第60

2月号


シネマ ファシスト 第60回 2007年2月号
『みえない雲』


 この映画の中で圧倒的な液体が3度描かれる。1回目は冒頭、主人公ら2人の女子高生が登校前に近くの湖(川)を裸体で泳ぐシーンの青い水。原子力発電所の事故が起こる前、何ら変らぬ日常の象徴としての圧倒的な水が描かれる。

 2回目は中盤、主人公の少女が、弟を交通事故で失い、母も生死不明、守るべき幼い子らも守り切れず、恋人とも会えず、自暴自棄となって、駅舎から外へ出て、原子力発電所の事故の結果として降り注ぐ黒い雨に濡れてうずくまるシーンの雨である。

 3回目は終盤、少女は被爆し、臨時看護所に入所するも回復の見込みなく、やっと巡り会えた恋人も被爆し、その恋人が看護所の屋上から自死しようとした時、後ろから抱きしめる少女の頭上に降る、白い雨である。

 映画における液体のシーンはいつも美しい。『天使のはらわた 赤い教室』の水たまりの水、『わたしのSEX白書 絶頂度』の血、『台風クラブ』の雨、『人魚伝説』の血。『みえない雲』の青い水、黒い雨、白い雨は、男女の恋愛や原子力発電所の事故等の物語を忘れてしまう程に、この映画の液体は印象的である。

●市井義久の近況● その60 2007年2月 

 いつも行くラ・ボエム麻布十番店の1Fに11月に入ると巨大なクリスマスツリーが展示される。こういうものを見ながらごはんを食べると幸福な気分になれる。今はもうツリーもそこに飾る装飾品もすべて工業製品でスーパーなどで手に入る。あとは飾り付けるだけである。昔はツリーは、私の家でも山から切り出してきた。装飾品は手づくり、色紙を貼り、切り、雪は綿でつくった。点滅する電球はなかったが幸福な気分になれた。パリのクリスマスデコレーションも見るからにすごかった。なぜクリスマスツリーを見ると幸福な気分になれるのだろうか。サンタからのクリスマスプレゼント、その気分が大人になった今も、体のどこかに残っているのだろうか。戦場にツリーは似合わない。ツリーは平和と幸福の象徴であり、クリスマスツリーを見ると幸福になる。2月ならば花。手始めに福寿草でも飾ろう。


市井義久(映画宣伝プロデューサー)

1950年新潟県に生まれる。 1973年成蹊大学卒業、同年株式会社西友入社。 8年間店舗にて販売員として勤務。1981年株式会社シネセゾン出向。 『火まつり』製作宣伝。
キネカ大森番組担当「人魚伝説よ もう一度」「カムバックスーン泰」 などの企画実現。買付担当として『狂気の愛』『溝の中の月』など買付け。 宣伝担当として『バタアシ金魚』『ドグラ・マグラ』。
1989年西友映画事業部へ『橋のない川』製作事務。 『乳房』『クレープ』製作宣伝。「さっぽろ映像セミナー」企画運営。 真辺克彦と出会う。1995年西友退社。1996年「映画芸術」副編集長。 1997年株式会社メディアボックス宣伝担当『愛する』『ガラスの脳』他。

2000年有限会社ライスタウンカンパニー設立。同社代表。

●2001年 宣伝 パブリシティ作品

3月24日『火垂』
(配給:サンセントシネマワークス 興行:テアトル新宿)
6月16日『天国からきた男たち』
(配給:日活 興行:渋谷シネパレス 他)
7月7日『姉のいた夏、いない夏』
(配給:ギャガコミュニケーションズ 興行:有楽町スバル座 他)
8月4日『風と共に去りぬ』
(配給:ヘラルド映画  興行:シネ・リーブル池袋)
11月3日『赤い橋の下のぬるい水』
(配給:日活 興行:渋谷東急3 他)
12月1日『クライム アンド パニッシュメント』
(配給:アミューズピクチャーズ 興行:シネ・リーブル池袋)


●2002年

1月26日『プリティ・プリンセス』
(配給:ブエナビスタ 興行:日比谷みゆき座 他)
5月25日『冷戦』
6月15日『重装警察』
(配給:グルーヴコーポレーション 興行:キネカ大森)
6月22日『es』 
(配給:ギャガコミュニケーションズ 興行:シネセゾン渋谷)
7月6日『シックス・エンジェルズ』
8月10日『ゼビウス』
8月17日『ガイスターズ』
(配給:グルーヴコーポレーション 興行:テアトル池袋)
11月2日『国姓爺合戦』
(配給:日活 興行:シネ・リーブル池袋 他)

ヨコハマ映画祭審査員。日本映画プロフェッショナル大賞審査員。

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