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『レディ・ジョーカー』 歴史の中で失意のうちに、無念のうちに死んでゆかざるを得なかった者たちへのレクイエム。 レディ自身が高度身体障害者として生きながら死に、物井清二も裏切られて、50年前の手紙からただひたすらに死へ向っての行進であったろうし、また孫のあてつけのような事故を装った自死。それぞれの理由は被差別部落出身であったり、先天的な肉体障害であったりはするが、いずれも自身とは関わりのない事由で死んでゆかざるを得なかった者たちへの『レディ・ジョーカー』はレクイエムである。 去年最も見たかった映画である。原作を読み、森田芳光が映画化すると聞いた数年前から最も見たかった映画である。しかし要した年月は7年。その間被差別部落問題がより風化し、キリンがガリバーからすべり落ちたと言えばよいのか。ようやく2004年12月11日陽の目を見た時、映画監督は平山秀幸になっていた。映画の中に「あんたたちには、わかりやしないよ。」という台詞があるが、歴史とは無念の積層である。今まさに私の同い年の友人が、安楽死を拒否されてまもなく緩慢な死をむかえようとしている。老人ホームで死んだ者、バイクの事故で死んだ者、生きながら死している者、障害者を置いてどことも知れぬ地へと出奔した者、シャバから隔離された独房へとみずから進んではりこんだ者、生死不明の者、この映画の中に現れた者たちも含め、『レディ・ジョーカー』は積年の無念の人々を雪のように追悼している。だから20億も誘拐も犯人逮捕もこの映画では描かれるべきことでは無かった。 「無頼シリーズ」『誘拐』(1997年)と同じく渡哲也主演、上映中。 |
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●市井義久の近況● その35 2005年1月 渡哲也主演の「無頼シリーズ」の1本に死闘を演じて瀕死の藤川五郎が、バレーボールに興じる女子高生の側をフラフラと歩くシーンがある。その差異。 この病院では、ナースキャップと白衣がまだ生きていた。看護士ではなく看護婦と呼ぶにふさわしい、若い女性の職務上の嬌声が聞える。その側で、緊急の処置も必要な為、ドアを開け放ち、カーテン1枚で仕切られたベッドに、私と同世代の男が、緩慢な死を待っている、未来を象徴する女子高生と瀕死のやくざ。看護士と患者。その隣り合せは、前者はともかく後者はどこの病院でもあたりまえの風景である。私の事務所は2Fが医院ではあるが、死の臭いは無い。しかし病院ならば死は到る所に偏在し、又誕生する場所でもある。5年前はこうやって私は父を見ていた。私の目は今は私ではない同世代の男を見ている。妻もまた男、いや夫を見ている。いや妻は見ているどころではない。自分の夫との近い将来の離別を見ているのだ。 たとえ横たわる人が私であろうと、私には言葉は無い。横たわる人と起立する人、生きている人と死にゆく人、嬌声と沈黙、その差異を見るだけである。たまらず窓外の初冬の陽に染まるビル群に目を移す。遠くのビル群を見たせいか目の前で横たわる人がまた一段と遠くに感じられた。今は自分と他人、横たわる人と起立する人の差異を見つめるだけである。自分自身とどこかしら一致する人、モノとともに生きてきた。しかし年月を経て今のように違いだけが目立つようになると、それは寿命ということなのかもしれない。せめてその日まではと思い、また近いモノをたぐり寄せるだけである。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
市井義久(映画宣伝プロデューサー) 1950年新潟県に生まれる。 1973年成蹊大学卒業、同年株式会社西友入社。 8年間店舗にて販売員として勤務。1981年株式会社シネセゾン出向。 『火まつり』製作宣伝。 キネカ大森番組担当「人魚伝説よ もう一度」「カムバックスーン泰」 などの企画実現。買付担当として『狂気の愛』『溝の中の月』など買付け。 宣伝担当として『バタアシ金魚』『ドグラ・マグラ』。 1989年西友映画事業部へ『橋のない川』製作事務。 『乳房』『クレープ』製作宣伝。「さっぽろ映像セミナー」企画運営。 真辺克彦と出会う。1995年西友退社。1996年「映画芸術」副編集長。 1997年株式会社メディアボックス宣伝担当『愛する』『ガラスの脳』他。 2000年有限会社ライスタウンカンパニー設立。同社代表。 ●2001年 宣伝 パブリシティ作品 3月24日『火垂』 (配給:サンセントシネマワークス 興行:テアトル新宿) 6月16日『天国からきた男たち』 (配給:日活 興行:渋谷シネパレス 他) 7月7日『姉のいた夏、いない夏』 (配給:ギャガコミュニケーションズ 興行:有楽町スバル座 他) 8月4日『風と共に去りぬ』 (配給:ヘラルド映画 興行:シネ・リーブル池袋) 11月3日『赤い橋の下のぬるい水』 (配給:日活 興行:渋谷東急3 他) 12月1日『クライム アンド パニッシュメント』 (配給:アミューズピクチャーズ 興行:シネ・リーブル池袋) ●2002年 1月26日『プリティ・プリンセス』 (配給:ブエナビスタ 興行:日比谷みゆき座 他) 5月25日『冷戦』 6月15日『重装警察』 (配給:グルーヴコーポレーション 興行:キネカ大森) 6月22日『es』 (配給:ギャガコミュニケーションズ 興行:シネセゾン渋谷) 7月6日『シックス・エンジェルズ』 8月10日『ゼビウス』 8月17日『ガイスターズ』 (配給:グルーヴコーポレーション 興行:テアトル池袋) 11月2日『国姓爺合戦』 (配給:日活 興行:シネ・リーブル池袋 他) ヨコハマ映画祭審査員。日本映画プロフェッショナル大賞審査員。 |
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