第89

7月号

シネマ ファシスト 第89回 2009年7月号
『こまどり姉妹がやって来る ヤア!ヤア!ヤア!』
(申し訳ありません。これを8月に書いております。)

 ザ・ピーナッツならばともかく、こまどり姉妹はその名称しか知らない。71歳、やはりと思う。監督は新進気鋭と書いてあるので、30歳くらいか。そしてプロデューサーは見た目50歳、2人はこまどり姉妹のどこに興味を持ったのであろうか。このプロデューサーによる企画は、高田渡、遠藤賢司、こまどり姉妹と来て、今後は田端義夫、島倉千代子と続いてゆくと聞く。一体彼らの何に引き寄せられたのか。

 このドキュメンタリーを見ると、こまどり姉妹とは何か、その一端はわかる。多くの歌手が、歌が好きで、何かの偶然によって、歌手デビュー、レコードデビューするのと異なり、こまどり姉妹にとっての歌は人生そのものである。歌の題名も「涙のラーメン」「浅草姉妹」「流転船」「幸せになりたい」「ソーラン渡り鳥」とあるように、彼女らの歌はタイトルも歌詞もまさに彼女らの人生そのものである。いくら戦前の生まれとは言え、ここまであるのかという流転が続く。引き揚げ、行商、横領、殺傷、癌、両親の死と、いくらなんでもの流転が、そのまま歌となる。又、彼女らの歌は生活の糧そのものである。門付け、流し、宴会の余興、温泉場でのステージと、レコードやツアーではなく、そのような場で歌ったことが、彼女らにとって歌は人生そのものであることを表している。全身小説家、全身脚本家、彼女ら2人は全身歌手、それも71歳を過ぎて現役というのだから、おそらく若い監督とプロデューサーもそこに惹かれたのだと思う。

 10月31日より公開。

●市井義久の近況● その89 2009年7月 

 麻布十番に事務所を置いてもう9年になる。それ以前の十番は、アオイスタジオ、十番温泉、ソバ御三家、菅原文太の自宅、杉良太郎の事務所、取引先の印刷会社、そして東京タワーの見える街、それくらいの印象しかなかった。今も残るのは、アオイスタジオとソバ御三家と東京タワーである。9年経っても東京タワーの見える街というイメージは変わらない。しかし、今はアルファ・インとスーリアの街、この2つが新しい印象である。スーリアには、週1回は行くが、もちろんアルファ・インには行ったことはない。日常と非日常の対比であり、それを見下ろすのが東京タワー。スーリアは今一番美味しいと思っているカレーの店。アルファ・インは人間の欲望の城。どちらも以前は東京の陸の孤島と言われた麻布十番に相応しい佇まいである。そしてもう一つ挙げると狸穴公園、東京タワーを見上げ、アルファ・インを見渡し、スーリアの近く、以前このあたりに克美しげるが住んでいたそうであるが、やぶ蚊の公園である。今はもう周囲にマンションが建ってしまったが、それでもやぶ蚊が出るだけあって、春は桜、初夏は紫陽花、秋は紅葉、冬は雪の人里離れた、人のいない公園である。この4つが私にとっての今の麻布十番の顔、それぞれが同じジャンルの他を圧倒しているのが、やはり麻布十番らしい。
 今年もまた麻布十番祭りが近い。


市井義久(映画宣伝プロデューサー)

1950年新潟県に生まれる。 1973年成蹊大学卒業、同年株式会社西友入社。 8年間店舗にて販売員として勤務。1981年株式会社シネセゾン出向。 『火まつり』製作宣伝。
キネカ大森番組担当「人魚伝説よ もう一度」「カムバックスーン泰」 などの企画実現。買付担当として『狂気の愛』『溝の中の月』など買付け。 宣伝担当として『バタアシ金魚』『ドグラ・マグラ』。
1989年西友映画事業部へ『橋のない川』製作事務。 『乳房』『クレープ』製作宣伝。「さっぽろ映像セミナー」企画運営。 真辺克彦と出会う。1995年西友退社。1996年「映画芸術」副編集長。 1997年株式会社メディアボックス宣伝担当『愛する』『ガラスの脳』他。

2000年有限会社ライスタウンカンパニー設立。同社代表。

●2001年 宣伝 パブリシティ作品

3月24日『火垂』
(配給:サンセントシネマワークス 興行:テアトル新宿)
6月16日『天国からきた男たち』
(配給:日活 興行:渋谷シネパレス 他)
7月7日『姉のいた夏、いない夏』
(配給:ギャガコミュニケーションズ 興行:有楽町スバル座 他)
8月4日『風と共に去りぬ』
(配給:ヘラルド映画  興行:シネ・リーブル池袋)
11月3日『赤い橋の下のぬるい水』
(配給:日活 興行:渋谷東急3 他)
12月1日『クライム アンド パニッシュメント』
(配給:アミューズピクチャーズ 興行:シネ・リーブル池袋)


●2002年

1月26日『プリティ・プリンセス』
(配給:ブエナビスタ 興行:日比谷みゆき座 他)
5月25日『冷戦』
6月15日『重装警察』
(配給:グルーヴコーポレーション 興行:キネカ大森)
6月22日『es』 
(配給:ギャガコミュニケーションズ 興行:シネセゾン渋谷)
7月6日『シックス・エンジェルズ』
8月10日『ゼビウス』
8月17日『ガイスターズ』
(配給:グルーヴコーポレーション 興行:テアトル池袋)
11月2日『国姓爺合戦』
(配給:日活 興行:シネ・リーブル池袋 他)

ヨコハマ映画祭審査員。日本映画プロフェッショナル大賞審査員。

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