第72

2月号


シネマ ファシスト 第72回 2008年2月号
『歓喜の歌』


 やる気のない文化会館主任の小林薫が私にそっくりだというので見に行った。そうか私には「ギョーザ」がなかったのだ。

 1990年、上に車輪のついたモノレールの街(千葉)に暮らす女子高校生が、18年経ってモノレールの車輪が下についた街(三多摩)で生活している。17歳なら35歳、『バタアシ金魚』から『歓喜の歌』へ、生活感いっぱいの女たちである。松岡錠司はずっときめ細かく女たちを描いてきた。過食症であったり神経症だったり、この映画の女たちは病んでいる情況には無い。どんな情況でもたくましい。片や1年間せっかく練習してきたのに、片や創立20周年記念コンサートだから、やる気の無い主任がダブルブッキングをした両方のコンサートを、同時開催する途を模索する。それぞれの事情を抱え、それぞれの立場を保ち、それぞれのやり方で生きている女たちが、なんとか、現状を解決しようとする。

そう小林薫にも、「ギョーザ」がなかったのだ。女たちを取り巻く男たちは小林薫にしてから、文化会館で新聞の間違いさがしクイズに興じたり、ファーストシーンからして危なげである。男たちは小林薫だけではなく、『タクシードライバー』でタクシーの運転手となった光石研にしろ、安田成美が離婚しないのだからどこか良いところがあるのだろうが、頼りない。しかし小林薫も「ギョーザ」の欠落に気付き、最後には、これしかないと思われる合同コンサートの開催へと、ようやく今置かれた情況の中で汗を流す。この映画は男も女も、今置かれた情況の中で汗をかく(真冬の話だが)。日常を大切にする男たち女たちの話である。ギョーザという食べ物も極めて日常的だが。

 時制が腑に落ちない点や、小林薫以外の男たちが置き去りにされている点が気になるが、女たちに乾杯。

●市井義久の近況● その72 2008年2月 

 年賀状に「注文のあるうちは映画の宣伝を続けます」と書いたら年明けその注文がぱったりと来なくなってしまった。今年の1月から5月にかけて公開する作品5本を去年すべて断わったら、今年宣伝する作品がなくなってしまった。『北辰斜にさすところ』は12月22日の公開だったので、仕事始めの1月9日から去年忙しくて、湯布院に出かけた8月24日から会社で山積みになっている半年分の新聞を読み出した。捨てようと思ったが合計で24,000円、捨てるにはもったいないと思って読み出した。新しい発見は無い。しかしチラシも含めて膨大な紙の量であり、その間、食品偽装に続き紙のエコ偽装も発覚した。新聞を単なる紙とするとそれはそれは、半年間分もチラシと一緒に1mも積み重なって、膨大な量である。
 映画の宣伝会社なので会社には雑誌も単行本も過去のチラシもポスターもプレスも積み重ねてある。チラシポスタープレスは過去の作品なので量は少ないが、送られてくる雑誌はこんな小規模の宣伝会社でも膨大である。従って活字を1つ1つ読むようにしているが目を悪くして以来、暗い所での小さな活字は全く読めなくなった。おまけに休み休みでないと目も疲れる。
 それでも半年分の新聞をちょうど1ヶ月で読み終えた。NEWSというぐらいなので古くなると熱心には読まない。昔、朝夕刊を合わせて1時間もかけて読んでいた時からすると雲泥である。さてそろそろ本業に戻るとするか。


市井義久(映画宣伝プロデューサー)

1950年新潟県に生まれる。 1973年成蹊大学卒業、同年株式会社西友入社。 8年間店舗にて販売員として勤務。1981年株式会社シネセゾン出向。 『火まつり』製作宣伝。
キネカ大森番組担当「人魚伝説よ もう一度」「カムバックスーン泰」 などの企画実現。買付担当として『狂気の愛』『溝の中の月』など買付け。 宣伝担当として『バタアシ金魚』『ドグラ・マグラ』。
1989年西友映画事業部へ『橋のない川』製作事務。 『乳房』『クレープ』製作宣伝。「さっぽろ映像セミナー」企画運営。 真辺克彦と出会う。1995年西友退社。1996年「映画芸術」副編集長。 1997年株式会社メディアボックス宣伝担当『愛する』『ガラスの脳』他。

2000年有限会社ライスタウンカンパニー設立。同社代表。

●2001年 宣伝 パブリシティ作品

3月24日『火垂』
(配給:サンセントシネマワークス 興行:テアトル新宿)
6月16日『天国からきた男たち』
(配給:日活 興行:渋谷シネパレス 他)
7月7日『姉のいた夏、いない夏』
(配給:ギャガコミュニケーションズ 興行:有楽町スバル座 他)
8月4日『風と共に去りぬ』
(配給:ヘラルド映画  興行:シネ・リーブル池袋)
11月3日『赤い橋の下のぬるい水』
(配給:日活 興行:渋谷東急3 他)
12月1日『クライム アンド パニッシュメント』
(配給:アミューズピクチャーズ 興行:シネ・リーブル池袋)


●2002年

1月26日『プリティ・プリンセス』
(配給:ブエナビスタ 興行:日比谷みゆき座 他)
5月25日『冷戦』
6月15日『重装警察』
(配給:グルーヴコーポレーション 興行:キネカ大森)
6月22日『es』 
(配給:ギャガコミュニケーションズ 興行:シネセゾン渋谷)
7月6日『シックス・エンジェルズ』
8月10日『ゼビウス』
8月17日『ガイスターズ』
(配給:グルーヴコーポレーション 興行:テアトル池袋)
11月2日『国姓爺合戦』
(配給:日活 興行:シネ・リーブル池袋 他)

ヨコハマ映画祭審査員。日本映画プロフェッショナル大賞審査員。

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