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シネマ ファシスト 第61回 2007年3月号 『それでもボクはやってない』 『ダイ・ハード』のような巻き込まれ型の映画である。しかしそれのようにラストカタルシスはない。判決は有罪、高裁無罪の伏線だとしても。前半は冤罪で逮捕された青年の不本意で不条理な時間が描かれる。逮捕、勾留、刑事による、検察官による、弁護士による、尋問の日々。不快な留置所、不愉快な時間、巻き込まれはしたが、冤罪であれば、やりましたと嘘は言えず、ある程度の意志は貫きながらも、耐えがたい日々が続く。保釈までの116日間、約4ヶ月、季節はいつしか春から秋へと移っていた。そして後半、やってないことをやってはいないと主張する日々はここからも続く。それまで青年は不条理な事態に対応するのみであったが、ここからは弁護士、家族、友人、支援者とともに、前向きに積極的に冤罪を晴らすべく行動する。巻き込まれた関係、環境を所与として、そこからの積極的脱出が後半は描かれる。定石である。ここまでの登場人物の一様の無表情とは変わり、画面も色を帯びる。中でも北見敏之の無表情の表現力は出色である。そしてふたたびの春に向けて、勝ち負けではなく、当然の事実を周囲に認めさせるための行動が続く。しかし、ちょうど誤認逮捕から1年後、366日目、執行猶予はついたものの3月(さんげつ)の実刑判決。 およそ娯楽映画ではない。まして2時間23分、しかし上映2週目のシャンテシネは、2時間前で満員であった。場内眠っている人や、あくびをしている人がいたので、私もちょっと安心したが、エンターテインメントでもなく、カタルシスもない、このような素材を、映画の定石に入れて見せ切ったのは、脚本と監督の力量と思う。担当裁判官が代わったところで、有罪が推測できるので、結末の見せ方で映画を引っ張っている訳ではない。映画の流れと、そのシーンそのシーンの画面の力で見せる作品であり、権力に盾をつくとこうなるよという不安が後を引く。 | ||
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●市井義久の近況● その61 2007年3月 今年一番最初の春に会いに河津へ 2月10日から3月10日まで河津桜まつりということで、2月12日今年最も早い桜に会いに河津へと出かけた。東京から下田まで3時間、河津で降りないで下田から海岸線を走るバスに揺られながら1時間、河津へ戻って桜を見た。春の海は真っ青であった。その海のような青い空をバックに緋寒桜と大島桜を交配した河津桜が、川の岸に一直線に咲いていた。桜の木の下は死体ならぬ黄色い菜の花、ポスターで見た光景が拡がっていた。今までで最も早く桜を見た。そして最ものんびりとした花見であった。河原にシートを敷いたり、河原のベンチの緋毛氈の上で宴会の人たちはいるが、のんびりゆったり空と桜と菜の花を楽しんでいる。川の片側約3kmに渡って植えられた約800本の桜の木の下の幅5mくらいの道を行き来する。人とぶつかるでもなく、犬を散歩させるように、桜の木の下をゆっくりと歩く。道の一方は桜、もう一方は出店。人はぶらぶらとおだやかにすれ違う。まるで天上の花見のようである。 | ||
市井義久(映画宣伝プロデューサー) 1950年新潟県に生まれる。 1973年成蹊大学卒業、同年株式会社西友入社。 8年間店舗にて販売員として勤務。1981年株式会社シネセゾン出向。 『火まつり』製作宣伝。 キネカ大森番組担当「人魚伝説よ もう一度」「カムバックスーン泰」 などの企画実現。買付担当として『狂気の愛』『溝の中の月』など買付け。 宣伝担当として『バタアシ金魚』『ドグラ・マグラ』。 1989年西友映画事業部へ『橋のない川』製作事務。 『乳房』『クレープ』製作宣伝。「さっぽろ映像セミナー」企画運営。 真辺克彦と出会う。1995年西友退社。1996年「映画芸術」副編集長。 1997年株式会社メディアボックス宣伝担当『愛する』『ガラスの脳』他。 2000年有限会社ライスタウンカンパニー設立。同社代表。 ●2001年 宣伝 パブリシティ作品 3月24日『火垂』 (配給:サンセントシネマワークス 興行:テアトル新宿) 6月16日『天国からきた男たち』 (配給:日活 興行:渋谷シネパレス 他) 7月7日『姉のいた夏、いない夏』 (配給:ギャガコミュニケーションズ 興行:有楽町スバル座 他) 8月4日『風と共に去りぬ』 (配給:ヘラルド映画 興行:シネ・リーブル池袋) 11月3日『赤い橋の下のぬるい水』 (配給:日活 興行:渋谷東急3 他) 12月1日『クライム アンド パニッシュメント』 (配給:アミューズピクチャーズ 興行:シネ・リーブル池袋) ●2002年 1月26日『プリティ・プリンセス』 (配給:ブエナビスタ 興行:日比谷みゆき座 他) 5月25日『冷戦』 6月15日『重装警察』 (配給:グルーヴコーポレーション 興行:キネカ大森) 6月22日『es』 (配給:ギャガコミュニケーションズ 興行:シネセゾン渋谷) 7月6日『シックス・エンジェルズ』 8月10日『ゼビウス』 8月17日『ガイスターズ』 (配給:グルーヴコーポレーション 興行:テアトル池袋) 11月2日『国姓爺合戦』 (配給:日活 興行:シネ・リーブル池袋 他) ヨコハマ映画祭審査員。日本映画プロフェッショナル大賞審査員。 |
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