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シネマ ファシスト 第91回 2009年9月号 『余命1ヶ月の花嫁』 (9月に見ました。) ありきたりの話を廣木さんがどう料理するのか、その1点だけに興味があって、三軒茶屋まで見に行った。この映画の舞台が三軒茶屋と知っていた訳ではない。見て初めて知った。見た所は三軒茶屋シネマ。トイレから隣りの木造家屋のトイレが見える古風な映画館である。 主人公の2人より花嫁の父である柄本明と花婿の父である大杉漣についつい目が行ってしまった。娘の入院先は教えられないと言う柄本明、おまえは本当にそれで良いのかと言う大杉漣、その両者は私に近い。ちなみに柄本明は、60歳独身と言っていた。余命1ヶ月の花嫁の結婚式のシーンでは、当事者の2人にではなく、参列した2人の父の方を見ていた。瑛太と榮倉奈々は当事者であってみればかくやという生活、日常である。しかし当事者であるその2人から距離を置かねばならない、2人の父の身の処し方に私は賛同した。若い人はともかく、もう60歳にもなる私の周囲に、死は偏在している。だから若い人の死よりも、余命1ヶ月の花嫁の結婚式に参列した2人の父に私は涙する。若い2人に感情移入するのは困難である。2人の営為はあたりまえの営為である。しかし2人の父は当事者ではない分、なぜ私の1人娘は死なねばならないのか、なぜ私の1人息子は余命1ヶ月の花嫁と結婚せざるを得なかったか、その悲しみと、やり場のない怒りは強いと思う。私の娘も息子も何も悪いことはしていない、なのになぜ、そんな叫びが両者の静謐なたたずまいから聞こえてくる。 | ||
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●市井義久の近況● その91 2009年9月 歌舞伎町へは最近では仕事以外で足を踏み入れることはない。したがって年1回行けば良いほうである。2007年の12月以来、約2年ぶりに行く機会があった。歌舞伎町広場周辺の様変わりは驚くべきである。これではまるで廃墟ではないか。コマ劇場のビル、新宿プラザのビル、新宿トーアのビル、歌舞伎町ジョイシネマのビル、新宿シネパトスのビル、すべて映画館は廃業していた。営業しているのは、ミラノ座のビルとグランドオデオン座のビルの2つだけ、広場を取り巻く7つのビルのうち、映画館が営業しているのは、わずか2つのビルのみ。 歌舞伎町に映画を見に来ることはあまりなかったが、『バタアシ金魚』の封切りは新宿シネパトスだし、新宿トーアはかつての歌舞伎町日活(東映)、新宿プラザはある時期東京で最も大きな映画館であった。それらがすべて無い。東京へ出て来て40年。ずいぶん多くの映画を見たが、それらの映画館はもうほとんど無い。在るのは池袋北口にっかつなど数える程である。それはサイクルがもっと早い飲み屋にも言えることである。やがてサイクルがちょっと遅いだけの人間、私の知己もやがてはいなくなる。それはいたしかたのないことである。 歌舞伎町広場の中央にしばらく立ってみる。あまり見たくない光景である。じゃあ40年前は、それは別の意味で驚くべき光景であったと思う。私が初めて歌舞伎町に来たのは18歳、中村屋でカレーを食べ、ミラノ座のビルの1階にあったトップスという喫茶店へ入った。ともかく人が多かった。その後新宿トーアのビルの2階のガトーという喫茶店へマッチ欲しさに通っていた。ともかく1968年歌舞伎町は人であふれていた。 今午前10時、人はほとんどいない。 | ||
市井義久(映画宣伝プロデューサー) 1950年新潟県に生まれる。 1973年成蹊大学卒業、同年株式会社西友入社。 8年間店舗にて販売員として勤務。1981年株式会社シネセゾン出向。 『火まつり』製作宣伝。 キネカ大森番組担当「人魚伝説よ もう一度」「カムバックスーン泰」 などの企画実現。買付担当として『狂気の愛』『溝の中の月』など買付け。 宣伝担当として『バタアシ金魚』『ドグラ・マグラ』。 1989年西友映画事業部へ『橋のない川』製作事務。 『乳房』『クレープ』製作宣伝。「さっぽろ映像セミナー」企画運営。 真辺克彦と出会う。1995年西友退社。1996年「映画芸術」副編集長。 1997年株式会社メディアボックス宣伝担当『愛する』『ガラスの脳』他。 2000年有限会社ライスタウンカンパニー設立。同社代表。 ●2001年 宣伝 パブリシティ作品 3月24日『火垂』 (配給:サンセントシネマワークス 興行:テアトル新宿) 6月16日『天国からきた男たち』 (配給:日活 興行:渋谷シネパレス 他) 7月7日『姉のいた夏、いない夏』 (配給:ギャガコミュニケーションズ 興行:有楽町スバル座 他) 8月4日『風と共に去りぬ』 (配給:ヘラルド映画 興行:シネ・リーブル池袋) 11月3日『赤い橋の下のぬるい水』 (配給:日活 興行:渋谷東急3 他) 12月1日『クライム アンド パニッシュメント』 (配給:アミューズピクチャーズ 興行:シネ・リーブル池袋) ●2002年 1月26日『プリティ・プリンセス』 (配給:ブエナビスタ 興行:日比谷みゆき座 他) 5月25日『冷戦』 6月15日『重装警察』 (配給:グルーヴコーポレーション 興行:キネカ大森) 6月22日『es』 (配給:ギャガコミュニケーションズ 興行:シネセゾン渋谷) 7月6日『シックス・エンジェルズ』 8月10日『ゼビウス』 8月17日『ガイスターズ』 (配給:グルーヴコーポレーション 興行:テアトル池袋) 11月2日『国姓爺合戦』 (配給:日活 興行:シネ・リーブル池袋 他) ヨコハマ映画祭審査員。日本映画プロフェッショナル大賞審査員。 |
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