TFJ's Sidewalk Cafe >

談話室 / Conversation Room

TFJ's Sidewalk Cafe 内検索 (Google)
[3870] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Tue Nov 24 21:34:39 2020

1週間余り前の日曜15日は、昼に京橋へ。 毎年恒例の国立映画アーカイブのサイレント映画の上映企画 『サイレントシネマ・デイズ2020』 で、柳下 美恵 によるピアノ生伴奏付きサイレント映画上映を観てきました。

La Proie du vent
1927 / Films Albatros (France) / 104 min. / 35mm 1.33:1 16fps / B+W / silent
Réalisation: René Clair
Scénario: René Clair le roman L'Aventure amoureuse de Pierre Vignal d'Armand Mercier
Charles Vanel (Pierre Vignal), Lillian Hall-Davis (Elisabeth, la châtelaine), Sandra Milowanoff (Hélène, la soeur d'Elisabeth), Jean Mura (le mari d'Hélène), Jim Gérald (docteur Massaski, le médecin), etc

サイレント期の René Clair の映画というと、 Entr'acte 『幕間』 (1924) や Paris qui dort 『眠るパリ』 (1925) のような Avant-Garde 色濃い実験的な作品の印象が強いのですが、 この映画はその後に制作された実験色を抑えた物語映画です。

時代は第一次世界大戦後。主人公の冒険飛行士 Pierre Vignal はパリからモスクワへの航空路開拓中に 中欧スロバキアの城館近くの森に不時着、城館の女主人である伯爵夫人 Elisabeth の手当てを受けます。 その Pierre と Elisabeth の間のロマンスを、城館に幽閉された妹 Hélène とその夫を交え、 少々ミステリー的かつアクションの要素もあるメロドラマとして描いています。 Elisabeth の一族はバルカンの架空の小国 Libanie [Libania] の貴族で、 クーデターで Elisabeth は夫を失い、追われて亡命生活し、 妹 Hélène はクーデター時に逮捕投獄された結果錯乱してしまったという設定は、 この映画を制作した Albatros がプランスの白系ロシア人の映画会社で、彼らにとってリアルなものだったのかもしれません。

Pierre が Elisabeth に好意を寄せるようになるも、その義弟の間の関係を疑ううち、幽閉された Hélène と出会います。 錯乱しているとは知らずに Hélène の妄想に振り回され、2人で城館を自動車で脱走するものの失敗し、彼女を事故死させてしまい、彼女たちの真実を知ることになります。 Hélène の死を契機に Elisabeth と義弟は母国に戦いに戻る決心をし、Pierre も Elisabeth への未練を残しつつパリに戻りますが、 最後はパリで再会して結ばれる、という、三角関係の交錯するメロドラマです。 特に、Elisabeth と義弟が関係しているのではないかと嫉妬する場面での妄想イメージの映像化など、 セクシーかつスタイリッシュで、流石、Clair。 亡命貴族の城館暮らしということで、モダンな意匠に溢れているわけではないですが、ファッションもなどにアール・デコ期で、お洒落です。

しかし、一番の見所は、 不時着時を含む空撮映像や Hélène の事故死の場面を含むカーチェイスの映像など、スリリングな映像表現でしょう。 飛行機や自動車を使っているということも含め、当時としてはモダンというか斬新な表現だったのでしょう。 偶然、前日に『星の王子さま』 (Antoine de Saint-Exupéry: Le Petit Prince, 1943) を舞台化した作品を観たばかり、 図らずしも、不時着した飛行士の物語を続けて観ることになりました。 一方は子供の心を呼び起こす寓話、もう一方は大人向けメロドラマと、ある意味対照的ですが、 戦間期、飛行士の不時着という状況は想像を掻き立てられるものがあったのだろうなあ、と。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3869] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Nov 23 22:20:18 2020

先の週末土曜14日は、午後に横浜山下町へ。このダンス作品を観てきました。

KAAT神奈川芸術劇場ホール
2020/11/14 14:00-16:10.
演出・振付: 森山 開次
美術: 日比野 克彦; 衣裳: ひびの こづえ; 音楽: 阿部 海太郎
出演: アオイヤマダ (王子), 小㞍 健太 (飛行士), 酒井 はな (バラ), 島地 保武 (キツネ, 王様, 他), 森山 開次 (蛇, 地理学者, 他), 坂本 美雨 (コンスエロ), 池田 美佳 (ヒツジ, 渡り鳥, 点灯夫, バラたち, 他), 碓井 菜央 (ヒツジ, 渡り鳥, バラたち, 他), 大宮 大奨 (呑み助, 飛行隊), 梶田 留以 (夕日, 渡り鳥, バラたち, 他), 引間 文佳 (ヒツジ, 渡り鳥, 点灯夫, バラたち, 他), 水島 晃太郎 (うぬぼれ屋, 飛行隊, 他), 宮河 愛一郎 (実業家, 飛行隊, 他).
演奏:佐藤 公哉, 中村 大史.

7月の新国立劇場バレエ団 『竜宮 りゅうぐう ~亀の姫と季の庭~』 も楽しかった [鑑賞メモ] が、 今度はコンテンポラリー・ダンスの文脈で活躍するダンサーを集めて 『星の王子さま』をダンス作品化したということで、観てきました。

森山の舞台といえば、プロジェクションマッピングやユーモラスな造形の道具や衣裳を駆使した、 軽妙さを感じることが多いのですが、 プロジェクションマッピングもほとんど使わず、道具や衣裳の造形も抑えめ。 バオバブ木をバルーンで象る所など ひびのこづえ のアイデアのように思われましたが、 クレジット上は美術が ひびのこづえ ではなく 日比野克彦 で、そのような造形物は控えめ。 新体操やサーカスなどのバックグラウンドなど個々のダンサーの身体性を生かした動きも抑えて、 グループでの動きでの表現を多用して、作品を描いていました。 予想していた舞台とかなり違ったので、少々戸惑いながら観ていました。 そんな中では元バレエダンサーという身体性を生かした 酒井 はな の「バラ」が最も印象に残りました。

最も印象に残ったのは、やはり、最後の場面。 王子さまがバラの元に戻ったように描くのではなく、 また飛行士も倒れた状態になり修理した飛行機で生還したかのような描き方ではなく、 バラが一人舞台中央で回り続けるまま幕が下りる終わり方は、 かなりペシミスティックな印象を残しました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3868] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Thu Nov 12 21:29:07 2020

例年であれば、10月から11月にかけてほぼ毎週末、東京芸術祭やFESTIVAL/TOKYOのプログラムで、 海外カンパニーのコンテンポラリーな演劇やダンスの公演が東京芸術劇場界隈で続くのですが、 今年はCOVID-19で来日公演はほぼ全滅。 11月6-8日も東京芸術劇場プレイハウスで Ivo van Hove / Toneelgroep AmsterdamRoman Tradegies の公演が予定されていたのですが、キャンセル。 その代わりに Ivo can Hove 演出作品上映会が開催されたので、日本語字幕付きで観ておく良い機会と、 土曜7日の昼から晩まで、1日通し券で3作品を観ました。

『オープニング・ナイト』
Director: Ivo van Hove; Author: John Cassavetes
Actors: Elsie de Brauw (Myrtle), Jacob Derwig (Maurice), Oscar van Rompay (Gus), Fedja van Huët (Manny), Katja Herbers (Dorothee), Chris Nietvelt (Sarah), Kristof van Boven (Kelly), Fred Goessens (David), Lien de Graeve (Lena), Hadewych Minis (Nancy), Eelco Smits (Leo)
Translation: Gerardjan Rijnders, Sam Bogaerts; Dramaturge: Koen Tachelet; Scenographer, light design: Jan Versweyveld; Sound design: Marc Meulemans; Video: Erik Lint; Costumes: An D'Huys
Premiere: 26 Mar 2006
Producer: NTGent, Toneelgroep Amsterdam
映像初公開日: 2010年9月17日 (収録日時不明), 90分.
上映: 東京芸術劇場プレイハウス 2020/11/07 13:00-14:30.

John Cassavetes の1977年の同タイトルの映画に基づく作品ですが、元の映画は観ていません。 同じく映画に着想したということより、 老いに向き合う女優が主人公のバックステージ物ということもあってか、 All About Eve 『イヴの総て』 [鑑賞メモ] を連想しました。 手持ちカメラなども使って舞台裏を見せるかのような演出も似ていたでしょうか。 しかし、All About Eve より構造は複雑で、 地の舞台裏、リハーサル、ゲネプロ、初日の舞台に主役の女優の妄想などが錯綜して、 今、何を見てるのか混乱する時もありました。 その錯綜具合も含めて楽しむ作品かと思いますが、さほどピンと来なかったのは、 演劇の舞台裏に自分がさほど興味持ててないというのはあるかもしれません。

『声』
Director: Ivo van Hove; Author: Jean Cocteau
Actors: Halina Reijn (she)
Translation, dramaturge: Peter Van Kraaij; Scenographer, light design: Jan Versweyveld
Premiere: 12 Feb 2009
映像初公開日: 2010年1月1日 (収録日時不明), 70分.
上映: 東京芸術劇場プレイハウス 2020/11/07 16:15-17:25.

ある女性の別れた男 (夫) との長電話を一人芝居としたもの。 客席側に大きなガラス窓がある、ほぼ空の部屋で、女優一人が電話に、もしくは自分に語り続けます。 身体の動きで空間を描いたり、セリフで電話の向こうの状況を描くというより、電話の主の女性の心情を描くというもの。 正直に言えば自分とは縁遠過ぎる話の上、 例えば Fleabag [鑑賞メモ] のような コメディ的な語りの妙を感じられるものでも無かったので、 その世界に入り込むというより、当惑感が先立ちました。 しかし、窓の外に出て、手を広げて、照明が落ちるラストは、流石にスタイリッシュに不穏な演出でした。

『じゃじゃ馬ならし』
Director: Ivo van Hove; Author: William Shakespeare
Actors: Alwin Pulinckx (Tranio), Leon Voorberg (Gremio), Dennis Rudge (Hortensio), Eelco Smits (Lucentio), Fred Goessens (Grumio, Vincentio), Halina Reijn (Katharina), Hans Kesting (Petruchio), Elise Schaap (Bianca), Hugo Koolschijn (Baptista Minola), Stef Aerts (Biondello).
Translation: Hafid Bouazza Dramaturge: Alexander Schreuder Scenographer: Jan Versweyveld Set: Atelier Amsterdam Sound design: Marc Meulemans Costume design: Lies van Assche
Premiere: 08 May 2005
映像初公開日: 2009年9月4日 (収録日時不明), 115分.
上映: 東京芸術劇場プレイハウス 2020/11/07 19:30-21:25.

シェイクスピアの作品の中でもミソジニー的な面が多くある『じゃじゃ馬ならし』を Ivo van Hove がどう料理したのか興味があったのですが、 舞台を現代に置き換え、脇役を含めて、皆、めちゃくちゃなひとばかりという、カオティックな舞台でした。 相対的に Katherina と Petruchioが中では最もまともな2人に見えてしまったことよ。 Katherina と Petruchio の結婚式で、親や友人がオランダのフットボール応援姿の一方、 白ネクタイスーツ姿の Petruchio が結婚式に相応しくない姿として責められるわけですが、 万事こんな感じで、価値観が逆転した世界での物語のよう。 このオランダのフットボール応援姿の結婚式をはじめ、 何ヶ所か微かに見覚えある場面がいくつかあったのですが、 YouTube のトレイラーか何かで観たことがあったのかもしれません。

去年もシアター・オリンピックスで1日3公演観ているので [鑑賞メモ] 大丈夫だろうと1日通しで観たのですが、全て同じ演出家の演劇作品が続いて変化に乏しい上、 遠征しての演劇祭のような気分的な盛り上がりに欠けるので、疲労感が先立ってしまいました。 うーむ。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3867] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Tue Nov 3 22:13:12 2020

文化の日の前後は週末と合わせて連休にして静岡に大道芸を観に行くことが多いのですが、今年はCOVID-19のため中止。 というわけで、今年は土曜に初台へ、日曜に恵比寿へ行って、2会場で開催中の写真展を観てきました。

Ishimoto Yasuhiro Centennial: Tradition and Modernity
東京オペラシティ アートギャラリー
2020/10/10-2020/12/20 (月休;月祝開,翌火休). 11:00-19:00.
Ishimoto Yasuhiro Centennial: The City Brought To Life
東京都写真美術館 2F
2020/09/29-2020/11/23 (月休;月祝開,翌平日休). 10:00-18:00.

アメリカ・カルフォルニア生まれで高知に育ち、1939年以降アメリカに移住し、 László Moholy-Nagy がシカゴに開校した New Bauhaus こと Chicago Institute of Design で戦後間もなく頃に学び、 1953年の再来日後、日本を拠点に活動した写真家 石元 泰博 の生誕100年を記念した回顧展が、都内の2つの美術館を会場に開催されています。 辻 彩子、大辻 清司 と制作た実験映画『キネカリグラフ (Kine Calligraph)』 (1955) など 大辻 清司 [鑑賞メモ] との仕事や、 近代建築や桂離宮などの建築写真などの仕事で知られ、写真を観る機会はそれなりにありましたが、 シカゴ時代の1950年代から、21世紀に入ってからの「シブヤ、シブヤ」のような晩年の作品まで、 まとめて観るのは初めて。

東京オペラシティアートギャラリーの展示が石元泰博フォトセンターのコレクションを主、 東京都写真美術館の展示は石元泰博フォトセンターのコレクションを主としていますが、 近代建築や桂離宮、伊勢神宮などの建築写真や、シカゴや東京の街中や工場などを造形を強調するように撮った写真が東京オペラシティ アートギャラリーの方に集められ、 晩年の「シブヤ、シブヤ」をはじめ、シカゴや東京の街中の写真も人々を捉えたような写真は、 東京都写真美術館の方に集められていました。 実験的な作風のものは、最初期のフォトグラムのような実験写真や Kine Calligraph は東京オペラシティ アートギャラリー、 ライフワーク的な多重露光の作品は東京都写真美術館にありました。

大辻 清司 経由で知った写真家ということもあり造形的な作風という印象が強く、 東京都写真美術館の展示で造形的に限らない作風の多面性に気付かされる興味深さがありました。 しかし、やはり、造形的な画面が際立つ、東京オペラシティ アートギャラリーの方の作風が好みでした。 シカゴの薄く雪をかぶった路駐の車を同じ構図で捉えた「雪と車」シリーズ (1948-52) など Becher のタイポロジーを思わせますし、 工場や道路を即物的に捉えた「日本の産業」シリーズ (1963) も印象に残りました。 建築写真は今までも目にする機会が少なくなかったのですが、造形的だけでなく構図の巧みさ、 特に手前に大きく視野を阻む構造を捉え、その合間から向こうの被写体を的確に収める構図が、 単にフラットに捉えるというのではない奥行き感を作り出していました。

最初期シカゴ時代のフォトグラムなどの実験写真は、流石 László Moholy-Nagy 直系と思わせる一方、 これが、後に 大辻 清司 等に合流しての Kine Calligraph へ、 さらに「色とかたち」シリーズとなるのかと。 銀塩の写真と並べると少々異質ですが、「色とかたち」では、多重露光を駆使して、 抽象表現主義を思わせる鮮やかな色の抽象的な画面を作り出していました。

東京都写真美術館3Fでは、 『TOPコレクション 琉球弧の写真』 (2020/09/29-11/23)。 新規収蔵作品を中心とした沖縄の写真家の特集。画面の造形的な面白さより撮影対象の比重が重めの写真が集められていました。

B1Fでは、 『写真新世紀展2020』 (2020/10/17-11/15)。 好みの作家に出会えれば、という感じで毎年定点観測していますが、今年もピンとくるものに出会えず。 近年はすっかり現代アート的なコンセプチャルな作風がトレンドになっていますが、画面の造形的な面白さという面が後退し過ぎてしまっているようで、掴みに欠けるようです。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

初台へ行くなら新国立劇場でも何か観よう、 ということで、土曜マチネに良席が残っていたので、 新国立劇場バレエ団 『ドン・キホーテ』Don Quixote を観てきました。 このバレエ団の過去の Don Quixote や 他のバレエ団の公演と比べて云々言えるほどバレエは観てませんが、 Kitri と Basilio が可愛くて微笑ましい、そんなラブコメの雰囲気を楽しめました。 脇役も芸達者で、特に街中の第1幕、後ろの人々もちゃんと演技していて、街の陽気で生き生きとした雰囲気でしたし。 こういう明るいコメディも良いなあ、と。 新国立劇場は観やすくて好きなハコなどで、自分の守備範囲とかあまり気にせず、気楽に足を運びたいものです。

ちなみに、この公演は、今年5月に2019/20シーズン締めくくり公演だったもののCOVID-19で中止となり、2020/21シーズン開幕公演になったもの。 7月の『竜宮』 [鑑賞メモ] は 関係者にCOVID-19感染者が出て千秋楽を迎えることができなかっただけに、 このシーズン開幕公演が無事に千秋楽を迎えることができて良かったです。

[3866] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Nov 1 18:28:11 2020

先週末、土曜は昼に京橋へ。この上映+講演会を観てきました。

国立映画アーカイブ
2020/10/24 12:00-14:20
上映作品: 『日本の学童たち』 Japanese School Children (Hepworth Manufacturing Company (Britain), 1904, 2min), 『日本の葬列』 A Japanese Funeral (Warwick Trading Company (Britain), 1904, 2min), 『日本の祭列』 Japanese Procession of State (Hepworth Manufacturing Company (Britain), 1904, 1min), 『日本の舞踊』 Japanese Dancers (unknown (Britain), 1905, 2min), 『保津川の急流下り』 Shooting the Rapids on the River Ozu in Japan (Pathé Frères (France), 1907, 7min), 『ピクチャレスク・ジャパン』 Picturesque Japan [Japon Pittoresque/Das Malerische Japan] (Pathé Frères (France), 1907, 9min), 『日本の祭 横浜開港五十年祭』 Japanese Festival [Grande Fête du Cinquantenaire de Yokohama] (Pathé Frères (France), 1909, 6min), 『日本の稲刈り』 Rice Harvest in Japan [La Récolte du Riz au Japon/Reisernte in Japan/Auf Den Reisfeldern] (Pathé Frères (France), 1910, 8min), 『京都の祭』 The Rice Festival in Kyoto [La Fête du Riz à Kyoto, Japon / Reisfest in Kioto], (Pathé Frères (France), 1911, 8min), 『鵜飼』 Fishing with Cormorants. Isle of Yeso. Japan [Kormorane Beim Fischfang (Insel Yeso Japan)] (Charles Urban Trading Company (Britain), 1911, 10min), 『日本人の中で』 Among the Japanese (Selig Polyscope Company (America), 1911, 2min), 『日本のアイヌ』 The Ainus of Japan [Die Ainus, Die Im Aussterben Begriffene Urbevölkerung Japan’s] (Selig Polyscope Company (America), 1913, 3min), 『日本の軽業師』 Japanese Acrobats (unknown (Britain), 1914, 6min).
すべて British Film Institute 所蔵作品, デジタル修復版, 日本語・英語字幕つき; ピアノ伴奏: 柳下 美恵.
講演: 小松 弘 『初期映画における日本の映像について』, 平野 正裕 『「日本の祭 横浜開港五十年祭」について』, 森岡 健治 『「日本のアイヌ」の映像について』, 大島 幹雄 『「日本の軽業師」の映像について』

10月27日はユネスコ「世界視聴覚遺産の日」で、国立映画アーカイブは国立近代美術館フィルムセンター時代からこの時期に記念特別イベントを開催しています。 今年は British Film Institute 所蔵映画の中から20世紀初頭に日本で、もしくは、海外の日本人を撮影した映画の特集したもので、 映画が合計約1時間分、映画に関連する講演が1人あたり15分というプログラムでした。 企画自体はCOVID-19流行以前に立てられたもので、COVID-19の影響でフィルム輸送が困難となり 上映映画も変更になり全てデジタルデータによる上映、講演も1人15分と大幅に短縮したとのことでした。

フィルムセンター時代、国内外で発掘された初期の日本映画の上映会 『発掘された映画たち』が数年おきに開催されているわけですが [2008年の鑑賞メモ, 2014年の鑑賞メモ] そのヴァリエーションのようでもありますが、題材の選択がジャポニズム的というか、観光的という意味では、 Mirror To The Soul: Music, Culture and Identity in the Caribbean 1920-1972 [鑑賞メモ] の日本版のようでもありました。

今回は、ピアノ生伴奏付きで観ることができたので、資料的な興味以上に映像を楽しめたように思います。 時代が下るにつれて映像の質が良くなるということもありますが、 やはり、興味を引かれたのは、平取コタンで撮影されたという『日本のアイヌ』。 「アンナホーレ (鳥の舞)」などの踊りが予想以上に生き生きとした動きの映像で残っていて、 これでサイレントではなく録音が残っていたら、と。 もう一つ、イギリスで撮影されたという日本のサーカス芸人を捉えた『日本の軽業師』も、 画質がくっきりしていて、その動きの良さがはっきりとした視野で楽しめました。

講演が駆け足だったのは残念な限りでしたが、その中、 『初期映画における日本の映像について』で、今回上映されたような映画が当時の写真絵葉書の映画版のようなもので、 画面の作りも写真における絵画主義 (Pictrialism) に対応するという話が、腑に落ちました。 サイレント期の小津の映画と新興写真の類似か、 Russian Avant-Garde の映画と写真の類似など、 戦間期の写真と映画のモダニズムの共通性は意識したことがありましたが、 第一次世界大戦前の写真と映画についてはほとんど意識に上ってなかったので、 今後はそこももっと意識して観たいものです。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3865] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Oct 25 17:53:08 2020

先週末は土曜は一日冷たい雨。雨のあがった日曜の午後に三軒茶屋へ。 この公演映像上映会に行ってきました。

Le Quai - CDN Angers Pays de la Loire, 16 Novembre 2018.
Mise en scène: Florent Bergal; Direction artistique: Eva Ordonez & Florent Bergal
Interprètes: Eva Ordonez (trapeze), Camille Chatelain (equilibre sur cycle), Nata Galkina (foot juggling), Coline Mazurek & Max Behrendt (acrobatic duo), Hugo Georgelin (acrobat, dance), Thomas Surugue (pianiste).
Constructeur – Régie plateau: Rémi Bernard; Costumes: Cie Oktobre et Elodie Sellier; Création lumière: Cie Oktobre et Hugo Oudin; Régie générale technique: Alrik Reynaud; Ingénierie: Jean-Michel Caillebotte
Première: 8 aveil 2018 à CIRCa, Pôle national des arts du cirque, Auch.
Administration: Véronique Dubarry / Acolytes; Production: Christelle Jung / Acolytes; Diffusion: Estelle Saintagne / Acolytes
Co-producteurs: FONDOC - Fonds de soutien à la création contemporaine en Occitanie; La Verrerie, Pôle national des arts du cirque, Alès; Le Cratère, Scène Nationale d’Alès; CIRCa, Pôle national des arts du cirque, Auch; Furies, Pôle National des Arts des Arts du Cirque en préfiguration, Chalons en Champagne; Theater op de Markt, Dommelhof (Belgique)
Projet bénéficiaire du dispositif Compagnonnage du projet transfrontalier De Mar a Mar, cofinancé par le FEDER.
上映: 世田谷文化生活情報センター生活工房ワークショップルーム, 2020/10/18 15:00-16:15.

例年、10月第3週末は三軒茶屋で『三茶de大道芸』が開催され、それに合わせて 世田谷パブリックシアター でコンテンポラリー・サーカスの海外カンパニー招聘公演が催されます [去年の鑑賞メモ]。 しかし、今年はCOVID-19対策のため公演は中止、 大道芸も劇場を使った「大道芸onステージ」とその配信となってしまいました。 初めて足を運んだ2000年以来、『三茶de大道芸』やそれに合わせてのコンテンポラリー・サーカス公演を楽しみにしてきたので、大変残念です。 しかし、公演中止の代わりに公演を予定していた作品の映像上映会が開催されたので、それを観てきました。

Cie Oktobre は2014年に Eva Ordonez, Yann Frisch, Johathan Frau によって設立された フランスを拠点とするコンテンポラリー・サーカスのカンパニーです。 2018年の Midnight Sun はカンパニーとして2作目、 創設者の一人が Ordonez が、フランスのサーカス・アーティスト Florent Bergal の演出で作った作品で、 ドイツ表現主義演劇、Pedro Almodóvar や Alfred Hitchcock の映画などがイメージの着想源のようです。

中央に2人掛けソファ、その上手隣りに1人掛けソファ、下手の袖にピアノが一台。 背景は淡いシャンパンゴールドのドレープカーテンがかかり、天井からはシャンデリアが下がっているという、 ゴージャスな邸宅の客間という雰囲気から始まります。 中盤で、このシャンパンゴールドのカーテンが落ちて赤のベルベットのカーテンに背景が替わり夜のラウンジのようになります。 そしてラストはカーテンも失われ、闇の背景になります。 そんな背景の変化に合わせるかのように、女性パフォーマーも、白い昼の衣装から、赤のナイトドレスに、ラストは黒のナイトドレスに変わっていきます。 白から赤の変化は、女性の衣装変わりとカーテンを落とすタイミングを合わせて、ドラマチックに演出していたのが印象に残りました。

身体な演技の使い方は、視覚的もしくは物語的な枠組みの中でスリリングな技を見せる舞台というより、 明確な物語は無いもののサーカステクニックも使ったフィジカルシアターのよう。 ラスト近くの、シャンデリアの中に仕込んだトラベースを使った空中ダンスは、流石に見せ場を作ったように感じられました。 しかし、ソファ周りでの軟体アクロバットがかった動きや、人を振り回すような動きが多用され、 例えば、自転車アクロバットやツボを使ったフットジャグリングにしても、 高度な技の見せ場をほとんど作らず、むしろダンサーとの絡みを見せるようでした。

映像は客席後方から舞台を正面から全体を捉える固定カメラで撮影したもので、 技によってパフォーマーをクローズアップすることはありませんでした。 パフォーマーの表情が読み取れないような画質で、多くないもののの時折あるセリフには字幕はありませんでした。 そんなこともあり、登場人物の内面的な機微や物語的な要素は捉え難いものがありました。 こうして映像を観られただけでもありがたいのですが、 生だったら、もしくはせめて Met Opera Live、 Royal Opera House cinema や National Theatre Live くらいの映像だったら、 表現の繊細な部分や舞台のゴージャスで退廃的な雰囲気も楽しめたかもしれないと、 映像を観て少々物足りなく感じてしまいました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3864] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Oct 11 20:05:23 2020

今までの在宅勤務メインの日々から、10月5日から連日出勤。それも全力疾走的な仕事量で疲労困憊。 台風の影響も加わって、この週末はぐったり。 天気も悪く、出かける気力も残っていなかったので、自宅でストリーミング舞台鑑賞しました。

Oratorio in three parts for soloists, choir and orchestra by George Frideric Handel [Georg Mriedrich Händel] (HWV 56) arranged by Wolfgang Amadeus Mozart (K. 572)
Haus für Mozart, Salzburg
23,26 January 2020.
Stage Director, Set & Lighting Designer: Robert Wilson
Costume Designer: Carlos Soto; Co-Stage Director: Nicola Panzer; Co-Set Designer: Stephanie Engeln; Co-Lighting Designer:John Torres; Video Designer: Tomasz Jeziorski; Make-up Designer: Manuela Halligan; Dramaturg: Konrad Kuhn
Elena Tsallagova (soprano), Wiebke Kehmkuhl (alto), Richard Croft (tenor), José Coca Loza (bass).
Alexis Fousekis (dancer), Max Harris (Old Man), Leopoldine Richards (a child).
Les Musiciens du Louvre; Conductor: Marc Minkowski.
Philharmonia Chor Wien; Chorus Master: Walter Zeh.
Video Director Tiziano Mancini
Premiere: 23 January 2020, Haus für Mozart, Mozartwoche Salzburg.
en pertenariat avec le Théâtre de la Ville.
Captation produite par la Companie des Indes, Gildas le Roux; Réalisation: Stéphane Pinot.
NHK ondemand URL: https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2020109707SA000/

Handel が1741年に書き上げた oratorio (聖譚曲) を Robert Wilson が3幕物の舞台作品化したものです。 2020年1月にザルツブルグの Mozartwoche (モーツァルト週間) で初演された際の映像がDVD/BPでリリースされていますが、 同じ映像がNHKオンデマンドで日本語字幕付きでストリーミングされたので、 Robert Wilson がどのように舞台作品化したのかという興味で、観ました。

キリスト教の聖書から歌詞を取って歌曲化されたもので、聖書中の救世主に関する預言という意味では物語的なものはあるのですが、オペラというほどドラマチックな物語ではありません。 そんな聖書のエピソードを抽象的に象徴するかのような宗教的敬虔を感じるような場面もありましたが、 むしろ、どうしてこの歌詞で、この舞台、と感じることの方が多く感じられました。 光の枠を作り背景に抽象性の高い動画を投影するミニマリスティックな美術、 青白い光と陰影を駆使した光の演出、 そして、何より歌手4人、コーラスの他に3人の黙役も使い、何かの役を演じるというより、何かを象徴するかのような様式的な動きは、 いかにも Robert Wilson らしいと感じる舞台でした。 しかし、歌詞のその舞台上のイメージの関係、Wilson の演出意図を掴みそこねたせいか、 René Magritte の絵のような不条理なユーモアを感じることも多々ありました。

特に第1幕は、ダンサー扮する太い毛で覆われたような妖怪 (ブルガリアのクケリ [кукер] を思わせる) と黙役の少女の掛け合いも可愛らしくて面白かったですし、 第1幕ラストの soprano のソロでコップとビッチャーで水遊びしながら、最後は自ら水を頭にかけながら歌うなど、かなり不条理に感じられました。 bass の男性も、白の三揃えに蝶ネクタイで、まるで20世紀中頃までのポピュラー歌手かのように、拍子に合わせて軽くステップを踏みながら歌ったり。 そんな、oratorio のイメージとすぐに繋がらないような演出に、不条理なユーモアを感じました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3863] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Oct 4 19:08:34 2020

この週末土曜は昼過ぎに渋谷宮益坂上へ。この映画を観てきました。

『新しい街 ヴィル・ヌーヴ』
2018 / Unité Centrale(Canada) / noir et blanc / DCP / 76min
un film de Félix Dufour-Laperrière
avec les voix de Robert Lalonde, Johanne-Marie Tremblay, Théodore Pellerin, Gildor Roy
Animation: Hyun Jin Park, Jens Hahn, Philip Lockerby, Malcolm Sutherland, Nicolas Brault, Bogdan Anifrani et Félix Dufour-Laperrière.
Musique: Jean L'Appeau.
Produit par Galilé Marion-Gauvin.

Raymond Carver の短編 Chef's House 『シェフの家』 (1981) に着想したという、 カナダ・ケベックのアニメーション作家による墨による手書きの絵によるアニメーション映画です。 Carver の短編はいくつか読んだことはありますが『シェフの家』は無く、 むしろ、墨で書かれた淡いタッチの絵に惹かれて観ました。

元妻のとの思い出の地に越してした男 Joseph は、元妻 Emma を呼び、再出発しようとする。 そんな話を、1995年ケベック独立住民投票を背景に、モノトーンの絵で淡々と描きます。 アニメーション表現はリアリズム的では無く幻想的。 ケベック独立住民投票も登場人物が主体的に関わるというより物語の背景で、 かつ、その結果は僅差での否決から僅差での可決に変えられていました。 諦観しているというより過去を引きずっているというところに感傷を感じました。

成人した子がいる50歳前後の男女ということで情熱的な関係では無く、 その描写にモノトーンの淡々とした絵が合っていました。 しかし、控えめながらふっと官能的というか人肌恋しさみたいなことを感じさせる描写 (例えば、Emma が来たばかりの頃に台所でさりげなく伸ばした Joseph の手から Emma が手を引く場面や、海水浴での場面) もあって、 そんなささやかな感覚も感じられる映画でした。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

渋谷に出たので、その後、宮下公園側を迂回して、レコファン渋谷BEAM店へ。 数ヶ月前から閉店セールをしていたのですが、ついに10月11日に閉店が決まったようです。 この店に行くのも、これが最後か、と。 最もお世話になったレコファンは下北沢の店舗でしたが、渋谷のこのBEAM店も四半世紀営業していましたし、それなりにお世話になりました。 コロナ禍による来店者数激減も閉店の一因のようで、 そんな理由も残念な限りです。

[3862] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Sep 27 20:49:27 2020

この週末土曜は小雨降る天気でしたが、昼には日本橋八重洲へ。 2020年1月にアーティゾン美術館と改称してリニューアルオープンした石橋財団の美術館。 ブリジストン美術館時代はさほど足を運んだわけではないのですが、 リニューアルして現代美術にも注力するということで、その様子伺いも兼ねて足を運んでみました。

アーティゾン美術館 6階展示室
2020/06/23-2020/10/25 (月休;8/10,9/21開;8/11,9/23休), 10:00-18:00 (金10:00-20:00).

石橋財団コレクションと現代美術作家が共演するシリーズ「ジャム・セッション』第1弾です。 グループ展では度々観る機会がある作家ですが、個展を観るのは初めてです。 具体的なイメージに基づく絵画や立体、インスタレーションですが、 カレワラに着想したインスタレーションや縄文土器を思わせる陶物があり、 イメージの源泉は自然というより、北方の古代文化のようなものが感じられました。 が、それから一歩引いたような「影絵灯篭」のような作品の方が印象に残りました。

Cosmo-Egg — Exhibition in Japan of the Japan Pavilion at the 58th International Art Exhibition - La Biennale di Venezia
アーティゾン美術館 5階展示室
2020/06/23-2020/10/25 (月休;8/10,9/21開;8/11,9/23休), 10:00-18:00 (金10:00-20:00).
キューレター: 服部 浩之; アーティスト: 下道 基行 (美術家), 安野 太郎 (作曲家), 石塚 敏明 (人類学者), 能作 文徳 (建築家).

2019年のベネチア・ビエンナーレ (La Biennale di Venezia) の日本館展示の帰国展です。 展示室中央に再現された展示空間、その周囲で制作ドキュメンテーション等の展示をしていました。 4人のアーティストの作品を緩く関連付けて並置するのでは無く、 むしろ組み合わせて一つのインスタレーション作品として仕上げられていました。 さほどナラティブなインスタレーションでは無いのですが、 壁に書かれた石倉による創作神話が、個々のアーティストの作品を繋げるフックになっているよう。 下道 が撮影した白黒写真のビデオ投影として示された石垣島の津波石が、 写真自体はむしろ形式的な撮り方がされているにもかかわらず、まるで神話物語の象徴のように見えたり。 そんな所が面白く感じられました。

4階展示室は、コレクション展示室ということで 『石橋財団コレクション選 特集コーナー展示 新収蔵作品特別展示:パウル・クレー』。 新収蔵作品として Paul Klee の24点。あと、「印象派の女性画家たち」の特集コーナーも。 このあたりは、ブリジストン美術館時代から変わらないでしょうか。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3861] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Thu Sep 24 22:52:14 2020

在宅勤務で鈍った体でシルバーウィーク前半飛ばし過ぎてしまい、後半は休養モード。 自宅でストリーミング舞台鑑賞ということで、 ロンドンのコンテンポラリーダンスの拠点 Sadler's Wells のCOVID-19隔離対応ストリーミング Digital Stage で現在公開中のこの作品を観ました。

Hofesh Shechter Company
Grand Finale
Grande Halle de La Villette, Paris
June 2017.
Choreography & Music: Hofesh Shechter.
Set & Costume Designer: Tom Scutt; Lighting Designer: Tom Visser; Music Collaborators: Nell Catchpole & Yaron Engler; Associate Artistic Director: Bruno Guillore; Design Assistant (Set & Costume): Rosie Elnile.
Music: Original Score: Hofesh Shechter; Percussion on Soundtrack: Hofesh Shechter & Yaron Engler; Score transcribed by Christopher Allan.
Additional Music: ‘Merry Widow Waltz’ by Franz Lehár, Andante cantabile, String Quartet No. 1 and Suite No. 4 in G major by Pyotr Tchaikovsky, ‘Russian Tune’ by Vladimir Zaldwich.
Dancers: Chien-Ming Chang, Frédéric Despierre, Rachel Fallon, Mickaël Frappat, Yeji Kim, Kim Kohlmann, Erion Kruja, Merel Lammers, Attila Ronai, Diogo Sousa
Musicians: James Adams, Christopher Allan (band leader), Rebekah Allan, Mehdi Ganjvar, Sabio Janiak, Desmond Neysmith.
Produced by Hofesh Shechter Company and commissioned by Georgia Rosengarten.
Premiere: 14 June 2017, Grande Halle de La Villette, Paris
en pertenariat avec le Théâtre de la Ville.
Captation produite par la Companie des Indes, Gildas le Roux; Réalisation: Stéphane Pinot.
Sadler's Wells Digital Stage URL: https://www.sadlerswells.com/whats-on/2020/sadlers-wells-x-hofesh-shechter-company/

イスラエル出身でロンドンを拠点にコンテンポラリー・ダンスの文脈で活動する振付家 Hofesh Shechter のカンパニーの2017年の作品です。 2010年には来日公演もしています [鑑賞メモ]。

高さ3〜4m、幅1m程度の可動式の黒い壁のユニットが6台使われますが、舞台装置も最低限で物語的な要素はほとんどありません。 背景も黒く、普段着のような衣装も彩度が低く、光の演出も白色光だけと、色彩も抑えたミニマリスティックな演出です。 物語的なものもほとんど感じられないのですが、戦争や災害の現場で倒れ、打ちひしがれ、時に抗う人々のイメージから構成したようなダンス作品でした。 作品を通すテーマのように、死体、もしくは、意識を失った負傷者を現場から引き摺っていくような動きが使われていたのが印象に残りました。

前半はクラシカルだけど感傷的な緩い弦楽の響きと脈動するリズムが基調となってましたが、 幕間をはさんで後半になると、frame drum, kanun, zurna といった楽器が使われ、一気に中東風になりました。 動きの中にも、zeybek dance に着想したかのような手を広げての踊りもありました。 やはり、この災害的なイメージを想起させるダンスは、その地域を意識したものなのでしょうか。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

Now for something completely different...

連休中は秋冬物の服の買物。 Issey Miyake Men が今シーズンで休止となり、 このブランドで買うのも今シーズンで最後となってしまいました。 素材や色、造形が面白く、しかも、50歳過ぎでも落ち着いた感じに決められる紳士服は他にほとんど無いだけに、ここが無くなるというのは大変に痛いです。 初めてここで買ったのは1980年代。 2000年前後から20年近くここをメインに使ってきたので、来シーズンから着る服をどうしよう、と。

[3860] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Wed Sep 23 22:12:57 2020

シルバーウィーク二日目日曜は午前中に家を出て高崎へ。この展覧会を観てきました。

『佐賀町エキジビット・スペース 一九八三—二〇〇〇 現代美術の定点観測』
Sagacho Exhibit Space — 1983-2000 — Fixed-Point Observation of Contemporary Art
群馬県立近代美術館
2020/09/12-2020/12/13 (月休;月祝開,翌休). 9:30-16:00 (土日祝 11:00-17:00)

現代アートの展覧会を中心にパフォーマンス等の会場としても使われた 永代橋東詰近くにあったオルタナティヴ・スペースの佐賀町エキジビット・スペースの活動を振り返る展覧会です。 と言っても、まだ現代アートへの認知が低かった1990年代頃までの日本において、 このオルタナティヴ・スペースの果たした意義を強く押し出すものでは無く、 白黒の記録写真を年代順に淡々と並べた入口のギャラリー、 佐賀町での展覧会に出品された作品が並べられたメインギャラリーと奥の小ギャラリー、階段したスペース、 そして、ケースに入れられ通路に展示されたパンフレット類、というこじんまりとした構成でした。

当時は現代アートを専門に扱うこと自体がかなり強い方向性だったものの、 現代アートがポピュラーになった現在から見ると、テーマや作風に特定の強い傾向は感じられません。 解説も控えめに淡々と資料や作品を並べた展示も、佐賀町らしく感じました。

ある程度同時代的に体験しているので、「こんな時代があったのか」のような新鮮さは流石にありませんでしたが、 今回、1983年以降の全体像を眺めて観て、全活動期からすると、 佐賀町エキシビット・スペースへ自分がよく行くようになった1995年頃以降というのは ほぼ末期だった、などの時間的な関係がはっきり見えたのが、自分に取っては収穫でした。 当時はまだ20歳代だった頃ということで、個人的な事も、いろいろ思い出させられるものもありましたが……。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

この美術館はハラ・ミュージアム・アークとの合わせて車でしか行ったことが無く、電車を使って行ったのは初めて。 往路は倉賀野駅からタクシー (1500円程度)。 復路は群馬の森から倉賀野駅経由で高崎駅へ行くバスを利用。 倉賀野駅で降りても高崎駅まで行っても同じ列車にしか乗れず、かつ、倉賀野駅前にコンビニすら無いため、高崎駅まで行きました。 武蔵小杉からは倉賀野・高崎までは往復共に特別快速で乗り換え無しで2時間、普通列車グリーン車も使えるので快適です。 が、そこから先がタクシーもしくはバスとなるので、水戸芸術館よりは心理的距離が遠く感じられました。

[3859] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Tue Sep 22 19:57:17 2020

シルバーウィーク初日土曜は午前中に野暮用を済まして、午後に横浜みなとみらい へ。 10月11日まで開催中の 『ヨコハマトリエンナーレ2020 光の破片をつかまえる』。 メイン2会場は7月に観てしまいましたが [鑑賞メモ]、 残す連携プログラムを観て回りました。

ニッサンパビリオン
2020/08/01-2020/09/22, 11:00-19:00 (土日10:00-19:00).
潘 逸舟 [Ishu Han], 風間 サチコ [Sachiko Kazama], 三原 聡一郎 [Soichiro Mihara], 土屋 信子 [Nobuko Tsuchiya], 和田 永 [Ei Wada].

2013年に始まった現代アートを対象としたアワードの3年ぶり第5回です [前回の鑑賞メモ]。 Open Reel Ensemble の 和田 永 は、 最近は古い家電製品を電子楽器として再生させるプロジェクト Electronicos Fantasticos! という方向に進化していたようで、 さらにそれを国際的にネットワークするように発展させたプロジェクト “Electromagnetic Orchestra without Border” を出展していました。 ブリコラージュ的な手作り感のある見た目とアナログ的な音色の楽器が楽しめました。 銀色の波消ブロックにビデオインスタレーションを被せた 潘 逸舟 の “where are you now” もグランプリ受賞らしいスタイリッシュなインスタレーションでしたが、 少々コンセプチャルに過ぎるのか自分の関心とすれ違ったが、掴みに欠けました。

BankART Life VI - Insertion into City Life - Tadashi Kawamata
BankART Station, BankART Temporary, 馬車道構内
2020/09/11-2020/10/11, 11:00-19:00 (水休,10/8開).

『ヨコハマトリエンナーレ』のフリンジ的な国内作家のグループ展という意味合いが強かった BankART Life ですが、 今回は 川俣 正 の個展でした。 新高島駅構内の BankART Station の展示は今までのプロジェクトのマケットや資料の展示で、 旧第一銀行の建物を使った BankART Temporary とそこから直結した馬車道駅構内に新作インスタレーションが作られていました。

工事用の金属の単管とフェンスを使ったもので BankART Station に展示されていた資料からは荒々しいものを予想したのですが、 実際に見るとシルバーの色合いも落ち着いたインスタレーションとなっていました。

今回の BankART Life が個展になったのは、コロナ禍への対応もあって 作家を集めづらいという事情もあったのでしょうか。 しかし、1月に観た『心ある機械たちagain』 [鑑賞メモ] の方を持ってきた方がふさわしったのではないかと思ってしまいました。

その1月にはまだあった、シルクセンター国際貿易観光会館1階の BankART SILK ですが、 今回、BankART へ行って、この9月に終了したことを知りました。 2019年2月オープンですので [鑑賞メモ]、約1年半。 コロナ禍で拠点の整理を迫られているのでしょうが、あっけなく終わってしまいました。 むしろ SILK の方を発展させるつもりかなと思っていたのですが、 インスタレーションやパフォーマンスに余り向かない空間のようにも思いましたので、 むしろ早めの決断で良かったのかもしれません。

この2つの展覧会に加えて、さらに、『ヨコハマトリエンナーレ2020』の日本郵船歴史博物館での展示と、 『黄金町バザール2020』へも足を運びました。 既にかなり歩き疲れていたこともあると思いますが、 作品をチェックするという程度になってしまい、じっくり鑑賞するという感じにはいきませんでした。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3858] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Tue Sep 15 22:27:48 2020

自宅でストリーミングなどを観る気分になかなかなれなくなっているのですが、 それでも観たくなる作品はあります。ダンス作品のDVDの鑑賞メモを。

Arthur Pita
(Opus Arte, OA1321D, 2020, DVD)
Natalia Osipova, Jonathan Goddard
Choreographer / Director: Arthur Pita.
Music composed and performed by Frank Moon and Dave Price.
Dramaturge: Anna Rulevshaya; Design and Costume: Yann Seabra; Lighting Design: David Plater
Producer: Alexandrina Markvo.
Presented by Bird&Carrot.
Recorded live at Queen Elizabeth Hall, Southbank Centre, London on 20 June 2019.
Directed for screen by Gerald Fox.

Franz Kafka: Die Verwandlung 『変身』を グロテスクかつシュルレアリスティックなダンス作品 The Metamorphosis に仕上げた Arthur Pita が2019年に手掛けた、 Hans Christian Andersen の童話 Historien om en Moder [The Story of a Mother 『ある母の物語』 (1847) に基づくダンス作品です。 Medusa の演技も強烈な印象を残した The Royal Ballet のプリンシパル Natalia Osipova が母の役を、 死神役の Jonathan Goddard のサポートを得て 演じているという興味もあって、DVD化を機にさっそく観ました。

『ある母の物語』はある母親が幼い我が子の死を受容する過程を寓話的に描いた19世紀半ばの作品です。 このダンス作品では、20世紀前半、おそらく、第二次世界大戦 (大祖国戦争) 時代のロシアに舞台を置き換え、エンディングも変えられていました。

舞台には、回り舞台を3分して作られた3つの部屋。 原作では死神を追いかけ野や湖を行くわけですが、この作品では、 煤けたのかカビたのか黒ずみハゲかけた壁紙もわびしい近代的ながらボロボロのベッドルーム、キッチン、バスルームの3部屋を巡って物語が進みます。 音楽は、緊張感が高まる場面では打楽器のアンサンブルで強烈に、そして、ロシア民謡に基づく音楽が感傷的に。 Osipova は、家族や親類の助けもなく孤立した母親が幼な子を亡くして狂乱するかのように踊りつつ、 原作の舞台をアパート内に見立てつつ、血塗れになり、目を失い、白髪となって行きます。

目と黒髪を取り戻すまでは原作と対応していたのですが、 その後、ベッドルームへ大祖国戦争期のソ連軍服姿の Goddard が登場します。 Osipova との微妙な距離感から死神の別の姿かとも思ったのですが、やがてベットを共にします。 その後、バスルームに場面が移り、Osipova は鼓動を頼りに我が子を探しあてるものの、バスタブに映った将来を見て、子を死神に差し出します。 再びベッドルームに場面が戻ると、部屋はすっかり小綺麗になって、 臨月姿となった Osipova が買ってきたばかりのベビー服を嬉しそうなベッドに広げるなど、 幸せそう な姿を見せてエンディングとなりました。 このエンディングの意味ははっきり捉えかねてはいるのですが、 戦争が終わり、出征していた夫が戻り、生活も上向き、新たに子を授ったことで、戦時下の子の死を受容できたという結末のように感じられました。

ダンスはバレエ的な型はほとんど感じられず、演出も The Metamorphosis [鑑賞メモ] 同様、ダンス作品というより、無言劇のよう。 Osipova の身体もよく動くのですが、そのダンスとしての動きのよさというより、 我が子を失った母親の心情をダンスを通して表現するその演技力に目が留まりました。 Anastasia [鑑賞メモ] にしても、 Medusa [鑑賞メモ] にしても、 Osipova はこういう役がはまり役です。 Arthur Pita の演出もさすがですが、Osipova の演技あっての説得力が感じられた作品でした。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3857] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Sep 13 19:11:57 2020

霧雨のような雨の土曜日は、午後に渋谷へ。このアニメーション映画を観てきました。

『マロナの幻想的な物語り』
2019 / Aparte Film (Romania)/Sacrebleu Productions (France)/Minds Meet (Belgium) / colour, 1.85:1, DCP / 92min
A film by Anca Damian.
Original script by Anghel Damian after an idea of Anca Damian.
Characters design: Brecht Evens; Backgrounds: Gina Thorstensen, Sarah Mazetti
Original music: Pablo Pico.
Producers: Anca Damian, Ron Dyens, Tomas Leyers

ルーマニア出身の監督による、犬 Marona の一生を描いたアニメーション作品です。 作品や作家の背景には疎いものの、 海外、それも非英語圏のマンガ的なキャラクタデザインでは無いアニメーションということで、観てみました。 オリジナルはルーマニア語版とフランス語版が作られたようですが、日本公開に合わせて日本語吹替版も制作されていましt。 今回観たのは日本語字幕付きフランス語版です。

風刺画もしくはアウトサイダーアートを思わせる非写実的で極彩色のキャラクタや風景が 変形するように動き、ナレーションに近いセリフと共に、物語を進めていきます。 色彩や形態の自由連想で展開していく形式主義的な展開も少なくないのですが、 そんなスタイル的な実験に始終することなく、 犬の視点から必ずしも良好とは言えない飼い主との関係をナラティヴに描いていきます。 絵の動きの面白さもありますが、時に勝手な一連の飼い主たちと無償の忠実さを見せる Marona の関係がせつないアニメーション映画でした。

主人公の犬 Marona の交通事故による死の場面が冒頭にあり、 死の間際の Marona の回想としてその一生を描くというのは、少々メロドラマチックに感じられました。 特に、最初の飼い主 Manole との関係はかなりロマンチックに描かれていて、 Manole が良い仕事が得られるよう Ana (Manole が付けた Marona の名前) が自から出ていく 別れ際の独白は、犬目線というよりも、恋人の別れの言葉のよう。 次の飼い主 Istvan の車での移動中、街の風景の中に Ana を探す Manole のチラシが映ったのも、せつないです。

リアリズム的な描写では無いこともあり、Marona の独白は、時に飼い主に忠実な犬の言葉のようであり、時に勘のいい人間の女性の言葉のよう。 そんな Marona の内面描写に、表現技法がリアリズム的だったり説明的になり過ぎない距離感もあって、 一見奇抜なビジュアルながら、自然に感情移入して、せつなさを感じつつ観ることができました。 (例えば、動物ドキュメンタリ的な映像にこのセリフを被せられたら、動物に勝手に人間的な内面を投影するな、という気分になっていたのではないかと思います。)

[この鑑賞メモのパーマリンク]

2015年の公開当時にハマった映画 Mad Max: Fury Road がTV地上波でオンエアということで、晩には帰宅。 といっても、家にTVは無いので、Amazon Prime のストリーミングを同じようなタイミングで再生しつつ、 twitter のタイムラインに流れる実況ツイート、感想や解説を見て楽しむことにしました。 Mad Max: Fury Road はそういう楽しみ方に向いた映画でもありますし。 自分も感想とかツイートしても良いかと思っていたのですが、 ツイートするどころか、タイムラインを読む余裕すらありませんでした。 皆、どうして実況ツイートできるのか、と。 Amazon Prime や Netflix でいつでも観られるようになっていた映画で、 自分の都合の良い時に観ることもできるわけですが、 地上波TVオンエアというのは twitter のようなSNSに関連するツイートをして盛り上がる機会を提供するイベントという意味合いも大きいと、実感することができました。 それにしても、昼観た映画と夜観た映画のギャップが酷過ぎ。

[3856] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Sep 7 23:05:45 2020

すっかり失念していて、この週末に会期末だと気づいたのは金曜晩。 この時点で予約が取れたのは日曜だけだったので、日曜の昼にこの展覧会を観てきました。

『メルセデス・ベンツ アート・スコープ 2018-2020』
Mercedes-Benz Art Scope 2018-2020
原美術館
2020/07/23-2020/09/06 (月休). 11:00-16:00 (土日祝 11:00-17:00)
Haris Epaminonda, 久門 剛史 [Tsuyoshi Hisakado], 小泉 明郎 [Meiro Koizumi].

Mercedes-Benz Art Scope は、1991年に始まった 日独の現代美術作家を交換でレジテンス派遣するメルセデス・ベンツの文化・芸術支援活動の一つです。 2003年以来、数年おきに原美術館で報告展が開催されていますが [前回の鑑賞メモ]、 その2018-2020年版を観てきました。

最も印象に残ったのは、最も広い1階のギャラリーIIを使った 久門 剛史 『Resume』 (2020)。 壁や床に少し浮かせて伏せられた50の木製パネルの蛍光塗料の塗られた面の色が、 無骨な裏側を晒すパネルの端から反射でうっすら白壁や白タイルに漏れる様に、 ささやかで控えめな美を感じました。 自然光の展示で、窓から日が差し込んだり、雷雨で日が陰ったりで、明るさ色合いが変わるのも良かった。 奥のサンルームでは高周波の純音を使ったサウンドインスタレーションがあったのですが、 色の漏れと音の漏れを対比しているようにも感じられました。

2階奥の広めの2つのギャラリーでは、小泉 明郎 『Anti-Dream #1』 (2020)。 iPod で単調に語られるナレーションを聞いて想像することで鑑賞する彫刻作品、といったところでしょうか。 手前のギャラリーは全く素の状態のまま、 奥のギャラリーは窓を塞いで真暗とした中ですっすらとスモークを焚きムービング・ヘッド・ライト2台を並行して動かしての強い光のインスタレーションをしていました。 こういう演出のインスタレーションは結構好みではありますし、両極端に振ったのだろうとは思うのですが、 素の状態のままのギャラリーではいかにもコンセプチャルな作品という感じですし、 ムービング・ヘッド・ライトはギミックが強すぎに感じられてしまいました。 もう少しさりげない仕掛けの方が良いかもしれないと思ってしまいました。

キプロスのニコシア出身でベルリンを拠点に活動する Haris Epaninonda は 原美術館とも縁のあったという 吉村 弘 の環境音楽を使ったインスタレーション Untitled #01 b/1 (2020) と 映像作品 Japan diary 『日本日記』 (2020) という文化・芸術支援活動の趣旨に沿った日本に題材と採った作品を出展していました。 が、作品としては少々すれ違ってしまった感がありました。

1938年築のモダンな洋館を改装して1979年にオープンした原美術館も、 建物自体の老朽化のため、 次の展覧会『光―呼吸 時をすくう5人』 (2020/09/19-2021/01/11) を最後に閉館が決まっています。 雷雨が通り過ぎるのをカフェで待ちつつ、最後の展覧会は混雑するだろうし、 このカフェでのんびり過ごすことも、もしかしたらこれが最後になってしまうかもしれないな、と、 感傷に浸ってしまいました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

非常に強い台風10号の影響は関東にまで及び、この週末は通り雨というか雷雨が降りがちな天気でしたが、 原美術館で雨待ちしたものの、原美術館の往復の間はなんとか降られずに済みました。

[3855] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Sep 6 19:26:04 2020

映画館や劇場が再開して、自宅でストリーミングで舞台作品を観る気力をすっかり削がれていたのですが、 気になる美術展の予約を取りそこねたこともあり、この土曜は久々にストリーミングを観ました。

Roundhouse, London
Recording: 2016.
Director / Choreographer / Performer: Akram Khan
Narrative Concept / Scenario / Text: Karthika Naïr; Visual Design: Tim Yip; Lighting Design: Michael Hulls
This production is a partial adaptation of Until the Lions: Echoes from the Mahabharata, a retelling in verse of the Mahabharata by Karthika Naïr (HarperCollins India, 2015 & Arc Publications UK, 2016).
Original Music Score composed by Vincenzo Lamagna in collaboration with Sohini Alam, David Azurza, Yaron Engler, Akram Khan, Joy Alpuerto Ritter;
Dramaturg: Ruth Little; Assistant Director: Sasha Milavic Davies; Assistant Choreographer: Jose Agudo; Voice-over: Kathryn Hunter
Dancers: Akram Khan, Ching-Ying Chien, Joy Alpuerto Ritter; Musicians: Sohini Alam, David Azurza, Yaron Engler, Vincenzo Lamagna
World Première: 12 January 2016, Roundhouse, London
Co-presented by Roundhouse & Sadler's Wells; Producer: Farooq Chaudhry
YouTube URL: https://www.youtube.com/watch?v=zbnKyMRmrTA

ロンドンを拠点に活動するバングラディシュ系イギリス人の振付家 Akram Khan の2016年の作品が Roundhouse の YouTube チャンネルで期間限定 (2020/8/28-9/10) で公開されたものを観ました。 インドの神話叙事詩 Mahabharata『マハーバーラタ』に登場する女神の一人 Amba の物語で、 物語のコンセプトや美術などのクリエイティブの制作陣が DESH [鑑賞メモ] と同じなので、 ナラティブなダンス作品かと予想していたのですが、かなり抽象化された作品でした。 Akram Khan 振付の『マハーバーラタ』の女神 Amba の物語という予備知識が無かったら、 特にインド的なものを意識しなかったかもしれません。

Amba の物語がどういう話か知らずに臨んだこともあり、 はじめの20〜30分くらいは掴みどころなく、取り残された感もありました。 中盤、Amba と思われる女 (Ching-Ying Chien) の愛を男 (Akram Khan) が拒むようなダンス以降、 やっと物語に入ることができました。 それ以降の後半は、男に愛を拒まれた女が、男に復讐を遂げる物語のよう。

周囲を客席で囲んだひび割れた大きな切り株のような円形舞台で、 時々、割れて盛り上がるように動きがありましたが、ダイナミックな仕掛けは無し。 小道具も生首のように扱われる象徴的に扱われる頭像や20本程度の細い竿のみで、 衣装も色彩や装飾を抑えたミニマリスティックなもの。 ミニマリスティックに象徴的に男女関係を描くような舞台でした。 音楽も、タブラなどはいかにもインド風を思わせる楽器は使わず、 むしろ強い地域性の感じられない地中海風の音楽にすら聞こえました。

最初の竿を使った動きの後しばらく、前半はカタック的な動きも目に付きましたが、後半はその色も抑え羅れました。 中盤の男 (Akram Khan) の拒絶と葛藤を表現するかのような力強い踊りも良かったですが、 それに対する女 (Ching-Ying Chien) のダンスのラストの復讐への流れの演技に引きこまれました。 ラストの復讐の場面の竿を使って殺陣のような動きも、物に着想する動きで気に入りました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3854] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp..>
- 小杉町, 川崎市, Wed Sep 2 0:18:29 2020

猛暑続きで夏バテが酷く先の週末は大人しめに過ごしていたのですが、日曜の晩に久々に渋谷へ。 今年初めて、ライブを観てきました。

道場 [Dōjō]
公園通りクラシックス
2020/08/30, 19:30-21:30.
道場 [Dōjō]: 八木 美知依 [Michiyo Yagi] (electric 21-string koto, 17-string bass koto, electronics), 本田 珠也 [Tamaya Honda] (drums); ゲスト: 近藤 直司 [Naoji Kondo] (tenor saxophone).

新型コロナウイルス感染症の流行もあって今年は一度もライブへ行っていなかったのですが、 そろそろ観たい気分になってきたので、 エレクトリックな箏を操る 八木 美知依 とドラムス 本田 珠也 のデュオ 道場 を観てきました。

休憩を挟んで前半、後半、アンコール無しの約2時間。 前半2曲では、八木は主にベース17弦箏。 手数多くて音圧高い演奏ですが、ドローンのように低音を響かせつつ、ドラムと弦の刻まれる音が強弱脈動するよう。 久々に聴いて耳の分解能が低かったか、低音の塊が投げつけられてくるように感じました。

後半の1曲目は21弦箏を弾いて、まずは間合いを感じる展開から。 次第にプリペアドやエフェクトで箏しからぬメタリックな音に。 ドラムスもシンバルを多用して、ポリリズミックに、ガムランを少し連想しました。 後半2曲目は、ゲストに 大変なユニット の 近藤 直司 [Naoji Kondo] の tenor sax。 出だしこそファズの効いた21弦箏でスカッと低音抜けた間合いのある展開かなと思わせつつ、 アットいうまに低音の塊のよう、前半のような脈動はなく、フラットに音圧をかけてくるように感じました。

新型コロナウイルス感染症流行以前からだいぶ足が遠のいたこともあり、 ライブ/コンサートを生で聴くの去年11月以来ぶりと、久しぶりになってしまいました。 かなり行きづらい状況になってしまっていますが、やっぱり、ライブは良いなあ、と、感慨深いものが。 この手のライブは、会場がライブハウスと言っても、三密の心配がほぼ無いので、比較的安心して観に行かれます。 少しは足を運びたいものです。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3853] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Aug 23 19:43:23 2020

この週末も土曜は猛暑。そんな午後に恵比寿へ展覧会を観てきました。

exonimo: UN-DEAD-LINK
東京都写真美術館 地下1階展示室
2020/08/18-2020/10/11 (月休;月祝開,翌平休), 10:00-18:00

インターネットの一般普及最初期の1996年に結成された 千房 けん輔 と 赤岩 やえ によるメディアアートのユニット エキソニモの四半世紀の活動を辿る個展です。 NTT ICC での展覧会などでその作品を観たことはありますが、個展でまとめて観るのははじめてです。 パーソナルコンピュータ (PC) やインターネットを使って動きのある、時にインタラクティヴな作品を多く手掛けてきているユニットです。 インターネット上の情報を使った社会的なテーマを持ったインスタレーション作品を見ると、 こんな作品ではなく素直に統計や可視化の技術を使ったインフォグラフィックスでのプレゼンテーションに取り組んだ方がいいのではないか、と思うことが少なくありません。 最近の “The Kiss” (2019) や “UN-DEAD-LINK 2020” (2020) のような作品には感傷も少々感じてしましたが、 エキソニモの作品は、インターネット上の情報というよりもむしろノイズ成分に着目し、 それを表現へ落とし込む際の扱いにも若干の破壊衝動含みの醒めたユーモアあり、 そこにインフォグラフィックスなどでは掬えない表現を感じることができました。

Twilight Daylight - Contemporary Japanese Photography vol. 17
東京都写真美術館 2階展示室
2020/07/28-09/22 (月休;月祝開,翌平休) 10:00-18:00.
岩根 愛 [Iwane Ai], 赤鹿 麻耶 [Akashika Maya], 菱田 雄介 [Hishida Yusuke], 原 久路 & 林ナツミ [Hara Hisaji & Hayashi Natsumi], 鈴木 麻弓 [Suzuki Mayumi]

例年正月を挟む会期で開催されている新進作家に焦点を当てるアニュアルのグループ展ですが、今回は約半年繰り上げしての開催です。 中で気になった作品について個別にコメント。

飛び上がった瞬間を浮遊するかのようにとらえた『本日の浮遊』シリーズ (2011-) で知られる 原 久路 & 林ナツミ は2014年に別府を拠点を移してから制作しているという少女たちを被写体とした演出写真のシリーズ。 被写体となっている少女たちのアイデアを生かしているとのことで、少女の類型的なイメージを覆すといった方向性はないけれども、 明るい色合いの画面でいきいきとした瞬間を魅力的に捉えています。 『本日の浮遊』シリーズも、単に浮き上がっているような瞬間の面白さだけでなく、その画面の色合いも魅力だったのかもしれない、と、気付いたりもしました。

岩根 愛はハワイ日系移民と福島県の関係をテーマとした作品の予定が、 新型コロナウイルスの緊急事態宣言下で人に見られることがなくなった東北の桜の作品がメインとなっていました。 入口側から見て夜の闇の中人気がなくライトアップで浮かび上がる桜も美しいのですが、 振り返って見るとその裏側にブレて不明瞭ながら祭の衣装などを着た人影が映り込んでいるというのが、幻想的に感じられました。

今回観た2つの展覧会の両方で、HDTVのディスプレイを縦長に使ったアスペクト比9:16の動画が使われていました。 スマートフォン普及の影響として以前から薄々気付いていましたが、 異なる2つの展覧会で続けて見て、美術の文脈でも9:16の縦長画面が動画の標準的なアスペクト比の一つになったと実感しました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

武蔵小杉からは東京都写真美術館へは、大抵、目黒駅から歩いて行くのですが、 この猛暑では目黒駅から美術館までの路上で暑さにやられそう。 ということで、今回は熱中症予防のため、中目黒乗り換え恵比寿駅経由にしたのでした。

8月に入ってから続いていた連日最高気温35℃前後の猛暑も、 この土曜晩から日曜午前にかけての雨でひと段落。 日曜は真夏日にならず、午後は久々にゆっくりおさんぽすることができました。 やっとひと息つけました。

[3852] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Aug 16 19:27:17 2020

この週末は災害級の猛暑で外出も躊躇われましたが、駅直結の美術館なら、と、土曜の昼にこの展覧会を観てきました。

国立新美術館 企画展示室2E
2020/06/24-2020/08/24 (火休). 10:00-18:00.
仙厓 × 菅 木志雄, 花鳥画 × 川内 倫子, 円空 × 棚田 康司, 刀剣 × 鴻池 朋子, 仏像 × 田根 剛, 北斎 × しりあがり 寿, 乾山 × 皆川 明, 蕭白 × 横尾 忠則.

日本の現代のアート作品を「古典」の美術品と組み合わせて展示するグループ展です。 と言っても、日本の美術における「古典」とは何なのか、ここに並んでいる古美術品が「古典」であると主張したいのか、 単に「古の」くらいの意味で「古典」と言っているのか、釈然としない企画です。 時代的な文脈の異なるものの並置の妙を感じたわけではなく、 むしろ、現代アートの作品のコンセプト資料として「古典」が展示されていると感じるものもありました。 しかし、そういった企画の意図に関する引っ掛かりとは別に、興味深く観られた作品はありました。

菅 木志雄 『縁空』 (2020) は、十数センチ大の石を一辺数メートルの正方形の枠状 (数カ所に枠内外の切れ目あり) に床に並べた作品です。 その枠の頭上にロープで吊るした3個の石を不規則に配することで、単なる床の結界ではなく、立体的な空間の広がりを饒舌ではなくさりげなく表現していました。 このようなミニマリズムはとても好みです。

田根 剛 『光りと祈り』 (2020) は、 西明寺 (滋賀県, 天台宗) に伝わる金箔張りの鎌倉時代の仏像1対、日光菩薩、月光菩薩を使ったインスタレーション作品です。 壁を黒塗りとし部屋照明を落とした真っ暗なギャラリーを使い、 ガラスケースにいれられた二体の仏像の周囲で、 上方への光を遮断する傘付きのペンダントライトを上下させると、 仏像の周りで闇の帳を上下させているよう。 鈍く光る仏像も、そんな光の演出を際立たせていました。 舞台作品の照明演出とかにも使えそう、と思ってしまいました。 (どこかで観たことがあるような気もしましたが。)

[この鑑賞メモのパーマリンク]

国立新美術館の展覧会は事前予約制でしたが、予約なしでもすぐに入れる程、空いていました。 ということで、予約していなかった『MANGA都市TOKYO』も観てきました。 2008年に La Villette, Paris で開催された展覧会 Manga ↔ Tokyo の帰国展です。 スコープはマンガだけでなく、アニメ、ゲーム、特撮までと広め。 これも、メディアミックス展開されることが多いジャンルということの反映でしょうか。 表現技法などに焦点が当たった方が自分にはとっつきやすかったかな、と。 流石に1/1,000都市模型は迫力ありましたが、 疎い分野なので、「そういうのもあるのか……。」と心の中でつぶやきつつ、という感じになってしまいました。

[3851] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Aug 10 20:46:52 2020

この週末は土曜の午後に、高輪台と東京駅へ。戦間期モダンをテーマに2つの展覧会をハシゴしてきました。

Looking at Architecture in 2020: The 1930s——Urban Life in Modern Tokyo: The Tokyo Metropolitan Collection at the Former Prince Asaka Residence
東京都庭園美術館
2020/06/01-09/27 (第2, 第4水曜日), 10:00-18:00.

「建築をみる」は、2016年のリニューアル以降、度々開催されていた 東京都庭園美術館本館となっているアール・デコ様式の旧朝香宮邸自体を見せる企画がシリーズ化されたものです。 東京都庭園美術館は何度となく足を運んでいますし、本館自体を見せる企画も何回か観たことがありますが、 今回は併催の新館の展覧会がコレクション展の上、新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあって、観客が少なめ。 マイペースに細部の意匠を堪能できました。 ふと気になってた暖房用のラジエータグリルのデザイン着目して見て、 典型的なアール・デコではなく和の意匠や私的なデザインが少なからずあることに気付いたり、 普段できなかった見方ができて、新鮮に楽しめました。

新館の展覧会は、旧朝香宮邸竣工 (1929) 直後1930年代東京のモダン文化をテーマにしたコレクション展です。 流石に新鮮に楽しめたという程ではありませんでしたが、 大好きな 藤牧 義夫 『隅田川両岸画巻』 (1934) [関連する鑑賞メモ] も見られましたし、 本館と合わせて、戦間期モダンの雰囲気を堪能できました。

100th anniversary of the founding of bauhaus: come to bauhaus —the basis of education in art and design—
東京ステーションギャラリー
2020/07/17-09/06 (月休; 8/10,8/31開), 10:00-18:00.

戦間期のドイツでモダニズムを牽引した造形学校 Bauhaus の創立100周年の一連のイベントの一つとして開催された展覧会です。 (他に映画祭 [鑑賞メモ] も開催されています。) タイトルからもわかるように、 アウトプットとしてのマイスターやそこで学んだデザイナーが手がけた製品のデザインというより、 造形学校としての教育の体制やカリキュラムに焦点を当てた展覧会です。 こんなこと/ものもあったのかという気付きがあった程ではなく、若干地味に感じてしまいましたが、 Bauhaus に関する包括的な展覧会を観たのも 『バウハウス・デッサウ』 (東京藝術大学大学美術館, 2008) [鑑賞メモ] から十余年ぶりなので、 久々に戦間期モダニズムのシャープさを堪能できました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

日曜も何か舞台でも観に行っても良いかと思っていたのですが、 評判の良い舞台は、直前に思い立っても、チケット完売で致し方ありません。 というわけで、買物に川崎に出たついでにスタジオジブリのリバイバル上映で『もののけ姫』 (1997) を観ました。

結局、『未来少年コナン』 (日本アニメーション, 1978) を Amazon Prime Video で久々に観たことを契機に、 Prime Video のレンタルやdアニメで『アルプスの少女ハイジ』 (瑞鷹, 1974)、『母をたずねて三千里』 (日本アニメーション, 1976)、『ルパン三世 カリオストロの城』 (東京ムービー新社, 1979) を、 そしてリバイバル上映で『風の谷のナウシカ』 (トップクラフト, 1984)、『もののけ姫』 (スタジオジブリ, 1997)、『ゲド戦記』 (スタジオジブリ, 2006) と、観てしまいました。 今まで観たことがあったスタジオジブリのアニメは約20年前にDVDで観た『天空の城ラピュタ』だけだったのですが、 今回のリバイバル上映で3本観て、『風の谷のナウシカ』、『もののけ姫』にも『未来少年コナン』での物語の枠組みやキャラクタ、象徴的な場面などが引き継がれていたのだなあ、と。

『母をたずねて三千里』を観直した時もそうでしたが、 この歳になって『アルプスの少女ハイジ』を観ると、子供向けの主人公よりも、その周囲の大人の登場人物の目線で作品を観がちで、 受ける印象もかなり違って、かなり新鮮でした。 約2時間で一気に話を完結させてしまう長編映画と違い、TVシリーズ物ならではのゆっくり丁寧な人物や社会の描写も味わい深く、 今の自分には、再映で観たスタジオジブリの映画より、『アルプスの少女ハイジ』や『母をたずねて三千里』の方が楽しめました。

自分は、クレイやパペット、ドローイング等を使ったいわゆるアート・アニメーション等を観ることはあれど、一般的なマンガ、アニメをあまり触れてきていません。 そのため、観てもその世界に入れない、というか、それらリテラシーが低くて読みこなせないことが多かったりします。 スタジオジブリのアニメーションでもそんな感じになるかもしれないと思っていたのですが、さほどでも無かったのは、 もちろん一般向けの映画としてよく出来ていたということもあると思いますが、 子供の頃に『アルプスの少女ハイジ』、『母をたずねて三千里』や『未来少年コナン』を本放送、再放送で繰り返し観ていて、その表現技法に馴染みがあったからかもしれません。 例えばちょうど今映画館の予告編てかかっている『鬼滅の刃』のアニメーション表現に比べて人物の描線がシンプル、 特にキャラクタの顔の描線がミニマリスティックと感じるほどという所が、 自分にはとりつきやすく感じられます。

[3850] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Aug 9 22:31:06 2020

先週末の話ですが、土曜の午後は池袋へ。この舞台の上映を観てきました。

『橋からの眺め』
Wyndam's Theatre, 2015-03-26.
by Arthur Miller
Director: Ivo van Hove.
A Young Vic production.
Design and Light: Jan Versweyveld; Costumes: An D’Huys; Sound: Tom Gibbons; Dramaturg: Bart van den Eynde.
Cast: Mark Strong (Eddie), Phoebe Fox (Catherine), Nicola Walker (Beatrice), Emun Elliott (Marco), Luke Norris (Rodolfo), Michael Gould (Alfieri), Richard Hansell (Louis), etc.
First Performance: 10 February 2015, Wyndam's Theatre.
上映: シネ・リーブル池袋, 2020-08-01 12:50-15:15.

National Theatre Live のアンコール上映で 2015年の Ivo van Hove 演出作品がかかったので、観てきました。 ブルックリンのシチリア系移民街を舞台とした悲劇的な戯曲 Arthur Miller: A View from the Bridge (1955) の上演です。 港湾労働者 Eddie とその妻 Beatrixe は両親を亡くした姪 Catherine を娘のように育ててきたが、 Catherine がタイピストとして就職し、Beatrice の従兄 Marco と Rodolfo が不法移民として家に転がり込むことで生活が一変。 やがて、Catherine と Rodolfo が恋に落ち結婚を言い出し、 Catherine に執着する Eddie が移民局へ密告することで、悲劇的な結末を迎えるという物語です。

Ivo van Hove 演出作品は、All About Eve [鑑賞メモ] などいくつか観ていますが、 Hedda Gabler の印象が特に強く残っていて [鑑賞メモ]、 現代美術のインスタレーションのような象徴的な演出を期待したところもあリました。 しかし、ラストの血の雨のシーンこそ流石と思いましたが、それ以外はむしろミニマリスティック。 四方に腰掛けられる程度の高さのベンチ状の天板のついたガラス枠のある正方形の舞台で、 正面左右に客席を設け、舞台奥は黒壁で中央に人一人が出入できる口が空いていました。 Eddie の力が試される場面で椅子を使ったりしますが、家具のような道具もほとんど使われない、 俳優の演技だけで見せるような演出でした。

そんな演出は期待とは異なったのですが、つまらなかったことはなく、 特に Eddie 役の Mark Strong 圧の高い演技にぐいぐいと引き込まれました。 気まずい会話の場面での絶妙な間合いと、それを視覚化するかのような舞台四辺を活用した距離感、 間合いを埋めるかのように控えめに短調に鳴らされるボンゴ風の乾いたパーカッションの音も、緊張感を高めていました。 マッチョなDV男、「毒親」という面を現代的に風刺するように描くことも可能な物語ですが、 ミニマリスティックで抽象的な演出はそんな具体的な文脈を捨象して、 Eddie の Catherine への愛というか束縛的な執着の暴走を、むき出しで観客へ突きつけてくるようにも感じられました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

今まで劇場や大道芸の会場で顔を合わしていた twitter 上の友人と、珍しく映画館で遭遇。 しかし、新型コロナウイルス感染対策もあって、遭っても談笑するようなことはなく会釈程度です。 次は、劇場か大道芸の会場で遭遇したいものです。 さらに、ほとんど寄り道もせずに自宅と映画館を往復だけ、とあって、味気ありません。 と言っても、自宅PCでストリーミングやDVDを観ることと比べたら、と考えると、まだマシか、と(諦)。

[3849] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Aug 2 19:10:41 2020

一週間以上前になってしまいましたが、4連休2日目の7月24日は午後に初台へ。5ヶ月ぶりの生舞台を観てきました。

新国立劇場 オペラパレス
2020/07/24, 13:00-15:00.
演出・振付・美術・衣装デザイン: 森山 開次
作曲・音楽製作: 松本 淳一; 照明: 櫛田 晃代; 映像: ムーチョ村松; 音響: 仲田 竜太; 振付補佐: 湯川 麻美子, 貝川 鐵也.
出演: 米沢 唯 (プリンセス 亀の姫), 井澤 駿 (浦島太郎), 貝川 鐵也 (時の案内人), 寺田 亜沙子 (タイ女将), 五月女 遥 (織姫, 他), 福田 圭吾 (彦星, 他), 本島 美和 (竜田姫), 他
制作: 新国立劇場
世界初演: 2020-07-24, 新国立劇場 オペラパレス.

去年の小劇場 THE PIT での新作ダンス公演『NINJA』も楽しかった [鑑賞メモ] 森山 開次 が ついにオペラパレスでの新作バレエに挑戦するということで、公演初日に、早速観てきました。

御伽草子「浦島太郎」をモチーフとした作品ですが、 物語の主題を掘り下げるというより、その枠組みを構成に活用するよう。 浦島太郎の助けた亀自体を「亀の姫」として設定し直し、 他の童話/寓話 (羽衣伝説、「鶴の恩返し」、ギリシャ起源で近世に日本の昔話となった伊曾保物語「兎と亀」、中国道教由来の七夕伝説、など) や 能の曲目 (「龍田」、「翁」、「鶴亀」) から着想した場面も折り込み、2幕約2時間の作品として仕上げていました。 この作品では基本的にバレーの身体表現を使い、全体的な構成としても比較的オーソドックスと感じられるバレエ作品でした。 親子で楽しめる作品という位置付けで、大人からすると少々説明的に感じる所もあったかと思いますが、十分に楽しめる作品でした。

新体操やサーカスの身体表現も取り込みキッチュでユーモラスな所も親しみやすいダンス作品という印象もあった 森山 開次 ですが、 その面が抑えられてしまっていた感があったのは、少々物足りなく感じました。 しかし、少人数でのダンス作品では見られなかった群舞などもあり、それまでに無いゴージャスな表現が楽しめました。 『NINJA』では物語というより、映像や照明、衣装、音楽の作りだす世界観で様々な場面を緩くまとめていた感があったのですが、 バレエの構成の枠組を援用することでまとまりが良くなったように感じました。 特に第一幕は Щелкунчик [The Nutcracker]『くるみ割り人形』の男女を入れ替えたよう。 Clara が The Nutcracker (実は王子様) を助けるように、浦島太郎が亀 (実はお姫様) を助け、 お礼にお城に連れられ、歓迎の宴でユーモラスなディヴェルティスマンという構成でした。

第2幕の前半の四季を描く「季の庭」の場面もディヴェルティスマンとも言えるかもしれませんが、 余興的なものではなく、四季の美しさだけでなくその「移ろい」というこの作品の主題でもある「時間」も描いており、 視覚的な美しさといい構成の妙といい、この映画の中で最も良いと感じた場面でした。 玉手箱を開けた浦島太郎が老いて終わるというエンディングではバレエ作品的には地味になりそう、と思っていた所、 そこから、老人ではなく翁になって、さらに鶴 (浦島太郎) 亀 (亀の姫) で長寿を寿ぐ大団円。 若干強引に感じましたが、エンディングでの盛り上がりの余韻も楽しめました。

『NINJA』で観たフロアへの映像プロジェクションマッピングとダンサーの絡みが見事だったのですが、今回もそれが堪能できました。 フロアのプロジェクションマッピングを観たくて2階席を取ったのですが、その甲斐がありました。 群舞と映像の絡みでの波の表現、フロアを広くとって「季の庭」での四季を表す映像など、見応えありました。

十分に楽しんで観たのですが、やっぱり『NINJA』のような軽妙洒脱な作品を観たい、 なんて思っていたら、会場配布のフライヤーの中に 『星の王子さま』 (KAAT神奈川芸術劇場, 2020年11月) を見つけました。 クリエイティヴ・スタッフも出演も良さげで、これは大変に楽しみです。

2月28日に新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため主催公演等中止した後、 やっと再開に漕ぎ着けての新作公演。 自分も劇場に足を運んだのは2月29日から約5ヶ月ぶり。 まだまだ気の抜けない、むしろ再び悪化しそうな状況で、 客席も厳重対策下でしたが、 こうしてまた劇場で上演を観れたという感慨で、カーテンコール中、ちょっと目頭が熱くなりました。 自分も感染対策の大きな制約の中で仕事を進めることに苦労しているだけに、この状況下で新作のクリエーションは大変だったろうと。 しかし、結局、新国立劇場に勤務する業務委託者に新型コロナウイルス感染者が出てしまい、 千秋楽を迎えることができませんでした。 新国立劇場のバレエ公演の規模となると関わる人も多く、 もやは、そのうち一人が感染する確率は無視できないほど大きくなっている感染拡大状況で、 観客だけでなく出演者、スタッフも守りながら公演をすることは多難だと、思い知らされました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

初台へ行ったので、 東京オペラシティ アートギャラリーで開催中の展覧会 『ドレス・コード?─着る人たちのゲーム─』を観てきました。 デザイナの作家性に焦点を当てたり、ハイファッション中心にデザインの変遷を歴史的に辿るものではなく、 カジュアルなものを含め社会の文脈の中でのファッションを描くような展覧会です。 「裸で外を歩いてはいけない?」「高貴なふるまいをしなければならない?」等の 観客に問いかけるような12のテーマが設定され、それにそった展示となっていました。 それぞれのテーマは意義はわかるのですが、テーマ1つだけで展覧会を設定できそうな物もあり、 結局としてテーマ毎の掘り下げが浅く感じられてしまいました。 これから学ぼうという人に広く問題意識を持たせるという意味では良いかもしれません。

4連休前半に展覧会やら公園やら出歩いて在宅勤務で鈍った体が悲鳴を上げていましたし、 新型コロナウイルス感染拡大状況も洒落にならなくなってきたので、後半の土日は自宅周辺を散策する程度、 ゆっくり休養したのでした。

[3848] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Jul 26 23:24:32 2020

COVID-19感染も首都圏だけでなく全国的に拡大し、 自分の行くような美術展や公演は「密」になりづらいとはいえ、リスクの高まりは否定できません。 しかし、現在の政府の対応を見ていると、感染拡大に対する対策はすぐには期待できず、 少なくとも8月末くらいまでリスクは増大する一方になりそうな見通しです。 様子見していてもリスクが小さくなることが期待できないなら、さっさと行ってしまった方がリスクが小さい、 ということで、4連休初日23日は午前中から横浜みなとみらいへ。 この大規模国際美術展を観てきました。

横浜美術館 / プロット48 他
2020/07/17-2020/10/11 (休場日: 木曜日; 除 7/23, 8/13, 10/8), 10:00-18:00 (10/2,3,8,9,10 10:00-21:00).
Artistic Director: Raqs Media Collective

COVID-19パンデミックで大規模な国際美術展の開催が困難な状況となっていますが、 そんな中で、今年で7回目となるヨコハマトリエンナーレが開催されています。 第1回から毎回足を運んでいますし [前回の鑑賞メモ]、 状況が好転する兆しが無い中、早く行ってしまった方がリスクが小さいだろうと、早速観てきました。 1日は午前にプロット48、午後に横浜美術館の2会場が精一杯で、日本郵船歴史博物館まで足を伸ばす余裕はありませんでした。

いわゆる絵画や彫刻のような平面や立体の作品ではなくインスタレーションが展示の中心となりがちな 国際現代美術展ですが、映像作品や映像投影とインスタレーションを組み合わせた作品など映像を使った作品が多くなっていました。 あと、欧州や北米を出身とする有名なアーティストはほとんど目に付かず、アジアやアフリカのアーティストの作品が多くありました。 これにはCOVID-19パンデミックによる開催上の制約の影響もあるかもしれませんが、 インド・ニューデリーを拠点をした Raqs Media Collective の指向でしょうか。 自分の興味とすれ違ったか全体として強く印象を残すことはありませんでしたが、 初めて観る、もしくは、今まで意識して観たことが無かった作家がほとんどということもあり、 興味深く観ることができました。 以下では、印象に残った作家・作品へ個別に軽くコメント。

メイン会場の横浜美術館ファサードを覆うのは、ベルリンを拠点とする Ivana Franke のインスタレーション。 と言っても、包むインスタレーションではなく、この布を透過する光を感じるインスタレーションでしょうか。 美術館のホワイエを飾る大型インスタレーションは、 庭飾りであるウィンド・スピナーを足場を組んで大規模にぶら下げた Nick Cave のインスタレーション “Kinetic Spinner Forest”。 どちらも物量でのインパクトが強い作品ですが、観客を迎えるにはこのくらいが良いでしょうか。

横浜美術館会場で印象に残ったのは、アニメーション作品とその制作に用いたパペット等の装置を 合わせて展示した2作品。 一つは、南アフリカの作家 Lebohang Kganye の “Reconstruction Of A Family” (2016)。 飛び出す絵本のような立体的なフォトコラージュを作り、それを繰りつつアニメーションの動きも加えて動画化した作品です。 William Kentridge [鑑賞メモ] を連想させられるところもありますが、 ドローイングではなく写真を使っているせいか、不条理よりも感傷を感じる作風でした。 合わせて、インスタレーション作品で使うような写真を実寸大で立て看板状にしたものを倉庫のように並べていましたが、それは映像投影空間の雰囲気作り以上のものはかんじられませんでした。

2019年に閉店した横浜美術館付きのレストランの跡の空間を使って展示していたのは、 張 徐展 [Zhang Xu Zhan (Mores Zhan)] の “Animal Story AT58” (2019)。 中国南部から東南アジアにかけてありそうな打楽器メインの音楽を演奏する小さな動物たちのアンサンブルの短編パペットアニメーションがレストラン客席で上映され、 その撮影に使った動物パペットとジオラマが厨房を使って展示されていました。 人形は特に可愛さを狙った造形ではありませんが、その細かい動きもあって、思わず可愛いと思って良しまう物がありました。

横浜美術館では完全予約制の作品が2つ。どちらも体験してきました。 その一つ、ドバイを拠点に活動する Lantien Xie の作品は、 介護・リハビリ用の歩行アシスト機器 (装着型ロボット) を付けて、 約1時間、横浜美術館の展示室内を歩き回るというもの。 脚腰に疲れが溜まった夕方に体験したのでいいアシストになった、という程ではなく、 機器が力をアシストするタイミングと自分の動きを同調させることはかなり難しいと実感。 20分もすると歩くのには慣れて歩かされている感も楽しめたのですが、 椅子に座ったり立ち上がったりする動きは最後までうまくいきませんでした。 そして、1時間後に外すと脚腰の感覚がすっかり狂っていました。 芸術作品として面白かった、コンセプト的に興味深いものがあったかはさておき、 歩行アシスト機器を1時間も使うというなかなか無い体験が楽しめたでしょうか。

プロット49会場の展示で最も印象に残ったのは、完全予約制の 飯川 雄大 [Takahiro Iikawa] の “This wall”。 壁が動く、ということより、部屋数室レベルの立体パズルを解きながら作品を鑑賞するような所が面白く感じました。

ナイジェリア出身でロンドン拠点に活動する作家 Rahima Gambo“Tatsuniya” (2017) は、ナイジェリア北部の少女たちの学園生活に題材を採った 写真とビデオ上映を組み合わせたインスタレーション作品。 イスラム系らしくベールをかぶったピンクの制服姿の女子生徒たちの遊ぶ姿も愛らしい様子が描かれています。 しかし、作品中でははっきりとした言及が無いのですが、このような学校が「西洋式」とイスラーム過激派 Boko Haram の襲撃の対象となり休学を余儀なくされ、 それが止みやっと復学した後の女子生徒の様子だったりするという、そんな仕掛けのある作品です。

バングラディシュ出身の映像・美術作家 Naeem Mohaiemen の約1時間の映像作品 “Jole Dobe Na [Those Who Do Not Drown]” (2020) は、 インド・西ベンガル州のコルカタにある使われなくなった空の病院で撮られた作品です。 1時間通してみたわけではなく、明確なストーリーが感じられる作りでも無く、意図を掴みかねるところもありましたが、 夫婦と思しき男女が病院の中を曰くありげに巡っていく様から、医療・ケアをめぐる作家の想いが静かに描かれているようにも感じられる映像でした。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

万全かどうかは素人判断しかねますが、混雑を避けるためメイン会場の横浜美術館の入場チケットは日時を30分単位で指定するもの、 入口での検温消毒、会場内でのマスク着用、VRゴーグルやヘッドセットの消毒等、かなりに対策に気を配っていました。 といっても、会期末でも無い限りそんなに混雑するようなイベントではないので、 メイン会場の日時指定や、個別体験型作品の予約も、取りづらいほどの競争はまだ発生していなさそう。 実際に会場へ行っても、連休中の混雑したショッピングモールや賑やかな飲食店に比べたら相対的にリスクは低そう、とさほど周囲を気にせず鑑賞できました。

[3847] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Jul 19 23:38:43 2020

自分が観に行くようなものは混雑しないとはいえ、 COVID-19 パンデミックの東京で状況も「接待飲食店」から市中感染へ移行してしまった感もあって 都内へ出かけること自体が躊躇されます。 が、やはり観ておきたかったので、池袋とんぼ帰りでこれを観てきました。

『夏の夜の夢』
Bridge Theatre, London, October 2019.
a Bridge Theatre production.
Writer: William Shakespeare; Director: Nicholas Hytner; Production Design: Bunny Christie; Costume Design: Christina Cunningham; Lighting Design: Bruno Poet; Sound Design: Paul Arditti; Composer: Grant Olding; Movement Director: Arlene Phillips; Associate Movement Director: James Cousins; Wigs, SFX, Hair & Make-up: Susanna Peretz; Fight Director: Kate Waters.
Cast: Gwendoline Christie (Titania / Hippolyta), Oliver Chris (Oberon / Theseus), David Moorst (Puck / Philostrate), Kevin McMonagle (Egeus, father of Hermia), Isis Hainsworth (Hermia), Kit Young (Lysander), Paul Adeyefa (Demetrius), Tessa Bonham Jones (Helena); Hammed Animashaum (Bottom), Jermaine Freeman (Flute), Francis Lovehall (Starveling), Felicity Montagu (Quince), Ami Metcalf (Snout), Jamie-Rose Monk (Snug), etc.
First Performance: 11 June 2019, Bridge Theatre, London.
上映: シネ・リーブル池袋, 2020-07-18 12:25-15:45 JST.

演出家 Nicholas Hytner が自身の拠点とする Bridge Theater で制作する イマーシヴシアター (没入型演劇、体験型演劇) が National Theatre Live でかかったので、 このような形式の上演を上映するとどうなるのか、という興味もあって観てみて観ました。 エアリアルのパフォーマーも参加しており、このようなサーカス技をどう活かしているのか、という興味もありました。

「イマーシヴ」とは銘打たないものの、舞台と客席の関係を取り払い観客と演者の間にインタラクションがある演出は コンテンポラリー・ダンス作品やサーカスや大道芸やそれらに隣接するパフォーマンスでは少なくなく、それなりに体験してきています。 (今年観たものに限っても、長井 望美 × 目黒 陽介『人の形、物を語る。』[鑑賞メモ] や Sue Healey: ON VIEW: Panorama の前半 [鑑賞メモ] がイマーシヴな演出でした。) この A Midsummer Night's Dream はそれらに比べて観客も多く大掛かり。 ピットの観客と同じレベルではなく、背丈程度の高さの可動式のステージの上や、時には空に吊り下げられる輿状のベッドなどの上で、ほとんどの場面を演じていました。 今まで自分が観たことのある中では、 Fuerza Bruta [鑑賞メモ] から エンタテインメント色を薄めて演劇に寄せたよう。

観客からのツッコミに応じる場面も1回程度、客弄りも客のスマートフォンを取り上げて遊んだり自撮りしたりという大道芸でもお約束のようなものだけ。 Rude Mechanicals の素人芝居に観客をステージに上げて一緒に演じさせたりできるかも、と思っていましたが、そんなことはしませんでした。 上映の映像も、ピット客目線の映像も全く無かった訳では無いですが、カメラワークはギャラリー席レベルからがほとんどで、特にピットの臨場感を強調せず。 そんな映像作りもあって、イマーシヴというより、囲むように観客席をおいたステージを観ているようでした。

エアリアルのパフォーマーたちは妖精たち (除くPuck) の役を割り当てられていて、 ループ状のシルクを使ったエアリアルだけでなく、ベッドの天蓋枠を使って、ポールダンスもしたり。 Puck は俳優 (David Moorst) が演じていましたが、 ループ状のシルクでクルクルと前転したりと、かなりアクロバティックなこともしていました。 妖精たちはグリッターメイクをしてカバレットやサーカスのショーのような衣装でしたが、 Puck だけは彼らとは違い John Lydon を思い出させるような衣装や振舞をしていました。 Puck 以外のエアリアルの演技は物語の状況や登場人物の内面などと関連強く関連づけられておらず、 背景というかバックダンサーに近くなってしまったよう。そこは少々残念でした。 ちなみに、このエアリアル演技については、多くのパフォーマは National Centre of Circus Arts (aka National Circus) でリハーサルしていたようです。 (というか、これに関する instgram のエントリを見ていたことも、 A Midsummer Night's Dream の National Theatre Live を観ようと思ったきっかけでした。)

イマーシヴならではの演出、エアリアルを使ったならではの演出が楽しめたという程では無かったのですが、 つまらなかったとこはなく、むしろ、約3時間、笑いながら観ていました。 この演出の特徴の一つは、人の世界の女王 Titania と妖精の女王 Hippolyta、 人の世界の王 Oberon と妖精の王 Theseus を同一人物が演じており、 Hippolyta / Theseus は Titania / Oberon の無意識として描いていること。 あと、Oberon と Titania の立場を入れ替えて、媚薬を塗られるのが Oberon 側となるということ。 特に媚薬が塗られるのが Oberon としたことで、性的な役割からの逸脱がそれによる滑稽さが増していたように感じました。 そんな Titania / Hippolyta 演じる Gwendoline Christie と、 Oberon / Theseus 演じる Oliver Chris も巧く、ちょっとした表情や振舞で笑いを引き出していました。

原作はアテネやアマゾン国など原作はギリシャ神話を舞台としていましたが、 演出では現代に置き換えていました。 幕間のインタビューで Hytner 自身が言っていましたが、 冒頭のアテネは Margaret Atwood: The Handmaid's Tale 『侍女の物語』を意識したもの。 しかし、その設定は結末で巧く回収できていなかったようにも感じました。

面白かったのは、むしろ、Rude Mechanicals。 原作での職能は単なる名前 (姓) となっていて性別も男女混成で、 職人といっても高度技能職ではなくつなぎの作業服を着て非熟練労働に携わっていそうな労働者階級 (チャヴほど殺伐とはしてない) の人々として描いていました。 そんな人々が集住する地区のコミュニティセンターでイベントの出し物として演劇を上演する、みたいなノリを演じていたのが面白く感じました。 Quince はいかにも面倒見良さそうなイギリスのおばあちゃんだし、 男性陣の Bottom や Flute は気の良いお兄ちゃん (特に Flute はレゲエを愛聴してそう) という一方、 女性陣の Snout や Snug が無愛想という対比になっていて、 Quince が皆の面倒見てあげているようで、皆が Quince の無茶ぶりにも仕方ないなと思いつつ合わせてあげている感もあり、 単に役柄を現代のものに置き換えているのではなく、そんなコミュニティの様子すら感じられる点が良かったです。 (Oberon が媚薬で Botton への恋に落ちた時も、 Bottom は Quince に合わせてあげるのと同じように Oberon にも合わせてあげていたというにも感じられました。) そして、実際に結婚式での上演に臨む際は、Rude Mechanicals の名が背に入った青の揃いのジャージを着ていて、 演目として選ばれる時の喜び方も、まるでアマチュア劇団コンテストに臨んでいるよう。 Robert Softly Gale: My Left/Right Foot [鑑賞メモ] を思い出したりもしました。 そんな流れがあったので、グタグタな素人芝居がとても面白く感じられました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

[3846] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Jul 13 0:24:41 2020

COVID-19とは関係なくリニューアルのため2月から休館していた 国立映画アーカイブですが、 7月に再オープンしました。 上映企画のニューアル後第一弾 『松竹第一主義 松竹映画の100年』が始まったので、 さっそく、土曜の昼前から、戦前の小津 安二郎の映画4本をまとめたプログラムを観てきました。

『和製喧嘩友達』
1929 / 松竹蒲田 / パテベビー短縮版/デジタル復元版 / 白黒 / 無声 / 35mm / 24fps / 14min.
監督: 小津 安二郎. 原作・脚本: 野田 高梧.
渡辺篤, 浪花友子, 吉谷久雄, 結城一郎.

今回観た4本の中で唯一、以前に映画館で観たことのある作品でした [鑑賞メモ]。 それから戦前松竹映画をいろいろ観たせいか[鑑賞メモ]、 小津らしいというより、むしろ貧乏長屋物コメディの王道のような作品だったのだな、と。

『突貫小僧』
1929 / 松竹蒲田 / パテベビー短縮版 / 白黒 / 無声 / 35mm / 24fps / 14min.
監督: 小津 安二郎. 原作: 野津 忠二 (野田 高梧, 池田 忠雄, 大久保 忠素, 小津 安二郎 の合名). 脚本: 池田 忠雄.
斎藤 達雄, 青木 富夫, 坂本 武.

人攫い (斎藤 達雄) が子供 (青木 富夫) をさらおうとして、なんとか人攫いの親玉 (坂本 武) の所まで連れて行くも、 持て余して帰すことにする、というストーリーのコメディ短編です。 人攫いを怖がらず腕白を通す「突貫小僧」に人攫いが振り回される様子を、ユーモラスに描いています。 戦前松竹の名子役 青木 富夫 の芸名が「突貫小僧」となるきっかけとなったことで知られる映画です。 しかし、主役よりも、子供に振り回される大人を情けなくもユーモラスに演じる 斎藤 達雄 の演技 (無声なので特に顔芸) が楽しめました。

『鏡獅子』
1936 / 国際文化振興会=松竹 / 英語版 / 白黒 / 16mm / 25min.
監督: 小津 安二郎.
六代目 尾上 菊五郎.

歌舞伎を海外へ紹介するためのプロモーション用記録映画で、 小津の撮った唯一の記録映画にして、小津の初のトーキー映画です。 前半は歌舞伎座の劇場の様子などを紹介するパート、 後半は『春興鏡獅子』のお小姓弥生の女型の舞と、獅子の姿での激しい舞を 六代目 尾上 菊五郎 が踊る様子をとらえています。 戦前の東京歌舞伎座の様子などが窺える興味深さはありましたが、小津の作家性は感じられませんでした。

『父ありき』
1942 / 松竹大船 / Госфильмофонд [ゴスフィルムフォンド] 版 / 白黒 / 35mm / 72min.
監督: 小津 安二郎. 脚本: 小津 安二郎, 池田 忠雄, 柳井 隆雄.
笠 智衆 (堀川 周平), 佐野 周二 (堀川 良平), 津田 晴彦 (その少年時代), 坂本 武 (平田 真琴), 水戸 光子 (その娘 ふみ), 佐分利 信 (黒川 保太郎), 日守 新一 (内田 実), etc

あらすじ: 金沢の中学校の数学教師 堀川 周平 は男手一人で息子 良平を育てている。 引率していた修学旅行中に起きた生徒の事故死に対して責任を取り、堀川は教師を辞め、郷里の信州上田に戻った。 息子が中学校に進学し、寄宿舎に入ると、堀川は息子の進学のため、単身東京へ働きに出た。 その後、息子良平は仙台の帝大を出て、秋田の工業学校で化学の教師となった。 ある休日、父子は上田で一緒に過ごす。 良平はなったばかりの教師を辞めて東京に出て父と暮らしながら働こうかと言うが、周平は反対する。 それからまたしばらく経ち、良平は徴兵検査合格の報告に上京し、父 周平としばらく過ごしていた。 周平は、東京で再会した金沢時代の同僚 平田 の娘 ふみを、結婚相手として良平に勧めた。 良平が上京して5日目、周平は急に体調を崩して亡くなってしまった。 そして、良平はふみと秋田に戻るのだった。

『父ありき』の現存するフィルムは ロシア Госфильмофонд で見つかった32mm版 (ゴスフィルムフォンド版) と16mm再編集版 (国内版) があると言います。 国内版は、16mm縮小時にノイズを焼き込んでおり音質が悪く、また、戦後連合軍占領下での検閲を経ていると言われています。 今回は、戦時中公開時の編集を反映していると言われるゴスフィルムフォンド版での上映で、 音質は良好というほどではないものの、セリフが聞き取りづらい時がたまにある程度でした。

良平が中学へ進学する前後の子供時代 (周平が金沢の中学校を辞め上田に戻り上京するまで) と、 良平が秋田の化学教師になってからの大人時代の、 周平、良平の父子関係、父 周平の人柄を、日常を描くように淡々と描いて行きます。 さりげない日常的な会話、一緒に釣りをする姿などを通して、父子の情をうっすらと浮かびあがらせるようです。 ラストの父の急死の場面こそ比較的ドラマチックではありますが、悲劇的な結末へ大転換することなる、 それ以前の話の通り良平はふみを連れて秋田に帰る様子を描きます。 そこで、列車内での回想を通して描かれる父への思いも淡く感傷的。 そんな父子の情の淡々とした描写を堪能しました。

一時期、戦前松竹映画をよく観ていましたが、最近は少々遠ざかっていて、 振り返ると、約2年ぶりでしょうか [関連する鑑賞メモ]。 戦前松竹のお馴染みの俳優たちが出演している映画を映画館で観て、また映画館で戦前の松竹映画を観たくなってしまいました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

出遅れてチケットの争奪戦に敗れ、土曜午後の回は観られず。 人気あるのだなあと思っていたのですが、市松模様どころか間3席くらい開ける席の間引きをしていました。 さすがに通常の民間の映画館に比べてCOVID-19感染対策にかなり気を使っているようでした。 通常の1/4程度しか入れてないのであれば、チケット売切も納得です。 清水 宏 (dir.) 『不壊の白珠』 (松竹蒲田, 1929) は以前に映画館で観たことありますし、諦めもつきます。

4月から6月まで自宅でストリーミングで舞台作品の映像を色々観ていたのですが、 6月の映画館再会後 National Theatre Live や Met Live in HD を映画館で観て以来、 自宅で舞台作品のストリーミングを観る気がすっかり失せてしまいました。 緊急避難的であれば自宅の 5K 27インチ のディスプレイでも申し分ないのですが、 数ヶ月ぶりに映画館に行って映像鑑賞環境の良さを痛感しています。

現在、NHKでのアニメーション『未来少年コナン』デジタルリマスター版が放送されているものの、 TLで時々関連ツイートを見かけるもののNHKオンデマンドでは観られないので観るつもりの無かったのですが、 Amazon Prime でオリジナル版 (アスペクト比4:3) が観られると気付いて、観はじめてしまいました。 NHKの放送のペースに合わせてゆっくり観るつもりだったのですが、結局、26話まで観終えてしまいました。 『未来少年コナン』はまだ小学生だった1978年の本放送の時に観ていますが、 2005年の再放送の時以来、観るのは15年ぶりです。やっぱり、大好きなアニメーションです。 といっても、2005年に観た時に色々書いたこと以上に書いておきたいことがあるわけでないのですが。

『未来少年コナン』を観終えて、 今度は日本アニメーション制作の世界名作劇場で『未来少年コナン』とほぼ同じ制作陣で作られた 『アルプスの少女ハイジ』や『母をたずねて三千里』を久々に観たくなってしまいました。 Amazon Prime のdアニメにあったので、今度はそちらで『母をたずねて三千里』 (日本アニメーション, 1976) を観ました。 1976年の本放送で観ていますが、 最後に観たのは、大学生だった1986年夏頃。当時通っていた自動車教習所の待合室でよくかかっていたのを断片的に観たのを覚えています。 原作は Edmondo De Amicis: Cuore (1886) 中の挿話短編 Dagli Appennini alle Ande ですが、 原作を忠実にアニメーション化したものではなく、全52話とするためオリジナルの登場人物、エピソードが大幅に加えられ、オリジナルの物語に近いものです。 1880年代のイタリアのジェノバとアルゼンチンを舞台に、 ジェノバからアルゼンチンに出稼ぎに行って音信不通となった母を探す少年マルコの一人旅を描いています。

久しぶりに観て、当時の階級社会、貧富の差をはっきりと描いた作品だったことに気付かされました。 イタリアのネオリアリズモの映画からの影響と言われているようですが、そこまで冷徹に客観的な描写とは感じられませんでした。 むしろ、救いの無い悲劇ではなく、うまくいかずやるせない事も多いけれども人情に救われる物語です。 すれ違いメロドラマの男女関係を母子関係に置き換えた上、貧乏長屋人情物語のエビソードを連ねたよう。 戦前の映画は、男女や家族の情を描く際も、階級社会、貧富の差に起因する悲哀や苦難を描くものが少なくなく、そういったものに近く感じました。 まとまった金が要入りになったため年季労働に身を売る、とか、 病気になった知り合いの子の医療費のために本来自分の目的の為に貯めていた金を出してしまう、とか、 いかにもよくあるエピソードです。 と、頭ではわかっていながらも、思わず心を打たれて、涙しながら観ました。

昔観た時には全く気付かす、今観たからこそわかる事といえば、 ブエノスアイレスでの主な舞台がボカ (Boca) だったという事。 フットボールチームの強豪 Boca Juniors の本拠地にして、 アルゼンチン・タンゴの生まれた港町として知られるボカです。 と言っても、フットボールチームができるのは20世紀に入ってからなので、 1880年代という設定の『母をたずねて三千里』には出てきません。 フォルクローレ風の曲は多いもののタンゴの曲は一切使われないのも、 この時代にまだアルゼンチン・タンゴは無かったことの反映かと思います。

音楽使いといえば、第40話「かがやくイタリアの星一つ」で 居酒屋「イタリアの星」でイタリア移民たちがマルコの汽車賃をカンパする場面で歌われる “Bella Ciao”。 自分も思わず涙するほど感動的な場面なのですが、 第二次世界大戦中のイタリアでレジスタンス運動を繰り広げたパルチザンの歌として有名になり イタリア労働階級のアンセムとなった “Bella Ciao” です。 あのような場面では “Bella Ciao” という気持ちはむしろよくわかるのですが、 冷静に考えると、1880年代のアルゼンチンのイタリア移民たちが “Bella Ciao” を歌うというのは 時代考証的には適切ではないでしょう。 作品中でタンゴは使ってないので、おそらく、時代考証的には適切ではないとわかっていて使ったんだろうなあ、と。

『未来少年コナン』をきっかけに『母をたずねて三千里』へ遡るだけでなく、 東宝系の映画館で上映中のジブリ映画のリバイバル上映から『風の谷のナウシカ』 (1984) と『ゲド戦記』 (2006) も観ています。どちらも観るの初めて。 特に『風の谷のナウシカ』は『未来少年コナン』のモチーフの変奏と感じられる場面が多く、とても楽しめました。 が、今の自分にとっては『母をたずねて三千里』の方が面白く感じられてしまいます。

[3845] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Jul 5 21:04:58 2020

土曜は午後に渋谷円山町へ。ミニシアターで何か観たいな、ということで、この映画を観ました。

Довлатов [Dovlatov]
『ドヴラートフ レニングラードの作家たち』
2018 / Russia/Poland/Serbia / colour - 2.35:1 / 126 min.
Режиссёр [Director]: Алексей Герман мл. [Alexey German Jr.] Автор сценария [Screenplay]: Алексей Герман мл. [Alexey German Jr.], Юлия Тупикина [Yuliya Tipikina].
В главных ролях [Starring]: Милан Марич [Milan Marić] (Сергей Довлатов [Sergei Dovlatov]), Данила Козловский [Danila Kozlovsky] (Давид), Helena Sujecka (Елена Довлатова [Elena Dovlatova]), Артур Бесчастный [Artur Beschastny] (Иосиф Бродский [Joseph Brodsky]), Антон Шагин [Anton Shagin] (Антон Кузнецов [Anton Kuznetsov]), Светлана Ходченкова [Svetlana Khodchenkova] (актриса [actress], подруга Довлатова [Dovlatov's ex-girlfrend]), Елена Лядова [Elena Lyadova] (молодой редактор [young editor])
Production: САГа [SAGa], Метрафильмс [Metrafilms], Channel One Russia.
Co-production: Message Film, Art&Popcorn, Ленфильм [Lenfilm].

1978年にソ連から亡命し1990年に移住先のニューヨークで亡くなった小説作家 Сергей Довлатов [Sergei Dovlatov] の伝記映画です。 と言っても、生い立ちから亡命生活までの生涯を辿るものではなく、 1971年の革命記念日 (11月7日) の前日までの6日間を取り上げて、 レニングラードで雑誌記者として糊口をしのぎつつ 作家連盟への加盟し作品の文芸誌掲載を目指す Довлатов の日々の生活を描いた映画です。

労働者詩人 Антон Кузнецов [Anton Kuznetsov] の取材中の地下鉄工事現場で独ソ戦 (大祖国戦争) 中に犠牲となった子供の死体に掘り当たってしまう現場に立ち会ったり、 闇取引に手を出した芸術家仲間の美術作家 Давид が目の前で逮捕され連行中に脱走して飛込自殺するかのように交通事故死したり、 女優となった若い頃の恋人と再会したり、別居中だった妻とよりを戻したり、と、 約1週間にしては様々な出来事が次々と起こります。 1971年の革命記念日 (11月7日) の前日までの6日間に実際に起きたことを映画化したというより、 レニングラード時代の Довлатов のエピソードを6日間に重ね合わせて映画として描いているようにも思われました。

しかし、次々起きる出来事を一つの結末に向けてドラマチックに関係付けるようなことはなく、 淡々とエピソードを重ねることで、Довлатов の鬱屈した生活を描いていました。 後にノーベル文学賞を受賞することになる Иосиф Бродский [Joseph Brodsky] も出てきますが、 字幕で説明されなかったら気付かなかったかもしれない程のさりげない扱いでした。 ある特定の作家の個性を見るというより、Довлатов を通して 雪解け後再び抑圧が強まり始めた1970年代ソ連で非公式芸術家たちがどういう生活をしていたのか垣間見るようでした。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

自分が観に行った映画のチョイスのせいかもしれないですが、 どの回も席を市松模様にする必要が無い程の客の入り。 街の混雑の戻りに比べて、映画館の客足の戻りは鈍いように感じます。 COVID-19の感染リスクは繁華街やショッピングモールより遥かに低いと思うのですが……。

[3844] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Jun 28 22:27:38 2020

土曜は午前から川崎へ。イベントシネマでこのオペラを観てきました。

『ポーギーとベス』
from Metropolitan Opera House, 2020-02-01, 13:00–16:30.
Written by George Gershwin, DuBose & Dorothy Heyward, Ira Gershwin.
Production: James Robinson.
Set Designer: Michael Yeargan. Costume Designer: Catherine Zuber. Lighting Designer: Donald Holder. Projection Designer: Luke Halls. Choreographer: Camille A. Brown. Fight Director: David Leong.
Cast: Eric Owens (Porgy, a disabled beggar), Angel Blue (Bess, Crown's girl), Alfred Walker (Crown, a tough stevedore), Frederick Ballentine (Sportin' Life, a dope peddler), Chauncey Packer (Robbins, an inhabitant of Catfish Row), Latonia Moore (Serena, Robbins' wife), Donovan Singletary (Jake, a fisherman), Golda Schultz (Clara, Jake's wife), Denyce Graves (Maria, keeper of the cook-shop), Jamez McCorkle (Peter, the honeyman), et al.
Conductor: David Robertson.
World Premiere: Colonial Theatre, Boston, September 30, 1935.
Co-production of the Metropolitan Opera; Dutch National Opera, Amsterdam; and English National Opera.
This production's premiere: London Coliseum (English National Opera), London, 11 October 2018.
上映: TOHOシネマズ川崎, 2020-06-27 10:30-14:20 JST.

George Gershwin の Porgy And Bess は、 “Summertime” をはじめスタンダードナンバーを多く生み出したことで有名なオペラです。 ジャズの文脈で曲をそれなりに聴く機会がありましたが、舞台での上演を観る機会がありませんでした。 1959年にミュージカル映画化されていますが、プリントの入手が困難で、失われた映画にほぼ近い状態といいます。 Metropolitan Opera では約30年ぶりになるという上演が Met Live in HD でかかったので、これは良い機会と観に行きました。

20世紀初頭のアメリカ南部の黒人居住区の Catfish Row (なまず長屋) を舞台とする群像劇です。 あらすじをそれなりに目にする機会はあれど、乞食 Porgy の Bess への無償の愛の話という程度のプロットを知る程度だったので、 Bess はもちろん Catfish Row の住人たちが個性的に描かれていて、そういう話だったのかと気付かされる点が多くありました。 演出による解釈という面もあると思いますが、Bess は Porgy を振り回す魔性の女なのではなく、情夫 Crown からのDV (家庭内暴力) と薬物依存症に苦しむ女性として、明確に描かれていました。 Bess が Crown や Sportin' Life から逃れられないのは、誘惑に弱いからではなく、DVによる学習性無力感や薬物依存症のためだったのか、と。 働き者ながら出漁中に嵐に遭って死んでしまう漁師 Jake と幼子を抱えた妻 Clara、 Crown との喧嘩で死んでしまう Robbins としっかり者の妻 Serena、 長屋の肝っ玉母さん Mary など、脇役的なキャラクターも魅力的でした。

Gershwin の指定もあってキャストはほぼアフリカ系アメリカ人もしくはアフリカ出身 (Clara 役の Golda Schultz は南アフリカ出身とのこと) なのですが、そんな中で警官役だけ白人。 Robbins 殺しの犯人ではないとわかっていながら Peter を容疑者として逮捕拘留するなどの理不尽な逮捕や捜査の場面は、 Black Lives Matter (BLM) 運動の契機となった “Killing of Goerge Floyd” 事件を思い出させられるものでした。 そして、もちろん演技への称賛という意味もあったと思いますが、カーテンコールで警官役の時にブーイングが起きていました。 収録されたのは BLM 運動以前ですが、そんなところにも BLM 運動の背景を見るようでした。

音楽的な要素という点では、“folk opera” と呼ばれるように、アメリカ南部の伝承的な音楽に着想したもの。 スタンダートナンバーとなった曲も多く、jazz のルーツとも言える blues や ragtime の影響を受けたもの。 しかし、信仰など宗教的な主題も多く、コーラスでの掛け合いなど、黒人霊歌 (spiritual)、gospel 的な要素も大きいと気づかされました。 Gershwin のバックグラウンドの Jewish 的な要素といえば、少人数のジャズコンボで演奏される “It Ain't Necessarily So” など Klezmer 的に聞こえる演奏もあるのですが、 上演の中で聴くと Sportin' Life のテーマとしてしか聞こえなかったり。 テーマは jazz の場合即興の出発点という面も強く、そんな曲として聴くのと、舞台作品の文脈上で聴くのでは、受ける印象が違うことを実感しました。

物語としては貧乏長屋の人情噺で、アフリカ系アメリカ人に限らない普遍的な話です。 同時代戦間期の松竹映画とかにいかにもありそう、例えば 小津 安二郎 の喜八ものとして翻案できそう、などと思いながら観ていました。 もちろん、Porgy が喜八 (坂本 武)、Bess がヒロインの女給 (桑野 通子 が良いな)、 Crown や Sportin' Life は与太者で、Mary は飯田 蝶子が演じる長屋の面倒見良いおばさん。 (特に、Bess を追って New York へ旅たつ Porgy が喜八っぽく感じられました。) その一方、Bess の薬物依存症やDV被害、警官による Catfish Row 住民の不当な扱いなど、現代に置き換えても通じるテーマも多く、 むしろ、現代に置き換えてのスタイリッシュな現代演出で観てみたいようにも思いました。

アフリカンダンスを思わせるダンスの使い方やコーラス使いなどミュージカルに近いものを感じましたし、 廻り舞台や映像プロジェクションを使った場面転換など現代的とは思いましたが、 時代や場所の設定は原作に忠実で、衣装や美術もリアリズム的に丁寧に登場人物を描く、比較的オーソドックスな演出でした。 抽象的でミニマリスティックな現代演出の方が好みですが、 群像劇の登場人物のそれぞれの個性を理解できたという点で、初めて観るにはこのような演出で良かったでしょうか。 20世紀初頭頃のアメリカ南部の黒人居住区の雰囲気を垣間見るような、そんな面白さもありました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

しかし、109シネマズ川崎の入っているショッピングモールも、地元のショッピングモールも この週末は人出で酷い混雑になっていました。しかし、その一方で映画館はガラガラ。 自分が行くような個人経営のこぢんまりした飲食店にもあまり客が戻っていなさそうです。 しかし、映画館や美術館よりショッピングモールの方が、 個人経営のこぢんまりした飲食店よりショッピングモールのフードコートの方が、 COVID-19感染リスクが遥かに大きいのではないかと思うことしきりです。 4月頃は周囲は自粛し過ぎじゃ無いかと感じていたのですが、 5月下旬頃からはむしろ緩め過ぎなのでは無いかと感じていたりします。

[3843] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Fri Jun 26 0:15:02 2020

土曜は昼前には清澄白河というか木場へ。この展覧会を観てきました。

Olafur Eliasson: Sometimes the river is the bridge
東京都現代美術館 企画展示室 企画展示室 地下2F
2020/06/09-2020/09/27 (月休;8/10,9/21開;8/11,9/23休), 10:00-18:00.

コペンハーゲン出身でベルリンを拠点とする Olafur Eliasson の個展です。 個展で観るのは金沢21世紀美術館 (2009-2010) [鑑賞メモ] 以来、10年ぶりです。

さすがに光の扱いが巧みで美しいインスタレーションが多い展覧会です。 複数の光源を床に並べて置いて鑑賞者の重なり合う影を鑑賞する Your happening, has happened, will happen (2020) や、 水を張った円形の浅い水槽に12の白色のスポットライトを当てて、 その反射で水の揺らめきを見せる Sometimes the river is the bridge (2020) など、 光の反射を使った作品が印象に残った展覧会でした。 こういう作品は静かに浸れるような環境ならより良いのでしょうが、少々観客の多い落ち着かない環境だったのは残念。 もちろん、ミストのカーテンに光を当てて虹を見せる Beauty (1993) のような作品も良いです。

しかし、Sunlight (2002) のようなインタラクティヴな作品では、 微妙なアトラクション感が出てしまうのは否めませんでした。 元々、気象現象に着想する作品を作ってきた作家だけに、近年の気象温暖化問題への問題意識があるのはわかるのですが、 二酸化炭素削減のために航空機を使わないでの移動のデータを作品化した Memories from the critical zone (Germany-Poland-Russia-China-Japan. nos. 1-12) (2020) は、 結局ノイズのようなデータであれば何でも良かったかのような表現になってしまっていて、造形的に微妙な仕上がりに感じてしまいました。

The Potentiality Of Drawing
東京都現代美術館 企画展示室 3F.
2029/06/02-2020/06/21 (月休), 10:00-18:00.
Henri Matisse, 石川 九楊, 戸谷 成雄, 盛 圭太, 草間 彌生, 磯辺 行久, 山部 泰司.

展示自体はドローイングを広く捉えてインスタレーション展示も含まれており、 ドローイングそれ自体の可能性を感じることはできませんでした。 しかし、切絵と手書き文字からなる Henri Matisse のアートブック Jazz のステンシル印刷がまとめて観られたのが、収穫でした。 タイトルはジャズですが、題材はサーカスから取られているといるというのも良いです。 ドローイングではなく立体のインスタレーションですが、 戸谷 成雄の荒削りの木材だけでなく、その削り屑が壁面に飛び散ったようなインスタレーションも良かったです。

Things Entangling
東京都現代美術館 企画展示室 1F.
2029/06/09-2020/09/27 (月休), 10:00-18:00.
Pio Abad, Liu Chuang, 藤井 光 [Hikaru Fujii], Dale Harding, 磯辺 行久 [Yukihisa Isobe], 岩間 朝子 [Asako Iwama], Kapwani Kiwanga, Jumana Manna, mixrice, The Propeller Group & Superflex, Alexandra Pirici

パリとサンフランシスコを拠点とする現代美術基金 Kadist との共催によるグループ展です。 近現代史や社会問題に取材してドキュメントに近いものを緩く展示するような作品が集められてしまいました。 このような作風は現代美術な大きな流れになっているとは思いますが、 問題をもっと知りたいというフックが感じられる作品には出会えませんでした。

MOT Collection: Present Day and in Times Past––Multiple Perspectives
東京都現代美術館 コレクション展示室 1F,3F.
2029/06/02-2020/09/27 (月休), 10:00-18:00.

コレクション展示室は1月の 『MOTコレクション 第3期 いまーかつて 複数のパースペクティブ』 [鑑賞メモ] を一部展示換えしたものでした。 『百年の編み手たち -流動する日本の近現代美術-』 [鑑賞メモ] にも展示されていた 松江 泰治が2017年に木場や豊洲運河の界隈を パンフォーカス空撮写真や運河に沿って撮ったパノラマ写真展示されていました。 やはり、コンセプチャルに線や形に着目して抽象画を描くように撮られた写真が、自分の好みであると再認識。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

美術館に着いた11時頃は、Olafur Eliasson 展の展示室内、若干人が多いかなという程度。 チケット売場も会場入場待ちの列もありませんでした。 人気のありそうな現代美術展ですが、実際はそれほどでもなかったのかな、なんて思ってしまいました。 しかし、ランチを食べ終えた13時頃には入場待ちの行列ができはじめ、 美術館を後にした14時半頃には、入場待ちの列はコレクション展示室入口の近くまで、 そして、チケット売場の行列はホワイエに収まりきらず、建物の外まで伸びていました。 まさか午後からこんなに混むとは。午前中に行って良かったと、つくづく。

その後は、渋谷に出てレコード屋巡り。 RECOfan 渋谷BEAMS店の閉店セールを漁ったり、馴染みの店に取置してた盤を取りに行ったり。 近年、レコード屋からだいぶ遠ざかってしまったのですが、 展覧会や舞台公演がほとんど無くなった2月以降、レコード店巡りをするようになっています。 それはそれで楽しいものです。

[3842] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Jun 21 21:48:21 2020

金曜の晩はストリーミング舞台鑑賞。 Arthur PitaBjörk の音楽で振付たバレエ作品があると知って気になっていたのですが、 COVID-19隔離向けにストリーミングされたので、観てみました。

War Memorial Opera House
Recorded March 29, 2019.
Choreographer: Arthur Pita.
Costume Design: Marco Morante; Lighting Design: James F. Ingalls; Visual Décor: Arthur Pita; Sound Design: Martin West.
Composers: Björk Gudmundsdottir, Alejandro Ghersi, and Sjón
Music: Overture, All is Full of Love, You’ve Been Flirting Again, Bachelorette, Vokuro, Frosti, The Gate (Intro), Hyperballad, Anchor Song
Conductor: Martin West.
Casting: Carmela Mayo, Elizabeth Powell, Dores André; Joseph Walsh, Ulrik Birkkjaer, Luke Ingham; Kamryn Baldwin, Gabriela Gonzalez, Ellen Rose Hummel, Elizabeth Mateer, Norika Matsuyama, Skyla Schreter, Miranda Silveira, Ami Yuki; Diego Cruz, Daniel Deivison-Oliveira, Joshua Jack Price, Nathaniel Remez, Alexander Reneff-Olson, Henry Sidford, John-Paul Simoens, Hansuke Yamamoto.
World Premiere: April 26, 2018 - San Francisco Ballet, War Memorial Opera House; San Francisco, California.
YouTube URL:https://www.youtube.com/watch?v=98yI2LT26lw

Arthur Pita といえば The Royal Ballet The Metamorphosis [鑑賞メモ] の印象が強烈で、演劇的というかナラティブな作品を予想していました。 実際のところは、Björk のミュージックビデオやカバーアートのシュールなイメージを比較的忠実に引き継いで抽象的にダンス化した約30分の作品でした。 トリプルビルの中の1作品として上演するのにちょうど良さそうな作品です。

クラシカルなバレエ的な動きはほとんど用いられていません。 冒頭、overture に続いて、すぐ “All Is Full Of Love” なのですが、 この有名なミュージックビデオのロボットの動きのイメージを結構意識した動きが要所で使われていました。 “All Is Full Of Love” もそうですが、中盤の “The Gate” の女性2人の踊りの方が、まさにそれを感じさせる動きでした。

2018年初演の作品ですが、“All Is Full Of Love” や “Bachelorette”、“Hyperballad” など、1990年代の有名曲がむしろ大きくフィーチャーされていたように感じました。 自分が Björk をよく聴いていたのはこの頃だったので、そういう選曲も、少し懐かしく感じました。

[この鑑賞メモのパーマリンク]

Festivalul International de Teatru de la Sibiu (シビウ国際演劇祭) が COVID-19パンデミックをうけて 2020年は “Online Special Editon” と6/12-21の10日間のストリーミングによる開催となっています。 ということで、14日の晩から毎晩、何かしらの舞台をストリーミングで観ています。 観たものについては簡単な鑑賞メモ相当のツイートをしているので、 いずれこのサイトにまとめておきたいものです。

[3841] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Jun 15 0:55:17 2020

この週末土曜は午後に日本橋室町へ。 COVID-19感染拡大のため閉館になっていた映画館も営業再開し始めています。 映画新作封切りが再開しているというほどではないのですが、 National Theatre Live や Royal Opera House cinema などは営業休止前に準備されていたものの延期になっていた作品の上映が始まっています。 というわけで、National Theatre Live でこの作品を観てきました。

『スモール・アイランド』
Olivier Theatre, London, 2019-06-27.
Adapted by Helen Edmundson, Based on the novel by Andrea Levy.
Director: Rufus Norris; Set and Costume Designer: Katrina Lindsay; Projection Designer: Jon Driscoll; Lighting Designer: Paul Anderson; Sound Designer: Ian Dickinson for Autograph; Movement Director: Coral Messam; Fight Director: Kate Waters: Music Consultant: Gary Crosby.
Cast: Leah Harvey (Hortense), CJ Beckford (Michael), Aisling Loftus (Queenie), Andrew Rothney (Bernard), David Fielder (Arthur), Gershwyn Eustace Jr (Gilbert), Johann Myers (Elwood), Shiloh Coke (Celia).
Music recorded by Jazz Jamaica Allstars. Additional music recorded by London String Group.
First Performance: 17 April 2019, Olivier Theatre, London.
上映: TOHOシネマズ日本橋, 2020-06-13 14:30-18:40 JST.

移民船の名 Empire Windrush から Windrush Generation とも呼ばれる イギリスの西インド諸島系移民第一世代を巡る、第二次世界大戦中から戦後にかけての群像劇です。 ジャマイカ移民の主な登場人物は、 孤児ながらジャマイカで教師となり憧れるイギリスで教師になろうと渡る Hortense、 Hortense の従兄でイギリス空軍パイロットとなる「魔性の男」的な役回りの Michael、 法律家になることを夢見て二次大戦時にイギリス軍に志願し、戦後、Empire Windrush でイギリスに移民するため Hortense と偽装結婚する Gilbert の3人。 イギリス側の主な登場人物は、 イングランド中東部リンカンシャーの肉屋という実家の暮らしから逃れるように London に出てきた Queenie と、 ロンドンで Queenie と結婚する堅物銀行事務員 Bernard、 そして、一次大戦従軍時のシェルショックで失語症となった Bernard の父 Arthur。 中でも Hortense と Queenie の2人の物語を軸に、話が進みます。

群像劇で扱う時間も長い作品ですが、 テンポ良い脚本と廻り舞台やセリを駆使した場面転換、照明や映像を駆使した現代的ながらもわかりやすい演出でした。 2幕構成で第1幕は二次大戦中まで。 Hortense の幼少期の話や、Queenie がロンドンに出てきて結婚する経緯、 Queenie が Michael や Gilbert と知り合う経緯など、若干説明的に過ぎるように感じました。 しかし、第2幕、ロンドンに移民してきた Gilbert と Hortense の Queenie の家での借間暮らしでは、二人が直面する差別に物語は深刻な様相を示します。 しかし、前半からのユーモア (多分にイギリス的でしょうか) を交えた物語の進め方は変わらず。 そんなユーモアに笑いつつ、深刻な状況ながら心打たれる場面も少なからず、そんな時は目を潤ませながら、 約3時間半、その物語の世界に入り込んで観ることができました。

1980年代からずっと reggae (特に1950年代の pre-ska 期から1980年代の UK reggae や early dancehall) を好んで聴いていたこともあり、 この作品を観てみようと思った一番の理由は、やはり、 音楽コンサルタントとして Gary Crosby が参加しており、音楽演奏に Jazz Jamaica Allstars を起用していたから。 Honest Jon's による音楽のコンピレーション・シリーズ London Is The Place For Me で聴かれるような Mento や Calypso に彩られた音楽劇的な面を期待していたところもありました。 (以前に Rufus Norris 演出で観たのが The Threepenny Opera だったというのもありますが。) 確かにそれなりに使われており、ミュージカル的なダンスシーンなども楽しめましたが、 特に深刻な場面では London String Groups によるストリングスによる映画的な音楽が使われることが多く、 むしろそちらの方が印象に残ってしまい、少々肩透かしでした。 しかし、特に第2幕の物語は、 London Is The Place For Me 第1集、第2集のジャケット写真の向こうにあると物語の変奏のよう。そんな面を興味深く観ることができた舞台でもありました。 クレジットによると舞台で使われていた当時の映像の中には British Pathé のものも使われていたようですが、 British Pathé による Empire Windrush や1950年代の移民問題のニュース映像は DVD Mirror to the Soul: A Documentary film about British Pathé in the Caribbean 1920-1972 (Soul Jazz, 2012) で観ることができます [鑑賞メモ]。 しかし、フィクションとはいえこういう舞台作品を通して見ると、問題をいっそう身近に感じられます。

[この鑑賞メモのパーマリンク]