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シネマ ファシスト 第70回 2007年12月号 『犯人に告ぐ』 『殺人の追憶』のようである。あるいは犯人の台詞で「別に」という言葉を聞いたような気がする。ザラついた画面、垂れ込める雲と冷たい雨、幼児殺人、ささくれる人間関係、杓子定規の職場、そこで描かれるのは、それでも貫き通そうとする人間の僅かな信念である。 幼児連続殺人の理由が「ヒマだったから」、それは「別に」という言葉に置き換えてもよい。未成年すれすれの人間が、2000年には、幼児を誘拐し身代金の搾取に敗するや殺人、そして警官の足音を聞くや母親の側での自死。 2006年には、幼児3人を目的も不明のまま絞殺。犯人の動機は不明。その間にはさまれる事件、6年前に子供を誘拐され殺された父親が、逆恨みの末その時の担当刑事の子供を誘拐し、刑事をナイフで刺す。こちらの方はわかりやすい。それは人間の感情のあるいは意志の推移の結果だからである。しかし2000年と2006年のたまたま同じ刑事が担当することになった2つの犯罪は、犯罪であるにもかかわらず、感情や意志が全く見えない。と同時に、それに呼応するように、犯罪に対応する人々も、ささくれ立ってゆくだけである。相対する2人が居れば、AにはAの、BにはBのそれぞれの勝手な言い分くらいはある。しかしこの映画で描かれる人々は、重大な事件が進行しているにもかかわらず、言い分すらない。この映画の台詞には無いが、「別に」か。人は理念とか、意志とか、情念とかで生きている訳ではないのだ。それらではなく、名付けようの無い別物としての“別に”なのだ。いわば、すでにそこにある目に見える物と物とが短絡的にぶつかり合って生きている、 「ただ犯人を捕えたいだけ」と明言する主人公の刑事のみ稀である。他は意志が物を動かすのではなく、物が物を動かす。そこには感情などが入り込む余地が無いことを、この映画のザラついた映像が如実に表現している。 そこから現代が見える。この映画を見つつ、同時進行する1時間57分の2007年地球の旅を体験した。 | ||
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●市井義久の近況● その70 2007年12月 こんなことはもう無いと思うが、9月、10月はほんとうに忙しかった。毎日昼食が4時か6時、あたりまえの時間に昼食を食べたことがなかった。又、土日も半分出勤、あっという間2ヶ月が終った。これは映画が3本平行して3本とも日本映画だったこと。7月一杯で7年間続いた人が辞め、8月から新人が入り、今まで3人でこなしていた仕事を2.3人でやらざるを得なくなったこと。日本映画は取材とイベントの繰り返し。仕事が忙しくなると、映画が見られなくなる、友人と会えなくなる。昼食は5軒を日替りで回っていたのが1軒だけになり、夕食も日替りで4軒を回っていたのが、1軒だけになる。4時に昼食を食べられる店、11時に夕食を食べられる店は麻布十番でもそう多くはない。昼食の5軒は、カレー、魚、中華、パスタ、焼肉。夕食の4軒は定食屋、トンカツ、パスタ、飲み屋。それが毎日同じ店になる。でもこれが最後だ。11月はその余波はあったが、12月からはほぼ11時から9時、来年からの仕事は無い。 忙しいとは、メールはもちろんだが、朝11時に出社すると、前日11時まで会社にいたのに、留守電が数件入っている。午後出かけて戻ってくるとまた同じような状態である。その対応。そして手帳が序々に黒くなる。しかし12月はメールは来るが、留守電は無い。手帳に至っては来年は真っ白。8年目のライスタウンカンパニーは、白紙からスタート。57歳の私は赤いチャンチャンコへのあと3年をスタート。また冬が来る。 | ||
市井義久(映画宣伝プロデューサー) 1950年新潟県に生まれる。 1973年成蹊大学卒業、同年株式会社西友入社。 8年間店舗にて販売員として勤務。1981年株式会社シネセゾン出向。 『火まつり』製作宣伝。 キネカ大森番組担当「人魚伝説よ もう一度」「カムバックスーン泰」 などの企画実現。買付担当として『狂気の愛』『溝の中の月』など買付け。 宣伝担当として『バタアシ金魚』『ドグラ・マグラ』。 1989年西友映画事業部へ『橋のない川』製作事務。 『乳房』『クレープ』製作宣伝。「さっぽろ映像セミナー」企画運営。 真辺克彦と出会う。1995年西友退社。1996年「映画芸術」副編集長。 1997年株式会社メディアボックス宣伝担当『愛する』『ガラスの脳』他。 2000年有限会社ライスタウンカンパニー設立。同社代表。 ●2001年 宣伝 パブリシティ作品 3月24日『火垂』 (配給:サンセントシネマワークス 興行:テアトル新宿) 6月16日『天国からきた男たち』 (配給:日活 興行:渋谷シネパレス 他) 7月7日『姉のいた夏、いない夏』 (配給:ギャガコミュニケーションズ 興行:有楽町スバル座 他) 8月4日『風と共に去りぬ』 (配給:ヘラルド映画 興行:シネ・リーブル池袋) 11月3日『赤い橋の下のぬるい水』 (配給:日活 興行:渋谷東急3 他) 12月1日『クライム アンド パニッシュメント』 (配給:アミューズピクチャーズ 興行:シネ・リーブル池袋) ●2002年 1月26日『プリティ・プリンセス』 (配給:ブエナビスタ 興行:日比谷みゆき座 他) 5月25日『冷戦』 6月15日『重装警察』 (配給:グルーヴコーポレーション 興行:キネカ大森) 6月22日『es』 (配給:ギャガコミュニケーションズ 興行:シネセゾン渋谷) 7月6日『シックス・エンジェルズ』 8月10日『ゼビウス』 8月17日『ガイスターズ』 (配給:グルーヴコーポレーション 興行:テアトル池袋) 11月2日『国姓爺合戦』 (配給:日活 興行:シネ・リーブル池袋 他) ヨコハマ映画祭審査員。日本映画プロフェッショナル大賞審査員。 |
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