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シネマ ファシスト 第96回 2010年2月号 『パレード』 藤原竜也と一緒に暮らす若者を、家庭、学校、会社、社会と置き換えた方がわかり易いであろう。彼は同居する24才のイラストレーター、23歳の無職、18歳のオカマ、そして21歳の学生によって日々追い込まれてゆく。それら4人に悪意やもとより追い詰めているという意識がある訳ではない。だから余計怖く、藤原竜也もその4人によって壊れてゆくという意識はない。だから余計怖い。当然、うまくゆくはずであった。うまくいっていた。5人であらかじめルールを決め、年齢も近く、職業もバラバラなので何の問題も起こりそうにもなかった。しかし実相は、藤原竜也の夜の営為を全員知っていて、ラストは明らかに1対4の関係である。 それはなぜか、唯一藤原竜也だけが、まっとうな社会人であるせいか。しかし他の4人とて20年も社会生活を営んでいる訳だから、まっとうな分別はある。強姦ビデオに救いを求める女、好きな男のドラマを1日中見ている女、男娼、先輩の彼女に押し倒される学生。どれも1対4と4にグルーピングできるような特性ではない。したがって追い込むほうと追い込まれるほうの境界線は極めて曖昧である。この映画で殺される方の人格は描かれていないが、殺す方と殺される方、追い込む方と追い込まれる方、恨む方と恨まれる方、そんな相対立する両者の曖昧さを、この映画は描いている。だからラスト全員で伊豆高原への旅行にも出発することもできる。 極めて現代的な映画である。 | ||
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●市井義久の近況● その96 2010年2月 なにせテレビを持っていなかった時期もあるので、子供の頃を除けば、あまりテレビを見ることはなかった。しかし2年くらい前から仕事がヒマになったので、土日と平日の夜はよくテレビを見る。特に殺人事件が起こる2時間(1時間も含めて)ドラマ、昔は映画をよく観る者としては、ちょっとばかにしていたが、改めて見てみると、プロデューサー、シナリオライター、監督の悪戦苦闘ぶりは見事である。それらのドラマの構成要素のポイントは大きく分けて次の4つに分けられる。 1.主人公について @職業、主に殺人を捜査する捜査一課の刑事か、それ以外の職業か。なんと質屋の主人が捜査するというドラマまである。 Aキャラクター、人情派かバリバリか落ちこぼれか男性か女性か。 B家族構成、独身か結婚しているか、別れたか子供がいるか。 2.殺人の舞台 @東京 A横浜 B京都 Cその他の主として観光地 なぜ京都と横浜はテレビの中ではこんなに殺人事件が多いのか。不思議である。 3.殺人の理由 @金 A地位の保全 B憎み 4.殺人の方法 @絞殺 A刺殺 B撲殺 C毒殺 D銃殺 Eその他 主人公が火災捜査官や科学捜査研究所の職員だと変わった殺人方法が出て来る。 テレビの2時間(1時間も含めて)の犯罪ドラマは、上記の要素を様々に組み合わせて構成されている。テレビの他の番組では人気のある、旅、グルメ、温泉、鉄道の4つを組み合わせ、主人公と犯罪者のキャラクターを明確にし、犯罪に説得力を持たせたら、視聴率的には最強と思う。犯罪ドラマの多くは原作が先にありきだが、去年生誕100年ということで何本かオンエアーされた松本清張ものは、やはり原作のキャラクター設定に説得力があるので、おもしろいものが多かった。前述したドラマの主人公で、およそ捜査とは関係のない、ルポライターや弁護士や生活安全課が主人公なのはまだしも、タクシーの運転手、家政婦、葬儀屋、カメラマン、駅の拾得物係等まであるのは、原作があるとは言えかなりの悪戦苦闘ぶりである。映画と異なりテレビは感情に訴えるよりも視覚、見た目を惹きつける要素が強いせいか、構成要素が多岐に渡り重層的である。そんな中で昔大竹しのぶ主演の『事件』という映画があったが、テレビ朝日の北大路欣也主演「事件」が今一番おもしろい。1人の弁護士が犯罪事由に迫る話である。 日々テレビの中では事件が起きている。しかし見ている1人1人の現実にあっては、滅多に殺人というような事件に関わり合うものではない。だから見ているこちらとしては、その犯罪の説得力、そこが一番気になるところである。それにしても日々テレビの中で犯罪を起こしてゆかねばならないスタッフ、キャストは敬服に値する。見る私たちの安住の側で。 | ||
市井義久(映画宣伝プロデューサー) 1950年新潟県に生まれる。 1973年成蹊大学卒業、同年株式会社西友入社。 8年間店舗にて販売員として勤務。1981年株式会社シネセゾン出向。 『火まつり』製作宣伝。 キネカ大森番組担当「人魚伝説よ もう一度」「カムバックスーン泰」 などの企画実現。買付担当として『狂気の愛』『溝の中の月』など買付け。 宣伝担当として『バタアシ金魚』『ドグラ・マグラ』。 1989年西友映画事業部へ『橋のない川』製作事務。 『乳房』『クレープ』製作宣伝。「さっぽろ映像セミナー」企画運営。 真辺克彦と出会う。1995年西友退社。1996年「映画芸術」副編集長。 1997年株式会社メディアボックス宣伝担当『愛する』『ガラスの脳』他。 2000年有限会社ライスタウンカンパニー設立。同社代表。 ●2001年 宣伝 パブリシティ作品 3月24日『火垂』 (配給:サンセントシネマワークス 興行:テアトル新宿) 6月16日『天国からきた男たち』 (配給:日活 興行:渋谷シネパレス 他) 7月7日『姉のいた夏、いない夏』 (配給:ギャガコミュニケーションズ 興行:有楽町スバル座 他) 8月4日『風と共に去りぬ』 (配給:ヘラルド映画 興行:シネ・リーブル池袋) 11月3日『赤い橋の下のぬるい水』 (配給:日活 興行:渋谷東急3 他) 12月1日『クライム アンド パニッシュメント』 (配給:アミューズピクチャーズ 興行:シネ・リーブル池袋) ●2002年 1月26日『プリティ・プリンセス』 (配給:ブエナビスタ 興行:日比谷みゆき座 他) 5月25日『冷戦』 6月15日『重装警察』 (配給:グルーヴコーポレーション 興行:キネカ大森) 6月22日『es』 (配給:ギャガコミュニケーションズ 興行:シネセゾン渋谷) 7月6日『シックス・エンジェルズ』 8月10日『ゼビウス』 8月17日『ガイスターズ』 (配給:グルーヴコーポレーション 興行:テアトル池袋) 11月2日『国姓爺合戦』 (配給:日活 興行:シネ・リーブル池袋 他) ヨコハマ映画祭審査員。日本映画プロフェッショナル大賞審査員。 |
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