鳴らし続けている、と読み取れる。


 隣で売っている名物・幽霊飴(!)を横目に、その後ご先祖様を珍皇寺へ迎えに行く。境内にある「迎え鐘」を念じながら鳴らし、あの世のご先祖様に気付いてもらう流れである。
 ご先祖様と一緒に、シド・ヴィシャスと横山やすしも連れて帰ろう、と嫁に提案するが、一蹴されたのは言うまでもない。なむー。チーン。

 レーコより:絵はもっと多いのですが、いくつかはっきりした絵を選んでみました。人間も裸になって、肉を剥ぎ取ってしまえばみんな骨だけになっちゃうっていう「リバーズ・エッジ」のセリフを思い出しました。葛城さん、せっかく原稿をもらってたのに、更新が遅くなって本当にごめんなさい。

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※「シネマックスモナムール」(全12回)は、2001年に葛城さんに連載していただいた、熱く濃ゆ〜い、日本映画コラムです。読みたい方は下記バナ−をクリックして、ご覧ください。


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