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シネマ ファシスト 第86回 2009年4月号 『湾岸ミッドナイト THE MOVIE』 (申し訳ありません。これを6月に書いております。) 昔、『湾岸バッド・ボーイ・ブルー』という面白い映画があった。富岡忠文のデビュー作である。 それ以来車の映画は見たことがない。免許証も無ければ、車はタクシーか助手席に乗るだけで、何の興味も無い。昔はともかく、今はもう街を走っている車の車種さえ見分けられない。 9月12日(土)に公開するこの映画の仕事を受けた。今年は1月から今まで3人で3本の映画の宣伝していたのでちょっと忙しく、5月10日の『チェイサー』以来、1ヶ月ぶりに映画を見た。登場人物は皆、ストイックである。主人公は高校も側に置いて、ただひたすら日夜、車に乗るためだけにアルバイトをしている。イケメンなので女は寄って来るが、車を整備し改造し、ミッドナイトに湾岸を走行する以外、他の事にはまったく興味が無い。医者、カメラマン、モデル、主な登場人物は似たようなものである。時にはモナコ並に公道でレースを繰り広げる。それだけのストイックな人生である。だから酒も食べ物も色恋も出て来ない。それに引きかえ主役とも言える車は、人格があるかのごとく放恣である。運転する人を3人も殺し、廃車寸前、炎上、海中の墜落も何のその、その都度蘇っては、人間を死へと誘う。 車のことはわからない。しかし私もかつて逗子に住んでいた時、タクシーで横羽線の湾岸を通って横横から逗子に帰った。深夜ともなれば、高速は80Kmどころか、タクシーが120Kmぐらいで走っていても平気で追い抜いてゆく。人がスピードを求めるのか、車が強いるのか、この映画を見ていて、何十年ぶりかで、追い抜かれる快感と追い抜く自由を体感した。 主人公はフェアレディS30Z、私が若い頃の車である。いすゞ117クーペ、シルビア、尾の跳ね上がったギャラン、 サイドラインの跳ね上がったスカイライン2000GTR、その頃の車を描いた現代の映画である。 『湾岸ミッドナイト THE MOVIE』 9月12日(土)より新宿ミラノ他全国ロードショー!! | ||
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●市井義久の近況● その86 2009年4月 父が死に、友が死に、影響を受けた作品の監督や役者や作家が死に、行きつけの店がなくなると、いよいよ次はオレの番かと思ってしまう。曽根中生を死んだことにするという記事が出たり(2月20日発売のキネマ旬報)、加藤周一が死んだりすると、世間がだんだん寂しくなる。店も吉祥寺の峠は無く、下北沢の壇も無く、京橋の?(忘れました)も無く、本牧の旧リキシャールも無く、と書いてきたところで、急に鎌倉のシーキャッスルに行ってみたくなった。鎌倉には用があって、1ヶ月1回は必ず出かけているのに由比ガ浜のシーキャッスルへはもう何年も行っていない。1957年に開店したドイツ料理の店、日本にロースとビーフとかレーベンブロイとかが馴染みがなかった頃からの店である。私が初めて行ったのは、働き出してからだから1975年くらいか、ananとかnonnoが創刊された頃である。何年ぶりだろう。あっ、まだあった。それも昔のまま。おまけに、あのドイツ人のおばさんもおじさんもいる。いや、20才で日本に来たとしても、もう72歳、立派なおじいさんとおばあさんである。おまけに中も昔のまま、70年代に取材を受けた雑誌の表紙と記事が額に入れて飾ってある。サンデー毎日が70円、ananはエルジャポンで、パンダのマークが付いている。ポテトサラダとロースとビーフも変らぬ味。特別おいしい訳ではないが、日本のそれとは昔も今も違う味わいである。両隣は私が知っている範囲でも2回は変った。民家からホテルそしてマンション、左は確か日活のホテルだった。 しかし由比ガ浜の海に面しているので、ここは建物どころか、中から見る風景も変らない。しかし昔に比べ随分と若い娘が少なくなり、老人と犬が増えた。レーベンブロイを飲む。これも昔と変らない。親が死のうが友が死のうが、オレが生きていればいい。そう思う。 | ||
市井義久(映画宣伝プロデューサー) 1950年新潟県に生まれる。 1973年成蹊大学卒業、同年株式会社西友入社。 8年間店舗にて販売員として勤務。1981年株式会社シネセゾン出向。 『火まつり』製作宣伝。 キネカ大森番組担当「人魚伝説よ もう一度」「カムバックスーン泰」 などの企画実現。買付担当として『狂気の愛』『溝の中の月』など買付け。 宣伝担当として『バタアシ金魚』『ドグラ・マグラ』。 1989年西友映画事業部へ『橋のない川』製作事務。 『乳房』『クレープ』製作宣伝。「さっぽろ映像セミナー」企画運営。 真辺克彦と出会う。1995年西友退社。1996年「映画芸術」副編集長。 1997年株式会社メディアボックス宣伝担当『愛する』『ガラスの脳』他。 2000年有限会社ライスタウンカンパニー設立。同社代表。 ●2001年 宣伝 パブリシティ作品 3月24日『火垂』 (配給:サンセントシネマワークス 興行:テアトル新宿) 6月16日『天国からきた男たち』 (配給:日活 興行:渋谷シネパレス 他) 7月7日『姉のいた夏、いない夏』 (配給:ギャガコミュニケーションズ 興行:有楽町スバル座 他) 8月4日『風と共に去りぬ』 (配給:ヘラルド映画 興行:シネ・リーブル池袋) 11月3日『赤い橋の下のぬるい水』 (配給:日活 興行:渋谷東急3 他) 12月1日『クライム アンド パニッシュメント』 (配給:アミューズピクチャーズ 興行:シネ・リーブル池袋) ●2002年 1月26日『プリティ・プリンセス』 (配給:ブエナビスタ 興行:日比谷みゆき座 他) 5月25日『冷戦』 6月15日『重装警察』 (配給:グルーヴコーポレーション 興行:キネカ大森) 6月22日『es』 (配給:ギャガコミュニケーションズ 興行:シネセゾン渋谷) 7月6日『シックス・エンジェルズ』 8月10日『ゼビウス』 8月17日『ガイスターズ』 (配給:グルーヴコーポレーション 興行:テアトル池袋) 11月2日『国姓爺合戦』 (配給:日活 興行:シネ・リーブル池袋 他) ヨコハマ映画祭審査員。日本映画プロフェッショナル大賞審査員。 |
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