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『悪い男』 極めて物語性の濃い内容である。ファーストシーンが、エゴン・シーレに興味のある西洋美術史専攻の21歳の処女の女子大生、それがラストでは屋台売春婦、移動売春婦に成長する。それもファーストシーンではつばを吐きかけられたやくざが移動売春のトラックの運転手を務め、彼とともに極めて濃密なビジネスを展開する。それがわずか1時間43分の映画の中で起るのである。しかし納得できない不整合な部分はほとんど無い。私は女子大生でもなければ移動売春婦でもなければ、やくざでもないが、この波乱万丈のストーリーが、わずか1時間43分後であったとしても、納得して見ていた。主人公のやくざが、“やくざが愛かよ”と言うように2人の関係が、“愛”でつき動かされているのではない。 売春宿を取り仕切るやくざが、女子大生を自分の領域へ引きずり込み、女子大生から売春婦となった女が、今度はやくざを彼の生活圏から移動売春へと引きずり出したのである。引きずり込んだ男が引きずり出され、引きずり込まれた女が引きずり出したのである。濃密な物語構造の映画と思う。 クギを直す描写、破れた写真に顔を入れ込む描写、酒に身をまかせる描写、細部の1つ1つの描写が、女性の成長物語としては極めて異質の映画を、見事に成立させている。 2月28日から始まって3月23日までの8週間、私が見た日曜日2時28人、もはや日本人はこういう強い主張を持った映画を拒否するようになってしまった。かつての東映やくざ映画、日活ロマンポルノ、ATG、かつて日本にも存在した主張のある映画を現日本人は、明らかに作ることも見ることも拒否している。ざまあみろではなく、ざまあないなあ。 写真は『悪い男』、『悪い男』は8月6日DVD・VHS発売予定。 |
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●市井義久の近況● その28 6月 麻布十番に通勤して4年。こんな小さな町でも世相の変化は十分読み取れる。毎日の昼食は5軒の店を回遊している。そのうちの1軒に魚料理の店がある。4年前には昼、食事をしながらのビールは、ほぼ男性に限られていた。しかし徐々に女性も目立ち始め、先日など女性4人がおいしそうに日本酒を飲んでいるのさえ目撃した。私の知る限り、この店で昼日本酒を飲んでいた男性1人客はいたが、男性グループは皆無である。又、店内に桜の枝を飾り出した早春の昼下がり、幼稚園の出迎え帰りの母親グループが子供とともにおいしそうに温かい日であったのでほんとうにおいしそうに皆でビールを飲んでいた。 また別のもう1つの店は、おはこびさんが男性で、厨房の料理人がすべて女性という店もある。性差は消滅する。固体の差は依然存在するだろうが、女性だから、男性だから、で語られることはやがて消滅するであろうことが麻布十番の小さなお店の中からでも見て取れる。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
市井義久(映画宣伝プロデューサー) 1950年新潟県に生まれる。 1973年成蹊大学卒業、同年株式会社西友入社。 8年間店舗にて販売員として勤務。1981年株式会社シネセゾン出向。 『火まつり』製作宣伝。 キネカ大森番組担当「人魚伝説よ もう一度」「カムバックスーン泰」 などの企画実現。買付担当として『狂気の愛』『溝の中の月』など買付け。 宣伝担当として『バタアシ金魚』『ドグラ・マグラ』。 1989年西友映画事業部へ『橋のない川』製作事務。 『乳房』『クレープ』製作宣伝。「さっぽろ映像セミナー」企画運営。 真辺克彦と出会う。1995年西友退社。1996年「映画芸術」副編集長。 1997年株式会社メディアボックス宣伝担当『愛する』『ガラスの脳』他。 2000年有限会社ライスタウンカンパニー設立。同社代表。 ●2001年 宣伝 パブリシティ作品 3月24日『火垂』 (配給:サンセントシネマワークス 興行:テアトル新宿) 6月16日『天国からきた男たち』 (配給:日活 興行:渋谷シネパレス 他) 7月7日『姉のいた夏、いない夏』 (配給:ギャガコミュニケーションズ 興行:有楽町スバル座 他) 8月4日『風と共に去りぬ』 (配給:ヘラルド映画 興行:シネ・リーブル池袋) 11月3日『赤い橋の下のぬるい水』 (配給:日活 興行:渋谷東急3 他) 12月1日『クライム アンド パニッシュメント』 (配給:アミューズピクチャーズ 興行:シネ・リーブル池袋) ●2002年 1月26日『プリティ・プリンセス』 (配給:ブエナビスタ 興行:日比谷みゆき座 他) 5月25日『冷戦』 6月15日『重装警察』 (配給:グルーヴコーポレーション 興行:キネカ大森) 6月22日『es』 (配給:ギャガコミュニケーションズ 興行:シネセゾン渋谷) 7月6日『シックス・エンジェルズ』 8月10日『ゼビウス』 8月17日『ガイスターズ』 (配給:グルーヴコーポレーション 興行:テアトル池袋) 11月2日『国姓爺合戦』 (配給:日活 興行:シネ・リーブル池袋 他) ヨコハマ映画祭審査員。日本映画プロフェッショナル大賞審査員。 |
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