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テキスト&フォト&イラスト by キム・パプコ |
第27回3月号 犬が吠える村にて |
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ラース・フォン・トリアー監督の新作『ドッグヴィル』は、 “チョークで描いた”村が舞台。お話は、“ドッグヴィル”という、どこにでもありそうな山間の村でのこと。ある朝、なにかを知らせるように犬が吠えた。女(ニコール・キッドマン)が一人迷い込んで来たのだ。どうやらギャングの一味から逃れてきたらしい。村の青年トム(ポール・ベタニー)は住民たちを集め、グレースというこの女を村にいさせてあげようと提案する。素性を知らない彼女に対し不信感を抱く人もいるなか、村の仕事を手伝わせて誠意を示してもらおうということに。その献身的な仕事ぶりに、村人たちの心も少しずつほぐれていくが…。 ドッグヴィルの家々の造りは、「間取りの手帖」にも載ることはないであろう、あまりといえばあまりに単純な間取り。たとえば、寝室と居間、とかね。その程度です。むしろ村全体が、ようやく一つの家に見えるぐらい。ところで、壁がないって設定はどうなんでしょう。そこはトリアー監督のこと。単に奇をてらっただけでなく、なにかを意図したもののはず。家の壁や塀なんて、元々村の人々にとってはどれほどの意味ももたないってこと?プライバシーなんて意識はなく、全員が家族みたいなものだから?そう、確かにこんな小さな村だと、互いから隠すものも守るものも何もないに違いない。いやいや、あるいは逆に、互いにまったく興味がないから不要なのかも。チョークで描いた、という設定ゆえに、数々の思いが私を襲う。で、実際の撮影としては、たとえば、ある家で誰かと誰かが密会してても、子供たちは道で無邪気に遊び、老婦人は庭に水を撒き、男は野良仕事へ、なんて光景が同じフレームにおさまるわけで…あれ?一見不条理な空間に見えたけど、なーんだ。これって究極のリアリズムでは?!なんてことまで思い始めてしまう。ううむ。私の脳味噌までチョークで描かれてしまったのかしら?? ところで、この、ミニマルな空間の中に投げ込まれるニコール・キッドマン。今回はとりたててきっちりしたメイクもドレスアップもしてるわけじゃないし、見た目はかなり地味。しかし、そんなことで容易に霞んでしまうことはなく、あくまでも生活感はなく、むしろ持って生まれた端正な顔立ちが際立っているんですよね。これが同じ人間なのか?いや、私と比べたら当然のことですが、他の村の住民と比べても雲泥の差(ゴメンね、クロエ・セヴィニーちゃん)。つまり、彼女はどこからどう見ても“白鳥”でしかないのに、このドッグヴィルという村の中では“みにくいあひるの子”でしかありえない、という事実がありありと浮かび上がってくるのでした。数々の出来事が彼女を襲うたび、その美しさゆえ痛々しさを誘い、見るほどに切ない。そう、この役はニコールでなくてはいけなかったのです!というわけで、『ロード・オブ・ザ・リング〜王の帰還』の感動もさめやらぬまま、今月はケータイを開くとニコールがいます。鏡と思って眺めよう(無茶な!)。 |
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●Kim's近況● 今まで、亀のように歩みののろいノートPCでチマチマやってたんですが、5年ぶりに思い切ってパソコン買い換えました!で、ここ数年、ビデオ録画をほとんど毛嫌いしてたくせに、自分でも不思議なほどTV録画機能を使いまくってます。あ、今日残業ありそう、ってときにセットして、帰って観てサクサク消して、って調子。何なんだろー、この変わりよう。なんか『2001年宇宙の旅』で原始人の目の前にモノリスが出てきたシーンが、自分の姿に重なっております。 |
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