KimsCinematicKitchen
テキスト&フォト&イラスト by キム・パプコ

第25回1月号  愛しかない、それが世界を動かしている


 年が明けました。みなさま、今年も引き続き、ご愛顧お願い申し上げます!

 ところで時々、好きなことを仕事にして人生送れたらいいな、なんて考えるときがあると “プロ野球選手”と“バンド活動”って、必ず最初に頭に浮かぶんですけど、それって私だけでしょーか?きっとプチ有名人もどきの浮かれ気分が体験できるに違いない!なんてことも思う。不純な理由。でも、現実的な成功に結びつけるとなると当然ながら道は険しく、甘っちょろい思いなど吹けば飛ぶよに消え去ってしまうんですよねー。

 『アイデン&ティティ』(田口トモロヲ監督)は、バンド活動の理想と現実の狭間に陥ったジレンマをあぶり出している、いたって真面目な映画でした。それは、一人のロック青年の悩みを超えて、社会に出て誰しも経験する自分探しの旅であるわけで…。

 お話の中心は、オーディション番組で人気が出たロックバンド"SPEED WAY"。そこそこ売れ始めたものの、ギタリスト中島(峯田和伸)は四畳半暮らし、他のメンバー(中村獅童、大森南朋、マギー)もバイト生活をやめられず、現実はちっとも変わらない。事務所のお偉方(岸部シロー)は、売れるためにはウケる曲を書けと口うるさいだけ。「一体、俺たちの“ロック”を続けられなくて、なんの意味がある?」女の子にはそこそこモテるけど、それもブームが終わればどうなるやら。常にもどかしさと隣り合わせの毎日が続くのです。そんなとき救いの手をさしのべるように、中島の前に現れたのは…!?


 「息の仕方を知ってるなんて奇跡だぜ」(ボブ・ディラン)を始めとする、数々のセリフが胸にしみます。歌詞だったり、中島、または中島の彼女(麻生久美子)のセリフだったり。頭から原作者みうらじゅんのキャラを想像してると、心地よく裏切られます。青春物でもラブ・ストーリーでもサクセス・ストーリーでもないのに、それら全ての要素を網羅していて、ホロ苦いだけでなく、なにやら甘酸っぱい。でも、やはりテーマは愛なんだろーな。自分を知るために必要な愛。原作も、一話ごとに「愛しかない、それが世界を動かしている」という言葉で終わるんですからね。

 主人公の中島を等身大で演じる峯田和伸が、とにかく抜群によいです!その真直ぐな瞳イッパイに、ときに意志の強さを、ときに不安をにじませていて。し、しかし、なぜアフロ?原作コミックでは、みうらじゅんと同じロンゲですけど…(笑)。

 この映画のベースになった番組は、あの「イカ天」(“イカすバンド天国”)。好きでしたねー。フライングキッズ、たま、ビギン、スイマーズ、宮尾すすむと日本の社長、カブキロックス、みうらじゅんのバンド“大島渚”。この番組に出演すること自体をバンドが楽しんでる雰囲気がありましたよね。プロデビューを“棚からボタもち”的に感じてた人たちの方が多かった気がする。そんな中で、現在ちゃんとメジャーで活動してる“ビギン”とか、ちょっと凄いんじゃないでしょか。『アイデン&ティティ』観た後では、彼らがホントに好きな曲を作り続けていること自体、奇跡に近い行為だと思うのでした。


●Kim's近況●

これまで一度も興味を示したことなかった“ロングブーツ”というものを購入しました。なんか今まで、ミニスカートとセットでなきゃいけない気がして。勝手な想像。で、試着して気付いたのが、その異様な拘束感。長いジッパーが自分じゃ締められず、靴屋さんにギュゥ〜っと締め付けられながら、ようやく装着。いやしかし、キリキリと痛む私のふくらはぎ。「イ、イタイ。痛くていいんですか?」「…マズイですね」そして勧められたのがストレッチブーツ。ご存知でした?ふくらはぎ部分がストレッチ素材。おー、素晴らしい。痛くないー。そして暖かいっ! と、いまさらながらロングブーツに感動の図。今年はスカートも穿こう(ミニじゃないので、ご心配なく!)。


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7月号「髪を切る人」 8月号「夏が来た!」 9月号「シネコン大好き」
10月号「秋の夕日に・・・♪」 11月号「厨房にて」 12月号「冬もいよいよ」
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2月号
「猟奇的な季節!?」
3月号
「ピアノのおけいこ」
4月号
「できれば僕をつかまえて」
5月号
「いつかあなたも六本人」
6月号
「雨の日に六月の蛇を見たか?」
7月号
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「8月の風に吹かれたい!」
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11・12月号
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