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『隠し剣 鬼の爪』 ※本テキスト内には、『隠し剣 鬼の爪』のあらすじおよび結末が記述されています。 封建時代の身分制度に題材を得た物語は、多くは悲劇である。それを幸福な結末に導いたのは、原作はともあれ山田洋次のキャラクターである。士農工商穢多非人という封建時代の身分制度において、士と農との婚姻は認められるものではなく、多くの恋愛は悲恋である。しかしこの映画では、悲劇にしかならない要素を描きながら、ラスト士と農との結婚という幸福な未来を導き出している。山田洋次がこの作品を含め78本で培った映画的キャラクターのなせるわざである。 最初は農と商の婚姻に端を発する。これとて身分違いであれば、不幸な結末は予測されたであろうに商が大店ということで進行し、案の定、農は嫁とは名ばかり、下女どころかそれ以下であることが判明し、やがて離別する。格下ではあっても商が大店であることから婚姻が成立し、しかも時代は幕末、商が士よりも、強大な力を持つ場合も多い時代背景を考えると、この破局は当然である。それに先立つ父の理不尽な切腹、非合理な上司の命令、士としての倫理観の欠如、復讐、武士社会における達成感の欠如(武家社会自体が、もうすぐ崩壊しようとしていた。)それらを1つ1つの里程標として、士は身分を捨て、蝦夷開拓民、農を志願する。そのことで晴れて、士は農と手を取って未来へと出立する。 隠し剣 鬼の爪という仕掛人梅安のような秘剣(秘技)を体得していたにもかかわらず、暗殺人ともならず、農へというのは、主人公のキャラクターの帰結でもあろうが、時代の趨勢であり、かつての師の生涯に主人公が共鳴していたためでもある。兵法が刃から銃へと変る時代であるように、もはや士の堕落に安穏として美しい娘をあきらめるより、自ら、はやばやと士を捨て農へとの出発は、時代の要請でもある。この時代も今も士という集団で生きるより、美しい娘とともに農であれ個としての人生を送るほうが、先見である。 公開は10月30日(土)より。 『隠し剣 鬼の爪』公式ホームページ: http://www.shochiku.co.jp/kakushiken/ |
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●市井義久の近況● その32 10月 阿佐ヶ谷での仕事の帰りに、過去へと向けて小さな旅を試みた。東京へ出て来てから住んだ地域11ヶ所、その中でどのくらいの建物が残っているかを検証する旅であった。南平は不明。吉祥寺無し、吉祥寺無し、関前無し、富士見ヶ丘建物はあったが、もはや取り壊しを待つだけらしく居住者が誰もいないようであった。井の頭公園無し、浜田山不明、東松原無し、高輪無し、逗子不明、そして現在の高輪と、明らかに半数以上が、わずか40年間の間に建物が消えてしまった。学校は小学校が一部残り、中学高校は無し、大学は残っている。住んだ家(アパート)の大半が、木造ということもあり、東京ゆえ、相続税というようなこともあるが、40年のうちに半数以上が消滅してしまった。そして多くの場合1軒の家が2軒に、1棟のアパートが2棟に分割され、より地表がせせこましくなっていた。それは私自身のあるいは人間の未来ではないのか。私が何年か前に生活したアパートが無くなろうと、私の生活にとって何の影響も無い。しかしすべて地域がせせこましくなるとは、過去を訪ねるはずが、未来を暗示しているように思える。 そして現在の白金高輪、生まれてから高校を卒業するまでに住んだ山本を除けば、最長10年も住む。新築の家の1Fなので、この家自体はあと何10年も存在し続けるだろうが、地下鉄が開通してから4年。周囲は廃墟のようになってきた。南北線が開通して廃墟とは矛盾する表現であるが、色々なものが壊されて高層の巨大なマンション。居住者もそれなりに増えてきたが、無人の山本の実家とはまた異なった廃墟のように見える。思えば、私は鉄筋の家に住んだのは、南平の1年のみ、又、1F以外の所に住んだのは、5Fの南平、2Fの吉祥寺、2Fの浜田山、と過去3回である。鉄筋の建物と高層は、私にとっては廃墟を連想させる。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
市井義久(映画宣伝プロデューサー) 1950年新潟県に生まれる。 1973年成蹊大学卒業、同年株式会社西友入社。 8年間店舗にて販売員として勤務。1981年株式会社シネセゾン出向。 『火まつり』製作宣伝。 キネカ大森番組担当「人魚伝説よ もう一度」「カムバックスーン泰」 などの企画実現。買付担当として『狂気の愛』『溝の中の月』など買付け。 宣伝担当として『バタアシ金魚』『ドグラ・マグラ』。 1989年西友映画事業部へ『橋のない川』製作事務。 『乳房』『クレープ』製作宣伝。「さっぽろ映像セミナー」企画運営。 真辺克彦と出会う。1995年西友退社。1996年「映画芸術」副編集長。 1997年株式会社メディアボックス宣伝担当『愛する』『ガラスの脳』他。 2000年有限会社ライスタウンカンパニー設立。同社代表。 ●2001年 宣伝 パブリシティ作品 3月24日『火垂』 (配給:サンセントシネマワークス 興行:テアトル新宿) 6月16日『天国からきた男たち』 (配給:日活 興行:渋谷シネパレス 他) 7月7日『姉のいた夏、いない夏』 (配給:ギャガコミュニケーションズ 興行:有楽町スバル座 他) 8月4日『風と共に去りぬ』 (配給:ヘラルド映画 興行:シネ・リーブル池袋) 11月3日『赤い橋の下のぬるい水』 (配給:日活 興行:渋谷東急3 他) 12月1日『クライム アンド パニッシュメント』 (配給:アミューズピクチャーズ 興行:シネ・リーブル池袋) ●2002年 1月26日『プリティ・プリンセス』 (配給:ブエナビスタ 興行:日比谷みゆき座 他) 5月25日『冷戦』 6月15日『重装警察』 (配給:グルーヴコーポレーション 興行:キネカ大森) 6月22日『es』 (配給:ギャガコミュニケーションズ 興行:シネセゾン渋谷) 7月6日『シックス・エンジェルズ』 8月10日『ゼビウス』 8月17日『ガイスターズ』 (配給:グルーヴコーポレーション 興行:テアトル池袋) 11月2日『国姓爺合戦』 (配給:日活 興行:シネ・リーブル池袋 他) ヨコハマ映画祭審査員。日本映画プロフェッショナル大賞審査員。 |
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