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シネマ ファシスト 第56回 2006年10月号 『間宮兄弟』 マニア兄弟と言われるように2人の殿上人のお話である。しかし2人とも宮様ではない。1人はビール会社の開発部員、もう1人は学校の用務員。しかし雲の上の人である。『ときめきに死す』の氷の上をすべるようなと言われたテロリストと似ている。周りには彼らを取り巻く何組かのカップルが配されている。同じ小学校の教員、ビデオショップの店員と大学野球部の学生、フリーターとフリーター。彼ら6人も格差はあるが一様に殿上人、同類である。ちょっと異なるのが、同じビール会社の社員とその妻。このカップルだけが、別れるの別れないのという現実を生きている。他の人々は遊んで暮らしている訳ではないが、高等遊民である。 兄がビデオ屋の店員にふられ、弟が人妻にふられて、フリーターから愛されたりと少々のアクションリアクションはあるが、基本的に兄弟は自足している。野球を見る時、ビデオを見る時、ギョーザを食べる時、ゲームをする時、パーティを開催する時、色々と趣向を凝らして自閉している。だから他人に求めるものはあまりない。必要なものの大半は自分でまかなってしまう。だからマニア兄弟である。これが現代である。自足し自閉する現代、街を歩いてごらん、ipodにケイタイ電話、繋がっているように見えて関係は希薄であり、皆自分としか向き合わない。それも自分しかいないから、よくわからない自分としか向き合わない。 かつて殿上人と言えば、経済的に、あるいは権力者として、他と比較して圧倒的に優位に立つ者の呼称であったが、今や関係のセッティングの在り様によって、誰でも殿上人でいることができる。しかし間宮兄弟の周囲にもう少し関係の煩雑な人々を配することができれば、兄弟の殿上人ぶりはもっと際立ったかと思う。 | ||
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●市井義久の近況● その56 2006年10月 望まれるうちはと思う。要請のあるうちはと思う。需要のあるうちはと思う。 営業を停止したお店は、私が13年間お願いした創業55年の高輪のクリーニング屋、価格は高くとも、手作業で着心地がよかった。しかし70代の夫妻は限界と言っていた。そして学生の頃から通っていた吉祥寺峠そしていせや、後者は時代の流れと言っていた。ヨコハマ映画祭が横浜で開催され出した頃から、映画祭のたびに通った本牧リキシャルームは、70代で店番に立つのはつらいと言っていた。 時代に棹さすこと、加齢に抗うモチベーションを持つこと、言うことは簡単だが、生きることや仕事に向う姿勢は、肉体の衰えとともに減退する。意志は充分でも体が。しかし望むうちは望まれるうちは、私も持続したい。ならばどうやって、見つからないので続けるしかない。 お盆に帰省した時、台所の椅子に座って、ずっと玄関から続く前庭を見ていた。又家の周囲を見回してみても、ほとんど変わっていない。私がではなく祖父や父やこの家の人々が、じっと守り続けた成果である。56年間変わらない家と地域、私は仕事も変わり家も変り、しかし変らせてはいけないものは意志を貫きたいと思う。時代に抗うこと、モチベーションを保つこと、この2つで私の今だけでも持続したいと思う。 | ||
市井義久(映画宣伝プロデューサー) 1950年新潟県に生まれる。 1973年成蹊大学卒業、同年株式会社西友入社。 8年間店舗にて販売員として勤務。1981年株式会社シネセゾン出向。 『火まつり』製作宣伝。 キネカ大森番組担当「人魚伝説よ もう一度」「カムバックスーン泰」 などの企画実現。買付担当として『狂気の愛』『溝の中の月』など買付け。 宣伝担当として『バタアシ金魚』『ドグラ・マグラ』。 1989年西友映画事業部へ『橋のない川』製作事務。 『乳房』『クレープ』製作宣伝。「さっぽろ映像セミナー」企画運営。 真辺克彦と出会う。1995年西友退社。1996年「映画芸術」副編集長。 1997年株式会社メディアボックス宣伝担当『愛する』『ガラスの脳』他。 2000年有限会社ライスタウンカンパニー設立。同社代表。 ●2001年 宣伝 パブリシティ作品 3月24日『火垂』 (配給:サンセントシネマワークス 興行:テアトル新宿) 6月16日『天国からきた男たち』 (配給:日活 興行:渋谷シネパレス 他) 7月7日『姉のいた夏、いない夏』 (配給:ギャガコミュニケーションズ 興行:有楽町スバル座 他) 8月4日『風と共に去りぬ』 (配給:ヘラルド映画 興行:シネ・リーブル池袋) 11月3日『赤い橋の下のぬるい水』 (配給:日活 興行:渋谷東急3 他) 12月1日『クライム アンド パニッシュメント』 (配給:アミューズピクチャーズ 興行:シネ・リーブル池袋) ●2002年 1月26日『プリティ・プリンセス』 (配給:ブエナビスタ 興行:日比谷みゆき座 他) 5月25日『冷戦』 6月15日『重装警察』 (配給:グルーヴコーポレーション 興行:キネカ大森) 6月22日『es』 (配給:ギャガコミュニケーションズ 興行:シネセゾン渋谷) 7月6日『シックス・エンジェルズ』 8月10日『ゼビウス』 8月17日『ガイスターズ』 (配給:グルーヴコーポレーション 興行:テアトル池袋) 11月2日『国姓爺合戦』 (配給:日活 興行:シネ・リーブル池袋 他) ヨコハマ映画祭審査員。日本映画プロフェッショナル大賞審査員。 |
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