KimsCinematicKitchen
テキスト&フォト&イラスト by キム・パプコ

第28回4月号  象をさわってみたら


 1999年、米コロラド州コロンバイン高校の銃乱射事件をモチーフにした、ガス・ヴァン・サント監督作『エレファント』。カンヌではパルム・ドールと監督賞受賞という史上初の快挙!でしたが、『ボーリング・フォー・コロンバイン』とはまったく別の切り口、限りなくミニマルな演出で事件の起きた一日を描いてます。

 オープニングは、ふと見上げた一面の青い空に、電信柱が一本。あ、この空、知ってる。それは“事件当日の天気”というのじゃなくて、だれもが2,3日に一度ぐらい、ふと見上げることがある、そんなとき目に映る空です。だって、私がたまに見上げる六本木の空にも似てるもの(なわけないけど)。

 さて場所は、オレゴン州ポートランド郊外のとある高校(コロラドじゃありません)。そう、どこにでもありそうな学校での一日が始まります。それは、昨日とほぼ似てるけど、ちょっと違うかもしれない今日。「遅刻のせいで呼び出し食った。でも、それより酔っ払ったオヤジが心配」であったり、「女友達と学食でダベるうち、ダイエット法で意見一致」であったり、「めちゃイケてる男子発見!でも終始カノジョとベッタリでがっかり」、もしくは「いい天気なのに気分はイマイチ。とりあえず今日から図書館でバイト」であったりします。とりたてて特別なこともない、学生生活の中の1日。ただ、観客だけは知っているのですね。その一瞬一瞬が悲劇に向かっていることを。

 生徒それぞれの視点で切り取られた時間を貼り合わせつつ、徐々にその1日は形を成していくわけですが、カメラといえばぶらり校庭に佇み、何をするでもなく眺めてる、という風情。また時折、生徒の後姿をひたすら見つめていたり。そんな微妙な距離感のせいか、もしかしたら自分もそこにいる?という気持ちは高まるばかり。なにやら異様な臨場感とともに、逆に無力を実感…。この映画、ある意味、ニュースやドキュメンタリーで語られる以上に真実を伝えてるのかも。より広くというか、むしろ接近して。

 主演の男の子、ジョン・ロビンソンはどことなくパトリシア・アークェットにも似てる。とうもろこしのひげのようにフワフワなびくブロンドに、バッファローの絵のある黄色いTシャツ(普通ならイケてないはず)が似合ってました。早速、L’UOMO VOGUE誌の表紙を飾ったとかで、ヨンさまの次に要チェック!ですね。

エレファント→http://www.elephant-movie.com/elep_index.htm
●Kim's近況●

最近、友だちと話してたら突然“リンパドレナージュ”を受けたら体質が変わった!とまるでCMのようなことを言うのです。それってなに?と思ったら、おフランス語で“リンパ”は「リンパ(液)」ですが、“ドレナージュ”は「排出」という意味で、つまりはリンパマッサージ。日ごろ鉄のような肩をしょってる私としては聞き逃せず、早速体験してきちゃいました。アロマオイルの香りにしばし陶酔…(2時間強)の後、ウチ帰ったら、なんと肩から足の裏までそこらじゅうヤワヤワ〜。なんなんでしょー、これは?!この魔法がとけない方法を現在思案中。


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「猟奇的な季節!?」
3月号
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