KimsCinematicKitchen
テキスト&フォト&イラスト by キム・パプコ

第31回7月号  関東の中心でロリータは叫ぶ


 ある映画にとって“聖地”と言われる場所があるっていうのは、どういうことなのでしょー?たとえば、『ロスト・イン・トランスレーション』をシネマライズ渋谷で、『殺し屋1』を新宿ジョイシネマで、というふうに、確かに映画の情景が肌で感じられる環境で観賞することは、可能な限り強くお勧めするものですが、どうやら『下妻物語』を観賞する場合は、シネクイント@渋谷が“聖地”とされているらしい。主人公の桃子が憧れ、下妻から片道3時間かけても訪れるという伝説的なお店、BABY, THE STARS SHINE BRIGHT@代官山に地理的に最も近い、という理由らしいけど(やや強引?)、半信半疑で出かけてみました。

 お話の方は、茨城県下妻市でのどかな日々を送る、友達皆無のロリータ大好き少女・桃子(深田恭子)が、スケバン娘イチゴ(土屋アンナ)という自分と正反対の女の子と知り合い、やがては友情を築いていく、という単純明快なストーリー。これが、意外にも泣かせどころがあったりして侮れないのですよ。桃子とイチゴの距離が近づくにつれ、ロリータ・ドレスと特攻服の間にどれほどの違いもない気がしてくるのです。桃子の不肖の父に宮迫博之、爆裂母に篠原涼子、甘えん坊祖母に樹木希林、他にも阿部サダヲ、荒川良々、生瀬勝久などなど、クセのある配役が誰も彼も見事にハマりにハマって、素晴らしー世界が築き上げられてます。土屋アンナなど、なかでも生き生きしておりました。去年のNHKイタリア語講座では緊張感をグズグズに打ち砕いてくれたやさぐれぶりも、正しい方向に発揮されるとこうなるのねーと、そんな意味でも感動的。

 さて、観終わって場内を見まわすと、サクラか?と見まごうロリータ少女たちが、フカキョンがスクリーンから抜け出したように真っ白いフリフリ・ドレスを身にまとい、ほどよい加減で客席に混じっているではありませんかー。うーむ、これが“聖地”たる由縁?映画でどっぷり桃子のロリータ・ワールドにつかった後となっては、「ロココ時代のおフランスに生まれたかった」症候群も、熱い青春の一つの在り方と広い心で受け止められましたが…。そう、それは思春期における自己主張の形でもあり、か弱い自我を守りたい謙虚な乙女心でもあったりして。そういえば、田園都市線渋谷駅ホームでたまに見かけた、白髪まじりのロングヘアを腰まで三つ編みしたピンクハウスまみれのお婆ちゃん。あれこそ未来の桃子だったのかも…。どーせならキミたちもそこまで人生貫いてよ!と、帰りはロリータ少女たちの背中押したい衝動さえ湧いてきたのでした。

 なんてことで、観客動員数第2位という(下妻に近い)“シネプレックスつくば”でも一度は観てみたいものです。帰りはJUSCO寄らないと!

『下妻物語』→http://www.shimotsuma-movie.jp/index_main.html
★★★BABY, THE STARS SHINE BRIGHT→http://www.babyssb.co.jp/

●Kim's近況●

久々に東急ハンズに出かけたら、癒し系グッズ・コーナーの増えたこと増えたこと。本好きの友人の誕生日プレゼントにバス用ブックスタンドなど選んでたら、その横には「あなたのお風呂に開放感をもたらします!」の文字とともに、青空をバックに壮大な富士山が映る風呂用ポスターが。うわ〜、ウチのバスルームにも貼ってみたい(笑)。そんなことしてるうち、絶えず人が佇むスポットを発見。近寄ってみたら…
↓コレでした。癒し系も多種多様になってきたと言おうか。
あおくび大根(個人的にはアイピローがお勧め)→http://www.toysrus.co.jp/p/c/1ep/



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