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シネマ ファシスト 第84回 2009年2月号 『大阪ハムレット』 何よりも設定が面白い。長男は中学3年生、大学4年の女子大生と付き合っている。 それがこともあろうに、彼女が教生として、彼の中学校にやって来る。武田一成『青い獣 ひそかな愉しみ』以来のあっと驚く設定である。次男は中学2年、自分は死んだ父の本当の子ではないと思い悩んでいる。ハムスターと言われたのかと思いきや実はハムレットと言われて「ハムレット」を読みながら、日夜喧嘩に明け暮れている。三男は女性になりたいという希望を持つ小学4年生、その三男に自身の欲望のままに生きるのが、どれ程つらいかを教えるのが、不治の病でやがて死亡する母の妹。母は映画の冒頭で亭主を失い、葬式に来てそのまま居着いた亭主の弟と暮らすようになる。子供に「母ちゃん最近ふとったね」と言われ、「そう妊娠したの6ヶ月」としゃらっと言う。「お母んが妊娠したらしいけど父親は誰だろ」「情況からしてあのおっちゃんじゃないの」と会話する息子たち。そして父の葬式の後、そのまま居着いてしまった叔父の5人家族。およそうまくゆくとは思えない、その家族のお話である。 去年の家族3部作は、今という時代に面と向き合う家族の話であったが、一転今年の家族ものは極めて普遍的なお話である。他人同士が知り合って子供が生まれ、その子供が年とともに個を確立していく、その間軋轢もあれば、錯綜もある。しかし家族は家族として、地理的に離れることはあっても、死ぬまでは土にいや孤に帰ってはならないという家族の有様を映し出す。極端なようで極端ではない見事な設定である。戦時中の戦争未亡人の再婚はこうであろうし、女子大生の女性タレントがいたり、7歳の年の差、あるいはシェイクスピアを読む喧嘩好き、有りそうである。この5人は集合体であらんとしてこまめに生きる。母のバイトやら叔父の新しい仕事やら、学芸会やら、それぞれが、集合体であらんとしてこまめに生きる、とても参考になりました。未婚の私にとっても。 | ||
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●市井義久の近況● その84 2009年2月 池田敏春さんと話していて、『眠狂四郎無頼控』の話が出たので何年ぶりかでビデオ屋に行った。当然そのビデオは置いていなかったが、何年ぶりかで訪れた麻布十番のTSUTAYAではないビデオ屋のその変貌ぶりには驚いてしまった。 まず旧作がほとんど無い。新作のビデオならぬDVD中心の品揃えである。ビデオもあるにはあったが一部分のみ。これじゃ旧作はビデオでという訳にはもうゆかなくなっている。その中の1本、タイトルに惹かれて「新日本の首領」(2004年)というビデオを借りたが、これ1本見ただけで昨今のパッケージの不振を納得してしまった。いわゆるこれはVシネマ、しかし役者はかつての東映実録やくざ映画のスター達である。かつて『日本の首領』という東映やくざ映画が存在したので借りてはみたが、新がついただけで中味は残念ながら全く異なっていた。 そしてアダルトコーナー。百花繚乱である。かつては監督が誰、役者は誰で選択していたが、もう知っている人は誰もいない。というよりタイトルそのものが堂々と「素人〜」である以上、役者は選択肢にはならない。このビデオ店のAVコーナーは面積では1/4以下だが客ははるかに一般コーナーより多い。私は仕方なくタイトルの面白さで選択したが、いやはやこれがAVビデオいやAVDVD本来の目的を全く無視し、当然裸とセックスは出てくるが、お笑いショートコント集のようなAVDVDで立つより笑えるという代物である。店全体の1/4弱のスペースだが一般コーナーのように同じタイトルが何十本も並んでいる訳でもないので、はるかに客も多く、コーナー名と又タイトルを見るだけでも飽きない。まさに百花繚乱、社会全体の不況、パッケージ不況と言われているが、なんとAVだけはここを見る限り狂い咲き、ちなみに私が借りたAVのタイトルは「狂おしい夜の為に セックスの匂いがするエロ小説」です。AVDVDなのにエロ小説というのに惹かれました。 | ||
市井義久(映画宣伝プロデューサー) 1950年新潟県に生まれる。 1973年成蹊大学卒業、同年株式会社西友入社。 8年間店舗にて販売員として勤務。1981年株式会社シネセゾン出向。 『火まつり』製作宣伝。 キネカ大森番組担当「人魚伝説よ もう一度」「カムバックスーン泰」 などの企画実現。買付担当として『狂気の愛』『溝の中の月』など買付け。 宣伝担当として『バタアシ金魚』『ドグラ・マグラ』。 1989年西友映画事業部へ『橋のない川』製作事務。 『乳房』『クレープ』製作宣伝。「さっぽろ映像セミナー」企画運営。 真辺克彦と出会う。1995年西友退社。1996年「映画芸術」副編集長。 1997年株式会社メディアボックス宣伝担当『愛する』『ガラスの脳』他。 2000年有限会社ライスタウンカンパニー設立。同社代表。 ●2001年 宣伝 パブリシティ作品 3月24日『火垂』 (配給:サンセントシネマワークス 興行:テアトル新宿) 6月16日『天国からきた男たち』 (配給:日活 興行:渋谷シネパレス 他) 7月7日『姉のいた夏、いない夏』 (配給:ギャガコミュニケーションズ 興行:有楽町スバル座 他) 8月4日『風と共に去りぬ』 (配給:ヘラルド映画 興行:シネ・リーブル池袋) 11月3日『赤い橋の下のぬるい水』 (配給:日活 興行:渋谷東急3 他) 12月1日『クライム アンド パニッシュメント』 (配給:アミューズピクチャーズ 興行:シネ・リーブル池袋) ●2002年 1月26日『プリティ・プリンセス』 (配給:ブエナビスタ 興行:日比谷みゆき座 他) 5月25日『冷戦』 6月15日『重装警察』 (配給:グルーヴコーポレーション 興行:キネカ大森) 6月22日『es』 (配給:ギャガコミュニケーションズ 興行:シネセゾン渋谷) 7月6日『シックス・エンジェルズ』 8月10日『ゼビウス』 8月17日『ガイスターズ』 (配給:グルーヴコーポレーション 興行:テアトル池袋) 11月2日『国姓爺合戦』 (配給:日活 興行:シネ・リーブル池袋 他) ヨコハマ映画祭審査員。日本映画プロフェッショナル大賞審査員。 |
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