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シネマ ファシスト 第80回 2008年10月号 『闇の子供たち』 外国を舞台にした映画であることと、扱っている題材に惹かれ見たかった作品である。スバル座というムーブオーバーの小屋で270席祝日満席であった。しかし見終った後はその満席の理由を映画によって知らされる事となる。 白人でもなければ黒人でもないという中途半端な日本人を描こうをした訳ではあるまい。それに比較し現地で働く人は一貫している。特に幼児売春と臓器売買“用”の子供の調達人とNGOの女性、特に調達人は口笛で「タイガーマスク」を歌っているように、「あ〜あだけどあの子らは慕ってくれる。それだから皆んなの幸福祈るんだ。」を実行に移し、最後にチクッテ、子供たちを解放する。彼の両腕の手錠が勲章のようである。同僚NGOの女性、相棒が殺されようが、銃弾にさらされようが、意志を貫く。それに引きかえ、江口、妻夫木、外から入り込んだ日本人だからではあるまいが腰が引けている。それは監督の描写にも現れている。特に主役である江口は、幼児偏愛のジャーナリストにしては葛藤がない。幼児偏愛者は全て死刑というのは容易い。しかしそういう性癖に生まれついた人はどうすればよいのか。自死で幕を引くのではなく、幼児偏愛の江口でなければ書けぬ記事を毎日新聞以外なら書けたのではないだろうか。引けている。それは監督の腰でもある。 現代の日本映画では希有な題材である。希有であるからまずは幼児売春と幼児の臓器売買をきちんと描いてから映画としての論を展開すべきである。観客の想像力を刺激することと描くべきことを描くことは違う。『KT』の監督にしては筆がゆるいと思う。 この映画の舞台は発展途上国である。情熱も欲望も秩序も法制も何もかもが整備されない混沌を、まずは混沌として描かなくては、その後の展開は希薄であり、監督の主張も見えてこない。幼児売春、臓器売買、富める人が貧しい人を、富める国が貧しい国を搾取する構図は今も昔も変わらない。従ってその現実を監督の映画的な手法によって、きちんと描かなければ映画は始まらないと思う。残念だと思う。 私も8年くらい前にタイではなく映画の撮影でフィリピンに1ヶ月間くらい滞在した。その時、病気になった私に病院へは行くな何をされるかわからない、と言った人がいた。外国で映画をつくる困難さは昔も今も変わらない。しかしこういう素材だからこそ、この映画は成功して欲しかった。ゆるいから客が入った、そう思う。 | ||
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●市井義久の近況● その80 2008年10月 私にとって外国と言えば、生まれて此方パリである。初めて見た外国の写真は凱旋門。それ以来パリへ。仕事ではカンヌへ1回。プライベートでパリへ5回。日本人だと言って差別され、パリでは人間のほうが神より偉いのだと知り、日本では会えない日本人と3回も出会った。パリへと言うのは、ホテル西洋銀座で数日間、ジャン・クロード・カリエールと話した影響もあるのだろう。フランス語は全く話せないのに、欲望だけはパリへ、いや牡蠣へ。吉田喜重にとってパリと言えばパゴト劇場だそうだが、私には牡蠣か。 しかし外国で長期(3ヶ月以上)滞在する日本人の多い都市ベスト2は、1973年にはニューヨークに次いでパリは2番目だったのに、1997年にはベスト5にも入っていない。しかし私は今もパリである。 それを9月にパリではなくタイを舞台にした映画を見て考えていた。 | ||
市井義久(映画宣伝プロデューサー) 1950年新潟県に生まれる。 1973年成蹊大学卒業、同年株式会社西友入社。 8年間店舗にて販売員として勤務。1981年株式会社シネセゾン出向。 『火まつり』製作宣伝。 キネカ大森番組担当「人魚伝説よ もう一度」「カムバックスーン泰」 などの企画実現。買付担当として『狂気の愛』『溝の中の月』など買付け。 宣伝担当として『バタアシ金魚』『ドグラ・マグラ』。 1989年西友映画事業部へ『橋のない川』製作事務。 『乳房』『クレープ』製作宣伝。「さっぽろ映像セミナー」企画運営。 真辺克彦と出会う。1995年西友退社。1996年「映画芸術」副編集長。 1997年株式会社メディアボックス宣伝担当『愛する』『ガラスの脳』他。 2000年有限会社ライスタウンカンパニー設立。同社代表。 ●2001年 宣伝 パブリシティ作品 3月24日『火垂』 (配給:サンセントシネマワークス 興行:テアトル新宿) 6月16日『天国からきた男たち』 (配給:日活 興行:渋谷シネパレス 他) 7月7日『姉のいた夏、いない夏』 (配給:ギャガコミュニケーションズ 興行:有楽町スバル座 他) 8月4日『風と共に去りぬ』 (配給:ヘラルド映画 興行:シネ・リーブル池袋) 11月3日『赤い橋の下のぬるい水』 (配給:日活 興行:渋谷東急3 他) 12月1日『クライム アンド パニッシュメント』 (配給:アミューズピクチャーズ 興行:シネ・リーブル池袋) ●2002年 1月26日『プリティ・プリンセス』 (配給:ブエナビスタ 興行:日比谷みゆき座 他) 5月25日『冷戦』 6月15日『重装警察』 (配給:グルーヴコーポレーション 興行:キネカ大森) 6月22日『es』 (配給:ギャガコミュニケーションズ 興行:シネセゾン渋谷) 7月6日『シックス・エンジェルズ』 8月10日『ゼビウス』 8月17日『ガイスターズ』 (配給:グルーヴコーポレーション 興行:テアトル池袋) 11月2日『国姓爺合戦』 (配給:日活 興行:シネ・リーブル池袋 他) ヨコハマ映画祭審査員。日本映画プロフェッショナル大賞審査員。 |
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