第75

5月号

シネマ ファシスト 第75回 2008年5月号
『築地 魚河岸 三代目』


 この映画の肝はあんこうの肝ならぬ、田中麗奈と伊原剛志が異母兄妹であったこと。高級レストランで結婚指輪を渡すはずが、銚子の漁師の番小屋で暴風雨の中大沢たかおが、田中麗奈に結婚指輪を渡すまでの話である。そのためのハードルはいくつもある。しかしそのハードルは中年になって異業種から転職する大沢にとっては、それ程高いものではない。高いのは前半ではあやふやであった、大沢、田中、伊原、森口瑶子の4人をこの映画の舞台である築地にどう着地させるかである。その肝が2人が異母兄妹であるという隠された事実である。カレイ、ブリと転職し目利きになるためのテストは続く、しかし映画のポイントは異母兄妹であることを、本人たち及び周囲にどこまで隠しどこで納得させるかの描写である。

 成功していると思う。有り得る範囲である。魚を待たせ、銚子から築地へと運ぶまでのシーンがちょっと長いが、結婚と転職という、誰にでもある人生の岐路を、肝を設定したことで納得させる映画になっていると思う。しかし大沢たかおの新しい職場での活躍が描かれないのは、シリーズ1作目ということなのであろうか。

 6月7日(土)より公開。


●市井義久の近況● その75 2008年5月 

 4月18日、人生が晩年に差し掛かったことで、初めて体験したことが3つあった。1つは女子高校生のアンダーパンツを初めて見た事。この日は4月に入って何回目かの春の嵐であった。強い風と、激しい雨が降っていた。私も、女子高校生があんなに短いスカートの下に直接パンツをはいている訳ではなく、アンダーパンツと言われるものをはいてその上にスカートをはくことは知人から聞いていた。それを春の風にあおられて初めて目にした。さながらそれは女性用の矯正下着のような外観であった。2つ目は初めて世田谷美術館に行った事。「冒険王 横尾忠則」オープニング・レセプションであった。その日館内のレストランから見た新緑の花水木は、春の雨を受け横尾忠則の絵画のように私に強い印象を残した。春は桜、しかしそれからは花水木である。3つ目は用賀から帰る電車の中で、若い女性に初めて座席を譲られた事である。夕食用に用賀のスーパーで買い物をし、大きなスーパーの袋を下げていたせいもあるが、私もはや若い女性に席を譲られる年齢、外観になっていたのである。あともう少しだ。今日も新しい体験をしに外に行こう。


市井義久(映画宣伝プロデューサー)

1950年新潟県に生まれる。 1973年成蹊大学卒業、同年株式会社西友入社。 8年間店舗にて販売員として勤務。1981年株式会社シネセゾン出向。 『火まつり』製作宣伝。
キネカ大森番組担当「人魚伝説よ もう一度」「カムバックスーン泰」 などの企画実現。買付担当として『狂気の愛』『溝の中の月』など買付け。 宣伝担当として『バタアシ金魚』『ドグラ・マグラ』。
1989年西友映画事業部へ『橋のない川』製作事務。 『乳房』『クレープ』製作宣伝。「さっぽろ映像セミナー」企画運営。 真辺克彦と出会う。1995年西友退社。1996年「映画芸術」副編集長。 1997年株式会社メディアボックス宣伝担当『愛する』『ガラスの脳』他。

2000年有限会社ライスタウンカンパニー設立。同社代表。

●2001年 宣伝 パブリシティ作品

3月24日『火垂』
(配給:サンセントシネマワークス 興行:テアトル新宿)
6月16日『天国からきた男たち』
(配給:日活 興行:渋谷シネパレス 他)
7月7日『姉のいた夏、いない夏』
(配給:ギャガコミュニケーションズ 興行:有楽町スバル座 他)
8月4日『風と共に去りぬ』
(配給:ヘラルド映画  興行:シネ・リーブル池袋)
11月3日『赤い橋の下のぬるい水』
(配給:日活 興行:渋谷東急3 他)
12月1日『クライム アンド パニッシュメント』
(配給:アミューズピクチャーズ 興行:シネ・リーブル池袋)


●2002年

1月26日『プリティ・プリンセス』
(配給:ブエナビスタ 興行:日比谷みゆき座 他)
5月25日『冷戦』
6月15日『重装警察』
(配給:グルーヴコーポレーション 興行:キネカ大森)
6月22日『es』 
(配給:ギャガコミュニケーションズ 興行:シネセゾン渋谷)
7月6日『シックス・エンジェルズ』
8月10日『ゼビウス』
8月17日『ガイスターズ』
(配給:グルーヴコーポレーション 興行:テアトル池袋)
11月2日『国姓爺合戦』
(配給:日活 興行:シネ・リーブル池袋 他)

ヨコハマ映画祭審査員。日本映画プロフェッショナル大賞審査員。

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