第79

9月号

シネマ ファシスト 第79回 2008年9月号
『きみの友だち』


 欠損を抱えて寄り添って生きる2人。足の悪い石橋杏奈と体の弱い北浦愛、2人は小学校4年の時から、北浦が亡くなる中学3年生まで、2人の視線の先にある、もこもこ雲を見ながら、寄り添って生きた。その5年間、卑屈にもならず、排除することもなく、道を誤ることもなく、石橋は足が悪いという存在を、北浦は体が弱いという日々消えてゆくかもしれない存在を淡々と生きた。さわることもできない、手に入れることもできないもこもこ雲という不在の雲(幸福)を2人で見つめながら生きた。

 5年間2人は閉ざしていた訳ではない。周囲から生きてゆく糧をもらったりプレゼントしたり。しかし中学3年の時、北浦は召されてしまう。それから5年後石橋が出会ったのは普通の人。欠損を抱えて生きるフリースクールという場で働くことで、もこもこ雲は生徒と共有し、石橋は足が悪いという存在ではなく、普通の人と出会うことで別の存在へと舵を切った。さてこれからである。

●市井義久の近況● その79 2008年9月 

 小津安二郎の映画で麦秋とかいてバクシュウと読む映画がある。家族が離れ離れになる、そのゆれる心を麦の1本1本の風のゆれで表現している。麦と風を演出したとしか思えないラストシーンである。

 新潟県岩船郡関川村山本、気温31度、お盆、炎天下、しかし涼しい。稲穂が風にゆれている。昔の田舎のようにクーラーのいらない家の中。木陰はなおさら風が渡る。風が稲穂をゆらしている。稲の穂先を風が渡る。稲が波のように大きく小さく押し寄せてくる。入道雲、蝉しぐれ。稲田を囲む山々は青々と緑を湛えている。昔日の夏に居る。


市井義久(映画宣伝プロデューサー)

1950年新潟県に生まれる。 1973年成蹊大学卒業、同年株式会社西友入社。 8年間店舗にて販売員として勤務。1981年株式会社シネセゾン出向。 『火まつり』製作宣伝。
キネカ大森番組担当「人魚伝説よ もう一度」「カムバックスーン泰」 などの企画実現。買付担当として『狂気の愛』『溝の中の月』など買付け。 宣伝担当として『バタアシ金魚』『ドグラ・マグラ』。
1989年西友映画事業部へ『橋のない川』製作事務。 『乳房』『クレープ』製作宣伝。「さっぽろ映像セミナー」企画運営。 真辺克彦と出会う。1995年西友退社。1996年「映画芸術」副編集長。 1997年株式会社メディアボックス宣伝担当『愛する』『ガラスの脳』他。

2000年有限会社ライスタウンカンパニー設立。同社代表。

●2001年 宣伝 パブリシティ作品

3月24日『火垂』
(配給:サンセントシネマワークス 興行:テアトル新宿)
6月16日『天国からきた男たち』
(配給:日活 興行:渋谷シネパレス 他)
7月7日『姉のいた夏、いない夏』
(配給:ギャガコミュニケーションズ 興行:有楽町スバル座 他)
8月4日『風と共に去りぬ』
(配給:ヘラルド映画  興行:シネ・リーブル池袋)
11月3日『赤い橋の下のぬるい水』
(配給:日活 興行:渋谷東急3 他)
12月1日『クライム アンド パニッシュメント』
(配給:アミューズピクチャーズ 興行:シネ・リーブル池袋)


●2002年

1月26日『プリティ・プリンセス』
(配給:ブエナビスタ 興行:日比谷みゆき座 他)
5月25日『冷戦』
6月15日『重装警察』
(配給:グルーヴコーポレーション 興行:キネカ大森)
6月22日『es』 
(配給:ギャガコミュニケーションズ 興行:シネセゾン渋谷)
7月6日『シックス・エンジェルズ』
8月10日『ゼビウス』
8月17日『ガイスターズ』
(配給:グルーヴコーポレーション 興行:テアトル池袋)
11月2日『国姓爺合戦』
(配給:日活 興行:シネ・リーブル池袋 他)

ヨコハマ映画祭審査員。日本映画プロフェッショナル大賞審査員。

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