TFJ's Sidewalk Cafe >

談話室 / Conversation Room

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[3599] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Nov 20 0:33:39 2017

半月余前の話で、一週間ぶりとなりましたが、11月2, 3日に観てきた 大道芸ワールドカップ in 静岡 2017 の話の続き、1日目の後半です。

11/02 15:45〜 @ 旧クリエーター支援センター

フランス出身の Odile Gheysens が2004年に設立したダンス・カンパニー in-SENSO の vertical dance 作品 Volibri。 今回来日していた女性ダンサーは Odile 自身、男性ダンサーは Éric Lecomte でしょうか。 Rami Khalifé, Francesco Tristano など InFiné Music の 少々アブストラクトなピアノソロにのってロマンチックなダンス。 本来は live painting の video projection などの演出を伴う作品のようですが、 それが無かったためか、少々単調に感じました。 元学校校舎の美しいと言い難い壁面が舞台でしたが、もっと良い場所を使っていたら、印象も違ったかもしれません。

11/02 16:30〜 @ トコチャン広場

ウクライナ出身の strap を使った aerial を得意とするサーカスアーティス ト Dmitriy Grygorov。Cirque du Soleil の Quidam、そして Corteo での “Duo Straps” から独立して、 2007年にカンパニー Flight Of Passion を設立したとのこと。当初は妻の姉 妹にあたる Olesya Shulga (ウクライナ出身で元体操選手) との2人組だった が、現在のパートナーはロシア出身の Anastasia Vashchenko。短かめの strap 2本で、時に口に加えた strap を使って、アクロバティックで力強く。 しかし、ロマンチックな演出でした。

うつしおみ
11/02 17:30〜 @ トコチャン広場

日本のカンパニー ながめくらしつ を主宰する juggling の 目黒 陽介 と aerial の 長谷川 愛実 の男女デュオ。

今回が初上演とのことで、新作。 近年毎年観てますが [鑑賞メモ]、 aerial や juggling の道具立ては大きく変わらないものの、 二人の動きの組み合わせが洗練されています。 去年までよりぐっと良くなりました。

Karen Goudreault & Dominic Lacasse
The Human Flags
11/02 17:30〜 @ トコチャン広場

カナダはケベック州出身の acrobat の男女ペア Karen Goudreault & Dominic Lacasse。 フロアではなく ring や Chinese pole を使った演技を見せます。 特に、男性が Chinese pole で横向きになった状態で脇腹に女性を乗せるという大技は凄い (写真に撮りそこねましたが)。 しかし、The Human Flags とタイトルを付けていたので、 もっとダンス作品的な演出かと期待したものの、 冒頭こそ、ウェディングから痴話喧嘩というコミカルな演技もあったものの、技を見せることがメイン。 特に後半は、凄いことを演じますというMCも入った録音を流しながらの演技で、そこはちょっと残念。

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2日目の話は、また、来週末でしょうか……。

[3598] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Nov 19 22:04:48 2017

土曜の晩は横浜関内は馬車道へ。このライヴを観てきました。

横濱エアジン
2017/11/18, 19:00-21:00.
Gjertrud Lunde (voice, electronics), Florian Zenker (guitar, baritone guitar, electronics), Wolfert Brederode (piano), Jarle Vespestad (drums).

ノルウェー出身で現在はドイツを拠点に early music/world/jazz の文脈で活動する女性歌手 Gjertrud Lunde のコンサート。 彼女自身はまだアルバム Hjemklang (Ozella, OZ054CD, 2014, CD) の1タイトルをリリースしているだけだが、 参加ミュージシャンの豪華さもあって、聴きに行った。 1stのタイトルから名を取った Hjemklang というグループで、 ドイツ出身の guitar 奏者 Florian Zenker は Christof May のグループなどで知られ、 オランダ出身の piano 奏者 Wolfert Brederode はECMからのリーダー作のほか Susanne Abbeuhl のグループ [関連鑑賞メモ] でも活動している。 ノルウェー出身の drums 奏者 Jarle Vespestad は ex-Supersilent [関連鑑賞メモ] にして Farmers Market [関連鑑賞メモ] や Tord Gustavsen のグループでの活動でも知られる。

Hjemklang はもちろん、 録音を終えまもなくリリースされる予定という新作 Lux からの 曲を多く取り上げ、途中休憩あり、アンコール1回の約2時間のステージだった。 Lunde はエフェクトの異なる2本のマイク – 一方は深いリバーブ、もう一方は時々ディレイかける程度 – を使い分け、 ときに小型電気メガホン越しにオフな歌声で、また、1曲、親指ピアノを手に、歌った Hjemklang の印象から 北欧 folk 色濃いエフェクト深めのアトモスフェリックな演奏を予想していたし、 bariton guitar と drums のリズム隊もしっかりと jazz / rock 色濃い演奏も聴かせた — 後半、Psychederic な rock を思わせる展開もあった。 しかし、voice や guitar のリバーブ深めに、piano も内部奏法も駆使して、 snare drum を frame drum のように指先で細かく刻むような展開の時が、やはり、良く感じた。 好みのスタイルなので楽しんで聴いたけれども、ECMやノルウェーのjazz/folk界隈には似たようなスタイルの女性歌手が多いので、 何かもう一癖あると良いのだが、とも思ってしまった。

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エアジンでライヴを観たのって、横浜ジャズプロムナードへ行っていた1990年代ぶりではないかというくらい久しぶり。 武蔵小杉へ引っ越して、自宅からは新宿 Pit Inn と同程度のアクセスになったので、これからはこちらにも通いたいものです。

[3597] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Nov 19 20:15:37 2017

土曜の昼はランチがてら恵比寿へ。この展覧会を観てきました。

TOP Collection: Scrolling Through Heisei | Part 3. Synchronicity
東京都写真美術館 3階展示室
2017/09/23-2017/11/26 (月休;10/9開;10/10休) 10:00-18:00 (木金-20:00).

春季 [鑑賞メモ]、 夏季 [鑑賞メモ]、 に続いて、平成年代の作品からなるコレクション展も最終回。 時代の流行もあってか私的なものやSEA寄りの写真もありましたが、 マラブ (アフリカハゲコウ) をピンホールカメラで撮った不思議な質感の 野口 里佳 や、 抽象画のようになるまでピンボケさせた 浜田 涼 のような写真が気にいりました。 浜田 涼 は滲んだ色のようになるまでピンボケさせた写真は、 Gerhard Richter の写真絵画でピンボケ的な処理をしているものを [関連する鑑賞メモ]、 油彩ではなく写真としてやっているよう。 形態が抽象化されているだけでなく、滲んで混色して彩度の落ちたグレー気味の色味も好みでした。

Nagashima Yurie: And a Pinch of Irony, with a Hint of Love
東京都写真美術館 2階展示室
2017/09/30-2017/11/26 (月休;10/9開;10/10休) 10:00-18:00 (木金-20:00).

学生時代の1993年の「アーバナート」でパルコ賞を受賞したデビュー作から現在に至る30余り年の作品を辿る回顧展。 家族でのヌード写真や配偶者を取り続けた写真など、従来、荒木 経惟などにより 女性を対象に撮られていた写真をズラすような興味深さはあるけれども、 そもそもの私的なものに対する距離感が苦手だな、と。 前に2階展示室でやっていたのも 荒木 経惟 だったな [鑑賞メモ]、と思い出したり。

New Cosmos Of Photography 2017
東京都写真美術館 地階展示室
2017/10/21-2017/11/19 (月休) 10:00-18:00 (木金-20:00)

キヤノンの主催する新人写真家発掘・育成・支援を目的とするアニュアルの公募コンテストの受賞作品展。 休館中は別として、長年、東京都写真美術館で開催されていたので、毎年のように観ているが、今年は以前と雰囲気が変わった。 以前は、ドメスティックで、私的でサブカルっぽい雰囲気の作品が多かったという印象を持っている。 しかし、今年はナラティヴとはいてコンセプチャルに作り込まれた作品が目に付いた。 受賞作家の顔ぶれも国際的で、写真というより映像作品も多く含まれ、国際現代美術展の雰囲気に近く、 これも時代の流れかと感慨深いものがあった。

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1階ホールで何を上映しているのかチェックせずに行ったのですが、 『リュミエール!』 だったのか! と。 知っていたら時間を合わせて行ったのですが、気付いたときには丁度上映開始直後。 1時間半余りも待っていられない、ということで、諦めました……。 ライヴ情報にしてもそうですが、最近、情報のチェックが甘くていけません。

[3596] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Nov 12 23:11:44 2017

1994年に始まった秋の恒例の大規模な大道芸フェスティバルも26回目。今年も11月2日(木)、3日(金) に観てきました。 二日とも天気にも恵まれ、昼は日差しもきつく暑いほど。日が暮れるとかなり冷えました。 もう少し曇った方が、昼もきつい日差しもなく過ごしやすく、日が暮れてからもさほど冷えずに、良いのですが。 日帰りでは狙いを絞ってひたすら観るだけになってしまいますが、平日入れて1泊2日にすると余裕持って見て回れます。 夜に志太泉 (静岡の地酒) で一杯やれるし、屋台以外でも昼食もとることができますし。 去年も今年に続いて夜の大規模ショーの類はなし。 特に突出して目に止まったものがあったり、今年ならでの傾向・特徴を感じたということもありませんでしたが、 今年は春の高円寺も秋の三茶も観れていなかったので、時に軽く流しつつも大道芸浸りの二日間を堪能することができました。

過去の大道芸ワールドカップ in 静岡の写真集: 1999年2000年2001年2002年2004年2005年2006年2007年2008年2012年2013年2015年2016年

以下に観たカンパニー/パフォーマの中から主なものを個別にコメント付き写真で紹介。 パフォーマー名演目名については、自分で調べられる限り、 パフォーマーの公式サイトや、海外の大道芸関係のフェスティバルのプログラム などで一般的に用いられている表記に従っています。 調べがつけられなかったものについてのみ、 会場で配布されていたパンフレットに用いられていたものを用いています。

去年、光学望遠付きのコンパクトデジタルカメラを使わなかったのですが、今年も念のために持っていくも使わす。 パフォーマーの身体表現の面白さや息遣いを捕らえるような作品的な写真を撮りたいわけではなく、 少し引いて上演の様子がわかるような説明的な写真を撮るのであれば iPhone のカメラでも十分。 撮影だけでなく、撮影後の扱いも含め、スマートフォンの手軽さにはかないません。

11/02 11:30〜 @ 駿府城公園 メイン広場1

沢入国際サーカス学校出身で、 最近はながめくらしつの公演にも参加している [鑑賞メモ]、 谷口 界 & ハチロウ の juggling 2人組 ホワイトアスパラガス。 大技見せるのでなく、キャラクター演じるのでなく、動きの面白さで見せるのは好み。 ですが、ふとした立ち姿や踊りの動きの際に隙が多く、全体としてだらっと緩い雰囲気になってしまうのが、惜しいところか。

Mr. Dyvinetz
11/02 12:00〜 @ 駿府城公園 メイン広場1

チリ出身で Cyr wheel を得意技とするアクロバットパフォーマー Mr. Dyvinetz。 ダンス的に演出されたパフォーマンスを期待したのですが、そうではなく、軽う技を見せたり、観客に体験させたり。

11/02 13:00〜 @ 駿府城公園 富士見芝生広場

スウェーデンの teeterboard & acrobat duo Sons Company (Anton Graaf & Elnar Kling Odencrants)。 2015年 [鑑賞メモ] に続いての登場なので 今度はひと工夫あるかと期待したのですが、さにあらず。 客弄りとして客の使ってその上を飛び越えるようなこともありましたが、 基本的に技を見せるだけで、ショーらしい演出は無しでした。

Josefina Castro & Daniel Ortiz
11/02 13:00〜 @ 駿府城公園 富士見芝生広場

アルゼンチン出身の aerial cradle の男女 duo Josefina Castro & Daniel Ortiz。 開演の10分近く前からウォーミングアップで cradle に登り、客を煽って盛り上げつつの、ウォーミングアップがてら技見せ。 しかし、本番が始まってからは、すこしアブストラクトな弦楽四重奏に乗って、 ダイナミックながらロマンチックに躍るような演技を見せてくれました。

Incredible Mallakhamb
11/02 14:00〜 @ 駿府城公園 メイン広場3

インドの伝統的なパフォーマンス Mallakhamb の演技を3人組で。 短い Chinese pole の上で行う yoga という感じでしょうか。 伝統的な音楽やフォーマットを使うという程ではなく、 サービスで観客の体験させたりもしつつ、 テンポ良い音楽に乗りながら、次々と技を見せるという演技でした。

11/02 15:00〜 @ 駿府城公園 メイン広場3

アルゼンチン出身の Mariano Guz とイタリア出身の Egle Sciarappa の男女2人組 Bubble On Circus による soap bubble & magic のショー。 magic はさりげなく、巨大な soap bubble が見どころでしょうか。 比較的オーソドックスな演出でしたが、こういう微笑ましく可愛らしい雰囲気は好みです。

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まずは、1日目の前半まで。続きはまた後ほど。来週末以降でしょうか……。

Now for something completely different...

先週末というか連休が大道芸での静岡遠征もあって少々ハードだったので、今週末は少々休養モード。 土曜は秋冬物の買物に出かけた程度。 日曜は午後に大倉山へ。大倉山記念館で 黒沢美香追悼企画の『一人に一曲』を観てきました。 熱心な観客では決してなかったですが、風間るり子、ミカズキ会議、黒沢美香 & ダンサーズ、いずれも1度は観たことがあるという程度には自分の趣味生活と接点はありましたし、 知人が出演するということもあって、足を運びました。 久しぶりの知人と会場で遭遇したり。 最近の自分の趣味興味からだいぶ外れてきてしまったかもしれないなあと思いつつも、 こういう雰囲気が少し懐かしく思ったりもしたりと、回顧するには丁度良かったかもしれません。

[3595] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Tue Nov 7 23:43:36 2017

連休最終日の日曜も午後に池袋西口へ。この舞台を観てきました。

東京芸術劇場 プレイハウス
2017/11/05, 13:00-15:45.
Director: Ivo van Hove; Author: William Shakespeare; Translation: Hafid Bouazza.
Cast: Anne-Chris Schulting (Bianca), Aus Greidanus jr. (Brabantio, Lodovico), Hans Kesting (Othello), Harm Duco Schut (Roderigo), Hélène Devos (Desdemona), Halina Reijn (Emilia), Robert de Hoog (Cassio), Roeland Fernhout (Iago).
Dramaturge: Bram De Sutter; Scenographer, light design: Jan Versweyveld; Sound design: Marc Meulemans; Costumes: An D'Huys.
Premiere 01 Feb 2003

オランダ出身の Ivo van Hove は1981年から演出家として活動を始め、 2001年にオランダ・アムステルダムの劇団 Toneelgroep Amsterdam の芸術監督を勤めているという。 といっても、この劇団についてはほとんど予備知識は無く、 むしろ、National Theatre Live で上映される舞台のいくつかを von Hove が手がけているので、 そのような演出家の舞台を生で観る良い機会かと、足を運んでみました。 ちなみに、パリ Théâtre de l'Odéon で2014年に初演され、 Young Vig での上演が National Theatre Live で上映もされた A View From The Bridge 『橋からの眺め』で 2015年の Laurence Olivier Award の Best Director を受賞してもいます。

舞台を現代に移し替えての演出で、Othello はマグレブ・アラブ系の移民で、現代ヨーロッパの軍隊の将軍とでもいう設定で、 アラブ系移民に対する差別や、軍隊内でのホモソーシャルな人間関係、不安定な中東に対する警戒感などの現代ヨーロッパの問題、 そして、昇進や異性関係における嫉妬という当時も今も変わらない問題の絡めたドラマとしていました。 そんな解釈はむしろオーソドックスと感じられるものでしたが、ミニマリスティックの演出が好みで、かっこよく感じられました。

冒頭のベネチアの場面はドレープがかった薄青緑色のカーテンを舞台三方にかけた状態で、 キブロスの場面への転換では、大きな送風機でカーテンを煽りつつ落とし、 バックヤードなどがむき出しになった舞台の中央に、少し斜めになった状態でガラス張りのモダンな部屋がせり出してきます。 この部屋は Othello と Desdemona の私邸 (というか寝室) がメインの使われ方ですが、 小部屋前の空間が客をもてなす応接間のような空間として使われている時は その奥のプライベートな部屋のようになったり。 照明を落として向こう側が透けて見やすくした部屋の裏側で Cassio に Desdemona ハンカチを持って Iago と談笑させ、 表側から2枚のガラス越しで Othello に「覗き見」させる、そんな使い方が印象に残った。 もちろん、寝室で Othello が Desdemona を殺す最後の場面、 部屋の周囲の照明を落として部屋を明るく照明することで、暗闇に浮かぶ寝室内で事件が起こっているかのような演出も良かった。

この部屋の使い方が良かったので、 ベネチアとキプロスの場所の違いを表現してたとはわかるのですが、 ベネチアの場面から小部屋だけでできなかたのかしらん、と思ってしまいました。 Desdemona を殺す寝室で Othello がブリーフを履いているのは不自然 (元の上演では全裸だったらしい)、 エンディングに歌入りの曲流すのは余韻に浸る邪魔、とか、 ミニマリスティックでかっこいい舞台だっただけに、逆に気になってしまったところもありました。

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しかし、最近 National Theatre Live とかのイベントシネマで甘やかされてるので、 2幕で3時間近い長さなら、シネコン並みのシートで観たいなあ、と。 東京芸術劇場のシートの座り心地が悪いという程ではないのですが、背が肩下までしかないので首が疲れます。 ヘッドレスト相当の高さのあるシネコンのシートは楽だと、つくづく。

ちなみに、Ivo van Hove 演出の Hedda Gabler 『ヘッダ・ガーブレル』 の National Theatre Live が、12月頭に日本上映される予定になっています。 Hedda Gabler のメロドラマチックさには 去年末にハマったばかりですが、これも観にいこうかしらん、と。

しかし、連休を休養日を入れずにフルに使ってしまうと、さすがに体に堪えます。 秋のシーズンでイベントが多く、これでも観るのを諦めたものがたくさんあるのですが、それでも詰め込みすぎたかな、と。 無理の無い趣味生活にしたいものです(弱)。

[3594] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Nov 6 0:43:30 2017

土曜の夕方は、駒場から二子玉川へ急いで移動。続いてこのパフォーマンスを観てきました。

二子玉川ライズ ガレリア
2017/11/04, 17:00-17:30.
構成・演出: タグチヒトシ; 振付: 伊豆 牧子.
出演: 小野 知春, KAi MiWA, カケフダタクロー, 加部 壮平, くろけん, KC, SHIMBA, Hachi, 幸.

GRINDER-MAN [グラインダーマン] は 筑波大学総合造形 [鑑賞メモ] 出身のタグチヒトシの1997年に立ち上げたパフォーマンスグループ。 大学の先輩にあたる 明和電機 [鑑賞メモ] の下で工員だった人たちの作ったグループで、 1990年代末当時、耐熱防護服に身を包んだ男達が体に付けた鉄板にグラインダーを当てて火花を飛ばすパフォーマンス (このパフォーマンスの名の由来だ) が話題となり、 明和電機 に続く存在として看做されていた時期もあった。 その後、マルチメディアのパフォーマンスグループとして活動の幅を広げ、 現在は2005年に参加した振付家・ダンサーの 伊豆 牧子 と、2人を核として活動している。

GRINDER-MAN は2014年より、二子玉川のショッピングモール 二子玉川ライズ の主催、 世田谷パブリックシアター の制作協力で、 ショッピングモールの屋根付き広場「ガレリア」を舞台にした 野外パフォーマンス・シリーズ『rise Performance GO GO』を展開している。 この『Roulette』は、 『ZETTAI RED』 (2014)、 『MORE MORE』 (2015)、 『Forever Dancing』 (2016)、 『Marble』 (2016) に続く5作目。 以前から気にはなっていたのだが、なかなかタイミングが合わず、今回初めて観ることができた。

『Roulette』は『桃太郎』『太陽と北風』『白雪姫』『眠れる森の美女』『おおきなかぶ』『マッチ売りの少女』という民話・童話を題材に撮った、ライヴビデオプロジェクションとダンスのパフォーマンス。 といっても、物語るというより断片的な引用のコラージュで、 物語を朗読しつつポージングやダンスで構成したイメージビデオを撮影していく様子をパフォーマンスかしてライブで見せるよう。 キャッチーではないが、ビデオ撮影をパフォーマンスとして見せるようなメタなフレームワークはアート的。 しかし、過去のパフォーマンスの記録を見ると、観客とのインタラクションや借景のような空間使いをしていたようで、それを期待していたのだが、 この『Roulette』は野外パフォーマンスとしてやる必然性が感じられなかったのは残念。

連休中のショッピングモールでのイベントといえば大道芸も一般的になってきているが、 こういうパフォーマンスを持ってくるというのは、それらとの差別化という意味合いもあるのだろう。 しかし、世田谷パブリックシアターの協力も得て、それも継続して続けているというのは、頑張っていると思う。 このまま GRINDER-MAN で続けるのかどうかは別として、このような試みがうまく定着することを期待したい。

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[3593] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Nov 5 21:14:04 2017

文化の日を含む連休は、休暇を取って1日前倒し。 ほぼ毎年恒例となっていますが、2日から1泊2日で 大道芸ワールドカップ in 静岡 を観てきました。 狙いを絞って効率良く観て回れば日帰りできないこともないのですが、 休日は混雑もひどいですし、 平日入れて1泊2日にして余裕持って見て回った方が楽しめます。 屋台以外でゆっくり昼食もとれますし、夜に志太泉で一杯やれますし。 例年どうり今年も写真集を作りたいと思いますが、しばらく時間がかかるかと。 観たものについては備忘録を兼ねて twitter にツイートしていたので、 速報代わりに twilog の 11月2日11月3日 をご覧ください。

静岡から戻った翌4日は、疲れもあって昼頃まげぐったりしていたのですが、午後には駒場へ。 この舞台を観てきました。

こまばアゴラ劇場
2017/11/04, 15:00-16:30.
振付・演出: いいむろなおき
出演: いいむろなおき, 青木 はなえ, 田中 啓介, 三浦 求, 岡村 渉, 黒木 夏海, 谷 啓吾.

フランス École Internationale de Mimodrame de Paris Marcel Marceau (パリ市マルセル・マルソー国際マイム演劇学校) に学び、 1998年から関西を拠点に活動する いいむろなおき のマイムカンパニー。 東京でカンパニー公演を観る機会は少なく今まで見逃してきたが、今回やっと観ることができた。

いいむろなおきの演じる旅の男の、鉄道旅行中の居眠りの際に見た不条理な夢、というか、不条理なふれあい街歩き。 黒い剥き出しの舞台に暗色の匿名的な服装。白い箱、枠、カバンなど小道具も最低限で、そんな不条理な話を紡いでいく。 無地の黒いマスク使いも効果的。特に、主人公は夢の中ではマスクをし続けることで、個性的な誰かではない、むしろ観客自身を象徴させるよう。 ブラックライトで白手袋で手を浮かび上がらせ文字や形を形作ったりしたが、ストロボライトなどの照明技やビデオプロジェクションなどは使わず。 オーソドックスに緻密に組み上げられた身体表現で見せるような演出だった。 最初の方の居眠り前の鉄道旅の客車内の場面の ピクシレーション (コマ撮りを動画化した映像) をストロボライトも使わずにマイムで表現したところや、 主人公が登場しない中盤の夢中の場面で待ち合わせ中の男性が妄想する場面で 妄想している人物を舞台後方に、妄想の内容を舞台上手前方で描いて時にこの二つを相互作用させて表現したところが、 特に印象に残った。 ユーモアのセンスもよく良く、面白かった。

カンパニーデラシネラ 『ロミオとジュリエット』 [鑑賞メモ] のように セリフも排さずに物語ることにがっつり取り組んでいる良い作品もあるけれども、 KAAT × 小野寺 修二 『WITHOUT SIGNAL! 〔信号がない!〕』 [鑑賞メモ] に続いてこの舞台を観て、 動きの連想で自在につなぐスケッチ集のような作品がマイム演劇のオーソドックスな面白さだと、再確認。 水と油 〜 小野寺 修二 との作風の違いとして、空間の操作よりも時間の操作に焦点を当てているように感じたが、 いいむろなおきの観た作品はこの作品だけなので、作品のコンセプトや会場のせいかもしれない、とも。 シアタートラムくらいの広さのステージで観たら空間的な操作の面白さも楽しめたかもしれない、と思いつつ、 こまばアゴラ劇場の狭い舞台で7人でやるからパズルのような動きや位置どりの妙が強調される面白さもあったかな、と。

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[3592] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Oct 30 23:25:12 2017

日曜も、台風接近による本降りの雨の中、午後に東池袋へ。この公演を観てきました。

Einat Weizman
Palestine, Year Zero
あうるすぽっと
2017/10/28, 14:00-15:00.
Written and Directed by Einat Weizman
Cast: George Ibrahim, Gassan Ashkar, Amjad Badr, Rebecca Telhami.
Music: Suleiman Faraj; Stage & Costume Design: Salim Shehade.

イスラエルの劇作家・演出家 Einat Weizman による、イスラエルのパレスチナ占領政策に関するドキュメンタリー演劇 (ドキュコメディ [Docu-Comedy])。 イスラエルのパレスチナ占領政策に批判的な内容であるということで、本国では検閲と戦うこととなり、 上映禁止となった作品もあるという。 しかし、そういうバックグラウンドよりも、むしろ、 東京国際芸術祭 (現在の FESTIVAL/TOKYO ) 以来、その中東のカンパニーの公演をそれなりにしてきていることもあり、 パレスチナの Al-Kasaba Theatre [関連レビュー] の George Ibrahim が主演していること、 例えば、レバノンの Rabih Mroué のドキュメンタリー演劇作品 [関連レビュー] との共通点/相違点、 などの興味もあって、この Palestine, Year Zero へ運んでみた。

George Ibrahim 演じるパレスチナ人建築被害鑑定士が、 イスラエルのパレスチナ占領政策下でのパレスチナ人家屋の破壊を紹介していく形で、構成された作品。 戦争や軍事的な作戦だけでなく、報復、遺跡発掘、居住地制限のためなど、家屋が破壊される理由は様々。 男性2名、女性1名が、破壊された家屋に住んでいた住人を演じつつ (ほとんど朗読劇だが)、 舞台の上に「鑑定」の「証拠」の瓦礫を積み上げていく。 「ドキュコメディ」と題すほどのユーモアは感じられず、題材をかなりストレートに扱っていた。 これなら演劇ではなく素直にドキュメンタリ映画かノンフィクション本にした方が良いのではと思いつつ、 本国ではそのような形で表現することが抑圧されている題材だからこその表現文脈なのだろう。 並んだ鑑定の「証拠」の箱が瓦礫がぶちまけられていくビジュアルと、 ぶちまけられるたびに立ち上る土埃のかすかな臭いが最も印象的。 こういう生な感触は、メディアの扱いに長けた Rabih Mroué にはあまり無かったかもしれない。

現実の出来事を演劇化するドキュメンタリ演劇は、「虚実ないまぜの語り」という面がある。 この秋に観た大規模な国際現代美術展、『サンシャワー 東南アジアの現代美術展』 [レビュー] や 『ヨコハマトリエンナーレ2017 島と星座とガラパゴス』 [レビュー] でも、 実際の社会問題に取材した作品などの解説で、この「虚実ないまぜの語り」のような言い回しをざんざん目にした。 しかし、今年に入って大きな注目を浴びるようになったポスト・トゥルースのフェイクニュース、オルト=ファクトトゥルースにしても、「 自分なりの答えを持っているわけではないが、「虚実ないまぜの語り」が許させる条件のというのはあるのだろうか (芸術なら許されるとか、少数派、反体制なら許されるというものではないだろう) と、ひっかかっている。 少なくともこのようなポスト・トゥルースの時代に芸術における「虚実ないまぜの語り」を素直に称揚する気になれないことが、 このようなドキュメンタリ演劇やSEAと呼ばれるようなプロジェクト的な現代アートに距離を感じるようになってきている一因だ。

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[3591] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Oct 29 20:00:14 2017

10月も末だというのに今週末も台風。 沖縄出張が延期となって、仕事上もプライベートもスケジュール的に少し余裕ができて助かりましたが。 そんな中、土曜は午後に雨の降り出した与野本町へ。このダンス公演を観てきました。

バットシェバ舞踊団/オハッド・ナハリン 『Last Workーラスト・ワーク』
彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
2017/10/28, 15:00-16:15.
By Ohad Naharin.
Performed by: Etay Axelroad, William R. Barry, Yael Ben Ezer, Matan Cohen, Benjamin Green, Hsin-Yi Hsiang [項 馨儀], Chunwoong Kim, Rani Lebzelter, Hugo Marmelada, Eri Nakamura [中村 恵理], Nitzan Ressler, Maayan Sheyfeld, Yonatan Simone, Amalia Smith, Imre Van Opstal, Natalia Zinchenko, Erez Zohar.
Lighting: Avi Yona Bueno; Stage Design: Zohar Shoef; Costume Design: Eri Nakamura.
Soundtrack Design and Edit: Maxim Warratt; Original Music: Grischa Lichtenberger.
Additional Music: Sagat: “Few Mysteries Solved in a Year of Contact”; Hysterics: “Club Life”; MPIA3: “Crusty Juice”; Monkey: “Volume VIP”; Lullabies-of-Europe: “Nani, Nani, Mummies Baby”; Lullabies-of-Europe: “Nani, Nani My Sweet Little Baby”; Clara Rockmore: “Berceuse (Stravinsky)”
World Premiere: June 2015, Suzanne Dellal Centre, Tel-Aviv.

Ohad Naharin 率いるイスラエル・テルアビブ (Tel Aviv, Israel) の Batsheva Dance Company の2年ぶりの来日は、2015年の作品で。 前回2015年の Decadance が過去の作品から抜粋構成した作品だので [レビュー]、 実質2012年の Sadeh21 [レビュー] ぶりという感もあった。

舞台袖のダンサーの出入りする仕切り状の構造と、後方の腰掛けることができる程度の台程度の最低限の美術で、ストーリー性を感じさせないノンナラティヴな1時間余。 最初は、暗色ながらダンサーによって異なる色の衣装で、個々のダンサーのソロを見せていくような展開。 中盤、白の下着のような衣装に着替え、女性一人はチュチュ、時に長い黒いガウンを羽織った服装へ。 次第に2人で組むような動きになったり、皆が床に広がってと、集団的な動きが増え。 最後、音楽が minimal 〜 hardcore な techno になると 個々のダンサーが集まって異なる動きをしつつも細かい反復を重ねていき、デス声のヴォーカルも登場し、 マイクスタンドやダンサーをガムテープでぐるぐる巻きにして、終わった。 ほぼ最初から最後まで約1時間余り、 下手後方で青いドレス姿の女性がランニングマシンの上で走り続けていた。 それも、視覚的にビートを刻むよう — 実際、音楽が止むと、彼女の足音がビートを刻むようだった。

後半の minimal 〜 hardcore techno な展開が盛り上がるのも確かだが、 電子音も1980年代の Made To Measure 風の緩い音楽を使い、中盤の白い下着様の衣装でフロアでマスな動きしてた所が良かった。 バルカン〜レヴァント地方にありそうな子守唄がふっと挿入されたりもしたので、 ベッドで眠りに付くことに着想したダンスだったのだろうか。 Batsheva のダンスを見ていると体操 (gymnastics) 封とと感じることが多いのだけど、 アクロバットに基づく Cie XY [レビュー] と続けて見ると、 さほどでもなく、バレエ的ではないけれども、やはり正統なモダンダンスの系譜なんだろう、とも感じた。

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[3590] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sat Oct 28 11:10:30 2017

先週末は台風で大荒れの天気。月曜未明が大荒れのピークでしたが、土曜も昼には本降りの雨。 そんな中、昼過ぎに三軒茶屋へ。この公演を観てきました。

Il n'est pas encore minuit...
カンパニー XY 『夜はこれから』
世田谷パブリックシアター
2017/10/21, 15:00-16:15.
Création: Compagnie XY
Acrobates: Airelle Caen, Alice Noël, Amaia Valle, Andrés Somoza, Antoine Thirion, Antonio Terrones y Hernandez, Birta Benonysdottir, Charlie Vergnaud, David Badia Hernandez, David Coll Povedano, Evertjan Mercier, Guillaume Sendron, Gwendal Beylier, Jeremie Robert, Mohamed Bouseta, Mikis Minier-Matsakis, Soen Geirnaert, Thibaut Berthias, Thomas Samacoïts, Xavier Lavabre, Yamil Falvella, Zinzi Oegema.
Collaboration artistique: Loïc Touzé, David Gubitch, Valentin Mussou et Emmanuel Dariès; Collaboration acrobatique: Nordine Allal; Intervenants Lindy Hop: Aude Guiffes et Philippe Mencia
Création lumière: Vincent Millet; Création costumes: Nadia Léon assistée de Mélodie Barbe
Directeurs de production: Peggy Donck et Antoine Billaud
Creé: 2014.

Compagnie XY は Abdeliazide Senhadji (この公演にはパフォーマーとして参加していない) らによって設立されたサーカスカンパニー。 大人数のアクロバットパフォーマーによる作品を特徴としているようで、 Le Grand C (2009) では17名のパフォーマーを使っている。 この作品で2012年に鳥の劇場 (鳥取県) で初来日公演があったが、残念ながら観られず。 今回、22名のパフォーマーによる Il n'est pas encore minuit... での再来日公演を観てきた。

planche coréenne (teeterboard, シーソー) などのアクロバット用の道具は用いたが、 大道具その他の装飾的な舞台美術は使わない、黒い剥き出しのステージで繰り広げられる、 非物語的な演出で大人数ならではのアクロバットの構成の妙を楽しませた1時間余りだった。 繋ぎのマイムとかダンスもあまり無いが、大人数なだけあって、組み合わせのバリエーションは多彩。 腕で上げたりして人の塔を立てるだけでなく、振り上げたり、シーソーで跳ね上げたりの飛ぶ動きも多い。 並行して同じ演技をするのはもちろん、クロスに上下に交錯するような動きも見事。 円柱を作ったり板も使って大きな塔を作るなど、大人数ならではの演技も楽しめた。

確かに大技もあるけど、花形の芸人の大技で盛り上げるというより、集団的な動きの妙で見せる構成だった。 命綱は使わずに、危険な技の際は受け止める位置に人が入るのだけど、そのフォーメーションも含めて演技となっていた。 位置取りに幾何的な構造を感じさせるときはあるけれども、緩さを残しマスゲーム的なきびきびと統率取れた動きでは無い。 衣装は色彩を抑えた普段着のような衣装はある程度の統一感を持たせる程度で、ユニフォームではない。 女性もフライヤー (塔の上になったり投げ上げられたりする人) だけでなく、 女性だけで塔を作ってポーター (塔の下になったり投げ上げたりする人) になる時もあったり。 (流石に女性がポーターで男性がフライヤーという組み合わせは体格的になかったと思う。) 音楽的とまでは感じさせなかったが、非物語的で、緩く構造を持たせるような演出は、Rosas を連想させられりもした。

スラップスティックに笑いを取る場面もほとんど無かった、ユーモアを感じさせる場面も楽しんだ。 わかりやすい華やかさ、キャッチーさは感じられなかったが、それも含めて持ち味だろうか。 多様な演技で飽きることなく楽しめた1時間余りだった。

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この公演は、毎年恒例、『三茶 de 大道芸』に合わせて開催されるサーカス公演プログラム。 本降りの雨の中、屋根のある一部の会場のみに縮小して、大道芸を開催していました。 この公演と合わせて大道芸も観ているので、今回も軽く観て回りはしたのですが、 本降りのの中を観て回るのは辛すぎます。 ということで、今年はほとんど観ず仕舞いになってしまいました。

[3589] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Oct 23 0:27:44 2017

1週間前の日曜も雨。それでも、午後に大崎というか御殿山へ。美術館でのコンサートを聴いてきました。

向井山 朋子
[Canto Ostinato] on Piano
原美術館
2017/10/15, 15:00-16:30
Simeon ten Holt: Canto Ostinato (1976).
向井山 朋子 [Tomoko Mukaiyama] (piano)

アムステルダム在住のピアノ奏者 向井山 朋子のソロのピアノコンサート。 ダンス公演 [レビュー] だったり、 ビデオインスタレーションの中でのコンサート [レビュー] だったりを観ることが続いていたので、 美術館の中で、それも少々コンセプチャルな作品だけど、ピアノ演奏をメインとしたコンサートを久々に聴くのもいいかな、と、足を運んでみた。

取り上げた曲は、106のセクションからなるもので、各セクションは演奏者が好きなだけ反復し、その中で十分な表現がなされたと感じたら次のセクションへ進むというもの。 各セクションにおける演奏の仕方は、演奏者にかなりの部分が任されているよう。 反復という点ではミニマルミュージックと似たところもあるが、かなり即興的な要素の大きな作品だ。

「執拗に反復される歌」という意味のタイトルだが、まさに執拗に反復されるピアノのフレーズの約一時間半。 時に童謡のような旋律、時にロマンチックに技巧的な旋律が、浮かび上がっては消えていく。 ストイックなミニマルミュージックとはちょっと違った感触だった。 メロディなどに映画音楽的なキャッチーさを感じる時もあって、作曲の文脈を除けば、post classical に近い感触。 あと、素朴な旋律に Meredith Monk のようと感じた時もあった。 さすがに1時間半ともなると反復が催眠的に感じるときもあったが、 時折り浮かび上がってくるキャッチーなフレーズが、むしろ息継ぎになったようにも感じられた。

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秋の原美術館の庭は気持ちよいだろうなあ、という期待もあって、行くことにしたコンサートだっただけに、雨だったのはつくづく残念。

原美術館で開催中の展覧会は、田原 桂一 『光合成 with 田中 泯』 (12/24まで)。 お蔵入りしていた1978年から1980年にかけて世界各地で撮った 田中 泯 とのフォトセッションの写真に基づく展覧会。 この展覧会に向けて2016年に再び撮ったフォトセッションの写真も含まれています。 白黒の粗い写真で黒光りする金属の彫刻のように裸の 田中 泯 を撮っています。 若い 田中 泯 はリアルタイムでは観ておらず、今世紀に入ってからの印象が強いので、太さすら感じる若い体に感慨深いものがありました。

[3588] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Oct 22 22:59:21 2017

1週間前の土曜も雨。そんな中、夕方に家を出て池袋東口へ。この映画を観てきました。

2010 / 31min 48sec / video (color, sound).
Written & directed by Wael Shawky
2012 / 59min 04sec / video (color, sound).
Written & directed by Wael Shawky
Cabaret Crusades: The Secret of Karbala
2015 / 120min. / video (color, sound).
Written & directed by Wael Shawky

Wael Shawky は、エジプト出身でアメリカで美術を学び、主に現代アートの文脈で映画やパフォーマンスの形で作品を制作している作家。 彼の人形劇映画として制作された Cabaret Crusades 『十字軍芝居』三部作が、 演劇祭 FESTIVAL/TOKYO の1プログラムとして一挙上映されたものを観てきた。 Wael Shawky は dOCUMENTA(13) [レビュー] でも Neue Galerie で、 『ヨコハマトリエンナーレ 2017』 [レビュー] でも横浜美術館で展示されていたが、 大規模な国際美術展の中でビデオインスタレーションとして観るには長尺過ぎて、断片的にしか観ておらず、その印象は薄かった。 映画館でちゃんと観るなかなか無い機会だろうと足を運んだ。

11世紀から13世紀にじかけて「フランク」が行った十字軍をアラブ側の史料に基づいて描いた アミン・マアルーフ (Amin Maalouf) の『アラブが見た十字軍』に着想した3部作で、 第1作 The Horror Show File がエルサレム占領と十字軍国家設立に至った第1回十字軍 (1096-99)、 第2作 The Path to Cairo は第2回十字軍 (1147-1148) 前後の ザンキー (Zengi) 朝やダマスカスの動向を、 第3作 The Secret of Karbala はサラディン (Salah ad-Din) によるエルサレム奪回に始まる第3回十字軍 (1189-1192) と 聖地エルサレムに行かずにビザンツ帝国のコンスタンチノープルを攻略・略奪した第4回十字軍 (1202-1204) を描いていた。 Shawky 自身がデザインした人形による人形劇だが、登場人物を内面を描くのではなく、 主に支配階層の関係を、図式的に示すようなもの。 その造形もリアルではなく、第1作では半ば朽ちた木製の人形を再利用したものだったが、 第2作のクレイ、第3作のヴェネチアン・グラスに至っては、中東風ですらない、むしろプリミティヴな彫刻のような異形の造形。 『アラブが見た十字軍』は読んだことがあるのだが、 この映画を観て理解が深まるような作品ではなく、 むしろ、『アラブが見た十字軍』を踏まえた上で、それをこう描くのかと読むような作品だった。

造形が異形となっていく第2部、第3部になるにつれ、それが面白くなるのだが、それに説得力が感じられなかったのも確か。 同じアミン・マアルーフの脚本で、抽象的で特定の場所時代を感じさせないビジュアルを使いながら、 十字軍時代の地中海世界という設定とは関係無い普遍的な遠距離恋愛の物語に仕立てた Robert Lepage 演出のオペラ L'Amour de Loin 『遥かなる愛』 [レビュー] のことなども思い出してしまった。

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この映画を観るにあたって、 アミン・マアルーフ 『アラブが見た十字軍』 (リブロポート, 1986; Amin Maalouf: Les croisades vues par les Arabes, 1983) を再読しようかと思ったのですが、引越し後未開封の段ボール箱中で行方不明。 文庫化されたので買い直してもいいかと思いつつ、本は持っているので Kindle がいいなあなんて躊躇しているうちに、タイミングを逸してしまいました。ううむ。 というか、今後、紙の本は減らしていきたいんですけど。

[3587] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Oct 22 21:50:28 2017

すでに2週間前の話になってしまいましたが。10月8日は昼過ぎに横浜みなとみらいへ。 ヨコハマトリエンナーレを観てきました。

Yokohama Triennale 2017: Islands, Constellations & Galapagos
横浜美術館 / 横浜赤レンガ倉庫1号館 / 横浜市開港記念会館地下 他
2017/08/04-2017/11/05 (休場日: 第2,4木曜日), 10:00-18:00 (10/27-29,11/2-4 10:00-20:30)

ヨコハマトリエンナーレも今年で6回目。第1回から毎回足を運んでいるが、 横浜美術館をメイン会場とするようになって、少々大規模な程度の国際現代美術展という印象が強まっていた。 そんなこともあって今回もあまり期待せず、むしろ最近できていない美術館・画廊巡り代わり、気になる作家・作品にいくつか出会えれば、という軽い気分で足を運んだ。 気楽な気分で臨んだせいか、2008年 [レビュー] ほどではないものの、久々に楽しむことができた。

全体して設定されいるテーマが自分の興味から外れつつあるということは相変わらずだったし、 今まで意識することの無かった作家にさほど出会えたわけでなく、 以前から好きな作家の作品を楽しむことが多かったけれども、 以下では、印象に残った作家・作品へ個別に軽くコメント。

横浜美術館ファサードの救命ボートと救命胴衣によるインスタレーションは艾 未未 [Ai Weiwei] (中国)。 これらは難民救助のために実際に使われたものとのこと。 難民問題をテーマにした作家・作品が他にもあり、一つのテーマ提示といったところか。

横浜美術館の会場入口にあたるグランドギャラリーに置かれた Joko Aviant (インドネシア) の巨大な竹の編物。 地域固有の素材や技法を使ったマッシプなインスタレーション、というのはありがちだが、 中空の籠状の構造かと思いきや中もギッシリ詰まっていることに気づいて、少々驚き。

畠山 直哉 は東日本震災後の故郷を撮り続けているシリーズ『陸前高田』 (2011-) と、 フランスのノール・パ・ドゥ・カレー地方にあるボタ山を撮ったシリーズ Terrils (2011)。 パノラマ写真を円形にインスタレーションした展示はトリエンナーレらしいと思ったが、 やはり、Terrils のような静謐で端正な写真が好み。 人影の気配の写し込みも絶妙。 2011年の東京都写真美術館での回顧展 [レビュー] 以来、個展から遠ざかってしまっているので、 久しぶりに個展でゆっくり観たくなった。

Olafur Eliasson [関連レビュー] は お馴染み National career lamp (2007) も展示されていたけれども、 メインはワークショップによる Green light - An artistic workshop。 安定のかっこよさだったけれども、ちゃんとしたインスタレーション作品を観たかった。

フィリピンの Mark Justiniani は、 ほぼ平行に置いた鏡とハーフミラーを使って、トンネルの入り口や地下への降り口を出現させるインスタレーション。 シンプルなアイデアで、トリックアートといてありがちな気もするけど、細部をちゃんと作ってあって、こういう作品は嫌いじゃない。

横浜赤レンガ倉庫1号館へ移動して。 ポーランドの Christian Jankowski は身体 (特に体操的な) と芸術をテーマした三部作。 Heavy Weight History [YouTube] は、 歴史的な人物モニュメントを重量挙げ選手 (元国内チャンピョンやオリンピック選手を含む) たちに持ち上げさせる「競技」を、 スポーツ中継風のドキュメンタリ映像と彫刻を撮ったかのような白黒の端正な写真として作品化したもの。 周囲の大国に翻弄された近世以降の自国の歴史の「重さ」を重量挙げの「重さ」とかけた辛口のユーモアといい、スポーツ中継のパロディという形式といい、 Monty Python のスケッチかと思わせるところがありましたが、こういうユーモアは大好き。 バブリックアートの彫刻を使って器械体操の演技をする様を即物的に白黒写真に捉えた作品 Artistic Gymnastics も、 本来「器械体操」と訳される “Artistic Gymnastics” の Artistic をあえて「芸術的」と読み替えた上で 真面目に画像化してみせるセンスが良い。

アイスランドのパフォーマンスアーティスト Ragnar Kjartansson の The Visitor (2012) は、 9面のスクリーンを使ったビデオインスタレーション。 米ニューヨーク州の Hudson River Valley の歴史的な屋敷を舞台に、 その各部屋に8人のミュージシャンが別々に入り、ヘッドホンからの音だけを頼りに曲を演奏するというもの。 タイトルは ABBA のラストアルバムから採られているとのことだが、ABBA 風の音楽ではなく、 緩くメランコリックで indie folk / freak folk 的。 ちなみに、曲は Kjartansson の元妻 Ásdís Sif Gunnarsdóttir によるもの。 映像だけでなく、音楽を含めて、少々暗いトーンで感傷的な雰囲気は、 アメリカ的というより、アイスランドの indie pop などにつながる北欧的なものに感じられた。

最後は横浜市開港記念会館の地下。ここは、柳 幸典 の特別会場。 去年に BankART Stuido NYK で『ワンダリング・ポジション』を観たばかりだったので [レビュー]、 その再構成というか縮小再生産のような印象は否めなかったが、 古い建築物の地下を使い照明効果で廃墟的な雰囲気も作り出してのインスタレーションは、さすが。

BankART Life V - Kanko
BankART Studio NYK
2017/08/04-2017/11/05 (休場日: 第2,4木曜日), 10:00-19:00 (10/27-29,11/2-4 10:00-21:30)

ヨコハマトリエンナーレのフリンジ/オフ的なプログラムとして第2回のトリエンナーレから始まった、BankART Life も今年で5回目。 新港ピアを会場に大規模にやった回もあったけれども、今回は BankART Studio NYK の3Fをメインとしてこぢんまりと。 黄金町にかけての街中にも展開してたが、この BankART Studio NYK の展示だけ観てきた。 前回は少々残念な内容だったが [レビュー]、今回は初期の BankART Life [レビュー] に雰囲気が戻ったよう。 印象に残った作品について個別にコメント。

レジ袋を使って作った白い造花の花畑、丸山 純子 「無音花畑」は、 その色質感が殺伐といた剥き出しのコンクリートの空間にぴったり。

Nibroll の 高橋 啓祐 の波のような青い光のプロジェクション。 丸山 純子 の作品にしても、アンビエントなインスタレーションで、 自己目的化した芸術作品というより、舞台美術などの応用美術に近いセンスとは思うが、それも良い。

お馴染み 牛島 達治 の無用の機械。 不安定に回り続ける「大車輪—プロトタイプ」のぎこちなさ危うさも良いけれども、 エンドレスに大谷石を刻み続ける「地中より選ばれいずるもの–文明」の音響も耳を捉える。 BankART Studio NYK の雰囲気にも合っていて、さすがの安定感だった。

日産アートアワード2017 ファイナリスト7名による新作展』
Nissan Art Award 2017: Exhibition of New Works by Seven Finalists
BankART Studio NYK
2017/09/16-2017/11/05 (休場日: 第2,4木曜日), 10:00-19:00.

2013年に始まったバイアニュアルの現代アートを対象としたアワードの 最終選考者5名による展覧会が BankART Studio NYK の2階を使って開催されていた。 前回2015年の展覧会が良かった [レビュー] が楽しめたので、少々期待したのだが、 ヨコハマトリエンナーレや BankART Life の間で埋没してしまったか、 ここにたどり着く前に自分の集中力が枯渇してしまったのか、ピンとくる作品が無かった。

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最後に、BankART Studio NYK 1階 kawamata hall で、 『BankART Life V - Kanko』のパフォーマンスイベント・シリーズ「Cafe Live」の一つ 内木 里美 『金魚。鮒に還る。』も観ました。 しかし、昼からひたすら現代アートを観て回って疲れ果ててから観るようなものではなかったでしょうか。うむ。 無理して悪コンディションで観るもんではないと、反省。

[3586] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Oct 15 10:48:17 2017

先週末土曜は昼前には東銀座へ。この舞台を観てきました。

歌舞伎座
2017/10/07, 11:30-15:40.
脚本: 青木 豪; 演出 宮城 聰.
尾上 菊之助 (迦楼奈 [カルナ], シヴァ神), 中村 時蔵 (汲手 [クンティ] 姫), etc

2014年の Festival d'Avignon で『マハーバーラタ 〜ナラ王の冒険〜』を上演した SPAC 静岡芸術劇場の 宮城 聰 が演出した新作歌舞伎。 『マハーバーラタ 〜ナラ王の冒険〜』は2012年に観て、その祝祭的な雰囲気を楽しんだので [レビュー]、 どのような歌舞伎になったかの興味もあって観てきました。

古代インドの神話的叙事詩『マハーバーラタ』 (Mahabharata) は長大で、様々な物語が含まれています。 ク・ナウカ 〜 SPAC は物語中物語であるナラ王の物語を取り上げていた一方、 この歌舞伎は『マハーバーラタ』の全体の話の流れを生かすよう歌舞伎化されていました。 話の流れを損なわないよう、日本の中世〜近世の風俗と大きな違和を感じさせないよう見せ場を繋いでおり、その点はさすが、と。 にもかかわらず、やはり SPAC 色を感じたのは、 SPAC で音楽を手がける 棚川 寛子 の音楽と SPAC の楽団による通常の歌舞伎では使われない打楽器 (スティールパンなど) の音色のせいでしょうか。 セリフも耳に馴染んていったせいもあるのか、後半に進むにつて聞き取りやすく現代劇ぽく感じられるようになりました。 そういう意味では、宮城 聰 / SPAC らしい祝祭性を感じる作品だと思ったのですが、 戯曲中心の作品やミニマルにそぎ落とされた演出による作品なども上演される現代劇の劇場ではなく、 すでにハレのお祭り的な空間となっている歌舞伎座で上演しても、 その祝祭性が埋没してしまうよう。 上演される文脈の重要性も意識させられた鑑賞でした。

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晩は世田谷若林の元大家さん宅での秋刀魚宴。 隣 (というか同一敷地内に) 住んでいた時と同じ気分で、つい、日付が変わる時間近くまで呑んでしまいました。 秋刀魚の写真を撮り忘れたので、代わりに持って行ったボトル (Rodenbach Caractère Rouge (いわゆる赤ビール) と Gouden Carlos Cuvée van de Keizer (ウイスキー酒精強化ビール) の写真を。) それでもなんとか電車で小杉まで帰ることができるという知見を得ることができたのが、収穫でしょうか。 (ま、そんなことはあまりしないことに越したことはないですが。)

[3585] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Tue Oct 10 0:05:49 2017

一週間余前の話になってしまいましたが、先の週末の日曜は、午後に横浜山下へ。 この舞台を観てきました。

KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ
2017/10/01, 14:00-15:15.
演出: 小野寺 修二 (カンパニーデラシネラ)
演出補助: 藤田 桃子; 美術: 石黒 猛; 照明: 吉本 有輝子; 音響: 池田 野歩; 衣装: 武徳 ドンファン; 舞台監督: 橋本 加奈子.
出演: Nguyen Hoang Tung, Nguyen Thi Can, Bui Hong Phoung, Nung van Minh, 荒 悠平 [Yuhei Ara], 王下 貴司 [Takashi Oshita], 崎山 莉奈 [Rina Sakiyama], 仁科 幸 [Miyuki Nishina].

『ロミオとジュリエット』 [レビュー] など、 カンパニーデラシネラでの古典的な原作のある物語的な作品が最近では印象に残っている 小野寺 修二。 今回はKAATの制作で、カンパニーデラシネラでお馴染みの日本人ダンサーとベトナムのダンサーとコラボレーションして作った、ベトナムを題材とした作品だ。 このこうな国際的なコラボレーションはえてして「伝統的」な物語や舞踊に着想したエキゾチズムに堕してしまうことが多く、 少々嫌な予感もあったのだが、どうなることかと足を運んでみた。

スクーターや車の行き交う活力ある現代のベトナムの街のイメージを、 物や音、そして動きの連想などで自在に繋いで構成した1時間余。 椅子だけでちょっと荒い運転をする車を表現したり、 離れた二人の動きを関連させて一つの場面を作ったり、 ミニチュアの車の動きと人の動きを連動させたり。 複数の赤い小さな椅子と机が街ゆく車となったり、合わさって屋台となったり。 いつも 小野寺 自身が演じる不条理な状況に放り込まれた道化的や役割の男性を Nguyen Hoang Tung が演じていたのだけど、マイム俳優だけあって、実に好演していた。 観ていて、カンパニーデラシネラというより 水と油 を思い出した。 というか、水と油 時代からのお馴染みの表現ではあるのだけど [レビュー]、 現代ベトナムの街というテーマを得て、新鮮に楽しめた。

もちろん、スクーターのハンドル部分を模したバーのヘッドライト部に ポータブルのプロジェクターを仕込んで、街中の様子をダンサーが持った板に動き回りながら投影することで、 スクーターで街中を走りながら見る流れるような断片的な光景を再現したり。 ポータブルのLED照明をスマートフォンに見立てたり、ミニチュアの道を照らす街の照明としたり。 こういう、電子ガジェットの使い方も、ハイテクな演出ではないものの、見立てのアイデアも良く、楽しめた。

カンパニーデラシネラではない公共劇場制作で、物語的ではないスケッチ集のような作品としては、 『シレンシオ』 [レビュー] なども思い出すのだけど、 それと比べても格段に良かったのは、テーマがはっきりしていたからだろう。 『シレンシオ』を観たときは物語的な枠組みがあったほうがよいのではないかと思ったけれども、 この『WITHOUT SIGNAL! 〔信号がない!〕』は、テーマの選び方次第では非物語的でもまだまだいけると思わせるだけの作品だった。

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[3584] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Oct 9 18:43:52 2017

週後半の出張の疲れが抜けず、先週末の土曜は昼過ぎまで、家事をしつつ休養していたのですが、夕方に六本木へ。 いきつけのジャズ喫茶に顔を出す前に、『六本木アートナイト』を軽く冷やかす程度のつもりだったのですが、 意外にも混雑していなかったので、勢いでこの展覧会をがっつり観てしまいました。

Sunshower: Contemporary Art from Southeast Asia 1980s to Now
国立新美術館 企画展示室2E
2017/7/5-10/23 (火休), 10:00-18:00 (金土 10:00-18:00)
森美術館
2017/7/5-10/23 (無休), 10:00-22:00 (火 10:00-17:00)

ASEAN設立50周年記念として、六本木の2つの美術館で同時開催されている 東南アジアの10カ国の80組を超える作家からなる大規模な展覧会。 一応、9つの視点からまとめられているが、強い方向性を示すほどではない。 近代的な絵画作品や彫刻作品はほとんど無く、インスタレーション作品やプロジェクトのドキュメンテーションがほとんど。 1980年代からと時代設定されているが、特に冷戦終結後の地域統合と経済発展の進んだ時代を背景として、 植民地時代の抑圧や冷戦時代の紛争・紛争の記憶や、地域統合の中での民族のアイデンティティの問題、 経済発展の影となる社会問題などをテーマとしたような “socially engaged art (SWA)” (21世紀の現代美術の世界的な潮流の一つだが) が多く集められていた。 特に、国立新美術館の展示は、SEA色濃いものだった。 そんな多くの沢山の作品の中から、自分の目に止まった作家をいくつか。

森美術館の「歴史との対話」コーナーに展示されていた カンボジアの Vandy Rattana による、内戦中の地雷や爆弾でできた池を捉えた写真シリーズ Bomb Ponds (2009) は、 dOCUMENTA(13) [レビュー] でも観ているけれども、 人影も無く静かに緑に沈む様子を静かに端正に捉えた写真はかなり好みだと再確認。 内戦で失った会ったことも無い姉の眠る地—大量虐殺された何千人もの人が眠る地—訪れた時の様を 独白ナレーション付きで映像化した Monologue (2015) も、 大きく育った2本のマンゴーの木と周囲の緑を静かに抽象的に捉えた映像と、 淡々とナレーションに、逆に引き込まれるものがあった。

森美術館の「発展とその影」コーナーに展示されていたカンボジアの Lim Sokchanlina の 写真シリーズ National Road Number 5 (2015) は、 再開発で失われつつある国道沿いの古い安普請の家を捉えたシリーズ。 Edward Ruscha: Twentysix Gasoline Stations (1963) の21世紀初頭経済復興期カンボジア版のようでもあり、 ミッドセンチュリーのアメリカと、21世紀東南アジアの違いを見るようでもあった。

「発展とその影」コーナーには、 抽象化されたフレームとスピーカーでの振動で高速道路を表現した Zul Mahmod (シンガポール) の VIBRATE Vibration (2017) や、 宗教や政治に関するデモ・演説をモーターバイクとメッセージの描かれた旗によるインスタレーションで抽象化した Jompet Kuswidananto (インドネシア) の Words and Possible Movement (2013) など、 他にも印象に残る作品があった。

新国立美術館で印象に残ったのは、「日々の生活」コーナーのいくつかの作品。 パンジャブ系の生地店の様子を濃密なインスタレーションにしてあまり意識されない国際的な人の動きを示した Navin Rawanchaikul (タイ) の A Tale of Two Homes (2015)、 家屋の廃材や涙滴型の真鍮鋳物を構成した抽象化された象徴的なインスタレーションとナラティブなビデオを組み合わせた Arin Rungjang (タイ) の Golden Teardrop (2013) などだ。

この晩は『六本木アートナイト』ということで、 六本木ヒルズや東京ミッドタウンのあちこちで展示やパフォーマンスが行われていた。 あまり時間をかけずに軽く観て回っただけだので、ピンとくるものには出会えなかった。 Anish Kapoor / 磯崎 新 による Lecerne Fetival Ark Nova 2017 in Tokyo Midtown の内部を観ることもできたが、 さすがに Lecerne 関係以外の一般のイベントはここでやっていなかったため、少々空虚なものであった。 これもスペシャルミニコンサートをやっている時に見れば、また違ったのかもしれない。

[このレビューのパーマリンク]

[3583] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Oct 1 22:14:37 2017

先週末日曜は、夕方遅くにふらりと横浜関内へ。 舞台作品を収録した映像の上映を行う神奈川芸術劇場 KAAT の企画 KAAT de CINEMA 2017 の中から、 このビデオを観てきました。

Back to the 80's
2017 / Centre National de la Danse (France) / 55min.
KOK, Régine Chopinot (choreo./dir.), 1988; Caramba, Philippe Decouflé (choreo./dir.), 1986; Les Raboteurs, Angelin Preljocaj (choreo.), Cyril Collard (dir.), 1988; Mammame, Jean-Claude Gallotta (choreo.), Raoul Ruiz (dir.), 1986; Tauride, Catherine Diverrès (choreo.), Téo Hernández (dir.), 1992; Dix Anges, Dominique Bagouet (choreo.), Charles Picq (dir.), 1988; La Fiancée aux Yeaux de Bois, Karine Saporta (choreo.), Luc Alavoine (dir.), 1989; Anne de la Côte, N+N Corsino (choreo.), Nicole Alix & Marielle Gros (dir.), 1986; Waterproof, Daniel Larrieu (choreo.), Jean-Louis Le Tacon (dir.), 1986; Violences civiles, Odile Duboc (choreo.), Jacques Renard (dir.), 1990; Etreinte (L'), Joëlle Bouvier et Régis Obadia (choreo./dir.), 1987; 46 Bis, Pascal Baes (dir.), 1988.
Compilation program edited by Cinémathéque de la Dance

フランス Centre National de la Danse のシネマテークによる1980年代フランスをテーマとした ダンス映像集。 画質も悪く、作品全体を捉えたものではなく短い抜粋も多く、YouTube や Vimeo の動画で観られるものも少なくないということは、 去年の Dance New Air での同様の上映 [レビュー] から予想が付いていたが、 上映会というきっかけが無いと集中して観る時間がなかなか取れないし、 大きな画面で見た方が細部が見易いので、足を運んだ。 さほど期待していなかったこともあるのか、セレクションが良かったのか、 Nouvelle danse française が興隆した1980年代のフランスのシーンの勢いと多様さが感じられ、 去年の Dance New Air の時よりも楽しめた。 以下、個別の作品について。

プロボクシングに着想した Régine Chopinot: KOK や、 見世物小屋的な Philippe Decouflé: Caramba では、 1980年代ならではのポップな完成度を持つキッチュさを楽しんだ。 Gustave Caillebotte の絵画に着想した Angelin Preljocaj: Les Raboteurs [YouTube] には後の映画監督としての活動につながるメタ映画的なセンスを見ることができた。 2015年にシャンソンで踊る可愛らしい舞台を見せてくれた Daniel Larrieu が ほとんどシンクロナイズドスイミングなWaterproof [YouTube のような作品を作っていたというのも、なんでもありの時代だったのだな、と。 Lili Boniche の歌うアラビア語のタンゴ “Ana El Owerka” に合わせて、 白黒コマ撮り (ピクシレーション) で撮影された動画 Pascan Baes: 49 Bis [YouTube] では、ヴィンテージ・フィルムを思わせるエキゾチックでノスタルジックな雰囲気が楽しめた。

Karine Saporta: La Fiancée aux Yeaux de Bois [YouTube] は母親の子供時代のロシアの農村の生活を伝える白黒フィルムに、それに着想したダンスを交えた作品。 Joseph Nadj にもつながる東欧的なマジックリアリズムを伺わせ、見た中で最も興味を惹かれた動画だった。 ジプシー音楽やクレツマーなど東欧のフォークに着想した音楽を手がけているのは Jean-Marc Zelwer。 Crammed Discs / Made To Measure からリリースされたアルバムは持っていたのだが、 その舞台の様子を知ることができたのも収穫。全編を通して観てみたい。

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KAATへは、電車1本、ドアツードアで30分余で行かれるようになったので、 週末くらいフットワーク良く気楽にこの手のイベントに足を運びたいものです。

[3582] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Oct 1 20:43:51 2017

先週末土曜の夕方は、東池袋から汐留へ移動。この展覧会を観てきました。

AMBIENT - Lifestyle Items Designed by Naoto Fukasawa
パナソニック汐留ミュージアム
2017/7/8-10/1 (水休, 8/14-16休), 10:00-18:00.

ミニマリスティックなプロダクト・デザインで知られるデザイナー 深澤 直人 の展覧会。 スマートフォン登場以前のデザイン携帯電話 INFOBAR、 和紙漉きの製法で作られた新素材ナオロンを使った SIWAマルニ木工の椅子、 パナソニックの高級家庭電化製品から、 無印良品の小型家電・家具まで。 Alessi, Herman Miller など 海外のデザイン・ブランドの製品も展示されていたが、 日本国内の製品が中心に展示されていた。

複数のメーカーの製品が混在しつつも、 ミニマリスティクに統一された雰囲気でまとめられているのはさすが。 無印良品の製品を中心に使っている製品もあり身近であり、 無印良品のシェルフに Alessi の台所用品が並べられたりと、 ショップではあり得ない組み合わせの妙も楽しめた。 しかし、パナソニックのショールームの上のフロアにあるミュージアムということで、 ショールームの延長 — 無印良品のワンランク上のショールーム — のような印象も否めなかった。 戦間期モダニズムのデザイン展 [Pierre Chareau, Weiner Werkstätte, Bauhaus] をはじめ 良企画の展覧会も多いデザインミュージアムなので、もっと硬派な展示になるかとも期待したのだけれど、そうはならなかった。 その一方、もしこれが東京都庭園美術館を会場にしていたら、かなり意味合いを異に感じたろう、とも。 会場の文脈の影響の大きさも実感する展覧会だった.

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[3581] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Oct 1 19:02:48 2017

先週末の土曜は、午前に彼岸墓参を済ませて、午後に東池袋へ。この舞台を観てきました。

WHS & Sungsoo Ahn Pick-up Group
あうるすぽっと
2017/9/23, 14:00-15:00.
Concept and direction: Sungsoo Ahn and Ville Walo. Choreography: Sungsoo Ahn.
On stage: Juhee Lee, Boram Kim, Kungmin Jang, Hyun Kim, Jeeyeun Kim, Ville Walo.
Production: Sungsoo Ahn Pick-up Group & WHS
Premiere 18.8.2012 at Helsinki Festival.

フィンランドのヴィジュアルシアター/現代サーカスの団体 WHS の共同芸術監督である Ville Walo と、 韓国 KNCDC (Korean National Contemporary Dance Company) の芸術監督 Sungsoo Ahn の 国際共同制作による作品。 関連する作品を観たことはなく、作風などに予備知識は無かったが、 サーカス的な要素を持つコンテンポラリーダンスという期待もあって、足を運んでみた。

コンテンポラリー・ダンスらしい、装飾を抑えて最低限の舞台美術とライティングによる演出。 KNCDCのダンサーが出演していたようで、後半になるにつれキレのいい動きを楽しめた。 作品は整形手術ということだったが、顔を対象とする主題と全身を使った表現とに相性が悪かったか、 むしろ、タイトルにあるような様々な身体イメージの重ね合わせの妙をみせるよう。 左右二人の影を舞台中央で合成したり、少し異なるポーズの4人の影をコマ送りのように投影したりと、 影を使った演出は面白かった。 が、サーカス的な要素はジャグリング程度。 整形された顔の象徴だろうか、マネキンの腰部を複数使ってジャグリングしたり、 首の後ろに乗せて違バランスを取って、もう一つの顔が付いた姿を示したり。 しかし、ジャグリングというよりサーカスならではのアクロバティックでトリッキーな動きを 期待していたところもあったので、少々肩透かしだった。

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[3580] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Sep 24 22:27:58 2017

先の木曜は夏季休暇の消化。というわけで、午後に渋谷へ出てオペラを観てきました。

NHKホール (渋谷)
2017/09/21, 15:00-20:00.
Komponist: Richard Wagner · Libretto vom Komponisten.
Inszenierung, Bühne, Kostüme, Licht: Romeo Castellucci.
Choreographie: Cindy Van Acker; Regiemitarbeit: Silvia Costa; Dramaturgie: Piersandra Di Matteo, Malte Krasting; Videodesign und Lichtassistenz: Marco Giusti.
Cast: Georg Zeppenfeld (Hermann, Landgraf von Thüringen), Klaus Florian Vogt (Tannhäuser), Matthias Goerne (Wolfram von Eschenbach), Annette Dasch (Elisabeth, Nichte des Landgrafen),
Musikalische Leitung: Kirill Petrenko
Bayerisches Staatsorchester, Chor der Bayerischen Staatsoper.
Neuinszenierung, Premiere am 21. Mai 2017.

イタリアの現代演劇の文脈で活動する演出家 Romeo Castellicci が演出を手がけた Wagner のオペラ Tannhëuser の来日公演。 Castellicci 演出の作品は、 Divina Commedia 『神曲』三部作 [レビュー] や The Phenomenon Called I [レビュー] を観ているけれども、 俳優やダンサーの演技ではなく舞台装置や照明、音響でその雰囲気を作り出すような演出だったため、 オペラの演出ではどうなるのかという興味もあって、足を運んでみた。 もちろん、メインのキャストだけでなく、オーケストラも含めてフルに来日しての公演なので、 欧州の歌劇場付きオーケストラの演奏も楽しめるのではないかという期待もあった。

大きな円形に投影された目の映像に向かって上半身裸の女性たち舞台一列に並んで洋弓で矢を射続ける Overture での演出から、ケレン味たっぶり。 第1幕の演出は手前にほぼ透明なスクリーンを張って、後方に両腕を下に開いた女性の人型にくり抜かれた窓 (のちに円形になる) を作って、そこの中かでも映像を投影しているかのようなパフォーマンスを見せていた。 Divina Commedia. Purgatorio 『神曲 — 煉獄編』 を思わせるような演出だった。 Venus はいわゆる美しい「ビーナス」ではなくぶとっとした肉の塊に上半身が付いているような造形。 その周りに人の形もほとんど失ってしまい、ぶよぶよと動く塊がうごめいている。 とてもグロテスクな Venusberg の描写だった。

Tannhäuser が戻って Elisabeth の前で歌合戦をする Wartburg 城の第2幕では、 するする動いて次々と様相を変えていく大きな半透明のカーテンを使った演出は美しかった。 これが清らかな精神的な愛の象徴である一方、床上を蠢くダンサーの演出は、その下に抑圧されている肉欲の象徴か。 最初は背景だが、歌合戦に入ると半透明な箱入りとしで前面に押し出されてくる。 蠢くダンサーたちは肌色のボディスーツ着てたように見えたが、本当は全裸でやりたかったのだろうか。 カーテンの向こうで背景として蠢く人々のイメージは、 The Phenomenon Called I の観客で作り出したイメージとも重なるよう。

Venusberg からの脱出口となった女性の人型の穴だが、 第2幕では相補的な裸の女性の姿として Elisabeth の白ドレスの前にプリントされていた。 このプリントは半透明の布の上にプリントされており、 歌合戦で Tannhäuser が愛を歌うと Elisabeth のドレスからその布が外され、 Tannhäuser がその布を抱きしめるという。 少々図式的に過ぎるかなとも思いつつ、Tannhäuser によっての Elisabeth の2面性 (精神的/肉体的な愛の対象) が象徴的に示されているよう。

第3幕は話を進めつつも、早々に、 Tannhäuser と Elisabeth の亡骸 (もちろん模型だが) を石の棺の上に並べ、 その亡骸が朽ちていく様を九相図よろしく示していく。 (観ている間は九相図に考えが至らず模型を入れ替えた回数を数えていなかったのだが、9回であればまさに九相図を参照したのだろう。) 最後は2人とも灰となり、2人の灰は一緒にされる。 亡骸となった肉体が朽ち果てて形を失うこと (肉体を失うこと) を、Tannhäuser と Elisabeth の救済として描いてるよう。 棺に役の名前 (Tannhäuser と Elisabeth) ではなく歌手の名前 (Klaus と Annette) が刻まれていたのが気になったのだが、演出意図は掴みかねた。

第1幕のグロテスクな Venusberg といい、第3幕の「九相図」といい、 Venus に象徴される「肉体 (的な愛)」を醜くグロテスクなものとして否定的に描いた演出だった。 グロテスクなイメージは Castellicci らしいと思いつつ、Venus の側をここまで否定的に描いたのは少々意外だった。 もちろん、これはオリジナルの意図に比較的忠実なもので、 対等なものとして描くほうが現在の価値観に即した解釈になるんだろうけれども。

休憩を除いても3時間余り。話の展開は遅く少々退屈した時があったのも確か。 しかし、Der Ring des Nibelung [レビュー] でもそうだったので、それは覚悟の内。 演劇作品とちがって、オペラ歌手の個性というか登場人物のキャラクターを殺さない演出だったので、 Divina Commedia 『神曲』三部作よりとっつきやすく、歌や音楽もあってかさほど退屈せずに楽しめた。

欧州の歌劇場付きオーケストラの演奏も楽しんだが、その良し悪しについては判断しかねる。 (本来の歌劇場と会場となったホールの違いもあるだろうし。) しかし、Klaus Florian Vogt の歌声の美しさには耳を奪われた。 男らしい力強さを感じるというより、ハイトーンも優美で通る歌声で、Venus と Elisabeth の間で引き裂かれる優男のようにすら感じられた。 Vogt は Kasper Holten 演出の Die tote Stadt を観たとき [レビュー]、 その予習復習で観たDVD [YouTube] で聴いていたので、 そこでの優男の印象を引きずったということもあるかもしれないが。 生で聴いて Vogt の良さを実感することができた。

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[3579] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sat Sep 23 0:29:33 2017

先の週末日曜は雨。の中、昼過ぎには仙川へ。このライブを観てきました。

中村 達也 + PIKA + 坂本 弘道 with ながめくらしつ
JAZZ ART せんがわ 2017
せんがわ劇場, 仙川
2017/09/17, 13:30-15:00
中村 達也 [Tatsuya Nakamura] (drums), PIKA (drums, electric guitar, vocals), 坂本 弘道 [Hiromichi Sakamoto] (cello, musicalsaw, electronics), with ながめくらしつ [Nagamekurasitsu]: 目黒 陽介, 鈴木 仁 (juggling), 長谷川 愛実 (aerial, dance), 安岡 あこ (dance).

日本の jazz/improv のミュージシャンをメインとしたフェスティバル JAZZ ART せんがわ は今年で10周年。 2014年 [レビュー] まで毎年通っていたものの、 そこで途絶えてしまっていたのですが、10周年ということで、3年ぶりに足を運んでみることにしました。 観たのは、ジャグリング・カンパニーの ながめくらしつ [レビュー] が共演した回。 坂本 弘道 は ながめくらしつ の音楽も担当してきているので、顔合わせはとしては意外ではなく、 むしろ、せんがわ劇場の狭い舞台をどう使うのかというところが一番の興味でした。

ながめくらしつ というより大道芸でのユニット うつしおみ [関連写真] のような ミニマルな構成でくるかと予想していたのですが、なんと4名も登場。 さすがに4名同時に出てくることはほとんどありませんでしたが、 狭い舞台に、さらにドラムセット2つや並び、electic guitar や cello / electronics の機材が並ぶ中、よくやったなと感心してしまいました。

ツインドラムの編成でラウドな叩き合いになるかと思いきや、 前半は PIKA はドラムを叩かず、electric guitar を弾きながら歌うというもの。 叙情的というよりJ-Pop的な素朴な実感をそのまま歌にしたような歌詞は、 パフォーマンスに合っていなかったようにも感じました。 演奏とパフォーマンスが合わさったことによる妙はほとんど感じられませんでしたが、 作り込んだ舞台公演でもないですし、ま、こんなものでしょうか。

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[3578] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Tue Sep 19 0:00:10 2017

今週末土曜の午後は恵比寿へ。写美へ行って、展覧会を一通り観てきました。

Japanese Expanded Cinema Revisited
東京都写真美術館 地階展示室
2017/08/15-2017/10/15 (月休) 10:00-18:00 (木金-20:00; 8/17,18,24,25 -21:00)
飯村 隆彦, シュウゾウ・アヅチ・ガリバー, おおえまさのり, 松本 俊夫, 城之内 元晴, 真鍋 博, 佐々木 美智子, etc.

エスクパンデッド・シネマは、1960年代後半から1970年代前半にかけて前衛映画や美術の文脈で展開した 映画館など通常の上映形態とは異なる形で上映される映画を指す言葉とのこと。 この日本での展開を収蔵資料とともに構成した展覧会。 記録資料中心の展示と思いきや、 18台ものスライド・プロジェクタを中央に配して円形に投影した シュウゾウ・アヅチ・ガリバー 「シネマティック・イリュミネーション」 (1968-1969) の再現があるなど、期待していたより頑張った展示でした。 撮影、編集、投影いずれも現在のヴィデオに比べて技術的な制約が遥かに大きく、カウンターカルチャーなサイケデリックな時代を感じざるを得ず、 作品として楽しんだという程ではありませんでしたが。 図録を読めば書かれているのかもしれないですが (図録は未入手)、ほぼ同時代の 『Re: play 1972/2015―「映像表現 '72」展、再演』 (東京国立近代美術館, 1972) [レビュー] と出展作家に被りが無く、こちらの展覧会では「エクスパンデッド・シネマ」という言葉はほとんど使われておらず、この関係について少々気になりました。

TOP Collection: Scrolling Through Heisei | Part 2. Communication and Solitude
東京都写真美術館 3階展示室
2017/07/15-2017/09/18 (月休) 10:00-18:00 (木金-20:00; 8/17,18,24,25 -21:00)

春季 [レビュー] に続いて、 今年度3期に渡って開催される平成年代の作品からなるコレクション展の第2期。 テーマから想像されるよりコンセプチャルでフォーマルな作風の作品もあり、自 生前に撮った母親の火傷痕や遺品をむしろ即物的に端正に捉えた 石内 都 「mother's」 [レビュー] は良い作品。 私的でナラティヴな作風の写真は基本的に自分の好みではないのだが、 中村 ハルコ 「光の音」 (1993-1998) [レビュー] にはなぜか惹かれるところがある。 何に惹かれているのか自分でもうまく言語化できないのだが、今回も思わず足が止まってしまった。

ARAKI Nobuyoshi: Sentimental Journey 1971-2017-
東京都写真美術館 2階展示室
2017/07/25-2017/09/24 (月休) 10:00-18:00 (木金-20:00; 8/17,18,24,25 -21:00)

1990年代に死別した妻「陽子」というテーマに焦点を当てた展覧会。 被写体との距離の取り方が、石内 都 「mother's」などと正反対で、 やはり苦手だなあ、と最確認したような展覧会だった。

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[3577] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Sep 18 1:05:20 2017

先週末日曜晩に新宿二丁目へ。このライヴを観てきました。

Steiner Raknes & Tore Brunborg
新宿 Pit Inn
2017/09/10, 20:00-21:30.
Steiner Raknes (doublebass), Tore Brunborg (tenor saxophone).

Tronheim Jazz Orchestra などで活動する doublebass 奏者 Steiner Raknes と、 1980年代の Arild Andersen, Jon Christensen, Nils Petter Molvær らとのグループ Masqualero で知られる Tore Brunborg という、 2人のノルウェーのミュージシャンによるデュオ。 途中休憩を入れて前半と後半、それにアンコール1曲で、約1時間半、 リリースされたばかりのデュオでのアルバム Backcountry (Reckless, 2017) からの自作曲を重心に演奏したライブ。

ソフトな音色の tenor sax と、弓を使わず高音域を多用した doublebass が、歌い合わせるような演奏だった。 オリジナル曲中心とのことだったけれども、親しみやすいメロディの歌ばかり。 (2曲目は Chris Isaak の “Wicked Game” のようにも聴こえた。) 特殊奏法を多用するわけでも、エレクトロニクスの効果を加えるわけでもなく、斬新な音というわけではなかったが、 drums のいない Jewels & Binoculars [レビュー] のよう。 こういう演奏は好みだ。 日曜晩にリラックスして聴くのにうってつけの音楽だった。

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[3576] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Sep 17 22:56:06 2017

すでに先々週末の話になってしまいましたが、観た映画の話。

2016 / 118min. / color.
Written and Directed by Jim Jarmusch.
Cinematography: Frederick Elmes. Music: SQÜRL.
Adam Driver (Patterson), Golshifteh Farahani (Laura), etc
Production: K5 International, Amazon Studio, Inkjet Production, in association with Le Pacte, Animal Kingdom (USA / France / Germany)
予告編 [YouTube]

1980年代に独立系の映画監督として頭角を現したアメリカの映画監督 Jim Jarmusch。 1990年代までは新作が出ると必ずのように観ていたのですが [レビュー]、 2000年代以降は新作映画への興味が薄れたこともあり、すっかり遠ざかってしまっていた。 前日、National Theater Live を観たときに予告編がかかって、それがとても良い雰囲気だったので、観に行ってみた。

アメリカはニュージャージー州パターソン (Paterson, NJ, USA) で働くバス運転手 Paterson の一週間の生活を淡々と綴った約2時間。 平日は朝決まった時間に起きて、働きに出て、帰宅後妻と夕食を食べて、犬の散歩ついでにいきつけのバーで一杯やってという、ルーチンな生活。 カントリーシンガーとかカップケーキ屋とか夢見がちと一癖ある妻がいるけれども、それで大問題を引き起こすわけでなく、可愛いと思える程度。 週末もフリーマーケットに出店する妻を手伝ったり、映画館に古い映画を夫婦で観に行く。 そんな Paterson は詩が好きで、そんな平凡な日常生活の中、詩を詠んでノートブックに書き留めている。 週末に詩を書き留めたノートブックを飼い犬にぼろぼろにされ、少々気を病むのですが、結局新たなノートブックがに入り、再び変わらない日常が続くという。 そんあさりげなく日常を観察したような即興的な詩を、映像化したような映画だった。 バス運転手のルーティンなささやかな日常生活が、この映画の中だけは詩的に感じられてしまうような。

ちなみに、映画中で使われた詩は、詩人 Ron Padgett が映画のために書き下ろしたもの [PBSの記事]。 William Carlos Williams は Paterson という詩を書いており、 Allen Ginsburg の生まれた町でもあって Howl にその名を読み込んでいることも、 映画の中に織り込まれている。 Paterson はそんな詩人たちへのオマージュも感じさせた。

一点のひっかかりは、Paterson が退役軍人というか帰還兵という設定ということ。 バス故障対応のエピソード、いきつけのパーで銃を持った男を取り押さえるエピソードなど、 そんな元兵士の片鱗を感じさせる場面もある。 そんな出来事があった翌朝の少々寝起きの悪い感じの描写などPTSDかと深く詮索したくもなります。 しかし、そんなこともとてもさりげない描写に止め、 大きな事件に発展させることなく話が進めていくところも、この映画の良さと感じた。

最近、オペラとかバレエとか、過剰なまでにロマンチックでメロドラマチックなものを観ることが多いので、 たまには Paterson のような映画を観て、過剰さを洗い流したいものです。

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[3575] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Sep 11 23:06:23 2017

先々週末の話になりますが、9月2日の土曜は昼過ぎに日本橋室町へ。このイベント・シネマを観てきました。

Royal Opera House, 11 September 2017.
Emmanuel Plasson (conductor), Orchestra of the Royal Opera House.
上映: TOHOシネマズ日本橋, 2017-09-02.
Choreography: Frederick Ashton.
Music: Felix Mendelssohn. Musical arrangement: John Lanchbery. Designer: David Walker.
Performers: Akane Takada [高田 茜] (Titania), Steven McRae (Oberon), et al.
Premiere in 1964.
Choreography: Frederick Ashton.
Music: César Franck. Designer: Sophie Fedorovitch.
Performers: Marianela Nuñez, Vadim Muntagirov, Yasmine Naghdi, James Hay, Yuhui Choe, Tristan Dyer
Paul Stobart (piano).
First performed on 24 April 1946.
Choreography: Frederick Ashton
Music: Franz Liszt. Orchestration: Dudley Simpson. Designer: Cecil Beaton.
Dancners: Zenaida Yanowsky (Marguerite), Roberto Bolle (Armand), etc
Robert Clark (piano)
Created for Rudolf Nureyev and Margot Fonteyn in 1963.

Royal Opera House Cinema Season 2016/17 の最後のバレエプログラムは、 1963-1970年に Royal Ballet の芸術監督を務めた Frederick Ashton 振付のトリプルビル。 といっても、Ashton の作品は観たことありません。 Zenaida Yanowsky の引退公演ということもあり、半ば勉強気分で、観てきました。

最初の作品は William Shakespeare の喜劇 A Midsummer Night's Dream 『真夏の夜の夢』に基づく、 Felix Mendelssohn が付けた劇音楽を使った、クラシカルな物語バレエ。 Steven McRae の身体能力を堪能するなら、 Woolf Works [レビュー] のような抽象的な現代バレエだな、と、つくづく。日本人プリンシパルの 高田 茜 をじっくり観ることが収穫だったでしょうか。

続く、Symphonic Variations は第二次大戦終戦直後に作られた クラシカルなテクニックに基づく抽象バレエ。 George Balanchine の Le Palais de Cristal [レビュー] が1947年で、 Harald Lander の Études [レビュー] も初演は1948年。 第二次世界大戦終戦直後は、クラシカルな抽象バレエが流行だったのかな、と思いつつ観ました。 イベントシネマならではの幕間のインタビュー映像での、終戦直後で食べることにも事欠く中練習したとういう当時の出演者の話も印象に残りました。

最後に、今回の一番の目当てだった Zenaida Yanowsky の Royal ballet のプリンシパルとして最後の舞台。 オペラ La Traviata 『椿姫』の原作 Alexandre Dumas fils: La Dame aux camélias に基づく物語バレエです。 タイトルも原作での登場人物名から採っているくらいなので、オペラとはかなり異なる構成かなと予想していたのですが、 オペラのバレエ化といっても違和感がないくらいの場面構成でした。 クラシカルなテクニックで踊りまくるような場面がほとんどなく、 Yanowsky らの演技の上手さもあって、バレエというよりメロドラマティックなダンスシアターを観ているよう。 Willy Decker 演出 [レビュー] ほど現代的ではないものの、すっきり抽象化された舞台美術も良かったです。

Yanowsky というと、 Alice's Adventures in Wonderland [レビュー] での The Queen of Hearts (ハートの女王) や、 Winter's Tale [レビュー] での Paulina のような、 コミカルだったり男前だったりする個性的な難役を演じきる演技力が印象的だったのですが、 『椿姫』の Marguerite (Violetta) のようなメロドラマ・ヒロインも全然いけるということに気付かされました。 相手役は、Aurélie Dupont 引退公演の L'Histoire de Manon [レビュー] でも相手役を務めていた Roberto Bolle。 (他にも多くの引退公演で相手役を務めているようで、バレエ・ファンの間で「引退公演請負人」などと 呼ばれているのを知って、笑ってしまいました。) バレエダンサーというより体操選手のようなシャープな雰囲気すらある Steven McRae などと違い、華のある優男な雰囲気のあるバレエダンサー。 自分の好みは別として、このような優男はメロドラマ・ヒロイン相手役としてバレエ団には不可欠だなあ、と。

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[3574] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Sep 11 0:15:53 2017

夏休みにした8月30日の晩は、北浦和から渋谷桜丘へ移動。この公演を観てきました。

『マクベス』
Macbeth
渋谷区文化総合センター大和田 伝承ホール
2017/08/30, 19:00-20:30.
構成・演出・振付: 森 優貴 [Yuki Mori].
出演: 森 優貴 [Yuki Mori]、池上 直子 [Naoko Ikegami].
初演: 2017/08/18, 神戸文化ホール中ホール 『ダンス×文学シリーズvol.1』

Theater Rengensburgダンス部門の芸術監督・振付家を務める 森 優貴 の日本制作でのダンス公演を観てきました。 自分がアンテナを張っている方面から少々外れていたせいかほとんどノーチェックだったのですが、 偶然インタビュー記事を目にし、 劇場の YouTube チャンネル で 過去の作品のトレーラー (The Jouse, Loops, など) を見た所、 良さげだったので、足を運んでみました。

William Shakespeare の Macbeth をベースに、 Macbeth 夫婦に焦点を当てて抽象化した、二幕もののダンス作品でした。 舞台美術は抽象化的な背景にテーブルやソファなど。 取り囲むように配置された三体のマネキン様の人形は Three Witches でしょうか。 後半の薄いスモークをかけて照明を使って背景を消すなど面白いと感じる演出があったのですが、 Theater Regensburg の YouTube チャネルで観たほど、 スタイリッシュと感じられるダンスではなく、全体としてはいまいちピンときませんでした。

そもそも、会場が「伝承ホール」という日本の伝統芸能の公演のためのホールで、 ステージが狭くて奥行きもなく、およそダイナミックなダンスの動き向きではなさそうというのが残念なところ。 世田谷パブリックシアターのシアタートラムか、東京芸術劇場のシアターイースト/ウェストのような会場だったら、 そして、美術や照明にもっとリソースが割けていれば、もっとスタイリッシュな作品に観えたのかもしれないな、と。 そういう劇場やプロダクションのためのスタッフも含めて、ダンスはやはり総合芸術なんだと、つくづく思った公演でした。

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若干自分の守備範囲外かなと思いつつも、たまにはそういう公演に足を運ばないと、ますます視野が狭くなってしまいます。 それにしても、普段、自分が見に行っているコンテンポラリーダンスやコンテンポラリーサーカスとはかなり異なる客層。やはりバレエの文脈なのでしょうか。ふうむ。

[3573] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Sep 11 0:05:37 2017

既に先月の話になってしまいましたが、8月30日は夏休み取得。 不安定な天気で昼から雷雨になってしまいましたが、そんな中、会期末が迫ったこの展覧会を観てきました。

遠藤 利克
ENDO Toshikatsu: The Archaeology of the Sacred
埼玉県立近代美術館, 2017/07/15-08/31 (月休,7/17開), 10:00-17:30.

1980年代から活動する現代美術作家 遠藤 利克 の個展です。 シンプルな形状の大きな木彫を炭化させたような作品など、 所沢でバイアニュアルで開催されている『引込線』 [レビュー などのグループ展で、 圧倒的な質感と存在感が印象に残っている作家ですが、 こうして美術館レベルの個展でまとめて観るのは初めて。 ある程度作風の展開を伺うことができる展示でしたが、2010年代の作品を中心とした構成で、回顧展という感じではありませんでした。

ミニマル・アートやもの派に連なる作風だと思ってはいましたが、 コンセプトというか作品を着想する源には物語的な面もあったことに、と気付かされました。 水を使った作品など炭化した木の立体以外の作風の作品も、コンセプトという面で繋がりがあり興味深くありましたが、 やはり、焼かれて炭化したマッシブな木に質感のかっこよさを堪能しました。 大きな立体作品を作る作家なので、広いギャラリー空間に、疎らに作品を並べるような展示を予想していたのですが、 ギャラリーを迷宮のように細かく区切って、1つ1つの作品が限られた空間いっぱいに広がるよう。 視野が限られて、俯瞰的な視点が持ちづらいため、 彫刻の大きさが強調される一方、マクロな形状よりもディテールに目に行きました。 特に、炭化した木の表面といっても、一様ではなく、黒くなった程度のものから、炭化が進んでぼろぼろになる寸前まで、その質感の多様さに気付かされました。

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[3572] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Sep 3 23:28:29 2017

また、先週末の話ですが、先週末の日曜晩に、このイベントシネマを観てきました。

『コンテンポラリー・イブニング』
Большой театр, 19 марта 2017 г.
上映: 文化村ル・シネマ, 2017-08-27.
Choreographer: Jerome Robbins.
Music: Concerto in D for String Orchestra, “Basler” (1946) by Igor Stravinsky.
Costume Designer: Ruth Sobotkal; Sets by Jean Rosenthal
Premiere: June 10, 1951, New York City Ballet, City Center of Music and Drama
Действующие лица и исполнители [Cast]: Анастасия Сташкевич [Anastasia Stashkevich] (Novice), Янина Париенко [Yanina Parienko] (The Queen), Никита Капустин [Nikita Kapustin] (The First Intruder), Эрик Сволкин [Erick Swolkin] (The Second Intruder), и другие
Дирижер: Игорь Дронов [Conductor: Igor Dronov].
Choreographer: Alexei Ratmansky [Алексей Ратманский].
Music: The Russian Seasons by Leonid Desyatnikov [Леонид Десятников].
Costumes by Galina Solovyeva; Lighting by Mark Stanley.
Premiere: June 8, 2006, 2006 Diamond Project, New York State Theater
Действующие лица и исполнители [Cast]: Юлия Степанова [Yulia Stepanova], Владислав Лантратов [Vladislav Lantratov] (Couple in Yellow (then in white)); Екатерина Крысанова [Ekaterina Krysanova], Денис Савин [Denis Savin] (Couple in Red); Анна Никулина [Anna Nikulina], Антон Савичев [Anton Savichev] (Couple in Green); Анна Окунева [Anna Okuneva], Дмитрий Дорохов [Dmitry Dorokhov] (Couple in Blue); Виктория Литвинова [Victoria Litvinova], Артур Мкртчян [Artur Mkrtchyan] (Couple in Violet); Виктория Якушева [Victoria Yakusheva], Михаил Кочан [Mikhail Kochan] (Couple in Claret Red); Яна Иванилова [Yana Ivanilova] (Soprano)
Дирижер: Игорь Дронов [Conductor: Igor Dronov].
Choreographer: Harald Lander. Sceneries, costumes and lighting by Harald Lander.
Music: Carl Czerny arranged and orchestrated by Knudage Riisager.
Costumes by Galina Solovyeva; Lighting by Mark Stanley.
Premiere: 18 January 1948, Royal Danish Ballet, Royal Theatre in Copenhagen. Recreated: 1952, Ballet de l'Opéra national de Paris.
Действующие лица и исполнители [Cast]: Ольга Смирнова [Olga Smirnova] (Ballerina); Артем Овчаренко [Artem Ovcharenko], Семен Чудин [Semyon Chudin] (Principal Dancers); и другие
Дирижер: Игорь Дронов [Conductor: Igor Dronov].

Большой балет в кино [Bolshoi Ballet in cinema] Season 2016/17 の中で、 「コンテンポラリー作品」を集めたトリプルビル。 Большой балет ならではのレパートリーというほどではありませんでしたが、 日本ではコンテンポラリーの演目を観られる機会も少ないので、これも良い機会と観てきました。

といっても、The Cage は1951年、 Études は1948年 (上演は1952年の改訂版)、と、 第二次世界大戦の終戦直後の作品です。 昆虫の生殖を題材とした The Cage は、動きも虫を擬したような、 表現主義的にすら感じられるもの。1950年頃にはこんな作品も作られていたのか、と。 Études はバレエのレッスンでの動きを構成してショーとして仕上げたような作品。音楽も練習曲。 ライティングで足の動きだけ見せたり、シルエットを見せたり、と基本動作の美しさと見せるような作品でした。 このようなメタな作品は、バレエの型に詳しく、なおかつ思い入れがある人なら面白いのでしょう。

最も楽しめたのは Russian Seasons。 振付の Алексей Ратманский [Alexei Ratmansky] は2004年から2008年まで Большой балет の芸術監督でしたが、この2006年の作品は New York City Ballet のための作品です。 Ратманский の振付といえば、 Светлый ручей 『明るい小川』の復元上演を観ていますが [レビュー]、 こちらがクラシカルな物語バレエだったこともあり、あまり期待していませんでした。 しかし、6色のシンプルなイブニングドレス風 & シャツパンツの姿の6組の男女が踊る抽象バレエ。 衣装だけでなく、舞台装置なしで照明のみの演出もミニマルでとても好み。 ロシアの民謡に基づく時に歌入りの Leonid Desyatnikov [Леонид Десятников] の音楽に載って、 ロシアの農村における四季の儀式というか祭礼 (宗教的なものもあれば非宗教的なものもあったよう) を抽象化してバレエ化。 音楽もダンスも、ほのかに香るロシアの民俗 (フォーク) のイメージとモダンで抽象的な美しさのバランスが絶妙でした。

Russian Seansons のような音楽 and/or 衣装のプログラムで滑る フィギュアスケート選手が出てこないかな、と思いつつ観てしまいました。 昨シーズン、Alfred Schnittke で滑った Мария Сотскова [Maria Sotskova] [関連発言] はそこに最も近い所にいたと思ったのですが。 今シーズンは SP が Debussy の Claire de Lune、 FS が Tschaikovsky の Swan Lake の waltz だとのことで、かなり保守的な選曲。 EX は民謡の Калинка [YouTube] ですが、 こういうベタな民謡ではなく、 Russian Seansons のような曲を使う方が美しく仕上がりそうなんだけどなあ、と。

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そういえば、フィギュアスケートの2017/18シーズンが開幕しましたね。 ISUの Junior Grand Prix シリーズが始まってます。 子供っぽい雰囲気の演技は好みではないので、Junior は観ることないかな、と思いつつ、 YouTube でストリーミングしているので、つい観てしまいます。 移動中に観られるのもありがたいのですが、そうでなくても持ちの悪い iPhone のバッテリーが……。

[3571] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Sun Sep 3 21:18:55 2017

先週末の話になりますが、土曜午後に Met Live in HD 2016-2017 アンコール上映観た後、表参道へ。この展覧会を観てきました。

Dan Flavin
『ダン・フレイヴィン』
Espace Louis Vuitton Tokyo (表参道)
2017/02/01-2017/09/03 (無休) 12:00-20:00 (臨時休業、開館時間変更はウェブサイトで告知)

1960年代に Minimal art の文脈で知られるようになり、20世紀後半に活動したアメリカの現代美術作家 Dan Flavin の小規模な個展。 蛍光灯を使った Op art としても知られます。 美術館の常設展示やグループ展でよくその作品を観たことがありましたが、個展は初めて。 今回は代表作の一つ “Monument” for V. Tatlin 連作の4作品をメインに7作品が展示されていました。 こうして観ると、単調にマッシブに並べるようなインスタレーションとは異なり、様々な長さのコンポジションの妙を感じさせる作品だということに気付かされました。

しかし、まじまじと観ていると、白い色でも蛍光灯の管の色の違いに気付かされます。 管にプリントされたメーカーや型番までチェックしてみたのですが、必ずしも統一されていません。 カラーの管も “Yellow Special” などとプリントされており、限定生産かもしれませんが、作家が色を付けたのではなく、既製品なのだなあと。 よくよくみると、極の近くが黒ずんでかなり劣化が進んでいる蛍光灯もありました。 制作されて50年以上つものもあり、寿命が来て交換した管もあるのだろうかと思ったりしました。 しかし、会場で配られていたリーフレットを読むと、 「これらの“モニュメント”の寿命は照明装置が機能している間(2,100時間)に限られるのです。」 という作家の言葉もあり、蛍光灯の寿命が切れても交換しないのが、作家の意図のよう。 白色の蛍光灯の管の色の違いも、経年劣化の進行のばらつきのせいなのかもしれません。

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[3570] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 小杉町, 川崎市, Mon Aug 28 23:45:36 2017

土曜は昼過ぎに築地へ。Met Live in HD 2016-2017 のアンコール上映を観てきました。

『ばらの騎士』
from Metropolitan Opera House, 2017-05-13, 13:00–15:35.
Composer: Richard Strauss. Libretto: Hugo von Hofmannsthal.
Production: Robert Carsen.
Set Designer: Paul Steinberg. Costume Designer: Brigitte Reiffenstuel. Lighting Designer: Robert Carsen, Peter Van Praet. Choreographer: Philippe Giraudeau.
Cast: Renée Fleming (Marschallin), Elīna Garanča (Octavian), Erin Morley (Sophie), Günther Groissböck (Baron Ochs), Markus Brück (Fininal), Matthew Polenzani (a singer).
Conductor: Sebastian Weigle.
Premiere: Court Opera, Dresden, 1911.
New Production: Apr. 13 - May 13, 2017. Co-production of the Metropolitan Opera; Royal Opera House, Covent Garden, London; Teatro Colón, Buenos Aires; and Teatro Regio di Torino.
上映: 東劇, 2017-08-26 13:30-17:54 JST.

第一次大戦直前に作られた Richard Strauss による大作オペラ。 『オペラの運命』 (中公新書, 2001) [読書メモ] や 『メロドラマ・オペラのヒロインたち』 (小学館, 2015) など、 岡田 暁生 のオペラに関する本を読んで気になっていた作品ということもあり、良い機会かと Met Live in HD で観てきました。 ということで、あらすじや Mozart の喜劇オペラを意識した作品だという予備知識はありました。 それでも、Richard Strauss というと、Elektra の無調音楽寸前の音楽の印象も強く [レビュー]、 これで3時間半は辛そうだなあ、とも、思ってました。 結果としては、音楽としても軽妙さもある風刺のきいた風俗喜劇が楽しめました。

演出は、Patrice Chéreau の Elektra や、 Willy Decker の La Traviata [レビュー] のような 現代的なミニマリズムではなく、そういう点ではさほど好みのものではありませんでした。 原作の Maria Teresia 時代のロココな1740年代 (Mozart が活躍する少し前の時代) ではなく、 作品が作られた20世紀初頭、第一次大戦直前のウィーンとしていたのは、 この作品がハプルブルグ帝国の終焉、というか、宮廷文化、貴族文化の名残がある19世紀的な欧州近代社会の終焉という時代の雰囲気を反映した作品だった、 という点を明確化するという点でも効果的だったでしょうか。 Baron Ochs は単純な道化役ではなく、没落しつつつあるハブスブルグ帝国の貴族将校であり、 軍事産業で財をなした新興ブルジョア Faninal 家の娘 Sophie と、財産目当てに愛の無い結婚をしようとする、という魅力的な悪役。 最後には愛人 Octavian から身を引く元帥夫人 (Marschallin) の仕掛ける恋のかけひきに 全てには終りがある諦観もにじませた喜劇というより、 20世紀初頭、没落する貴族と新興するブルジョアを風刺する風俗喜劇のようなっていました。

第一幕はロココではなく19世紀の歴史主義的な貴族の邸宅、 第二幕はいかにも20世紀初頭らしい Vienna Secession というか Jugendstil なモダン邸宅 (Vienna Secession のパトロンであった実業家 Karl Wittgenstein を連想させる)、 第三幕は居酒屋ではなく20世紀初頭の退廃的な雰囲気のある娼館。 第一次大戦直前の雰囲気ってこうだったのかな、と、楽しめました。 しかし、エンディング、若い二人の幸福を子供の召使を出して単に異化するのではなく、 軍靴 (第一次世界大戦) でぶち壊して終えるのは、その時代を描くという意味ではわかるけれども、残酷。 古典的な作品をその舞台とする時代を変えて翻案するということはよくあるわけですが、 先日観た National Theatre の The Threepenny Opera も そうでしたが [レビュー]、 制作された時代に移すこの翻案は正攻法なのかもしれません。

アリアは第1幕中の元帥宅を訪れた「歌手」が歌うだけというメタな使われ方で、歌というよりもセリフに近いようなものも多いもの。 第3幕の終幕の三重唱もそうですが、対話的というよりお互いの違う立場の歌詞を重ねるように歌うことが多いのが印象的。 演劇的な意味でも多声的に感じられて、面白いなあ、と。 といっても、音楽はキャッチーで、Vienna waltz も時に群舞も伴って印象的 (Neuejahr Konzert かよ、と思ったりもしましたが)。 それも楽しみましたが、20世紀初頭という時代設定であれば、特に娼館を舞台とした第3幕など 表現主義すらに接近した Elekra のような音楽の方がぴったりきそう、とも。

あまりオペラ歌手には詳しくないのですが、今回のキャストは役にぴったりハマっているように見えました。 Renée Fleming のとても艶っぽいマダム感もいかにも Marschallin のイメージそのものでしたが、 なんといっても Elīna Garanča の Octavian がいわゆるスボン役というレベルを超えていて、 単なる立ち姿だけでなくその所作も美青年 (女性ですが)。 第1幕のこの2人の絡みだけでも舞台にぐっと引き込まれました。 (Garanča の Octavian を見ていて、こういうのが宝塚歌劇の魅力なのかな、と思ったり。) ちょっとコミカルで可愛らしい Sophie 役の Erin Morley といい、 憎まれ役だけど魅力的な Baron Ochs 役の Günther Groissböck も、物語を盛り上げていました。 それにしても、かなりドタバタ風味の喜劇演出だったので、激しい動きを伴う演技。 もちろん皆、歌も巧いわけですが、演技の巧さに感心しながら観ていました。

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